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早朝4時、外は明るくなり始めている。
作戦決行の朝だ。打ち合わせ通り、龍宮神社に大河内が来た。
「おあやうごぜえますっ、でぇ~…」ラリっているが、挨拶はキチンとする。
流石はスポーツマンである。「お、おはよう…では、学校へ向かうか」引き気味に反応した。

学園内に人陰はない。しかし、誰もここに居ないという保証はない。早く侵入した方が良い。
用意していた段ボールを被って3年A組の教室の近くまで移動する。
異様に大きい段ボールが連なり、ゴドゴドゴドゴドゴと音を立てて前進した。
実際に段ボールで遊んだ方なら分かるかも知れないが、何かに隠れながら動くというのは意外と面白いものだ。
それまで後方で蠢いていた段ボールの主、大河内は、隠れるという行動から、ある記憶が呼び覚まされた。

小学生のころ、そう、まだ私の腋が臭くなかった頃、裕奈達と河原でかくれんぼをして遊んだ。
あの頃の私はまだ快活な少女だった。しかし、そのかくれんぼを境に、影のある少女になってしまった。
裕奈が鬼になった。彼女が鬼になると、みんなすぐに見つかってしまう。
私は彼女になんとしても見つかるまいと、川の向こう側に泳いで行った。
その頃から泳ぐのが大好きで、クラスには私より上手く泳げる子はいなかった。川を泳いで渡る位は何てこと無かった。
何時間たったかわからないが、私はとうとう、裕奈に見つかる事はなかった。しかし、それがいけなかった。
隠れた場所から出て「おーい!私、ここにいるよー!」と叫んだ。
返事はない。叫び声だけが、虚しくこだました。もう、みんな帰っていたのか…結骨折り損。
私は、一人ずぶ濡れのままの服で家へ帰った。
翌日に学校で会った裕奈は、私が勝手に家に帰ったと思い込んで、頭ごなしに私を責めた。
「何で勝手に帰ったの!?私達みんなで必死に探したのに…この裏切り者!」
負けず嫌いの裕奈、隠れたみんなを見つけるのがうまい裕奈。
ここで始めて私は、裕奈のプライドをズタズタに傷つけていたことに気付いた。
事情を説明する事も出来ず、私はただ責められ続けた。私が、川を渡るという小生意気な真似をしたからいけないんだ。
一人一人、得意な事があるんだ。私の能力で、他の誰かを傷つける事があってはならない。
これからは、控えめに、もっと優しく、自分を抑えながら生きていこう。
そう誓った小学校の夏から、もう何年経っただろう…?

『…ダメ、今はそんな事を考えてる場合じゃない。私は、する事をすればいい。集中しなければ…』

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