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「ハルナ編―第一話―」(2006/08/25 (金) 02:35:18) の最新版変更点
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**辿り着く者たち
2週目の火曜日の朝――
近衛木乃香が、目を覚ました。
先週の土曜からだから、ほぼ3日間眠っていたことになる。
その間ずっと枕元につきそっていた桜咲刹那。病院に泊り込んでいた刹那。
彼女は、木乃香が目を開けたその瞬間にも、木乃香のすぐ傍にいた。
「…………あー」
「ッ!? こ、このちゃんッ!?」
「……ここ、どこ……? うち、何してるん……?」
「このちゃんッ! 大丈夫ッ!?」
「……? 誰ー? ……まあええわ。せっちゃん、どこにおるか知らん?」
……この一言が、全てを意味していた。
やがて医師が呼ばれ、目を覚ました木乃香が調べられ、問診を重ねられ……
そして、医師たちは、聞いたこともない珍しい症例に、頭を抱える。
「どうなってしまったんです、お嬢様はッ!?」
「我々も、こんな症例聞いたこともないんだがね……
おそらくは高次脳機能障害による相貌失認、ということになるのだろうが」
現代医学でも未だ完全には解明されていない、人間の脳機能。
特にその、高次の複雑な機能が侵される障害。
その症状は多岐に渡り、また本人も周囲も気付きにくい障害は多い。
「相貌失認」もまたその症状の1つだが、しかしこんなピンポイントにはっきり出るとは……。
目が覚めた木乃香は、人間の見分けがつかなくなっていた。
相手の顔の特徴を認識し記憶と照合し、目の前の相手が誰かを判断する能力を失っていた。
良く見知った知り合いに会っても、それが誰だか分からない。初対面の他人にしか思えない。
他にも軽い健忘や視覚失認も見られたが、しかし……。
----
別の病室では――
長谷川千雨もまた、木乃香とほぼ同時期に目を覚ましていた。
一報を聞きつけ、かけつけた綾瀬夕映が面会する。
「……千雨さん、」
「? 『ちさめ』って誰のことかな、ゆえっちー」
「?!」
「私の名前は『ちう』だぴょん♪ で、ちうに何か用かなー?」
「千雨、さん……!?」
いつも不機嫌そうな様子だった千雨とは180度違う、能天気で突き抜けた陽気な人格。
木乃香の時と同様、あるいはそれ以上にありえぬ症状に、頭を抱える担当医たち。
これもまた高次脳機能障害、ということになるのだろうか。
確かに、性格や行動の急変というのは良く知られた症状の1つではある。
けれどここまで極端な例はそうそうない。自己認識上の名前すら変化するとは。
まるで二重人格の知られざる人格が登場して、それがそのまま固定化したような雰囲気。
軽い健忘の症状もあって、事件前後のことは覚えていない様子。
木乃香の異常も、千雨の異常も――やはり、木乃香の使ったあの『禁呪』が原因だった。
普通では絶対にありえない、『ダメージの分配』。不安定な魔法。
2人はそれぞれに、再び目覚めるだけの回復を遂げることができたが……
その脳が受けたダメージは、深刻だった。深刻かつ、通常ではありえない形だった。
加えて、木乃香には現代医学が把握した症状に加え、大幅な魔力の低下も見られて。
魔法使いの才能を失い、親しい人々をそうと見分ける能力を失った木乃香。
人格が崩壊し、別人と化した千雨。
2人の受けたダメージは、ある意味『精神的な死』と言って過言ではないものだった。
……周囲や本人がそのことを完全に認識するには、今しばらくの時間が必要なようだったが。
----
……放課後。
ノートPCを小脇に抱え、図書館島にやってきた夕映は、本棚の前で意外な人物に出くわした。
「あれ? ゆえっちも調べ物?」
「朝倉さん……?」
まさに夕映が調べようと思っていた、『学園史編纂室』の会誌が並ぶ本棚の前。
麻帆良パパラッチの異名を取るジャーナリスト・朝倉和美が会誌のページをめくっていた。
「珍しいですね、こんなところで」
「そっちも珍しいじゃん、パソコン持ち歩いてるなんて。今日は本屋ちゃんのことはいいの?」
「これは千雨さんのものです。のどかについては、気にはなりますが後回しです」
「そっか」
しばしの沈黙。夕映は弱小サークルである学園史編纂室の会誌を、順に追っていく。
……どうやら夕映が用事がある一冊は、今まさに和美がめくっている一冊のようだ。
「……ん~、やっぱわかんね。『事件』ってのはコレのことだと思うんだけどさぁ」
「何を調べているのです?」
「いやね、さよちゃんが言ってたことなんだけど……」
「ゆえっち、『笑う人魚』って知ってる?」
「…………」
「なんか、15年前の事件と関係があるみたいなんだけど。調べても何も見つかんないんだよねー」
「それでしたら……」
夕映は手にしていたノートPCを起動させる。千雨から聞き出したパスワードで、ファイルを開く。
「『にんぎょ』というのは知りませんが、『笑う人形』なら。時期も丁度、15年前です。
千雨さんが襲われる直前、調べてまとめかけていた私的なレポートの中に、この通り」
「…………ッ!」
2人は顔を見合わせる。
合致する時期。合致するキーワード。異なる場所から出てきた情報。
探求者2人が、それぞれ真実の断片を携えて、ここに遭遇する――
----
夕方の寮の廊下を、素っ裸のアキラが駆けていく。
感情のない目でその姿を見送る茶々丸。その頭上で小さく笑うチャチャゼロ。
2人はそのまま寮の廊下を進んで、とある一室を訪ねる。
「はーい、どなたですかー、って……!」
「ケケケッ。連絡ネェカラ、コッチカラ来テヤッタゼ」
「……ッ!」
葉加瀬聡美の私室。そこに無遠慮に踏み込み、後ろ手に戸を閉める茶々丸。
機械の腕を外した痛々しい姿で、聡美は彼女たちに怯える。
「ほ、報告は、もうちょっとしたらこちらからするつもりでしたー。遅れてごめんなさいですー。
既に『仕掛け』は完成してますー。あとは茶々丸の側の発信機の改造だけですかねー」
「ケケケッ。ナラ、サッサト始メテクレ。コノ場デ出来ルンダロ?」
「は、はい~ッ」
何やらゼロの命令で動いていたらしい聡美。
彼女は工具を取り出し、作業を開始する。途中で不自由に気付き、慌てて義手をつける。
カチャカチャと作業を進めていく……
コンコン。ガチャッ。
「おーい、ハカセ。ちょっと聞きたいんだけどさー」
無造作に部屋に入って来たのは、これまた意外な人物。
早乙女ハルナ。図書館探検部の一員にして中学生離れした画力を持つマンガ家。
同じ3-Aの生徒ではあるが、聡美とはほとんど接点のない人間である。
彼女はしかし馴れ馴れしくも部屋に入ってきてから、笑顔で謝る。
「ありゃ、取り込み中だったかな?
ゴメンゴメン。いやちょっと聞きたいことがあってさー」
----
「な……何でしょう?!」
「ハカセのその腕の怪我だけど……本当のとこ、どうなわけ?
『実験中の事故』とか言ってたけど、本当に事故だったの?」
「は? あの、その、何でまたそんなこと……!?」
単刀直入なハルナの質問。
耳のハッチを開けたままの茶々丸と、壁際に座らされた格好のゼロにも、緊張が走る。
その2人の存在を意識しつつ、聡美はしどろもどろに誤魔化そうとする。
「いや、その、本当に事故なんですけどー」
「ふぅん……。その事故さ、人為的な事件だった可能性ってないの?
誰かが機械に細工してたとか、そーゆー可能性って」
「はえッ?! いや、そ、そんなことないと思いますー。完全に私のミスですー」
必死に否定する聡美。
ハルナはそんな聡美を、眼鏡の奥からじいっ、と観察して。
「……うん、分かった。ごめんねハカセ、急に押しかけて、変なこと聞いちゃって」
「い、いや、それはいいんですけどー。何で私に、そんなこと……」
「ああ、ちょっと『ある可能性』に気付いちゃってさ」
来た時と同様、さっさと立ち去ろうとしたハルナは、戸口のところで振り返って聡美に微笑む。
「ひょっとしたら、例の一連の事件の被害者、実はもっと多いのかもしれないな、と思ってさ。
ここ一週間くらい、変になった子多いじゃん。裕奈とか、のどかとか、チアの3人とか」
「……!」
「で、ハカセにもちょっと聞いてみようと思ってさ。でも違うならいいんだ。
じゃ、また明日~」
閉ざされる扉。沈黙の戻る室内。
----
「……どどどど、どうしましょうゼロさん~! わ、わ、私……ッ!」
「落チ着ケヨ。コノ程度ジャ何モ心配スルコトネーッテ」
明らかに不審を抱かれたに違いない聡美。ウソのつけない性格。
ゼロを気にして大いに動揺する聡美だったが、当のゼロは軽く笑い飛ばす。
笑い飛ばしながら……しかし、しっかりと現在の危機について認識していた。
普段はふざけているくせに、イザというときには無類の勘の良さを発揮するハルナ。
彼女は鋭敏な直感力と旺盛な行動力を活かして、一歩ずつ真相へと迫りつつあった。
そして真相に到達した時、それは彼女の噂拡大能力によって誰もが知るものとなるだろう。
――危険だ。コイツは危険だ。放置しておいていい相手ではない。
どうやらまだ、茶々丸やゼロへの疑いには至っていないようだが……
この調子では、いつ彼女たちの所まで到達しないとも限らない。
「ケケケッ。不安ノ芽ハ、サッサト摘ミ取ッテオクニ限ルゼ。
早速、潰シテオクゼ。ケケケッ!」
ゼロは覚悟を決める。
暇つぶしでも歪んだ楽しみのためでもない。
自衛のために、刃を振るってハルナを潰すのだと。
待ち構え好機を見て襲うのではなく、危険を冒してでもできるだけ速やかに潰すのだと……!
16th TARGET → 出席番号14番 早乙女ハルナ
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**辿り着く者たち
2週目の火曜日の朝――
近衛木乃香が、目を覚ました。
先週の土曜からだから、ほぼ3日間眠っていたことになる。
その間ずっと枕元につきそっていた桜咲刹那。病院に泊り込んでいた刹那。
彼女は、木乃香が目を開けたその瞬間にも、木乃香のすぐ傍にいた。
「…………あー」
「ッ!? こ、このちゃんッ!?」
「……ここ、どこ……? うち、何してるん……?」
「このちゃんッ! 大丈夫ッ!?」
「……? 誰ー? ……まあええわ。せっちゃん、どこにおるか知らん?」
……この一言が、全てを意味していた。
やがて医師が呼ばれ、目を覚ました木乃香が調べられ、問診を重ねられ……
そして、医師たちは、聞いたこともない珍しい症例に、頭を抱える。
「どうなってしまったんです、お嬢様はッ!?」
「我々も、こんな症例聞いたこともないんだがね……
おそらくは高次脳機能障害による相貌失認、ということになるのだろうが」
現代医学でも未だ完全には解明されていない、人間の脳機能。
特にその、高次の複雑な機能が侵される障害。
その症状は多岐に渡り、また本人も周囲も気付きにくい障害は多い。
「相貌失認」もまたその症状の1つだが、しかしこんなピンポイントにはっきり出るとは……。
目が覚めた木乃香は、人間の見分けがつかなくなっていた。
相手の顔の特徴を認識し記憶と照合し、目の前の相手が誰かを判断する能力を失っていた。
良く見知った知り合いに会っても、それが誰だか分からない。初対面の他人にしか思えない。
他にも軽い健忘や視覚失認も見られたが、しかし……。
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別の病室では――
長谷川千雨もまた、木乃香とほぼ同時期に目を覚ましていた。
一報を聞きつけ、かけつけた綾瀬夕映が面会する。
「……千雨さん、」
「? 『ちさめ』って誰のことかな、ゆえっちー」
「?!」
「私の名前は『ちう』だぴょん♪ で、ちうに何か用かなー?」
「千雨、さん……!?」
いつも不機嫌そうな様子だった千雨とは180度違う、能天気で突き抜けた陽気な人格。
木乃香の時と同様、あるいはそれ以上にありえぬ症状に、頭を抱える担当医たち。
これもまた高次脳機能障害、ということになるのだろうか。
確かに、性格や行動の急変というのは良く知られた症状の1つではある。
けれどここまで極端な例はそうそうない。自己認識上の名前すら変化するとは。
まるで二重人格の知られざる人格が登場して、それがそのまま固定化したような雰囲気。
軽い健忘の症状もあって、事件前後のことは覚えていない様子。
木乃香の異常も、千雨の異常も――やはり、木乃香の使ったあの『禁呪』が原因だった。
普通では絶対にありえない、『ダメージの分配』。不安定な魔法。
2人はそれぞれに、再び目覚めるだけの回復を遂げることができたが……
その脳が受けたダメージは、深刻だった。深刻かつ、通常ではありえない形だった。
加えて、木乃香には現代医学が把握した症状に加え、大幅な魔力の低下も見られて。
魔法使いの才能を失い、親しい人々をそうと見分ける能力を失った木乃香。
人格が崩壊し、別人と化した千雨。
2人の受けたダメージは、ある意味『精神的な死』と言って過言ではないものだった。
……周囲や本人がそのことを完全に認識するには、今しばらくの時間が必要なようだったが。
----
……放課後。
ノートPCを小脇に抱え、図書館島にやってきた夕映は、本棚の前で意外な人物に出くわした。
「あれ? ゆえっちも調べ物?」
「朝倉さん……?」
まさに夕映が調べようと思っていた、『学園史編纂室』の会誌が並ぶ本棚の前。
麻帆良パパラッチの異名を取るジャーナリスト・朝倉和美が会誌のページをめくっていた。
「珍しいですね、こんなところで」
「そっちも珍しいじゃん、パソコン持ち歩いてるなんて。今日は本屋ちゃんのことはいいの?」
「これは千雨さんのものです。のどかについては、気にはなりますが後回しです」
「そっか」
しばしの沈黙。夕映は弱小サークルである学園史編纂室の会誌を、順に追っていく。
……どうやら夕映が用事がある一冊は、今まさに和美がめくっている一冊のようだ。
「……ん~、やっぱわかんね。『事件』ってのはコレのことだと思うんだけどさぁ」
「何を調べているのです?」
「いやね、さよちゃんが言ってたことなんだけど……」
「ゆえっち、『笑う人魚』って知ってる?」
「…………」
「なんか、15年前の事件と関係があるみたいなんだけど。調べても何も見つかんないんだよねー」
「それでしたら……」
夕映は手にしていたノートPCを起動させる。千雨から聞き出したパスワードで、ファイルを開く。
「『にんぎょ』というのは知りませんが、『笑う人形』なら。時期も丁度、15年前です。
千雨さんが襲われる直前、調べてまとめかけていた私的なレポートの中に、この通り」
「…………ッ!」
2人は顔を見合わせる。
合致する時期。合致するキーワード。異なる場所から出てきた情報。
探求者2人が、それぞれ真実の断片を携えて、ここに遭遇する――
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夕方の寮の廊下を、素っ裸のアキラが駆けていく。
感情のない目でその姿を見送る茶々丸。その頭上で小さく笑うチャチャゼロ。
2人はそのまま寮の廊下を進んで、とある一室を訪ねる。
「はーい、どなたですかー、って……!」
「ケケケッ。連絡ネェカラ、コッチカラ来テヤッタゼ」
「……ッ!」
葉加瀬聡美の私室。そこに無遠慮に踏み込み、後ろ手に戸を閉める茶々丸。
機械の腕を外した痛々しい姿で、聡美は彼女たちに怯える。
「ほ、報告は、もうちょっとしたらこちらからするつもりでしたー。遅れてごめんなさいですー。
既に『仕掛け』は完成してますー。あとは茶々丸の側の発信機の改造だけですかねー」
「ケケケッ。ナラ、サッサト始メテクレ。コノ場デ出来ルンダロ?」
「は、はい~ッ」
何やらゼロの命令で動いていたらしい聡美。
彼女は工具を取り出し、作業を開始する。途中で不自由に気付き、慌てて義手をつける。
カチャカチャと作業を進めていく……
コンコン。ガチャッ。
「おーい、ハカセ。ちょっと聞きたいんだけどさー」
無造作に部屋に入って来たのは、これまた意外な人物。
早乙女ハルナ。図書館探検部の一員にして中学生離れした画力を持つマンガ家。
同じ3-Aの生徒ではあるが、聡美とはほとんど接点のない人間である。
彼女はしかし馴れ馴れしくも部屋に入ってきてから、笑顔で謝る。
「ありゃ、取り込み中だったかな?
ゴメンゴメン。いやちょっと聞きたいことがあってさー」
----
「な……何でしょう?!」
「ハカセのその腕の怪我だけど……本当のとこ、どうなわけ?
『実験中の事故』とか言ってたけど、本当に事故だったの?」
「は? あの、その、何でまたそんなこと……!?」
単刀直入なハルナの質問。
耳のハッチを開けたままの茶々丸と、壁際に座らされた格好のゼロにも、緊張が走る。
その2人の存在を意識しつつ、聡美はしどろもどろに誤魔化そうとする。
「いや、その、本当に事故なんですけどー」
「ふぅん……。その事故さ、人為的な事件だった可能性ってないの?
誰かが機械に細工してたとか、そーゆー可能性って」
「はえッ?! いや、そ、そんなことないと思いますー。完全に私のミスですー」
必死に否定する聡美。
ハルナはそんな聡美を、眼鏡の奥からじいっ、と観察して。
「……うん、分かった。ごめんねハカセ、急に押しかけて、変なこと聞いちゃって」
「い、いや、それはいいんですけどー。何で私に、そんなこと……」
「ああ、ちょっと『ある可能性』に気付いちゃってさ」
来た時と同様、さっさと立ち去ろうとしたハルナは、戸口のところで振り返って聡美に微笑む。
「ひょっとしたら、例の一連の事件の被害者、実はもっと多いのかもしれないな、と思ってさ。
ここ一週間くらい、変になった子多いじゃん。裕奈とか、のどかとか、チアの3人とか」
「……!」
「で、ハカセにもちょっと聞いてみようと思ってさ。でも違うならいいんだ。
じゃ、また明日~」
閉ざされる扉。沈黙の戻る室内。
----
「……どどどど、どうしましょうゼロさん~! わ、わ、私……ッ!」
「落チ着ケヨ。コノ程度ジャ何モ心配スルコトネーッテ」
明らかに不審を抱かれたに違いない聡美。ウソのつけない性格。
ゼロを気にして大いに動揺する聡美だったが、当のゼロは軽く笑い飛ばす。
笑い飛ばしながら……しかし、しっかりと現在の危機について認識していた。
普段はふざけているくせに、イザというときには無類の勘の良さを発揮するハルナ。
彼女は鋭敏な直感力と旺盛な行動力を活かして、一歩ずつ真相へと迫りつつあった。
そして真相に到達した時、それは彼女の噂拡大能力によって誰もが知るものとなるだろう。
――危険だ。コイツは危険だ。放置しておいていい相手ではない。
どうやらまだ、茶々丸やゼロへの疑いには至っていないようだが……
この調子では、いつ彼女たちの所まで到達しないとも限らない。
「ケケケッ。不安ノ芽ハ、サッサト摘ミ取ッテオクニ限ルゼ。
早速、潰シテオクゼ。ケケケッ!」
ゼロは覚悟を決める。
暇つぶしでも歪んだ楽しみのためでもない。
自衛のために、刃を振るってハルナを潰すのだと。
待ち構え好機を見て襲うのではなく、危険を冒してでもできるだけ速やかに潰すのだと……!
16th TARGET → 出席番号14番 早乙女ハルナ
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