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**人魚姫は泡の中で ――朝。 神楽坂明日菜は、鳴り響く目覚まし時計を、叩いて止める。 「うーん、もうちょっとだけ……」 もぞもぞした彼女は、しかしやがて気付く。 誰も居ない部屋。自分1人しか居ない、広すぎる部屋。 バイト遅刻するよ、と声をかけ朝食を作ってくれる親友も居ない。 ベッドに潜り込んで来るガキっぽい子供先生も居ない。 口だけは達者な、あの憎たらしいオコジョ妖精も居ない。 掛け値なしに、自分1人きりの部屋。 「……静かだ、な」 なんとも場違いな感想が、明日菜の口から漏れる。 昨日の夕方、荷物をまとめて出て行ったネギ。 なんでも魔法先生たちの命令で、一旦3-Aの面々と距離を置かねばならないのだという。 元々、犯人は「ネギのクラスだから」3-Aを狙っているのかどうか、を確認するための担任停止だ。 それなのに彼が女子寮に暮らし彼女たちと接触を持っていては、意味がない。 なんでも学園都市内の別の学校の教師の所に預けられ、しばらく連絡を絶つとのことだったが…… 彼らの狙いを聞かされた明日菜は、それでも納得できていなかった。 そんなことではこの惨劇は止まらない、という、理屈を越えた直感があった。 直感があったのだが――しかし、明日菜は怒る気力さえなくて。 「いってらっしゃい」、小さく微笑んで、ネギを送り出してしまった。 「……こんなに広かったんだな、この部屋……」 明日菜は思わず涙ぐむ。目は冴えてしまっているのに、起き上がるだけの気力が湧いてこなくて。 ――その日、明日菜は新聞配りのバイトを、休んでしまった。そんな元気は、とても無かった。 ---- 早朝の麻帆良学園。 朝練の部活の生徒たちがランニングをし、気の早い生徒たちがちらほらと学校に向かう中。 世界樹広場で、しょんぼりとうな垂れる人影が2つ。 中国武術研究会部長・古菲と、新体操部の期待のホープ・佐々木まき絵だった。 「……ネギ君、来ないね~」 「……来れないと言うてたアルからね」 すっかり日課になっていた、朝の自主練習。 世界樹広場で並行して行われていた、中国拳法と新体操の不思議なコラボレーション。 それが今朝は手すりに座り込んだまま、全く何もしていない。 言うまでもなくそれは、2人の目的であるネギの不在によるものだった。 古菲にとって、ネギは初めて本格的に拳法を教え込んだ一番弟子。 恐るべき吸収力と学習力を持つネギに拳法を教えるのは、当初考えていた以上に面白い体験で。 古菲自身、教える過程で中国拳法の奥深さを改めて認識し始めていた。 毎朝、ネギと拳法の鍛錬を行うのが楽しくて楽しくて仕方なかったのに―― 日々繰り返される事件で、どんどんネギはやつれ、暗くなり、そしてとうとう、この半強制的な休職だ。 犯人逮捕の役に立てない自分自身の無力感も加わり、古菲は深く溜息をつく。 一方のまき絵は、こんなところで1人で朝練をするようになったのは、完全にネギが目当てだった。 まき絵にとって大きな転機になった、あの代表選抜。 あれで何かを「掴んだ」まき絵は、その感触を忘れまいとこの自主的な朝練を繰り返していた。 ネギの努力する姿を横目に見ながらの、自分自身の練習。まき絵の演技に、艶が増していく。 ……だがそんなまき絵も、同室の亜子が暴漢?に襲われて以来、気分が晴れることはなく。 亜子が退院してからも、彼女の憂いは全く晴れない。 「……つまらないね」 「……つまらないアルね」 バカレンジャーの2人は、顔を見合わせ溜息をつく。なぜ、こんなことになってしまったのだろう―― ---- 早朝の室内プールに、水音が響く。 がらんと人気のないプール。泳いでいるのは、1人の女子選手。 彼女は岸にタッチすると、顔を上げて時計を見る。 「……あと3本くらい、泳げるかな。昨日できなかった分、取り戻しておかないと……」 大河内アキラ。3-Aの生徒の1人。水泳部の期待のエース。 普段は彼女も、こんな時間に泳いだりしない。 彼女が自主的に朝練をしているのは、例の『夜間外出禁止令』のためだった。 高等部などもプールを使う関係上、常に日が暮れる前に部活が終るわけではない。 日によっては、日が暮れてからでないと使えない場合がある。 しかし例の外出禁止令のため、夜の時間が割り当てられていた昨日は、部活が休みになってしまった。 部活動は休みでも、アキラ自身はいつもの練習を休みたくなかった。同量の練習をしておきたかった。 しかし夜の外出は書類提出が面倒だし、許可が下りるかどうか分からない。 そこで、この朝練だった。誰も居ないプールを使っての、自主練習だった。 アキラは再び、泳ぎだす。誰も居ないプールで、泳ぎ始める。 ……そんな彼女を、こっそり見守る小さな影が1人。 「……ケケケッ。昨夜ハ ツマンネー結果ニ終ッチマッタカラナ。  丁度1人デ居ルコトダシ、チョット チョッカイ出シテミルカナ……?」  15th TARGET  →  出席番号06番 大河内アキラ -[[ページをめくる>アキラ編―第二話―]]
**人魚姫は泡の中で ――朝。 神楽坂明日菜は、鳴り響く目覚まし時計を、叩いて止める。 「うーん、もうちょっとだけ……」 もぞもぞした彼女は、しかしやがて気付く。 誰も居ない部屋。自分1人しか居ない、広すぎる部屋。 バイト遅刻するよ、と声をかけ朝食を作ってくれる親友も居ない。 ベッドに潜り込んで来るガキっぽい子供先生も居ない。 口だけは達者な、あの憎たらしいオコジョ妖精も居ない。 掛け値なしに、自分1人きりの部屋。 「……静かだ、な」 なんとも場違いな感想が、明日菜の口から漏れる。 昨日の夕方、荷物をまとめて出て行ったネギ。 なんでも魔法先生たちの命令で、一旦3-Aの面々と距離を置かねばならないのだという。 元々、犯人は「ネギのクラスだから」3-Aを狙っているのかどうか、を確認するための担任停止だ。 それなのに彼が女子寮に暮らし彼女たちと接触を持っていては、意味がない。 なんでも学園都市内の別の学校の教師の所に預けられ、しばらく連絡を絶つとのことだったが…… 彼らの狙いを聞かされた明日菜は、それでも納得できていなかった。 そんなことではこの惨劇は止まらない、という、理屈を越えた直感があった。 直感があったのだが――しかし、明日菜は怒る気力さえなくて。 「いってらっしゃい」、小さく微笑んで、ネギを送り出してしまった。 「……こんなに広かったんだな、この部屋……」 明日菜は思わず涙ぐむ。目は冴えてしまっているのに、起き上がるだけの気力が湧いてこなくて。 ――その日、明日菜は新聞配りのバイトを、休んでしまった。そんな元気は、とても無かった。 ---- 早朝の麻帆良学園。 朝練の部活の生徒たちがランニングをし、気の早い生徒たちがちらほらと学校に向かう中。 世界樹広場で、しょんぼりとうな垂れる人影が2つ。 中国武術研究会部長・古菲と、新体操部の期待のホープ・佐々木まき絵だった。 「……ネギ君、来ないね~」 「……来れないと言うてたアルからね」 すっかり日課になっていた、朝の自主練習。 世界樹広場で並行して行われていた、中国拳法と新体操の不思議なコラボレーション。 それが今朝は手すりに座り込んだまま、全く何もしていない。 言うまでもなくそれは、2人の目的であるネギの不在によるものだった。 古菲にとって、ネギは初めて本格的に拳法を教え込んだ一番弟子。 恐るべき吸収力と学習力を持つネギに拳法を教えるのは、当初考えていた以上に面白い体験で。 古菲自身、教える過程で中国拳法の奥深さを改めて認識し始めていた。 毎朝、ネギと拳法の鍛錬を行うのが楽しくて楽しくて仕方なかったのに―― 日々繰り返される事件で、どんどんネギはやつれ、暗くなり、そしてとうとう、この半強制的な休職だ。 犯人逮捕の役に立てない自分自身の無力感も加わり、古菲は深く溜息をつく。 一方のまき絵は、こんなところで1人で朝練をするようになったのは、完全にネギが目当てだった。 まき絵にとって大きな転機になった、あの代表選抜。 あれで何かを「掴んだ」まき絵は、その感触を忘れまいとこの自主的な朝練を繰り返していた。 ネギの努力する姿を横目に見ながらの、自分自身の練習。まき絵の演技に、艶が増していく。 ……だがそんなまき絵も、同室の亜子が暴漢?に襲われて以来、気分が晴れることはなく。 亜子が退院してからも、彼女の憂いは全く晴れない。 「……つまらないね」 「……つまらないアルね」 バカレンジャーの2人は、顔を見合わせ溜息をつく。なぜ、こんなことになってしまったのだろう―― ---- 早朝の室内プールに、水音が響く。 がらんと人気のないプール。泳いでいるのは、1人の女子選手。 彼女は岸にタッチすると、顔を上げて時計を見る。 「……あと3本くらい、泳げるかな。昨日できなかった分、取り戻しておかないと……」 大河内アキラ。3-Aの生徒の1人。水泳部の期待のエース。 普段は彼女も、こんな時間に泳いだりしない。 彼女が自主的に朝練をしているのは、例の『夜間外出禁止令』のためだった。 高等部などもプールを使う関係上、常に日が暮れる前に部活が終るわけではない。 日によっては、日が暮れてからでないと使えない場合がある。 しかし例の外出禁止令のため、夜の時間が割り当てられていた昨日は、部活が休みになってしまった。 部活動は休みでも、アキラ自身はいつもの練習を休みたくなかった。同量の練習をしておきたかった。 しかし夜の外出は書類提出が面倒だし、許可が下りるかどうか分からない。 そこで、この朝練だった。誰も居ないプールを使っての、自主練習だった。 アキラは再び、泳ぎだす。誰も居ないプールで、泳ぎ始める。 ……そんな彼女を、こっそり見守る小さな影が1人。 「……ケケケッ。昨夜ハ ツマンネー結果ニ終ッチマッタカラナ。  丁度1人デ居ルコトダシ、チョット チョッカイ出シテミルカナ……?」  15th TARGET  →  出席番号06番 大河内アキラ -[[ページをめくる>アキラ編―第二話―]]

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