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「ふーっ、しんどい。わしもそろそろ引退かのぉ。」 学園長は持っていた判子を適当に放り投げ、イスの背にどっぷりともたれかかった。 机の上には書類のビルが築かれ、書類全てに判子が押してあるようだ。 コンコン 「ん?だれか来たのかの?どうぞ。」 「失礼します。」 扉が開かれ、そこに立っていたのは怪人 脳噛ネウロ。 「失礼します。」 ネウロはオリジナルな笑顔で学園長の前に歩み寄ると、礼儀よく頭を下げた。 「ふむ、見かけぬ顔じゃな。で、なんのご用件で?」 「はい、実は私を教員として、雇って頂けないでしょうか?」 「んー…、困ったのぉ…。実は今、わが学園では教員を募集していないのじゃ。すまんがお引取りを…」 「あのー、実はネギ先生からこれを頂いたのですが…。」 ネウロはまるで予測していたように、ポケットから一枚の封筒を差し出す。 学園長が封筒を開けるとそこにはネギのサインが綴られた、一枚の推薦状が出てきたのだ。 「ほぅ…、なるほど。わかりました。一応考えておきましょう。結果は後日、ネギ先生のほうから伝えよう。」 それを聞くとネウロは、 「ありがとうごさいます。」 と、一言だけ言って、部屋を去ろうとし振り返る。が、「ところで…、おぬしは何者かのぉ。返答次第ではただでは返さんぞい。」 ドアの前にはいつの間にか学園長が立ち塞がっていた。 「ほう…、人間のなかにも我が輩の正体に気付く輩がいるとはな…。」 ネウロの顔が怪しい笑みを浮かべる。 「では、まずは聞こう。この推薦状はどうやって手に入れた。」 学園長の声の圧力がビシビシとネウロに突き刺さる。 「ふん、我が輩をナメるな。そんな物、一目見れば簡単に書くことができる。」 しかし、そんな重圧にも、ネウロは全く顔色を変えない。 「では、おぬしの目的は何じゃ。」 今度は学園長の眉毛に隠れた眼が鋭くなっていく ---- 「我が脳髄を満たす『謎』を喰らいつくすためだ。」 学園長の顔がゆがむ。 「まじめに答えい!」 「ふん、真面目もクソもない。真実だ。」 「…」 どうやら腑に落ちないようで、学園長は不満そうに顔をしかめた。 まあ、当たり前と言えば当たり前だが… 「(ふむ…、どうやら嘘は無いようじゃが…。)」 嘘をついている者は、あまり相手に目を合わせようとはしない。 なぜなら動揺して目が泳いでしまうのを見られたくないからだ。 学園長は今までずっとネウロの目を見ていたが、逸らすどころか、それを嘲り笑うかのようにニヤニヤと嫌な笑みをうかべている。 「…では、『謎』とは何じゃ。」 「『謎』は『謎』だ。貴様は阿呆か?」 話が全くかみ合わない。 「ふーっ…、困ったのぉ。話が全くかみ合わん。」 「もういい加減諦めて、我が輩を教員とやらに採用しろ。」 ネウロもいい加減飽きたらしく、学園長の机の上に腰をおいている。 「ならん!おぬしは魔物じゃ。そう易々と教員にさせてしまったら上からなんと言われるか…。」 学園長もネウロが机の上に座ったのを見計らい、その場で腰を落とした。 するとネウロは、隣にあった書類の塔に目をつけると、その塔を平手で思いっきり倒した。 ---- 「な…。」 書類が宙を舞う。 しかし、書類はそのまま地面には落ちず、あろう事か書類はジグソーパズルのように散らばり、学園長の周りに桜吹雪を巻き起こしている。 「いいことを教えてやろう。貴様の孫 近衛木乃香は神楽坂明日菜によって殺された。」 「な!?」 「そしてまた殺人事件が起こる。貴様らは無能だ。無能が何人集まろうが、事件解決には一歩も近づかん。」 学園長の顔がみるみる青ざめていった。 魔法教員が解けなかったトリックを、目の前の魔物はあっさりと解き、しかもその犯人が木乃香の親友。 しかも、この怪物はまた殺人が起こると予言する。 「な…、何を根拠にそんな事を…。」 「ふん、『謎』の気配を感じたからだ。」 「…」 学園長は自分なりにこの怪物を分析することにした。 まず『謎』とは、事件のトリックを示す。 そして、この脳噛ネウロという魔物は、トリックを解くことで自らの腹を満たす、言うなれば魔物の変種。 この怪物の眼には、普通の魔物のような闇が宿ってはいるが 、恐怖や狂気など人に害を及すような色はしていない。 逆にこの怪物の眼は複雑で、見ているだけで頭が爆発しそうになるほど入り組んだ迷路の眼。 ---- 恐らくこの怪物には『謎』以外の物は全て興味が無いのだろう。 そして、この男はこの学園で起ころうとしている『謎』を喰うためにここにいる。 「ふむ、わかった。おぬしを教員として採用しよう。ただし、見張りをつける。それでいいな?」 学園長は腑に落ちないながらも、仕方なく了承してしまった。 「見張りか…。まあいい、誰が我が輩を見張ろうと、我が輩は『謎』さえ喰えればそれでいい。」 ネウロは手を勢いよく叩いた。 すると学園長を軸にして舞っていた紙吹雪が一斉に地に落ちる。 「それと、その見張りに言っておけ。我が輩の食事の邪魔をしてみろ。八つ裂きにしてやるとな。」 そう言い残し、ネウロは部屋を去った。 「まったく、たいした奴が来たもんじゃ。」 学園長は立ち上がり、自分の椅子に腰をかけた。 学園長の目の前に広がるのは、一面切傷だらけの壁と床に散らばった書類の残骸。 紙がコンクリートを傷つけるなんて事は聞いたことがない。 物質の強度を変えるなど出鱈目もいいところだ。 「わしもとんでもない爆弾をかかえてしまったようじゃ。」 老人は誰もいない部屋で独り溜め息をついた。 斜陽が学園長を淋しく照らす。 -[[ツギノページ>教【きょうし】後編]]

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