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加速する惨劇


……少し、展開を急ぎすぎたかもしれない。
次の事件を語るには、月曜の朝、葉加瀬聡美が機械の腕と共に登校する前。
日曜日の午後に、話を戻す必要がある。


――女子寮の食堂の厨房の一角。
その日彼女は、夕方にもなろうかという頃、ようやく己の仕事を終らせた。
「すまないねぇさっちゃん。でも、本当にいいのかい?」
 せっかく作った料理ですから。食べて貰えない方が悲しいです。
「それもそうなんだけどね」
食堂のおばさんの問いかけに、ニッコリ笑って応えたのは、四葉五月。
ふくよかな体型をした、3-A最高の料理人だった。
その日の食堂のメニューは、ちょっとばかり豪華な品揃えで。
一品料理からデザートに至るまで、普段は出てこないメニューがいくつも並んでいた。

空振りに終った、和泉亜子の退院記念パーティ。
その際、食べられることもなく余ってしまった沢山のご馳走。
五月は料理人として、その大量の料理を無為に捨てることができなかった。
そこで、無理をお願いし、食堂の料理として寮の住人に出すことにしたのだった。
もちろん、無償。金を取ればかなりのモノになる品々だったが、五月の主眼はそこにはない。
せっかくのご飯を無駄にしたくない、ただその一心。
そして料理が全てはけるまで、無償で食堂で働き続けて……
ある意味、1人で会場を片付けた史伽より、大変な仕事だっただろう。
けれども彼女はその疲れも見せずに、ニッコリと笑う。


四葉五月。「さっちゃん」の愛称で親しまれる、心優しい料理人。
あの「超包子」の人気も、五月の腕とレシピがあってこそのものだ。
美人とか美少女とかからは程遠い彼女だが、しかし彼女を嫌う者は1人も居ない。
誰からも愛される麻帆良の「おふくろさん」、それが五月だった。

太陽が沈む。太陽と入れ替わりに、綺麗な満月が顔を覗かせる。
麻帆良学園の広い道には街灯が灯り、しかし人気はまばらだ。
 昼のうちに仕入れを済ませておきたかったんですけどね。
 早く帰らないと。最近は色々と物騒ですし……
五月は呟く。その手には野菜が大量に抱えられ、肩にはクーラーボックスまで下げている。
明日も朝から「超包子」の面々で売るつもりの、肉まんの材料だった。
素材に拘る彼女は、自分で仕入れを行う。
それもできるだけいい物を求めていった結果、学園外にも買出しに行くこともしばしばだった。
今日も、退院記念パーティの残り物の処分を終えた後、買出しに出たわけだったが……

暗い道を、1人で歩く五月。
ふと彼女は、道の先に誰かが立っているのに気付く。
黒いマントに顔と姿を隠した、長身の人物。五月の側からは、その正体は分からない。
「それ」は五月が叫び声を上げる間もなく、恐ろしいほどのスピードで距離を詰めて……!

ごッ。
茶々丸が素早く振り下ろした手刀の一撃で、四葉五月は、あっさりと意識を失った。
周囲に散らばる野菜。ドサリと崩れる、太めの身体。
満月だけがその光景を見下ろしている。どこかから、耳障りな笑い声が聞こえてくる……。
夜は、まだ始まったばかりだ。

 11th TARGET  →  出席番号30番 四葉五月 
 NEXT TARGET → -???