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「ゴメンね、助けに来るのが遅れて。いやみんなの監視が厳しかったからさー♪」 既に一度、図書館組に騙されている双子は最初は半信半疑だったが、話を聞くうちにその表情が変わる。 美空が言うには―― 今の傷ついた双子の姿を先生にでも見せれば、教師たちが介入して今の状況を覆してくれるだろう。 ただ、口先で「双子がこんな目に遭わされている」と言っても、簡単には信じてもらえないだろう。 かといって、双子をこの武闘派生徒も加わった監視の目から普通に連れ出すのは、なかなかに困難だ。 いくら美空が俊足でも、双子2人を抱えてこの包囲は突破できない。 そこで、美空の連れてきたココネが役に立つ。 一瞬でいいのだ。扉の外に立つ監視役を一瞬だけ欺ければいいのだ。 幸い、ココネは2人と背格好が良く似ている。修道女のベールをすっぽり被せれば、あるいは。 見張りに気付かれないよう、代わりにココネがこの場に残ることになる。 桃色のカツラを被り、顔に白粉を塗り始めたココネに、双子は尊敬の目線を向ける。 一歩間違えれば、いやかなりの高率で、残ったココネは双子の代わりに虐待されかねないのだ。 それでもこんな危険を冒し、見も知らぬ姉妹のために身体を張ってくれようとは……。 感動に震える双子は、しかし美空の次の一言で、一気に険悪な表情になる。 「で――風香と史伽、どっちがココネと入れ替わる? とりあえず1人しか連れ出せないしさ♪」 ……図書館組に信頼を傷つけられ、エヴァンジェリンに互いの殴り合いを強要された2人。 揃って「ボクが」「私が」と言いかけた2人は、次の瞬間、取っ組み合いのケンカを開始する。 呆れて見守る美空。カツラを脱ぎ白粉を拭ったココネが、ボソリと呟く。 「……計画通りダ」 「うーん、エグいねぇ。血を分けた姉妹でも、こんなんだもんなァ。やりきれないッスよねェ」 溜息をつく美空も、しかしどこか芝居がかかった嘆きの言葉。 元々、最初の頃の単純な暴行に参加しそびれた美空は、しかしただ殴るだけでは芸がないとココネに相談。 そして頭脳派のココネが提案したのが、美空らしくもない、この陰湿な誘惑だった。 2人の会話に、双子はようやく状況を理解するが。 互いへの憎しみはますます強まり、人間不信はさらに深まり。絶望と精神的疲労が極限に達する。 ---- 「さて、そろそろ時間も終わりに近づいてますし、最後はみんなで叩きまくってお開きにしましょうか?」 あやかの呼びかけで、クラスの全員が姉妹を取り囲む。 確かに2日目夜、そろそろ日曜日も終わりだ。 当の姉妹には知らされてないが、楓が帰ってくれば終わり、という暗黙の了解もできている。 色々と変化球も取り混ぜてきたが、やはり基本は、罵詈雑言を浴びせながらの暴行だろう。 幸い、最後の美空の責めは精神的なモノだったし、その前に少し休憩を与えてある。 もう逃げようとする気力は残ってないが、悲鳴を上げたり嫌がったりする体力は回復している。 取り囲まれ、既に希望はなく、しかし苦痛というものには慣れられるものではない。 双子が無駄だと知りつつ、やめるよう懇願しかけた、その時……。 「……私の見てないところで、何やってんのよ、アンタたち!」 「みなさん、風香さんと史伽さんに、いったい何をしているんですか!」 凛とした声が2つ、響き渡った。その言葉に含まれた怒気に、双子はハッと顔を上げる。 見ればそこには、そういえば一貫して姿を見なかった明日菜と、担任のネギ。 2人のまっすぐな怒りに、双子を取り囲んでいたクラスメイトたちも、一瞬動揺する。 正義感の強い2人。一歩ずつ近づく彼らに、人の輪が自然と道を開く。 立ち上がる気力もないまま、ペタンと座り込んだ風香と史伽の前に、彼らは抵抗もなく到達して。 周囲の生徒たちを見回して、怒ったように言った。 「……ったく、なんで私たちを仲間外れにすんのよ? 私たちにも一発くらい殴らせなさいよ!」 「そうですよ! 僕たちだって、お2人には不満も色々あるんですから!」 ――その後、クラスのみんなは明日菜とネギ先生を加えて双子をボコって、仲良くストレス解消しましたとさ。 めでたし、めでたし。 「……ただいまでござる。  お、約束守って、拙者の分もちゃんと残しておいてくれたでござるな?  さてさて、何をしてやるでござるか……ニンニン♪」                     ( まあもう双子はボロボロのグチャグチャだけども 完 )

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