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 本欄で原発絡みの社説論調を比較するのは3週連続だが、取り上げざるを得ないだろう。13日、菅直人首相が「原発に依存しない社会を目指すべきだと考えるに至った」と、脱原発依存を進める考えを示したのだ。

 安全評価(ストレステスト)の政府統一見解公表に続き、首相がエネルギー政策の抜本的な転換を打ち出した格好だ。

 代替エネルギーの方策と電力供給の見通しなどを踏まえ評価するのが本来の姿だろう。だが、そうならないのが現内閣だ。

 発表に先立つ民主党内の合意形成手続きはどうなのか。そもそも退陣表明した首相が将来的な重要課題について表明することに正当性があるのかも論評のポイントになった。

 まず、首相発言は具体性に欠け説明不足だと各紙が指摘したことを押さえておきたい。

 その上で、原発への依存を減らすべきだと指摘してきた毎日は「基本的に支持し、評価したい」と述べた。だが、首相の言いっぱなしで終わる心配があるとして「政権与党の責任として民主党の考えをまとめることが必要だ」とくぎを刺した。

 朝日も「首相の方針を歓迎し、支持する」と前向きの評価だ。ただし、「民主党としての考え方を明確にしなければ、首相発言は絵空事になりかねない」との懸念をやはり示した。

 玄海原発の再稼働には、毎日、朝日と同様に疑問を投げかけた東京も「方向性には同意する」とした。だが、首相に政策実現力が残されていないとし「政権延命のために、国民の人気取りに走っているだけとの誹(そし)りは免れない」と手厳しい。

 一方、「安全確保を徹底しつつ、原発利用を続けることが、経済の衰退を防ぐためには欠かせない」との立場が読売だ。それゆえ、「深刻な電力不足が予想される中で、脱原子力発電の“看板”だけを掲げるのは無責任だ」と批判した。

 日経も「政府・与党で十分な議論をしないまま政策の大転換を口にした」などと指摘し、「首相の発言は無責任である」と結論づけた。

 産経は、電力不足などを理由に玄海原発再開問題では、いち早く歓迎の意を示していた。首相説明については「内容は全く不十分で、無定見ですらある」と批判し、返す刀で「一刻も早い退陣こそ求めたい」と進退に言及した。

 一方、政府・与党内で首相発言の独走を批判する声が相次いだことを受け、首相は15日、私個人の考えだ、と説明するに至った。【論説委員・伊藤正志】


カテゴリ: [ニュース] - &trackback() - 2011年07月17日 14:52:05

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最終更新:2011年07月17日 14:52