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■上下に振れた今週の米ドル相場

 足元の為替相場は目まぐるしい展開となっている。7月8日(金)発表の米国雇用統計の結果が芳しくなかったことから「米ドル売り」が先行したものの、今度はイタリア国債の暴落で「イタリア危機」の様相を呈し、リスク回避型の「米ドル買い」が進行した。

 ユーロ/米ドルは一気に1.3837ドルレベルまで売られ、ドルインデックスは一時76.72まで上昇し、3月16日(水)以来の高値を更新した。

 そして、そのまま「米ドル高」の基調が定着するかと思いきや、FRB(米連邦準備制度理事会)のバーナンキ議長の発言で状況は一変し、再び「米ドル売り」に転じた。

 このバーナンキ議長の発言には、特に新味はなかった。ただ、新たな量的緩和策、すなわち「QE3(量的緩和策第3弾)」実施の可能性を否定しなかったため、市場関係者はいっせいに米ドルのロングポジション(買い持ち)を手仕舞おうとしている。

 もっとも、米ドルが底打ちして反転するというシナリオは、リスク回避型の「米ドル買い」によるものである場合が多い。

 だが「QE3」が実施されれば、米ドルそのものが「リスク資産」となりかねない。そのため、「QE3」の観測が高まるにつれて、米ドルが下げに転じているのは自然な成り行きだ。

 何しろ、量的緩和とは、米ドルを「無節操」に刷ってバラ撒くことを意味するのだ。これはある意味では、基軸通貨の地位を悪用した政策とも思われる。
■世界経済が混乱に陥り、経済成長が滞る可能性が出てきた

 追い打ちをかけるように、先のムーディーズに続き、S&P(スタンダード&プアーズ)も今週に入って、米国債の格付け見通しを「ネガティブ」の方向に修正する動きを見せた。「米国のソブリン危機」の前夜といった雰囲気が醸し出されている。

 その背景には、目先では米国債の債務上限引き上げの問題、中長期では米国の財政赤字問題の深刻化があり、米国債の最高ランクの格付けが失われるのではないかといった危惧が高まっているようだ。

 「米国のソブリン危機」+「QE3」という最悪の事態が起きた場合、「リーマン・ショックの数十倍の破壊力を持つ金融危機に陥る」と警告を発している市場関係者もいるほどだ。

 前回のコラムで、筆者は今の状況を「世界ソブリン戦争」と表現したが、足元の展開はまさにそのとおりだ(「ムーディーズの『奇襲』に米国政府の影!『世界ソブリン戦争』の戦端は開かれた!!」を参照)。

 ユーロ圏内の状況が悪化を続ける中で、ギリシャのデフォルト(債務不履行)は回避できないというコンセンサスが広がりつつあり、ユーロ圏の内部で暗黙の了解が得られているという話も聞こえてくる。

 その上、中国の地方政府の債務が危険な水準に近づきつつある中で、中国政府が近日中にハードランディングを引き起こすと予測して、中国株や人民元を空売りするファンドも続出している。

 実際のところ、ウォール街では、米国市場に上場する中国系企業の多くが「ショートチャイナ」という合い言葉で突き落とされ、株価暴落を演じてきた。これには不正会計問題も一因としてあるが、「中国バブル」の崩壊が近いといった見方も、その背景にあるようだ。

 以上のことから、これから世界経済が混乱に陥り、景気が失速して経済成長のスピードがダウンすると多くの市場関係者は危惧している。
■世界情勢が混乱すればするほど、米ドルに有利になる

 さて、このようなムードの中で、為替の問題だけに絞って検討すると、「世界ソブリン戦争」だからこそ、足元の状況は米ドルに有利に働くと筆者は思っている。

 詳細な話をする前に、「世界経済が混乱すればするほど、米ドルにとって有利」という大原則を思い出してほしい。

 あの「リーマン・ショック」が本家の米国で発生したにもかかわらず、米ドルと米国債がその恩恵をもっとも多く受けたということが、その何よりもの証拠だろう。

 米国の「ソブリン危機」や「QE3」は、一見すると、そのリスクは確かに大きいが、現実化するまでには時間がかかる。それ以上に、相場心理を圧迫する「材料」として、その役割は大きい。

 つまり、米国発の危機であっても、それは相場の流動性を低下させるものであるため、結果的に、リスク回避先としてドル資産に資金が流れ込む可能性が高い。

 米国はこのことをよく知っているからこそ、前述のように、基軸通貨の地位を乱用し続けてきたのだ。

 ましてや、ユーロのソブリン危機が深刻化し、中国はインフレに悩まされてハードランディングの可能性を払しょくできずにいるのだから、現状では、世界のホットマネーは行き場を失っている。

 このような状況においてこそ、米ドルや米国債といった「ドル資産」は優位性を発揮できるし、世界情勢が混乱すればするほど、有利になってくる。

 従って、米国のソブリン危機にしても「QE3」にしても、事の蓋然性よりも相場心理へのインパクトのほうが大きいから、「ウォール街」の人々はこれを利用して、タイミングよくリリースしていると思われる。

 ムーディーズにしても、S&Pにしても、近日中に本当に米国の格付けを切り下げるようなことはないだろうし、そのようなマネは到底想像できない。一連の動きは、一種のパフォーマンスに過ぎない。

 ポルトガル国債を「ジャンク級(投機的等級)」にする一方で、米国債の見通しを「アクティブ」のままに据え置いたままではあまりにも見え見えだから、表では何らかのポーズを取る必要があったというわけだ。
■米債務上限引き上げは大した問題ではない

 それでは、前回のコラムでも提起した「世界ソブリン戦争」における米ドルの優位性を、ユーロサイドと米ドルサイドで見てみよう。それぞれに、3つの根拠があった(「ムーディーズの『奇襲』に米国政府の影!『世界ソブリン戦争』の戦端は開かれた!!」を参照)。

 まずは米ドルサイドからで、米国債の債務上限引き上げ問題が難航している点が心配されるが、このコラムでも何度か指摘しているように、前例を鑑みると、政治家は最後にはパフォーマンスをやめるだろう。彼らが実利を取る公算は大きく、ギリギリで承認される可能性は高い。

 ところで、この債務上限の規定自体はあまり意味のないものである。米国が債務上限を設定したのは1917年であり、第一世界大戦の資金捻出のためであった。その後、1960年から実に78回も債務上限を引き上げてきたので、平均すると、8カ月に1回の割合で引き上げられている。

 2001年以降、米国は10回も上限を引き上げてきたが、今回だけが争点となって、米国議会が決裂することは考えられない。つまり、米国の債務上限引き上げはかなりの頻度で行われているため、マスコミが騒いでいるほど大した問題ではない。
■米ドル/円は最後の「ダメ押し」で下落か?

 このことだけを見ても、世間で騒がれるものすべてが必ずしも重要ではなく、逆に、本質的な物事が静かに進行して、なかなか表に出てこないということは多い。

 為替のマーケットでも、トレンドの主流は時にファンダメンタルズの材料、とりわけ、マスコミが騒ぐ材料とかけ離れた方向に進行してしまうので、注意が必要だ。そのあたりの解釈も含めて、詳細な説明は次回に行おう。


カテゴリ: [ニュース] - &trackback- 2011年07月20日 09:46:17

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