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秤上に揺れる哀と愛

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rogan064

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だれでも歓迎! 編集
開け放たれた城のテラスを駆け抜ける、爽やかな朝の風。
私はもう随分前からの日課となったテラスでの深呼吸を終えると、深い森に囲まれた南の方角へと目を向けた。
今頃はあの方が、父から課せられたある難題に応えるためにあの森へと足を踏み入れている頃に違いない。
無事に帰ってきてくれればそれでよいのだが、どうにも妙な胸騒ぎがするのは気のせいだろうか。
城下町で偶然出会った彼が王女である私に結婚を申し込んだあの日、父は彼の資質を試すためにこう言った。
「南の森に棲むという巨大な黒竜を討ち果たしてくるのだ。そうすれば、娘との結婚を認めよう」
森に棲むドラゴンというものをこの目で見たことがなかった私には、それがどういう意味を持つのかすぐには理解することができなかった。
だが今になって考えてみれば、父は何処の出の者かもわからない男を娘の夫には選びたくなかったのだろう。
そして彼が森へと出発してしまった今、きっと彼が無事に帰ってこないことを祈っているのだろう。
不気味な程の静寂に包まれた森の様子を眺めながら、私は一心に彼の無事と成功を祈り続けていた。

数人の仲間と共に深い森の中を歩きながら、俺は先行きの見えぬ不安に胸の鼓動を早めていた。
王は彼女との結婚の条件に森に棲む黒竜の討伐を挙げたものの、この森にそんなドラゴンが棲んでいたなどという話は噂にすら聞いたことがない。
もしそのドラゴンとやらが城や町に何らかの被害をもたらしていたとしたら、それなりの情報は事前に手に入ってもおかしくないはずなのだ。
「こいつはもしかしたら、あの王様に一杯食わされたかな・・・?」
「そうだな・・・もしそんな化け物みたいな奴が本当にこんな町の近くに棲んでたら、話に聞かないはずがない」
俺の背後についてくる3人の仲間達も、次第にドラゴンの存在自体を疑い始めている。
「まあ、もう少し進んでみよう。もし途中に洞窟のようなものを見つけたら教えてくれ」
そう言って彼らを宥めると、俺は更に森の奥深くを目指して足を早めた。
幸いこの晴れた空模様もしばらくは崩れる様子がないし、仮にドラゴンが見つからなかったとしてもそれはそれで構わないだろう。
その時はあの王にドラゴンのいる証拠を出してもらうよう問い詰めればいいだけの話なのだ。

「お、おい、あれは何だ?」
だがやがて1時間程歩き続けると、欝蒼と茂った草木の向こうに不意に大きな洞窟が姿を現していた。
それを見つけた突然の仲間の声に足元へ向けていた視線を上げてみると、成る程確かに眼前で闇に包まれた巨洞がぽっかりと口を開けている。
「多分あれがドラゴンの棲むという洞窟だろう。この森に、他にもあんな洞窟があるとは考えにくいからな」
「本当に、中にドラゴンがいるのか?」
「さあ・・・確かめてみよう」
俺はそう言うと、彼らとともに洞窟の入口にそっと身を寄せて真っ暗な中の様子を窺った。

ゴオオオオ・・・ゴオオオオォ・・・
大気を震わせるような凄まじい轟音が、その闇の中から外にまで漏れ聞こえてくる。
もしかしてこれは・・・ドラゴンの寝息・・・?
だとしたら、一体どれ程巨大な竜が眠っているというのだろうか?
まだ見ぬ巨竜の姿を脳裏に描きながら、俺は更に洞窟の中へと静かに足を踏み入れていった。
もしドラゴンが眠っているのなら、これ以上好都合なことはないだろう。
最低限の明かりにと灯したランタンが、洞窟の壁と高い天井に乱反射して不気味な影を作り出している。
そして数分後、洞窟の最奥に辿り着いた俺達の目の前についに目的のモノが姿を現していた。

全身を覆った鱗に美しい漆黒の色を輝かせている雄の竜が、地面の上に丸まって大きな寝息を立てていたのだ。
その黒とは対照的に、巨大な翼膜と柔らかそうな腹を覆った皮膜が真っ白に映えている。
両手足の先に生えた長い爪はまるで研ぎ澄まされた刃物のような鋭さを湛え、閉じられた口の端からは微かな黄色に染まった牙が幾本も顔を覗かせていた。
「こいつだ・・・間違いない」
「それじゃあ、今の内にとどめを刺しちまおうぜ」
「ああ、そうしよう」
正直ドラゴンが眠っているとは思っていなかったものの、これは嬉しい誤算というものだろう。
俺は腰に身につけた長剣を静かに引き抜くと、同じように武器を構えた仲間達と1度だけ顔を見合わせてから不用心に眠ったドラゴンの腹へと一気にその切っ先を叩き込んでいた。

ドスッザクドシュッブシュッ!
「グッ・・・ガアアァ!」
4本の剣や槍が一斉に白い皮膜に包まれた柔らかな腹を突き通した次の瞬間、心臓を貫かれたドラゴンの苦しげな咆哮が洞窟中に響き渡っていた。
そして大量の鮮血を飛び散らせながらバタバタと激しくのた打ち回ったかと思うと、突然糸が切れたかのようにドサリとその場に倒れ込んで動かなくなってしまう。
「や、やったのか・・・?」
やがて静寂の中に響いたそんな仲間の声に、俺はそっと倒れ伏したドラゴンの傍に駆け寄るとその大きな瞳を隠している厚い瞼を静かにめくり上げてみた。
爬虫類を思わせるようなドラゴンの切れ長の瞳は、睨み付けるだけで獲物の逃げる気力を奪ってしまうという。
だが慎重にめくった瞼の裏に潜んでいた金色の竜眼は、もう既に命の輝きを宿してはいなかった。

「ああ・・・どうやら、そのようだ」
大きく安堵の息を吐きながらも小声でそう呟くと、仲間達がそれぞれに喝采の声を上げる。
「やったな!」
「これで俺達も、王様から報酬が貰えるんだよな?」
「そういう条件だからな。それじゃあドラゴンを倒した証拠に、こいつの爪を持っていくとしよう」
そう言って俺はドラゴンの指から鋭い鉤爪の欠片を何とか折り取ると、それを仲間達に翳して見せた。
「そいつはいい考えだ」
「さっさと爪を取って、こんな暗い所からはおさらばするとしよう」
これでいい・・・これで俺は、あの美しい王女と結婚できるんだ。
それにドラゴンの討伐を手伝ってくれた彼らにも、あの王から何らかの褒賞が出ることだろう。
硬い竜の爪を折ろうと躍起になっている彼らをぼんやりと見つめながら、俺はあまりにも全てが上手く行き過ぎたことに一抹の不安を感じながらも感謝していた。

「・・・!」
何だろう・・・今の感じは?
突如として背筋を駆け上がった嫌な予感に、あたしは狩りの手を止めると森の中で住み処の方向を振り返った。
彼に、夫に何かあったのだろうか?
いや・・・確かにあたしが出掛けた時に彼はまだ大きな鼾をかいて眠ってはいたものの、さすがにそうかといって誰かに襲われたというようなことはないだろう。
あたしら竜族に手を出すとしたら人間以外には有り得ないだろうが、あの洞窟はフラリと森に入った人間達に偶然見つけられるほど町には近くないはずだ。
それにこれまで人間の町や村を1度も襲ったことのないあたし達が、人間に敵視される理由が見当たらない。
だが確かに胸に感じた夫の悲痛な叫び声に、あたしは巨体を翻すと急いで住み処へと引き返すことにした。

「しかし、こんなに簡単にいくとは思わなかったな」
とその時、不意に何処からか人間の声らしきものが風に乗ってあたしの耳へと届いてきた。
その出所を辿るようにして生い茂った茂みの向こう側に目を凝らしてみると、4人の男達が何やら楽しげに話しながら森の中を歩いている。
何故こんな森の奥に人間達が・・・?
それによく見ると、その全員が腰や背中に剣や槍といった武器を身に着けていた。
「しかしお前、王女と結婚したら一体どうするんだ?」
「さあな・・・とにかく一目惚れだったから・・・でも、俺からもお前たちには何か礼をさせてもらうよ」
「そうこなくっちゃあ!」
まさか・・・
その人間達の会話を聞いた瞬間、あたしは胸の内に燻っていた不安が突如として大きな炎を巻き上げて燃え出したのを感じていた。
そしてもう間近に迫った住み処へ向けて、木々の隙間を縫うように歩きながら心なしか足を速めてしまう。
だがやがて闇に包まれた洞窟の前までやってくると、その奥から漂ってきた濃い血の匂いが私の鼻を衝いていた。

「お前さん・・・?」
暗い住み処の中から漏れてくる噎せ返るような死の気配にそっと足を進めていくと、やがてあたしの眼前にそれが姿を現していた。
「ああ!な、なんてことだよ・・・」
無残に腹を貫かれて息絶えたと見える、長年連れ添った夫の変わり果てた姿。
地面に広がった黒々しい血の跡が、複数の人間達の足跡を周囲に点々と刻み付けている。
やはり、さっき森で見かけたあの人間達が眠っていた彼の命を無慈悲に奪っていったのだ。
その上何かの戦利品にでもしようとしたのか、全く抵抗した様子のない夫の爪が幾本か叩き折られている。
おのれ・・・許さないよ・・・あの人間達を捕まえて、1人1人ゆっくりと血祭りに上げてやる・・・!
あたしはもう物言わぬ彼の亡骸をそっと洞窟の端に押しやると、静かに地面の上に蹲ったままどうやってあの人間達に報復するかの算段を巡らせ始めていた。

「なんと・・・お主達・・・あの森の黒竜を倒してきたというのか!?」
「はい。これがその証拠です」
俺は驚きを隠せないといった様子でそう声を上げた王の前に、持ってきた竜の爪を高らかに掲げて見せた。
それに倣って、背後にいた3人の男達も同じように爪の欠片を持ち上げる。
「う、ううぬ・・・竜の爪か・・・確かに本物のようだ。よかろう・・・お主に、娘との結婚を許すとしよう」
「お、王様、よいのですか?あのような身分もロクにわからぬ者に、姫様を嫁がせるとは・・・」
王の放った了承の言葉に、そばにいた大臣が思わず抗議の声を上げる。
「仕方あるまい。一国の王として、民を相手に嘘はつけぬ。それに・・・娘をそれを望んでいるようだからな」
「ありがとうございます、王様」

俺は満面の笑みを浮かべてそう礼を言うと、竜の討伐へと手を貸してくれた仲間達を前に押し出した。
「それと・・・黒竜の討伐は彼らの助けがあったからこその功績です。彼らにも、何か褒美を頂ければと・・・」
「そうだな・・・では、第2宝物庫の扉を開けてやろう。1人1つだけ、何でも好きなものを持っていくがいい」
「おお!」
そんな王の太っ腹な褒美の申し出に、仲間達が歓喜の声を上げる。
「ではこれで・・・後ほど、姫様に会いに参ります」
「わかった。お主が来たら中へ通すよう、門兵に言い渡しておこう」
そう言って宝物庫の方へと案内されていく仲間達と別れると、俺は竜の返り血に汚れた服と鎧を着替えるべく帰路へと就いていた。

ギイィ・・・
それから1週間後、私は爽やかな青空が広がるテラスの扉を押し開けながら、これまでにない程の晴れやかな気分で朝の日課に精を出していた。
今日は、愛しの彼との結婚式当日。
この取り留めのない朝の儀式を終えたら、私は純白に煌くドレスに身を包んで祝いの席へと身を投じるのだ。
そして雲1つ見当たらない美しい森の景色を眺めながら、両腕を広げて大きく息を吸う。
シュルッ
だがその瞬間、突然私の体に奇妙な感触が走っていた。
「きゃっ!?」
一瞬大きな蛇か何かが纏わりついてきたのかと思ったものの、突如として眼前を覆い尽くしたあるモノを目の当たりにして声を失ってしまう。

「あ・・・あぁ・・・」
そこにいたのは、尾の先で捕らえた人間を威圧するかのように大きく翼を広げた1匹の赤い雌竜の姿。
やがてその一見老婆を思わせるかのような深い皺の彫り込まれた顔にニタリという不気味な笑みが広がると、体に巻き付けられた尾の先端が思わず声を上げようとした私の口をクルンと塞いでいた。
「ん、んん~~!」
慌てて誰かに助けを求めようと試みたものの、時既に遅し。
妙な唸りとなって虚空に消えていく自らの悲鳴を聞きながら、私は成す術もなく巨大な赤竜に連れ去られていた。

「んむ~!んむぅ~~!」
恐ろしいドラゴンに捕まったまま町の上空を飛び越える間、遥か眼下を行く誰かに気付いてもらおうと必死で声にならない声を張り上げる。
だが無論そんな微かな唸り声など誰にも聞こえるはずがなく、視界の端に映るのはもうすぐ始まるであろう私の結婚式へと急ぐ正装した人々の群れだけだった。
そしてその希望の欠片が深い森の緑に押し流されてしまうと、途端に恐怖と絶望が重くのしかかってくる。
私は・・・このドラゴンに殺されるのだろうか・・・
折角彼との結婚が決まって、これから幸せな生活が始まろうとしていたというのに・・・
やがてもう自力ではどうにもできないことを悟ると、私は儚い抵抗を諦めて赤竜の成すがままに身を委ねていた。

バサッ・・・バサッ・・・
巨竜の羽ばたく翼の音が、静まり返った周囲に無機質な響きを振り撒いている。
そして諦観にぼんやりとした頭でしばらく森の景色を眺めていると、その厚い木々の梢の向こうに1つの大きな洞窟が見えてきていた。
あれがきっと、このドラゴンの住み処なのだろう。
私はこのままあの暗がりの奥へと連れ込まれて、そして・・・
「う・・・うぅ・・・」
おぼろげに見えてきた自分の最期の瞬間が、枯れ果てたはずの恐怖心を再び積み上げていく。
あまりにも突然突き付けられた死に対しての恐ろしさと悔しさが涙となって溢れ出し、私は赤いとぐろの中で短い嗚咽を漏らして泣き出していた。

やがてドオンという大きな音を立ててドラゴンが森の中に着地すると、近くの木に止まっていたのであろう小鳥達がそれに驚いて一斉に空へと飛び立っていく。
そして強靭な尻尾で絡め取った私を楽しげに一瞥すると、ドラゴンがそのまま住み処の洞窟へと滑り込んでいく。
ああ・・・い、いや・・・いやぁ・・・
徐々に周囲が深い闇に包まれていく感覚に、私はボロボロと涙を零しながら身を捩っていた。

やがて必死の抵抗も空しく暗い洞窟の最奥へと引きずり込まれてしまうと、不意にドラゴンが尻尾を巻き付けていた私の体をポイッと地面の上へと放り投げる。
ドサッ
「あぐっ・・・い、痛・・・」
生まれてこのかたこんなに無造作に扱われた経験などなかっただけに、ロクに受け身を取ることもできず体のあちこちを地面にぶつけて痛めてしまう。
だがその瞬間、突然ボッという音ともに暗くて何も見えなかった洞内が明るく照らし出された。
何事かと思って明るくなった方へと目を向けるてみると、ドラゴンが予め用意してあったと見える枯れ木の山に真っ赤な炎を吐きかけている。
そして十分な大きさの焚き火が出来上がったのを確認して、ドラゴンがチロチロと炎の切れ端を口から漏らしたまま私の方へとその鋭い視線を振り向けていた。

「ひっ・・・!」
ゆらゆらと揺れる焚き火の明かりに浮かぶ、真っ赤な巨竜の姿。
その切れ長の竜眼に、激しい怒りにも似た危険な煌きと何処か楽しそうな子供じみた輝きが静かに同居している。
「お、お願い・・・助けて・・・」
今頃命乞いなどしても無駄であろうことは薄々感じていたものの、洞窟の壁際へと追い詰められた私には他にできることなど何もない。
だが微かな希望を求めて周囲に視線を巡らせると、私のすぐ傍らに大きな黒いドラゴンの亡骸が転がっていた。
腹を突き殺されたと見えるその真っ黒な巨竜の周囲に、ドス黒い血溜まりの跡が今も残っている。
まさかこれは・・・彼とその仲間達が倒してきたという黒竜の亡骸・・・?
だとすればこの雌のドラゴンは・・・殺された黒竜の番いだったのだろう。
では・・・やはりこのドラゴンが私を攫ってきた目的は・・・
やがて身勝手な人間達に夫を殺されたことへの報復の矛先として自分が選ばれたことを理解すると、私はガタガタと震えながらゆっくりと近付いてくるドラゴンを見つめ続けていた。

ズッ・・・ズッ・・・
ジリジリとした肉薄を続けながらも真っ直ぐに私を睨み付けているその大きなドラゴンの瞳を正視できず、まだ固まり切っていない死の覚悟を胸にドラゴンから顔を背けてギュッと目を瞑ってしまう。
だがなおも無慈悲に近付いてくる重々しい巨体を運ぶ足音が、小刻みだった私の震えを何倍にも増幅していった。
そして私の頬に、間近にまで近付けられたドラゴンの鼻先から生暖かい息がフッと吹き掛けられる。
「フフフ・・・美しい一国のお姫様も、こうなっちまったら生贄に出された田舎娘と変わらないねぇ・・・」
「え・・・?」
まさかドラゴンが人語を話すとは夢にも思っておらず、私は絶体絶命の窮地に立たされているのにもかかわらず不意に投げかけられたその言葉に気の抜けた声を上げてしまっていた。
「そんなに心配しなくとも、別にお前を取って食いやしないよ。お前にはこれと言って何の恨みもないからね」
「で、では・・・一体何のために私を・・・?」
「あたしの夫を殺した人間どもをここへ誘き寄せるために、お前に餌になってもらうのさ」

夫を殺した人間・・・つまりこのドラゴンは、黒竜を殺した彼とその仲間達に復讐を考えているのだろう。
だが果たして彼女は、本当にそれだけのためにこの私を連れ去ったのだろうか?
「それで復讐を終えたら・・・私は城へ帰してくれるのですか・・・?」
「フン・・・そいつはその時に考えるさ。とにかく、痛い目に遭いたくなかったらおとなしくしているんだね」
「そんな・・・」
ドラゴンから身の安全を保証してもらえずに、私は思わず両手で顔を覆っていた。
それにもし仮に私が助かったとしても、その時は彼がドラゴンに殺されてしまっていることだろう。
私を助けにやってきた彼がこの恐ろしい雌竜を倒すことができれば皆助かるかもしれないが、ちっぽけな人間が怒りに燃える巨竜と正面から立ち向かったところで勝ち目がないことなど目に見えている。
だがドラゴンはそんな悲嘆に暮れる私の様子を一瞥すると、あろうことか地面の上に蹲って昼寝を始めていた。
微かに外の光を取り込んでいる洞窟の入口が、その奥に小さく顔を覗かせている。
彼女は、どうせ私にここから逃げ出す勇気など無いと高を括っているのだろうか?
それとも私が逃げたら、あの国そのものを焼き滅ぼしてしまうつもりなのだろうか?
城下町に暮らすただの市民であればきっと思いもよらないであろうそんな恐ろしい予感に縛られて、私はともすればすぐに辿り着けそうな洞窟の入口をじっと見つめたまま膝を抱えてその場に座り込んでいた。

「随分と遅いな・・・もう婚姻の式が始まるというのに、娘は一体何をしておるのだ?」
「召使い達の話では、まだドレスへの着替えも済ませていないそうです」
「部屋にはおらぬのか?」
めでたい式典の場に集まった大勢の市民達を眺めながら、王と大臣が声を潜めて話し合っている。
「それが・・・姫様を呼びに行った時にはテラスへの扉を開け放したままもう何処かへと行かれた後でした」
「すぐに探し出すのだ。誰か、他に娘の姿を見た者がいないかも含めてな」
「かしこまりました」
やがて命令を受けた大臣が喧噪の場から慌しく出て行くと、残された王がフゥと大きな溜息をついていた。

ゴオオオ・・・ゴオオオオォ・・・
焚き火に照らされた洞内にこだまする、轟音のような雌竜の鼾。
見上げるような巨躯を誇る恐ろしいドラゴンも、流石に眠る時だけはやはりこうして無防備な姿を晒すのだろう。
その険しい皺の刻まれた大きな顔には相変わらず夫の仇である憎き人間に対する憎悪が猛々しく燃えていて、あれを下手に刺激でもしようものなら危害は加えないと言った私の命も簡単に吹き消されてしまうに違いない。
だがそうは言っても、彼も私も無事に生き残るためにはこのドラゴンがこうして油断している隙に不意打ちでとどめを刺すより他に方法はないだろう。
非力で武器も持っていない私には到底無理なことだが、今ならこっそりとここを抜け出して城の誰か・・・
或いはあの黒竜を討ち果たしたという彼に何とか助けを求めることができるかも知れない。
このドラゴンさえいなくなってしまえば、もう心配するようなことは他に何もないのだ。

私はそんな今にも崩れて消えてしまいそうな勇気と決意を胸にそっと音を立てないようにして立ち上がると、そろそろと忍び足で暗い洞内を歩き始めていた。
だが焚き火が出すパチパチという枯れ木の爆ぜる音は足音を消すのに役立ったものの、その明かりからはほんの少し離れただけで早くも足元が真っ暗な闇に覆い尽くされてしまう。
それでも緊張に胸を押さえながら次の足を踏み出したその瞬間、コツンという音とともに蹴飛ばしてしまった小さな石の欠片がカラカラと無情な音を立てながら地面に蹲っていたドラゴンの鼻先にぶつかっていた。

カツッ・・・
「ウグ・・・」
そんな背筋が凍り付きそうな瞬間が過ぎ去ると、ドラゴンが小さな呻き声を上げながら微かに鼻を鳴らす。
だが唸った拍子に周囲に鳴り響いていた大きな鼾は消えたものの、ドラゴンはそのまま特に目を覚ます様子もなくまた眠りについてくれたようだった。
それを見てドッと体中の疲労が溢れ出したかのような感覚を味わいながら、フゥーと大きく安堵の息を吐く。
よかった・・・もしこんなところをあのドラゴンに見つかったら、まず間違いなく命はなかったことだろう。
なおもバクバクと暴れ回る胸をギュッと力強く押さえながら、私はしばらくその場に立ったまま息を整えていた。
どうしよう・・・やはり、危ない橋は渡るべきではないのだろうか・・・?
今回は助かったものの、今度あんなヘマをしたらと思うとゾクゾクと冷たいものが背筋を這い上がってくる。
でもこのまま無為に時間を食い潰せば、愛しの彼はもとよりこの私の命さえあるかどうか分からないのだ。

ゴクリという息を呑む音がドラゴンに聞こえないことを祈りながら、私はようやく気分を落ち着けて次の1歩を踏み出していた。
静かに地面から足を離し、それを少し離れた所へゆっくりと下ろす・・・
そんな気の遠くなるような地道な作業を続けながら、眠れる巨竜の隣をそろそろと通り抜けていく。
そしてようやく雌竜を背後にやり過ごすと、私は希望とともに明るく輝いている洞窟の入口へと視線を向けた。
だが・・・
シュルルッ
「えっ・・・?」
突如として腹の辺りに感じた不穏な硬い鱗の感触に、私は思わずそう声を上げて自分の体を見下ろしていた。
その視線の先に、外の光に淡く照らされた真っ赤な竜の尾が浮かび上がっている。
そして破局的な事態を察した頭が悲鳴を迸らせる暇もなくドラゴンの眼前にまで引き寄せられると、明らかな怒りの感情を宿した2つの竜眼が間近からギラリと私の顔を睨み付けていた。

「あ・・・は・・・ぁ・・・」
あまりの恐ろしさに、喉から上手く声が出てこない。
やはりあの石を蹴飛ばしてしまった時、このドラゴンは眠りから覚めていたのだ。
そして本当に私が逃げるのかどうかを確かめるために、じっと眠った振りをしてこの瞬間を待っていたのだろう。
「お前・・・このあたしから逃げようとしたね・・・?」
叫ぶわけでも怒鳴るわけでもなく、あくまで低く抑えられたドラゴンの声がそう私に訊ねてくる。
だがどうあっても言い逃れのできない現場を押さえられてしまっただけに、私は恐ろしさにブルブルと震えながらコクリと頷くしかなかった。

「ふぅん・・・確かに忠告したのにねぇ・・・まあ、それはいいさ・・・そうするのが当然の反応だろうからね」
まるで全てお見通しといった様子でそう呟きながら、ドラゴンが更にその大きな顔を私に近付けてくる。
「でもお前がここから逃げたら、あの国が危なくなるとは思わなかったのかい・・・?全く、薄情なお姫様だよ」
「そ、それは・・・」
「それともまさか・・・眠っている間にこのあたしを殺してしまおうなんて考えていたんじゃないだろうね!?」
静かに、しかし有無を言わせぬ迫力で、ドラゴンがそう問い詰めてきた。
だがそれを認めれば殺されるかも知れないと頭ではわかっているのに、最早追い詰められて限界間近の心の方が巨竜から浴びせられるこの重圧に耐え切れそうにない。
やがて私の両目からボロリと零れ出した大粒の涙を肯定の証と受け取ったのか、ドラゴンの顔に不意に嗜虐的な表情が浮かび上がっていった。

「お前に恨みはないけれど、あたしに逆らうのなら話は別だよ。こいつは、少々お仕置きが必要なようだねぇ?」
「い、いや・・・許して・・・」
「だめさ・・・もう2度とあたしに楯突こうなんて思わないように、ちょいとばかり厳しく躾けさせてもらうよ」
そう言うと、ドラゴンが私の両腕を尻尾で絡め取ったまま指先から生えた鋭い爪を私の眼前で揺らして見せる。
「な、何を・・・」
そしてじっくりと見せ付けられた危険な凶器に膨れ上がった恐怖が破裂しそうになった次の瞬間、ドラゴンがその鋭利な刃物を振るって私の着ていた衣服をズバッという音とともに切り裂いていた。

「きゃあっ!」
そんな突然の凶行に思わず引き攣った悲鳴を上げたのも束の間、ドラゴンが無造作に破り取った私の服をポイッと地面の上に放り投げる。
そして素っ裸にされてしまった体を屈強なとぐろの中で必死に捩らせる私にニヤリとした笑みを浮かべると、ゴオオッという激しい音とともに打ち捨てられた服がドラゴンに吐き掛けられた紅蓮の炎で焼き尽くされていた。
「あ・・・あ・・・」
服を燃やすだけならば私達のすぐそばで燃えている焚き火にくべればいいだけだというのに、わざわざ炎を吐いたのは暴れようとする私に対しての脅迫の意味も込められているのだろう。
あの黒竜の仇である彼を誘き寄せるために私を城から連れ去ったということは、このドラゴンにはもう既に私を生かしておかなければならない理由など何も残っていないことになる。
それなのに今辛うじて私が生きていられるのは、単にこのドラゴンの気紛れに過ぎないのだ。

「フフフフ・・・まだ暴れるのかい・・・?」
音もなくメラメラと燃え上がりながら黒い灰と化していく服の残骸を見せ付けられて、私は獲物の狼狽を楽しんでいるかのような雌竜の声がじわりじわりと心の中へ侵食していくのを感じていた。
「う・・・うぅ・・・」
炎を吐いたせいなのかまるで熱風にも感じられる熱い吐息を露出した胸へと吹き掛けられて、それまで一国の王女として堅持していたはずの人間的な矜持が脆くも瓦解し始めている。
そして抵抗を諦めた私がとぐろに巻き上げられたままガクリと項垂れると、ペロンという音とともにドラゴンの分厚い舌が私の豊満な胸から顔を出した乳首を舐め上げていた。
レロ・・・
「はぅっ・・・あ・・・やぁ・・・」
熱湯のように熱い唾液を伴ったザラザラとした感触が敏感な蕾の上を駆け上がり、恐怖に痺れた私の四肢に快感という名の追い打ちが叩き込まれる。

ペロ・・・レロレロ・・・ニュリッ
「うっ・・・くふ・・・はぁん・・・」
王女として生まれた身でこんな辱めを受けた経験などもちろんあるはずもなく、私は未知の快楽に身を捩りながら次々と艶の掛かった声を上げさせられた。
だがいざ渾身の力を込めてもがこうとする度に、ジロリという音が聞こえてきそうな竜の視線が私の瞳を捉える。
決して声には出さなくとも、私にはそれだけで抵抗の先にある恐ろしい未来が見えてしまっていた。
「ほぉら・・・こんな目に遭わせられるのは初めてだろう?でも、思ったよりも悪くはないんじゃないのかい?」
「そ、そんなこと・・・ああっ・・・!」
やがて認めたくないという思いが無意識の内に反論の声を上げたその瞬間、舐め上げられていなかったもう片方の乳首がドラゴンの爪の先でクリッと捻り上げられる。
「フフ・・・こんなのはまだ序の口さ。これからこっちの方も、たっぷりと味わわせてやるからねぇ・・・」
そしてそう言いながら、ドラゴンが爪を引っ込めた太い指先を私の股間へと近付けていった。
その標的がまだ誰にも明かしたことのない小さな秘裂であることに気が付いて、またしても抑えられずに両足をバタつかせて暴れ始めてしまう。

「あ・・・いや・・・それだけは・・・お願い・・・」
「おやおや、また暴れちまって・・・聞き分けのないいけない子だよ・・・!」
グギュッ
「うあっ・・・あ、はぁ・・・!」
怒りの声とともに腹部を締め上げたドラゴンの尾の感触に、私は息を詰まらせながら上半身を仰け反らせた。
だが全身に跳ね回る苦痛に声を上げようとしたその瞬間、突然ズブッという鈍い衝撃が私の下腹部を貫いていく。
「あああっ!」
やがて一瞬にして処女膜を突き破られた痛みと絶望感が今度こそ完全に私から抵抗の気力を削ぎ落とすと、私はボロボロと涙を流しながらなおも体内に侵入しようと膣壁を抉る巨竜の指先に弛緩した身を委ねていた。

「お、王様!姫様の手掛かりがみつかりましたぞ!」
やがて何時まで経っても現れぬ花嫁に城の前に設けられた式場内が騒然とし始めたその頃、大臣が何かを叫びながら血相を変えてワシの元へと駆け寄ってきた。
「本当か!?」
「は、はい・・・町の農夫の1人が、朝方に南方の森へ向かって飛ぶ1匹の赤竜を見かけたそうです」
竜・・・だと?
確かに南の森にドラゴンが棲んでいることは文献を読んで知っていたが、それは先週娘の婿となるあの男が打ち倒してきたはずだ。
だが赤竜ということは、それとは別にもう1匹ドラゴンがいたということなのだろうか?
「それで・・・?」
「長い尾に巻かれていてよくは見えなかったそうですが、若い娘が1人確かに竜に捕われていたと・・・」
「何だと!」
大臣の報告を聞いて、ワシは周囲の人々が驚くのも構わずに大声で叫びながら席から立ち上がっていた。

「そ、それがワシの娘だという証拠はあるのか?」
「流石にそこまでは・・・ですがテラスの扉を開け放していたことから、あそこから連れ去られたのでは・・・」
「う、うぬぬ・・・」
娘が竜に連れ去られた・・・果たして、こんなに恐ろしいことが他にあるだろうか?
だが、一体何故その竜はわざわざワシの娘に目を付けたのだろうか?
糧とするために人間を攫って行くというのなら、こんな町の真ん中に佇む城にまで来る必要などないはずだ。
何か、ワシの娘でなければならぬ理由があったと考える方が妥当だろう。
そしてそれは恐らく・・・あの男が黒竜の討伐に向かったことと無関係ではないに違いない。
ワシはそこまで考えると、新郎の席で落ち着きなく座っていた男にそっと近寄っていった。

「お主、竜の討伐に向かった時に、何か変わったことはなかったか?」
「変わったこと・・・?いや・・・特に何も・・・」
「そ、そうか・・・ではこう聞こう。あの森の中で、何処か他に竜が棲めるような場所を見つけたか?」
俺は突然王から投げかけられたその奇妙な質問に、今この場で起こっている事態の深刻さを感じ取っていた。
「あの森の中で俺達が見つけた洞窟は1つだけです。黒竜も、確かにその中にいました」
「洞窟がたった1つだけだと?今朝、ワシの娘を部屋から攫った赤竜が南の森に飛んで行くのを見た者がいる」
「つまり・・・姫はその洞窟にいると?」
ゆっくりと頷いた王の様子を眺めながら、まさかという思いが俺の頭の中を真っ白に塗り潰していった。
もしその赤竜が俺達の倒したあの黒竜と番だったとしたら・・・
彼女を攫ったのはきっと夫の仇である俺をあの洞窟へと誘き出すために違いない。
そしてその予想が正しければ、きっと彼女はまだ生かされているはずだ。
「わかりました、姫は、俺達が取り戻してきます」
「た、頼んだぞ。ワシはもう、お主達だけが頼りなのだからな」
その言葉に今度は俺の方が無言で頷くと、俺は再びドラゴン退治の準備をするために騒がしい式場を後にした。

ズブッ・・・ズブ・・・ジュブ・・・
「う・・・あ・・・はぁ・・・」
ゴツゴツとした硬い鱗と柔らかな皮膜で半々に覆われた雌竜の指先が、膣の奥深くで淫らな水音を立てながら敏感な秘肉を扱き上げる。
もし暴れたり大声で悲鳴を上げたりしようものならすぐにその重々しい尾できつく締め付けられてしまうだけに、私は必死で歯を食い縛りながら苦痛と恐怖と時折受け入れてしまいそうになる快感に折れぬよう耐え続けていた。
「アッハハハ・・・随分といい顔をするじゃないか。普段は偉ぶったお姫様も、こっちには随分と素直だねぇ?」
グジュッ!グリュリュ!
「ひゃあん!」
勢いよく捩り込まれた指先がもたらす激しい快感に、ついに堰き止めていた甲高い嬌声が洞窟中に鳴り響く。
だが雌竜はまた締め上げられると予想してビクッと身を強張らせた私をそっと地面の上に横たえると、それまでずっと私の自由を奪っていた尻尾を静かに解いていた。
とは言え、これで見逃してくれるわけではないだろう。
いまだ膣の最奥にまで突き入れられている太い竜の指が、そんな淡い希望の芽を根元から摘み取っている。
そして次は何をされるのかと怯えた視界の端で獲物を解き放った竜の尾がゆっくりと持ち上げられたのを見て、私は暴れる気力も消え失せた四肢を投げ出したまま諦観と後悔の溶け込んだ涙をポロリと零していた。

ジュボッ!
「ああっ!」
まるでねっとりとした愛液を掻き出すように、竜の指が何の前触れもなく突然膣から引き抜かれる。
その激し過ぎる刺激に自由になった全身がビクンと大きく弓反りになると、雌竜の顔が妖しく綻んでいた。
そして愛液に塗れた指先に長い舌を這わせてゆっくりとそれを舐め取り、私の両足を地面の上に押さえ付ける。
更には睨め上げるように私の顔を見つめたまま、雌竜が暴かれた私の股間へと首を近づけていった。
ジョリリッ
「あっ・・・!」
次の瞬間度重なる刺激にぷっくりと膨れ上がっていた淫唇が丸ごと分厚い舌に舐め上げられ、中を犯されるのとはまた異質の快楽が全身に跳ね回る。
ジョリッジョリリ・・・
「やっ・・・やめ・・・はぁぅ・・・」
グネグネと上半身を捩って逃れようにも、屈強な力で固い地面に押し付けられた両足は振り解けなかった。
しかもそんな私の悶える様を楽しむように、細く尖らせた舌先がそっと秘裂を抉じ開けていく。

「いやぁ・・・許して・・・もう、逆らわないから・・・うあぁ・・・」
だが微かに絞り出したその声が聞こえないのか、グリグリと膣壁を抉る熱い肉塊の侵入は一向に止む気配がない。
そして薄っすらと下腹部の辺りに温かい雌竜の鼻息を感じる程にまで舌の挿入を許してしまうと、突然雌竜がまるで石か何かに変わってしまったかのようにピタリと動きを止めていた。
「う・・・うぅ・・・」
膣の奥深くまで凶暴な舌を捩じ込まれたまま、絶望的な時間がゆっくりと過ぎていく。
この雌竜は待っているのだ。
恐らくは私の中で何か、決して譲ってはいけないある種の尊厳のようなものが砕け散るのを。
彼は、本当に私を助けにきてくれるのだろうか・・・?
もしこの雌竜が城からここへ来るまでの間に誰の目にも触れていなかったとしたら、今頃は結婚式を前に失踪した私のことで国中が大騒ぎになっている頃だろう。
それに仮に彼が助けにきてくれるとしても、こんな嗜虐的な雌竜の責めに何時までも耐えられるとは思えない。
結局私は、来るか来ないかもわからぬ助けの到来を祈りながらこの雌竜の拷問に屈服する他になかったのだ。
「も、もう・・・あなたの好きにして・・・」
そしてそう言いながら静かに俯くと、一時の平穏を取り戻していた私の中が滅茶苦茶に掻き回されていた。

ズリュッ!グリュリュッジョリッグシュゥ!
「か・・・は・・・!」
激しく抽送を繰り返すザラついた舌が、容赦なく愛液に潤んだ肉襞を翻していく。
ジョリジョリと湿った音が響く度に限界を超えた刺激が弾け飛び、絶頂の予感が私を支配していった。
だがロクに声を上げることもできない程の責め苦に意識が薄れそうになると、不意に雌竜が私を貫いていた舌をズルリと引き抜く。
そして涙でグシャグシャになった私の情けない顔を満足げに眺めながら、いよいよ固い鱗で覆われた尻尾がまるで獲物を狙う大蛇のようにユラリと鎌首をもたげていた。

「さっきまであんなに暴れていたのに、随分と従順になったじゃないか・・・フフフフ・・・」
あれだけ激しく責められたのに私がまだ1度も絶頂を迎えていないのは、きっとこれからの本番のために敢えて手加減されていたのだろう。
生き残るために必死で快楽に耐えていたのが馬鹿馬鹿しくなって、私は無言で雌竜の顔をキッと睨み付けたまま悔し涙を溢れさせた。
その塩辛い大粒の滴が、唐突に巨大な舌でベロリと掬い上げられる。
「う、うく・・・」
「フフフ・・・いい具合に悔しさが滲み出ているじゃないか。それじゃあそろそろ、仕上げといこうかねぇ?」
そして私の顔を汚していた涙が残らず雌竜の舌に舐め取られると、突如としてズンッという衝撃が限界寸前まで高められた秘所へ深々と叩き込まれていた。

「きゃああっ!」
竜の指でも舌でも届かなかった秘裂の最奥、その未開の領域へ、固くしこった竜の尾が容赦のない侵入を始める。
自在に蠢くその細い先端がグリグリと円を描くように肉洞の内部を蹂躙し、その度に全身を突き上げられるような衝撃と快感が絶え間なく送り込まれていた。
執拗な指と舌の責めに昂ったのか私の肌は薄っすらと上気したように紅潮し、王女として気高く生きてきたはずの生白く美しい肢体は最早雌竜の玩具として嬲りに嬲られている。
そして再び競り上がってきた絶頂の気配にブルンと大きく身を震わせた次の瞬間、雌竜が無防備に開かれた私の胸元へと無造作にその熱い舌を這わせ始めていた。

ジュルッペロペロ・・・チュ・・・チュッチュッ・・・
「うあ・・・あぁ・・・」
小高く盛り上がった双丘とその頂に聳える小さな乳首が、巨大な竜の口先に咥えられて吸い上げられる。
更には口内に吸い込まれて牙の間から突っ張った乳首の先端をザラついた舌先でチロチロと舐られて、私はビクンビクンとまるで痙攣したかのように跳ねながら声にならない声を上げて悶え狂ってしまていた。
だが本能的に胸を庇おうとして両腕に力を込めてみたものの、そんな抵抗は既に予想していたのか私の両足を押さえ付けていたはずの雌竜が今度は私の手首を掴んでその自由を奪っている。
「ほぉら、ここも感じるだろう・・・?フフフフ・・・」
そしてその淫らに這い回る舌先が腕を広げられて顔を出した脇の下にまで及んでくると、私はいよいよそのこそばゆさと暴れ回る竜尾のもたらす快感に屈辱的な屈伏の瞬間を迎えていた。

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