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真名編―第二話―」(2006/07/08 (土) 23:29:08) の最新版変更点

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チャチャゼロ残酷編12  後編 「……龍宮さんを狙うのですか?」 「アア。今ノウチニ潰シテオカネート、厄介ダカラナ」 ――聡美の腕を奪った、その後。工学部棟の一角で。 サイボーグ手術のために運ばれていく聡美を見送った2人は、今夜の作戦を練っていた。 「今夜ハ満月。俺モ最大ノぱわーガ出セルガ……明日カラハ、ドンドン弱ル一方ダ。  今ヲ逃セバ、倒スノハ難シクナルカラナ」 「……しかし、何故、龍宮さんを」 「神鳴流剣士ハ御嬢様ガ壊レテ一緒ニ壊レタヨウナモンダシ、巨乳忍者ハ留守ダシナ。  ぼーやニツイテハ、後回シニスルトシテ……  確実ニ敵ニナル奴ラノ中デ、アノすないぱーガ一番危険ナンダヨ。  魔法先生タチニモ、毎晩雇ワレテルヨウダシナ」 月の満ち欠けに応じて上下するエヴァの魔力。その影響をモロに受けるチャチャゼロ。 最大の能力が出せる今夜、厄介な、そして確実に敵対する相手を沈めにかかる。 ゼロはあくまで、冷静だ。 残虐を楽しみつつ殺人を楽しみつつ、なお、冷静な判断力を失っていない。 「幾ツカ準備ヲシテオクゼ。トリアエズ、アノ銃ヲ失敬シテイコウ」 「姉さん、あれは明らかに不良品だと思われますが。危険です」 「イインダヨ。不良品ダカラ、イインダヨ。コノ場合ハナ」 ゼロが指差した先は、聡美が開発中だった新型結界弾ライフル。 威力を上げようとしたら暴発が頻発するようになってしまった、危険過ぎる欠陥品……! ---- ――満月に照らされた、森の中の小広場。 木々の向こうに見えた「敵」らしき影。逃げ出す素振りを見せる「影」に、3人は瞬時に動き始める。 茶々丸が駆ける。先頭きって駆ける。大地を蹴り、ジェット噴射で突進する。 小太郎も駆ける。木々の枝を蹴りながら空中を駆ける。駆けながら、手の中に「気」を溜める。 真名は、その場を動かない。素早く武器を取り出す。茶々丸から渡された鞄を開きかけて…… 「……いや、やめておこう」 一瞬の躊躇の後、細長い鞄を脇に置き自前のバイオリンケースを開け、愛用のライフルを構える。 その場に片膝をつき、茶々丸たちの肩越しに標的を狙う。 スコープの向こうに、黒いボロ布のような影が見える。逃げ出そうとしているのが見える。 身に纏っているボロ布のために、身体の輪郭もそのサイズもはっきりしない。 はっきりしないが、しかし動き回るソイツに狙いを定め、引き金を引くタイミングを計る。 「狗神・疾空黒狼牙!」 距離を詰める小太郎の手元から、闇が生まれる。闇のように黒い獣たちが飛び出していく。 10匹ほどの『狗神』が、円弧を描いて「敵」に襲い掛かる。進路を遮るように襲い掛かる。 手数が多い割に、直撃はない。咄嗟に動きを止めた「敵」の周囲に、次々と着弾。 ――それで、構わなかった。中距離担当の小太郎の狙いは、最初っから足止め。その間に…… 「ターゲット捕捉。攻撃を開始します」 茶々丸が一気に間合いを詰める。拳を握り締める。 小太郎が止める。茶々丸が殴る。そしてその後のフォローは、真名のライフル。 受け持ち距離を決めただけで、ほとんど作戦らしい作戦を決めてなかった3人ではあるが。 しかし熟練の3人は阿吽の呼吸で最善の手を選んでいた。最高の連携を決めていた。 ――仲間の1人が、実は最初っから裏切っていたことさえ除外すれば。 「……プランA失敗」 「見リャ分カル」 茶々丸の拳が「敵」を捉える一瞬、交わされる短い会話。後ろの2人には聞こえぬ声。 そのまま殴り飛ばされる「敵」。あまりに軽く、遠くに飛ばされた以外、違和感は何もない。 ---- ――ゼロの立てた作戦は、お粗末な……いやシンプルなものだった。 「銃ヲ暴発サセルンダヨ。イヤ、暴発スル銃ヲ渡シテオク、ッテ言ッタ方ガイイカ」 ライフルに限らず、銃という武器が抱える根本的なリスクが、暴発である。 確率的には極めて低くはあるが、しかしどこまで行ってもゼロにはなりえないその危険。 ましてや、その銃が最初から欠陥品だったなら。 「見タ感ジ、コイツノ出力上ゲテヤレバ、ホボ100%暴発スルヨウニナルゼ。  アノ眼鏡ハ暴発サセナイ方法デ苦労シテタケドヨ、逆ニ スルヨウニ仕込ムノハ簡単サ」 「しかし、どうやってこの銃を彼女に持たせるのでしょう。容易ではないと思われますが」 「ソコハ オ前ノ仕事ダロ。オ前ハ俺ト違ッテ、信用アルシナー」 そうして用意された、「必ず暴発する」結界弾ライフル。 もうほとんど爆弾のようなものだ。引き金を引かずとも、ちょっとした衝撃で破裂しかねない。 そんな代物を涼しい顔をして渡したのだから、茶々丸の演技力も大したものだ。 いや、この場合「演技力」という言い方は適切ではあるまい。 真名が指摘したように、茶々丸が人間とは根本的に異なる存在だからこそ、成功した詐術。 たとえ緊張しても、人間のように汗が滲むわけでもない。視線が泳ぐわけでもない。 戦闘モードで表情表現を省略した状態では、とてもその嘘に気付くことなどできない。 普段の茶々丸の生真面目さも、この場合幸いした。 ……だがしかし、真名はその死のライフルを手に取らなかった。愛用のライフルの方を構えた。 別に茶々丸を疑ったからではない。結界弾ライフルを信用しなかったからでもない。 ただ単に、新しく手にしたライフルを試射する暇もなかったというだけだ。 どんな銃にも避けようもなく備わっている、銃ごとの「クセ」を把握してないことを嫌った彼女。 あるいは真名1人だけだったなら、連射しながら着弾のブレを確認し、修正を図ったかもしれない。 が、仲間と戦いを共にするこの場においては、一発の無駄が前衛の命に関わる。 威力よりも何よりも、信頼性と命中精度の方が大事、と判断したのだ。 ---- 小太郎の『狗神』で足止めされ、茶々丸の拳を受け、吹き飛ばされた「敵」。 自ら飛んだから実質のダメージはないが、しかし空中では自由が利かない。 偽装のボロ布が、風にはためく。そんな影に向け、真名のライフルが容赦ない追撃をかける。 飛来する弾丸を、辛うじて空中で弾く。構えたナイフと弾丸がぶつかり合い、火花が散る。 「へッ、やるやないか! せやけど……その状態でコレは避けられんやろ!」 空中で身体が泳いだ「謎の敵」に対し、今度は小太郎が突進する。 木々の間をジグザグに、『瞬動』の連続で距離を詰めながら、両の掌を向かい合わせる。 両手に『気』と『狗神』を溜めてゼロ距離で炸裂させる必殺技、『我流犬上流・狼牙双掌打』の構え。 臨機応変にやれと言われていても、やはり小太郎の本分は接近戦。迷うことなく距離を詰める。 「あやか姉ちゃんの、仇ッ……!」 森の中、地面に墜落した「敵」に向け、小太郎は逆巻く『気』の塊を渾身の気合と共に叩き付け―― ――ようとして、唐突に姿勢を崩した。 「なッ!?」 崩れる足元。落ちていく身体。単純ながらも完全に予想外の罠に、小太郎は成す術もない。 落とし穴。かつてサウザンドマスターに痛い目に合わされた、ゼロたちにとっては因縁の罠。 その気になれば子供でも作れる簡単な罠だが、使い方次第では達人さえも手玉に取れる。 いくら小太郎が経験豊富でも、まさかこんな所にこんな仕掛けがあるとは思わない。 茶々丸と「敵」が実はグルで、わざと落とし穴の直前に向け殴り飛ばしたなど、分かるはずもない。 「うおッ!!」 そして穴の底に待ち受けていたのは、ネギやニンニクの海などではなく、命を奪う凶悪な――! 乱暴に言ってしまえば、犬上小太郎の存在が、ゼロたちの計画を狂わせたと言っていい。 巡回体制が変わったために加わった、予想外の戦力。想定外の存在。 小太郎が血の匂いに気付かなければ、もう少し五月の発見も遅れただろう。 発見が遅れれば、真名は結界弾ライフルの試射くらいしていたかもしれない。 試射し、暴発し、そこで決着がついていたかもしれない。小太郎の存在は、実は大きい。 ……しかしその彼も、ゼロが「念のために」「第二の策として」用意しておいた罠に飲み込まれる。 ゼロの準備が、用意周到さが、小太郎の存在を上回ったのだ。 -[[ページをめくる>真名編―第二話―2]]

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