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①①①①①①①①①①①①①①①① 10/29 この所なんの変化もない。 あいつらはあいつらで私と目を合わせようとはしないし こちらもわざわざ話しかけるような事もしない。 もしかして飽きたのだろうか どっちにしてもこの勝負は私の勝ちに向かっていっている。 私は絶対に負けない 私の味方をしてくれたいいんちょや木乃香、本屋ちゃんのためにも それはそうと、最近超さんの様子がおかしい 私のほうをジロジロ見てはニヤニヤと笑う 少し気味が悪い まぁ、だからなんだって訳じゃないけど… こんな事書いても、読んでいる人には訳がわからないと思うから 今日は事の始まりを書こうと思う。 私も実際よく分からない所もあるけど 私の分かる範囲で書いていきたい あれはたしか… ---- 「え?…ち、ちょっと待ってよ…。あ!」 部屋が静まりかえり、電話が切れた音が微かに彼女の耳に届く。 この日、柿崎美砂は一年付き合ってきた彼氏にいとも簡単にフラれてしまったのだ。 理由は飽きたの一言。 一生懸命な恋だったために、ショックが大きかったのだろう。 彼女は受話器を握り締めながら、涙を流していた。 その三十分後、同居人である釘宮円が部屋に帰ってきた。 真っ暗な部屋のなかで泣く柿崎を見た円は困惑しながらも場の空気を読み、彼女を一人にさせてあげることにした。 どのくらい時間が経ったのだろう。 気がつくと柿崎は床にはいつくばる形で眠っていた。 彼女は夢を見ていた 一年前のあの日、初恋のあの人に告白したことを。 彼はニッコリと微笑みながらそれを承諾してくれた。 彼は彼女を遊園地に連れていく。 彼女の手を優しく引きながら ジェットコースター、コーヒーカップ、メリーゴーランド そして観覧車 彼と一緒になって笑っている柿崎 楽しい時が過ぎ、当たりは夕焼けで紅く染まり始める。 『あのさー。』 彼が彼女に微笑みながらこう言う。 『お前、もう飽きた。』 ---- 『え?』 その瞬間彼は霧のように消え、代わりに遊園地にいた人々が柿崎の周りに集まっていく。 『あきた』 紅い風船を持った子供が言う。 『あきた』 遊園地の清掃員が言う。 『あきた』『飽きた』『厭きた』『秋田』『明田』『飽きた』『あきた』 全ての人が彼女に向けて『飽きた』とだけいう。 『や、やめて…。』 柿崎の膝が笑い始める ジェットコースターが紅く燃える。 『実はさ』 遊園地のスピーカーから彼の声が聞こえてくる。 コーヒーカップが紅く燃える。 『最初から』 メリーゴーランドが紅く燃える 『お遊びで』 『いやぁー!』 柿崎は人込みを掻き分け、耳を塞ぎながらその場から逃げ出した。 薄々感づいてはいた。ただそれを彼の口からはっきりとは聴きたくはなかった。 まだ…彼には棄てられたくは… 気がつくと彼女は観覧車のなかで眠っていた。 隣りには彼がいる。 彼は微笑みながら柿崎の頭を優しく撫でる。 そして彼は言う 『外を見てごらん』 外では燃えている遊園地の大広場で人々が集まって騒いでいる。 なにかのライブだろうか。歌っているのは…柿崎美砂。 円も桜子も亜子も柿崎とともにステージに立っていた。 ---- 美砂はこの光景に見覚えがあった。 たしかあれは麻帆良祭の… そして次に気がついた時、彼女はステージの上で歌っていた。 沸き上がる歓声。弾ける音楽 美砂の頭は次第に混乱と熱気で溶けていった。 そして彼女は見てしまう。 観客席で女とイチャつく彼の姿を 『美砂…フラれちゃったね…。』 『残念。完璧遊ばれてたね。』 『気にする事ないって!次ガンバロ!』 後ろの三人が笑いながら彼女に話かける。 三人とも目が光り、口がニヤけている。 『あきた』『あきた』『あきた』『あきた』『あきた』 三人が美砂に迫っていく。 背後には知らない女と接吻をしている彼が立っている。 まるで美砂にわざと見せつけるかのように。 『あきた』『あきた』『あきた』 『イヤァァァァァ!!』 美砂の目の前が真っ暗になった。 ここで彼女は目を醒ました。 床は涙でグシャグシャに濡れている。 美砂は何もなかったかのように立ち上がると、薬箱から目薬を取り出し、充血した両目に 一滴ずつ注した。 『残念。完璧遊ばれてたね。』 夢のなかで桜子が彼女に言った一言。 所詮は夢。本当に遊ばれていたのかは分からない。 だが…、はっきりと否定できる自信がなかった。 -[[次のページへ>10/29(その2)]]

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