「革命」(2006/10/23 (月) 00:04:14) の最新版変更点
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ハルナの渾身の一撃は、美砂の頬にクリーンヒットした。
いくらハルナが非力だろうと、こんな金属の棒で顔を殴られたら痛いにきまっている。
ハルナは唖然とした。ここまでうまく行くとは思わなかったのだ。
自分の生活を侵し続けていた元凶が、こんないとも簡単に崩れ落ちるとは・・・。
ハルナは、心のそこから「達成感」を感じていた。
だが同時に、とてつもない「恐怖」も感じていた。
・・・と次の瞬間、美砂は頬をおさえたまま、憎しみに満ち溢れた表情でハルナを見上げた。
その顔に、ハルナは思わずぎょっとした。そしてすぐに、美砂は立ち上がり、ハルナの持っていた「凶器」を取り上げた。
美砂は、まるでホームランを狙ってスイングするスラッガーのように、ハルナの顔をその「凶器」で殴った。
先程よりも大きな音がした。それと同時に何かが割れる音・・・
今の一撃はハルナの丸い大きなメガネにあたり、レンズが粉々に砕け散った。幸いハルナの眼球にはダメージは無かったようだ。
ハルナは顔をおさえて倒れた。それは今までで、もっとも大きな痛みであった。
ハルナはぼやけた視界の中、美砂の顔を見ようとした。
よく見えなかったが、その顔に浮かんでいたのは、ハルナを痛い目にあわせたい、という感情ではない。
どちらかというと、それは「殺意」に近い感情だと感じた。
それは「いじめられっ子」の本能ではなく、「人間」の本能として感じられるものだった。
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美砂は怒り狂っていた。こんなゴミのようなやつに、自分の顔を殴られたことが、不愉快で仕方がなかった。
美砂はハルナの顔を何度も踏みつけた。
さらに顔に片足を乗せ、体重をかける。そのまま机の脚でハルナの身体を力いっぱい殴り続けた。背中、腹、脚、さらには局部まで・・・。
机の脚も、ハルナの身体も、壊れてしまいそうな勢いだった。
一糸纏わぬ姿のハルナの身体に、直に机の脚の痛みと冷たさが伝わってきた。
これだけやれば、ハルナがいじめを受けている事がバレてしまうのではないか・・・今の美砂はそんなことなど考えていない。
今はただ、ハルナに憎しみをぶつけることしか考えていなった。その後の事など、何も考えていないのである。
あまりにハルナを殴ることに夢中になっていたのだろうか。
教室のドアのカギが、先程からずっと、カチャカチャと音を立てているのに、美砂は気付かなかった・・・。
しばらくして、美砂はハルナの身体を殴るのをやめた。ハルナの身体には、無数のあざが出来ていた。
だが美砂は、まだ満足していなかった。
美砂は自分のポケットからタバコを数本取り出し、それら全てに火をつけた。
一本だけを自分の口に銜えると、残りのタバコの火を、一気にハルナの舌に押し付けようとしたのだ。
美砂は、タバコを人が直接食べると急性ニコチン中毒で死んでしまうことを知らなかった。
ハルナの命は、本当に危険にさらされていた・・・。
ところが、そのときである。美砂の腕が何者かによって掴まれたのだ。
美砂「!!」
美砂は驚いた。ドアのカギはかけておいたはずなのに・・・一体誰が・・・!!
そしてそこにいた人物は・・・
朝倉「ゲームオーバーだよ。美砂。」
美砂「な!!」
そこにいたのは、朝倉であった。彼女は針金を使って、無理矢理ドアのカギを開けたのだった。
なぜこの場所がわかったのか・・・美砂は不思議に思った。
朝倉は持っていたカバンを床に置き、美砂の手からタバコを取り上げると、それを近くの机に押し付け火を消した。
美砂は朝倉に片手を掴まれていて、その場から動くことが出来ない。どうやら朝倉は、美砂よりも腕力があるようである。
ハルナはほとんど気を失いかけていたため、朝倉が助けに来たことに気付いていなかった。
美砂は朝倉と、殴り合いで勝負しようとは思わなかった。
ワルというものは、自分より強い相手が「臭い」や「勘」でわかるものである。
その勘が、警告していた。「こいつと喧嘩してはいけない」
それよりも、朝倉の自信に満ちた目が、美砂の「やる気」をいっそう低下させていた。
力で勝てないのなら頭で・・・
いや、こいつは「勉強はやっぱ嫌だね」と言っておきながら、この麻帆良で普通に成績上位者に入るようなやつだ。
力で勝負したほうがまだ勝ち目がある。
そう考えているうちに、朝倉は美砂の手を放した。
朝倉「にしても、あんたもバカだよね~。わざわざ自分で証拠を作ってくれるなんて・・・」
朝倉の手の中には、机においておいたビデオカメラがあった。
朝倉「全く、こんなビデオを平気な顔で撮るし、今週の本編じゃパンツとローブだけで平気で歩き回るし・・・
男とヤリ過ぎてそっちの方の感覚狂ったんじゃないの?」
美砂「うっ・・・、む、胸元開きまくりのコス着てたあんたに言われたくないわよ!」
美砂は動揺していた。このままでは、自分の今までしてきた行為が公になってしまう。
今のこの状況は、美砂にとって圧倒的に不利であった。
そこで、美砂はタバコを投げ捨て、自分のカバンのもとへと向かった。
残された唯一であろう手段を使うために。
美砂「このことを誰にも言わないって約束しなさい!じゃないとこの原稿を破り捨てるわよ!」
そういって、美砂はカバンの中からビニール袋を取り出した。
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ところがである。
朝倉「・・・別に、いいよ。」
美砂「な・・・」
朝倉は落ち着いた様子で、美砂の捨てたタバコのもとへと行き、その火を消した。
朝倉「だって・・・本物の原稿はここにあるんだもの。」
そういうと、朝倉は自分のカバンの中から封筒を取り出した。
美砂「な、まさか!!」
美砂はあわててビニールの中の物を見た。
それは確かに、ハルナの原稿ではない。ハルナの原稿をコピーしたものであった。
美砂「な・・・なんで・・・まさかあんた、私の部屋に勝手に入って、原稿を盗んだんじゃ!!」
朝倉「盗んだ?冗談じゃないわ。私はこれが落ちてたから、拾ったのよ。」
美砂「わ・・・私はその原稿をずっと部屋においておいたはずよ!それがどっかに落ちてたわけないじゃない!」
朝倉「しょうがないでしょ。落ちてたもんは落ちてたんだから。」
どこかで聞いたような会話であった。嫌な予感がした。
美砂「・・・だ、だって・・・じゃあ、なんで原稿のコピーが代わりにあるのよ!まるで本物が無くなってることに気付かれないように!」
朝倉「・・・・・・さぁ?」
朝倉は、美砂を少しバカにしたような口調で言った。
美砂「さ、さぁ?・・・ふ、ふざけないでよ!そ、それがあんたが私の部屋に入って盗んだ、何よりの証拠じゃない!」
朝倉「証拠?そっちこそふざけてるんじゃない?私はこの原稿を拾った。コピーの原稿の件は私じゃない。それだけでしょ?
これのどこが、私があんたの部屋に入って、原稿を盗んだ証拠になるの?」
美砂「だ、だって・・・だっ・・て・・・」
朝倉「別に私を訴えてもいいよ。不法侵入と窃盗の容疑で。ま、どうせ私が勝つだろうしね。
それに、あんたがハルナの原稿を無理矢理奪ったことを、自ら世間に暴露することにもなるよ?それでも訴える?」
美砂「・・・そんな・・・」
それは、まるで医者から余命を宣言されたような、絶望と衝撃に満ちた表情だった。
美砂は、手に持っていたコピーの原稿を床に落とし、自分も床に跪いた・・・。顔を下にむけたまま、ぐったりとしていた。
朝倉「・・・あんたはいつもそうだ。自分が上の立場にいると、すぐ調子に乗る。そして最後には、いつも自滅して地に落ちる・・・。」
それは、「大富豪」が「大貧民」に落ちた瞬間だった。
――――次回、感動の打ち切り! つづく
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