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「うっ・・・あうぅ・・・」
茶々丸は台に拘束されたまま、苦しげにうめく刹那を見下ろしていた。
「刹那さん、傷の消毒をします・・・痛いと思いますけど、我慢してください」
「やああっ!!」
ピンセットの先の消毒液を染みさせた脱脂綿が指の傷口に触れただけで、刹那の全身に電流が走るような激痛が襲い来る。
「いぃ・・・・痛い・・・痛い・・・」
涙を流しながら、いやいや、とかぶりを振る刹那。
「我慢してください・・・すぐ終わりますから」
茶々丸は一瞬悲しそうな顔をした後、いつもの表情に戻ると、ピンセットを動かし、傷に消毒液を染み込ませた。
「きゃぁぁあああーーーーーー!!!」
刹那のさらに大きく、高い悲鳴。
これ程の傷が化膿したり、感染症を起こしたりすれば、指が腐り落ちる事も、最悪破傷風などで命を落とす事も考えられる。
茶々丸の行為は善意こそあれ、これ以上刹那を苦しめるつもりなどないのだが、刹那にとっては拷問の続きに他ならなかった。
「きゃあああっ!!ひぃいっ!痛い!もう許してっ!!」
悲痛な悲鳴を聞きながら事務的に消毒を続ける茶々丸。彼女のその心を奥底を知るものは誰もいない。

その頃このかは、ただ一人、思考をめぐらせていた。
(せっちゃん・・・また酷い事されとんのかな・・・それならまたウチがなおしたげないと・・・
治療の呪文も練習したんや・・・今なら多分大きなケガも・・・!!ケガ・・・?
      • そうや!・・・こんなことになって忘れてもーたけどウチらは・・・)
その時、このかは階下から姿を表したエヴァの姿を見つける。
思考は一旦中断され、このかはエヴァに向き合うと、怯えを含んだ震える声で彼女に問う。
「せっちゃんを・・・・・どーしたん・・・・・・?」
このかはエヴァに怯えているのではない。エヴァが刹那にした仕打ちがどんなものなのか知るのが恐ろしかった。
「貴様の目で確認してきたらどうだ?見ないほうが良いと思うがな」
そう言われれば、ますます確認せずにはいられず、足早に階段を降りるこのか。

「・・・せっちゃん!!」
そこにはようやく拘束を解かれ、先程まで縛り付けられた台の傍ら、裸のままでうずくまっている刹那の姿があった。
「せっちゃん・・・だいじょぶ・・・?」
指先を集中して責められた刹那の身体には一見、これといった外傷は見えない。
だが、彼女の精神、肉体両方の激しい疲弊が表情に浮かび、その蒼白な顔から
彼女がどれほどの苦痛を味わったのかこのかは感じ取っていた。
「手ぇ・・・怪我しとるん・・・?」
このかのその言葉に刹那は身体を震わせ、背を向ける。
先程自分でも一目見て吐き気を覚え、後悔したほど激しく痛めつけられたその手の傷を、見せたくない。
優しい彼女の心が自分の手と同じくらい傷つく事が容易に予想できるから。
けれど、そうは思っていても、彼女は自分の体に触れるこのかの手を振り払う事はできなかった。
「・・・っっっっ!!・・・そ、そんな、酷いっ!」
爪が剥がされ下の肉から骨が除く、その残酷な光景にこのかは激しいショックを受け、思わず涙が溢れてきた。
「せっちゃん、痛かったやろ・・・痛かったやろ・・・」
このかは刹那の手を握り、治療の呪文を唱える。彼女の治癒能力は重症といえる傷まで治す事が出来るまでになったいた。
あるいは、彼女が人一倍強く思っている刹那に対してだから出来た事かもしれない。
しかし、彼女のこの力が後に刹那をさらなる地獄に突き落とす事を彼女はまだ知る由もなかった。

「・・・いくらなんでもこんなの許せんよ・・・なんで!なんでこんなにせっちゃんをいじめるん?
せっちゃんが何したって言うんよーーー!!」
このかは傍らに無言で立っている茶々丸を責める。
彼女の本位では無い事も、直接手を下したわけでも無い事は理解していたが、それでも許せなかった。
だが、さらに言葉を続けようとしたこのかの体は突然、真っ直ぐ「きをつけ」をした形で動けなくなる。
「なっ・・・なんや、これ・・・?」
「マスター・・・」
          • 部屋の階段の上にエヴァの姿があった。


このかの身体の自由を奪ったのは先程刹那を拘束していたのを同じ、彼女の人形操り用の糸である。
エヴァの顔は明らかな不快感が浮かんでいた。
「さっきからうるさい奴だ、まぁいい、これで声も出せんだろう」
「ふぐっ!」
エヴァは3人の元に降りてくると手にしていたタオルをこのかの口に突っ込み、さらにその上から糸で縛り、さるぐつわをした。
倒れそうなるこのかをあわてて支える刹那。
「お・・・お嬢様!」
「騒ぐな、何もしないさ。私の目的はあくまでお前だ・・・もうちょっと休もうかと思ったが気が変わった。また遊んでやる」
その言葉に刹那の表情が青ざめる。もう嫌だ。あんなに痛いのは。刹那は思わず手で顔を覆った。
そしてその仕草で、エヴァは刹那の傷が完治している事に気づく。
(剥がした爪が・・・?近衛 木乃香のアーティファクトは3分以内の傷しか治せなかったはず・・・
通常の治療魔法であれほどの傷が癒せるのか?試した価値があったな。
これならば、もう少しハードな責めも問題あるまい・・・ククク・・・)
「んーっ!んんー!!」
さるぐつわの下でこのかは『やめて』と叫び続けていた。

刹那は手を後ろに回され縛られる。しかし、それ以上は何もされる様子はない。
思いのほか軽い拘束にとまどいの表情を浮かべる刹那。
「ただ一方的にいじめるのもつまらんから、少し趣向をこらそうと思ってな・・・
私の攻撃を避けてみろ。この室内ならどこに逃げてもかまわん。茶々丸!鞭だ」
「ハイ、マスター。どれになさるのですか・・・?」
「そうだな、普通の革鞭を使おうと思っていたが変更だ。バラ鞭をもってこい」
「・・・ハイ、マスター」

茶々丸は部屋の奥にかかっていた鞭の一本をエヴァに手渡す。
鋭い棘が無数についたその威圧感漂う凶器を見て、刹那は全身から冷や汗を流し、
床に転がされたこのかは驚愕に目を見開いた。
「そ・・・それは・・・(いやだ・・・怖い・・・)」
「んー!んぅーー!!(あんなんでぶたれたら・・・せっちゃ~ん!!)」
「ククク、マトモにくらえば肉まで裂けるぞ。なぁに、心配するな。避けきれればいいだけだ。
時間制限は、そうだな・・・この砂時計の砂が全て落ちきるまでだ」
鞭は茶々丸に用意させたのに、砂時計はピッコロさんのように何もない所から出すエヴァ。
その大きな砂時計から、砂がゆっくりパラパラと落ちる。砂が落ちきるまでは少なくとも30分はかかりそうだった。
「さぁ、いくぞ・・・」
エヴァがつめより、刹那はあとずさる。両者の距離が縮まり、鞭の間合いに入った瞬間エヴァは素早く鞭を振り下ろした。
バシィィィィッ!!
それを刹那は後ろに跳んでかわすが、このまま後退を続ければ壁際に追いやられるのは必至である。
エヴァが再び接近し振り下ろした鞭を、斜め前に飛び出し交わす刹那。
ヒュン!・・・・ビシィィィッ!!
鞭が頭部付近を霞め、パラパラと床に落ちる刹那の髪の毛。
緊張と恐怖から心臓の鼓動は強くなり、自分の耳に響いてくる。
後ろ手を縛られた刹那はそれだけで動きがかなり制限されており、バランスもとりにくくなっていた。
もし転んでしまえば打たれるのは確実。そうはならぬよう、エヴァの動きを読み、全神経を総動員してエヴァの鞭を交わし続ける。
「なかなかやるな、ではこれではどうだっ!」
ヒュンッ!
足を払うような低空の一撃。それをジャンプで避ける刹那。
避けた瞬間「しまった!」と思ったが、既に遅かった。
エヴァは横なぎの一撃からそのまま斜め上に鞭を振り上げ、その鞭は中空で身動きの取れない刹那にはかわしきれない。
バシィィィィッ!!
「うああっ!!」
とうとう、エヴァの鞭が刹那の体を捕えた。彼女の肌をいまだ覆っていた固まったロウが剥がされ、その下の皮膚も傷つけられる。

「あ・・・ああ・・・・」
想像していた以上の痛みに、思わず刹那は膝を突いてしまう・・・が。
ビシィィィィッ!!
「ひぐううううっ」
先程、刹那を打ち据えた一撃からそのままエヴァは手首を返し、振り下ろした一撃が再び刹那の、今度は左肩を直撃した。
重力に逆らった最初の一撃に対し、打ち下ろしの二撃目の威力はさらに強力である。
「さっさと立て、テレビゲームのようにダメージを食らった後の『無敵時間』は存在しないぞ。
すぐさま逃げねば、何発も連続で攻撃を受けるハメになる」
前半部分は意味がわからなかったが、後半部分は理解できた刹那は、痛みをこらえ、体性を立ち直しエヴァを見据える。
(うっ・・・うう・・・痛い・・・真剣で斬られたような・・・・)
「効くであろう?鞭打ちはその痛みでもって人間を絶命させうる。せいぜい死なぬよう気を強く持て・・・ハハハ」
「ん~!!(そんな~!せっちゃ~ん!!)」

「うぎゃあああっ!!」
砂時計の砂が落ち始めてから約20分後。室内に響く、何度目かの刹那の悲鳴。
先程までは鬱陶しいと思っていた全身を覆っているロウが皮肉にも、刹那の痛みを多少なりとも和らげる役目を
果たしていた・・・が、それももはや大半が剥がれ落ち、それに反比例して、刹那の体には傷が刻まれ、再び全身を
赤く染め始めている。
もう見てはいられないと、このかは先程から目を逸らし続けていたが、刹那の悲痛な悲鳴からは逃れようがなかった。
「・・・はぁ・・・はぁ・・・うぅっ・・・」
「どうした?動きが鈍くなっているぞ?」
打たれれば打たれるほど、痛みで集中力が低下し、体の動きも鈍くなり、疲労は増す。
そうなるとますます打たれるという悪循環。それは打たれる刹那本人が一番理解していた。
動けるうちに可能な限り長く避けなければならない。おそらくあと十発もくらえば、痛みで殆ど動く事ができなくなるだろう。
そうなれば、残り時間ひたすら打たれ続けなければならなくなり、それは死すら予感させた。
しかし、そう考えていた直後、彼女を悲劇が襲う。
ずるっ
「きゃっ!」

床には、刹那の流した血や汗が大量に落ちていた。それに足を取られてしまう刹那。
普段の彼女ならこの程度でバランスを崩す事はありえないが、状況が状況である。
「うぐっ!!」
受身の取れない彼女は無様に前のめりに倒れ、なんとか顔面だけは打たぬよう、背を逸らせ腹で衝撃を受け止めたが
それが逆にまずかった。
バシィィィィィッ!!
「ああああああっ!!」
無防備になったその顔面を打ち据えるエヴァの鞭。
「・・・いやああああっ!!」
肉体的な痛みもさることながら顔を傷つけられたショックに今にも切れそうだった神経の糸が切れてしまった。
鍛錬を積んだ達人と言っても、彼女も多感な時期の少女。
立ち上がる事が出来ず、痛みと恐怖でパニックに陥いり、床を転げまわる刹那。
エヴァにとっては絶好の的だ。芋虫の様に這い回る刹那に、渾身の力を混め鞭を振り下ろす。
ビシィィィィッ!!・・・バシィィィィィッ!!・・・
「うあーーーーっ!痛い!痛い!やめ・・・うあぁっ・・・・・」
背中に、尻に、腹に、太股に、体中に鞭が飛ぶ。
次々と新しい傷が増える。
既に出来ている傷口をさらに深く、鞭が幾度も抉る。
刹那は自分の作った血溜まりの中で、まるで溺れているかのようにもがき続けるが、その動きも徐々に緩慢になる。
「マスター!」
惨劇は無言で見守っていた、茶々丸の突然の声で中断された。
「ん・・・なんだ?ああ、時計の砂が丁度落ちきったのか、残念、ゲームオーバーだ」
鞭打ちの拷問はようやく終ったが、刹那はいまだ全身を覆う激痛にもがき続けている。
「あ・・・が・・・・し・・・しん・・・じゃ・・う・・・・」
「んっんん~!(せっちゃん・・・ごめんね・・・絶対助けるから、もう少し待っててよ・・・・)」
さるぐつわの下で嗚咽を漏らしているこのかの頭にはこの時、ある計画が浮かんでいた。