MAGISTER NEGI MAGI from Hell

―AKIRA―

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大河内アキラは自室につき、始めて鞄の中身が少なくなっている事に気付いた。
残酷性の強いマンガ本は入っている。だが8x4とワキガに関する本がない。
『うう、私がワキガだとバレたら、龍宮と一緒にされる…それだけは、死んでもイヤ!』
同じ臭いを持つものだからこそ、なおさら大河内は龍宮を嫌悪しているのだ。
しかし、彼女の体臭は龍宮にくらべればまだ可愛いものだ。龍宮は8x4のみでは消臭できない位キツい。
大河内は、その日の内に8x4を買い求め、鞄に入れた。

…翌日、私は自分のコンプレックスがバレてしまうかもしれない不安と戦いながら登校した。
見慣れた校門も、今日はおどろおどろしい、もう一つの世界への入り口のように感じる。
曇り空の下、生温い風が吹く。静かに揺れるうなだれた向日葵が、私を嘲笑っているみたいで気持ちが悪い。
誰が、何の為に私の物を盗んだのだろう?私が、何か悪い事でもしたのだろうか?

あれこれ考えている内に、教室の前まで来ていた。
「アキラ、おはよう…どうしたの?教室の前で突っ立って」
「え?あ、おはよう、まき絵」何気ない会話。それすらも恐れるほど、私の心は怯えている。
「ねぇ、なんだか顔色悪いよ、大丈夫?」まき絵が心配している。
「うん、大丈夫」気丈にふるまわなくてはいけない。皆に心配をかけてはならない。
まず、席について、深呼吸して、気を、落ち着けよう。スー(臭い…)ハー。
後ろの龍宮の臭いだ。いつもの事だが、この女は臭い。突然、大きな手が私の肩を叩いた。
龍宮…何か用なのか…?驚いて振り向くと、彼女は私にささやいたのだ!

「大河内、お前ワキガなんだろ?」

ああ…この女が、私の物を盗んだんだ…この女に目をつけられたら、何をされるかわからない。
私の心臓が痛いぐらいに早鐘を打ち始めた。額、腋、足の裏から、一気に変な汗が吹き出る。
「今から、君と私は友達のような、時には親分と子分のような関係を持つ事になる。
 いいね?じゃなきゃ、君がワキガだと皆にバラすぞ?」
情けない事に、抵抗する事が出来なかった。ただ、泣くのを堪えてうなずいただけだった…

『うっぽぽお!大河内カワイイ!泣くの堪えてるとこマジ萌え!』
龍宮真名は残酷な策士である。自分を体を極限まで鍛えた後は
自分のクラスメイトを着々と支配し、自らの配下にしようと目論んでいたのだ。
不幸にも、その第一号が偶然ワキガで、偶然前の席にいた大河内と言う訳である。
だが配下と言っても使い走りをさせたり、寅さんのビデオを強制的に一緒に見たり、
相手の意志に関係なく共に身体を鍛えたりすると言う、持ちつ持たれつ(?)の関係を考えている。
彼女は寂しかったのかもしれない。本当は不器用なだけなのかもしれない。
しかし、いかなる理由とはいえ、人を恐喝する理由にはなり得ないのだが…

「それじゃあ、放課後に私の所へ来てくれ、君にやってもらいたい事があるから」
大河内はコクリ、とうなずいた後、そのまま机に突っ伏し、震えていた。
『朝っぱらに仕掛けない方がよかったかな?』
少し自分のえげつなさを呪う龍宮だったが、そんなことはすぐに頭から消えてなくなった。

放課後…大河内は一人葛藤していた。

龍宮が放課後に私にしてもらいたい事があると言った。
確かに、いたずらメールは送った。ヒップホップっぽく、毒の聞いたセンス抜群のメールを。
アドレスを任意で変更できるシステムだったから、私がアイツにメールを送ったのバレるはずはない。
なぜ、私が被害者になるのかわからない。逃げたい、でも逃げられない。
逃げたところで、翌日に学校であった時にドラゴンスリーパーで絞め殺されるのが目に見えている。
そうだ、ちょっと弄られて終わるのならそれでいい。
みんなに嫌われてしまうより、龍宮一人にいじめられる方が楽だよっぽど楽だ…そのはずだ…!
大河内は無理矢理自分を納得させた後、龍宮の元へ向かった。

言い付け通り、大河内が龍宮の元へ訪れた。顔を伏せ、決して目をあわせないようにしている。怯えている。
「私にさせてみたい事って、何…?」言葉を発したのは大河内だった。消え入るような声だった。
「ズバリ、筋トレだ。やらないなんて言ったら、アンタ死ぬわよ!」
『死』という言葉を選択し、相手を脅す。大河内の体がビクッと反応した。
「…わかりました」羊のようにおとなしく呟いた。してやったり。
「では腕立てから。いつも通りやってみて」水泳をしているだけあって、体は中々発達している。
「ウホッ、いい女!ではぽッ!ぽッ!といいながらやってみて」「ぽッ、ぽッ、ぽッ…」
「ンボボボボボルァ!もっとでかい声で!」「ぽッ!ぽッ!!ぽッ!!!」
半分やけくそになって声を張り上げている。大河内が腕立てをしている間、龍宮は催眠術をかけ始める。
大河内がぽッ!と言うと同時に龍宮もぽッ!共鳴する。不思議なシンクロが続いた。
龍宮が「ぽぽぽぽぽーっ!」っと叫べば「ぽぽぽぽぽっー!」と大河内が叫び返す。
特殊な心理状態にある人間には、催眠術はよく効く。
「よし、やめ。明日からは、家で8x4を使う事は許さないぞ。8x4は今、没収する」
「わかった。私は明日から8x4を使わない」大河内が、自分から制汗剤を龍宮に渡した。
龍宮の作戦は成功した。龍宮のプロジェクト『3年A組野生化計画』は、ここから始まったのだった…

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