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 「たまたま財務相ですが、本当は私、文部科学相をやりたかったんです」

 財務相の野田佳彦は16日、横浜市内で開かれた日本青年会議所(JC)主催のフォーラムで本音を漏らした。戦後民主主義がないがしろにしてきた歴史、信仰、道徳を重視する教育を作りたかったのだという。

 野田は首相、菅直人を支える立場にある。徒手空拳で国会議員になった経歴は同じだが「自衛官の倅(せがれ)」として市民運動家出身の菅に違和感を覚えてきた。

 「菅さんより野田さんの方がいいなと思っている」

 フォーラムで対談した自民党政調会長代理、林芳正は野田を持ち上げた。表情を変えず聞き流した野田は対談後、「菅内閣の一員なので『次』の話をしてはいけない。まあ、社交辞令ですよ」と記者団に語ったが、表情は真剣だった。

 手勢は約30人の野田グループ(花斉会)しかなく、国民の認知度も低い野田が「ポスト菅」を狙うには財務相という肩書は足かせでしかない。

 消費税増税の旗振り役を務め、「財務省の組織内候補」と揶揄(やゆ)される野田は、平成23年度予算の裏付けとなる特例公債法案の担当閣僚として通常国会会期末の8月末まで菅に付き合わなければならないからだ。「保守」を売りに支持を拡大させる余地はない。

 だが、菅の延命策に付き合うつもりはない。7日、経済産業相の海江田万里が重要法案成立後の辞任を示唆した翌日の記者会見で同調する考えを示した。

 「重要な法案が通ったあとの判断を示唆したのだろうが、全ての閣僚が同じ頃だろう。(辞任は)会期末になる」

 周囲はしきりと財務相辞任を勧めるが、首を縦には振らない。特例公債法案成立後を決断の時と思い定めている。

 怨念の政治

 野田は松下政経塾の後輩である前外相、前原誠司を意識し続けてきた。ともに5年の初当選だが、野田が1度落選したため当選回数は前原が1回多い。代表就任も入閣も先を越された。

 次世代の筆頭格の前原は、外国人献金問題もあり出馬に慎重だ。次の代表選は野田にとり最後のチャンスかもしれない。

 典型的な野田評は「堅実で、安定感がある」。逆に脇の甘さもある。国対委員長時代の18年に起きた「偽メール問題」は民主党に大きな傷を負わせた。人心掌握にも疑問符がつく。象徴的だったのが、小沢の無投票3選となった20年9月の代表選だった。野田は出馬を目指したが、花斉会は意見が分かれ、推薦人20人を集めきれなかった。

 「誰かを除く話は不毛だ。一番超えなければいけないのは怨念の政治だ」

 6月10日の会見で、野田はこう語った。最大勢力を率いる小沢に秋波を送ったのは明らかだが、花斉会の若手は「小沢さんと一緒にやるなら私は野田さんから離れる」と牽制(けんせい)した。

 野田の決断力のなさゆえにたもとを分かった元国対委員長の樽床伸二、前国土交通相の馬淵澄夫も代表選に意欲を見せる。今度こそ足元を固めきれるのか。野田の力量が再び問われる。

=敬称略

(原川貴郎)

  ■政策は?■

 「社会保障と税の一体改革」では、消費税を段階的に10%まで引き上げる方針を主導。引き上げ時期に関しても「(政府案の)『2010年代半ば』は当然15年が軸。政府・与党の成案であることは間違いない」と言い切り、民主党内に根強い増税慎重派を牽制する。

 党内では珍しく歴史認識問題でも積極発言。いわゆるA級戦犯について「サンフランシスコ講和条約などで『戦犯』の名誉は法的に回復され戦争犯罪人ではない。戦争犯罪人の合祀(ごうし)を理由に首相の靖国神社参拝に反対する論理は破綻している」と語っている。

  ■プロフィル■

 のだ・よしひこ 昭和32年、千葉県船橋市生まれ。54歳。衆院千葉4区。当選5回。早大政経卒。松下政経塾、千葉県議(2期)を経て、平成5年に日本新党で衆院初当選。新進党から出馬した8年の衆院選では105票差で落選し、12年に民主党で国政復帰。鳩山内閣で財務副大臣に就任した。22年6月、菅内閣発足に伴い財務相。趣味は格闘技観戦。日本酒をこよなく愛す。座右の銘は「素志貫徹」。



カテゴリ: [ニュース] - &trackback() - 2011年07月18日 11:03:33

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最終更新:2011年07月18日 11:04