妃の笑う夜2

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くそ・・・なんてことだ・・・俺としたことが・・・
薄暗い燭台の明かりが揺らめく地下の独房で、俺は自分の軽はずみな行動が生んだ最悪の結果を呪っていた。
辺りを見回せば、いかにも犯罪に手を染めそうな凶悪な面をした奴からどうしてこんな若者がと思ってしまう程に邪気のない顔をした精悍な男達が、1人ずつ鉄格子で隔てられた檻に繋がれている。
そしてその自分勝手な基準で見るならば、俺は正に後者に当たる男だった。
俺がこの独房に繋がれることになった罪状は、小さなパン切れを1つ盗んだこと。
俺は産まれたときからこの国に住んでいるから、どんな罪がどんな裁かれ方をするのかは大体知っている。
そして少なくとも3~4年くらい前までは、こんな軽微な罪で牢屋に繋がれるなんてことは絶対に有り得なかった。
なのに・・・ここ数年、この国は何処かが変わってきているような気がする。
所詮一般庶民の俺には政治や城の内部情勢のことなど知る由もないのだが、それでも急に罪に対する罰則が厳しくなったり、王や王妃の外出が減ったりしたことは無関係ではないだろう。

カツン・・・カツン・・・
とその時、誰かが地下牢へ向かって降りてくる足音が聞こえた。
1時間に1回程度の衛兵の見回りはついさっき来たばかりだから、もしかしたら新しい罪人でも連れて来られたのかもしれない。
だがじっと息を殺して階段から聞こえてくる甲高い足音に耳を澄ませていると、やがてその暗がりから思いもかけなかった人物が姿を現す。
「お、王妃様・・・」
そしてぼそりとそう呟いた瞬間、途端に他の檻に入れられていた罪人達が喧しく騒ぎ始めていた。
「王妃様~!ぼ、僕を出してください!」
「お、俺も!俺も出してくれぇ~!」

一体何が起こっているんだ・・・?
つい昨日ここに入れられたばかりの俺にはさっぱりわからなかったが、もしかして王妃に釈放を懇願すればそれが受け入れられるとでもいうのだろうか?
「おい、教えてくれ。どうして皆あんなに必死になって騒いでいるんだ?」
どうしても疑問が拭い切れず、思わず隣の独房で疲れ切った体を横たえていた別の男に小声でそう訊ねてみる。
「週に1度、王妃様が我々の中から1人だけ選んで解放してくれるのさ」
「1人だけ・・・?」
「ああ・・・あいつらは先週も先々週もそれに漏れちまったからな。そろそろ必死なんだろうさ」
それもまたおかしな話だ。
どうせいずれは解放するというのに、軽罪で次々と男達ばかりを独房に繋ぐことに一体何の意味がある?
だがそんなことを考えている内に、大勢の男達を見回ってきた王妃がいよいよ俺の檻の前へとやってきていた。

「あらあなた・・・新顔かしら・・・?」
「あ・・・あ、ああ・・・」
それまでずっと沈黙を保っていたはずの王妃から突然声を掛けられて、一瞬ドキリと胸の鼓動が跳ね上がる。
いや・・・だがこれは、ひょっとして釈放されるチャンスなのだろうか?
俺は思わずおかしな返事を漏らしてからそれに気づいてしまったと思ったものの、王妃の方はそんなことなどまるで気にしていないという様子で静かに独房の前にしゃがみ込んでいた。
「ふふふ・・・なかなかよさそうね・・・」
「え・・・?」
あまりにも小さな声だったために王妃が何と言ったのかまでは上手く聞き取れなかったが、どうやら彼女の興味は完全に俺1人に対して注がれているらしい。

「あなたは、ここから出たいのかしら?」
「も、もちろんだ。誓って言うが、俺は断じて地下牢に繋がれるような大罪は・・・」
だがそこまで言ったその時、王妃がそっと自らの口に人差し指を当てる。
静かにしろということなのだろう。
「いいわよ・・・出してあげる。でも1つだけ、私の頼みを聞いてもらえないかしら・・・?」
「あ、ああ・・・ここから出られるんだったらどんな頼みでも聞くよ」
「そう、よかった・・・それじゃ夜にまたあなたを呼びに来るから、それまでもう少しここで待っていなさい」
王妃はそれだけ言うと、俺の返事も待たずにクルリと踵を返していた。
「あ・・・」
そしてまだ顔を見ていない他の独房の男達には一瞥もくれずに、薄暗い階段の上へと消えて行ってしまう。

「俺・・・助かるのか・・・?」
「ふふふふ・・・くっくっく・・・あんた、随分と運が良いみたいだな」
ポツリと呟いたその独り言に、隣の独房にいたさっきの男が押し殺した笑い声を上げる。
「何がそんなにおかしいんだ?」
「見ろよ、あいつらの顔・・・ありゃあもうあんたが羨ましくて羨ましくて仕方がないって顔だぜ」
そう言われてさっきまで盛大に騒ぎ立てていた他の男達に目を向けると、男の言う通り彼らから向けられた視線はこの上もない羨望の色に染まっていた。

「そう言うあんたは、王妃様に選ばれなくて落胆しているってわけじゃなさそうだな」
「なぁに、慌てるこたぁねぇさ。確かにここは薄暗くってせせこましいとこだが、食い物だけはマシだからな」
まぁ確かに日に2度ある食事は、罪人に与えるにしては割とまともな物が出されているような気がする。
一言で言えば、この地下牢は独房でありながらさほど居心地の悪さを感じないのだ。
「だからよ、俺ぁその時が来るまでゆっくりここで過ごすつもりなのさ」
「そうか・・・」
彼はそこまで言うと、そのまま間もなくして寝息を立て始めていた。
まあいい・・・あの王妃から一体何を頼まれるのか知らないが、今はとにかく夜を待つしかないだろう。
俺は隣の男に倣ってそっと冷たい壁際の床に体を横たえると、全く姿の見えぬ太陽が西の稜線に沈むまで静かに眠りにつくことにした。

カツン・・・カツン・・・
しんと静まり返った地下牢の中に、甲高い王妃の足音が再び響き渡る。
俺はその音で首尾よく目を覚ますと、徐々に牢の前へと近づいてくる王妃をじっと待ち続けていた。
そして・・・
カチャ・・・ギイイィィ・・・
王妃の手にしていた鍵で、鉄格子でできた扉があっけなく解き放たれる。
俺は寝起きの体をフラフラとよろめかせながらもゆっくりと持ち上げると、妖艶な表情を浮かべた王妃の手招きに誘われるようにして開かれた門を潜っていた。
「ふふ・・・さぁ、いらっしゃい・・・」
甘い囁きにも似たその王妃の声に、何だか体中の力が抜けていくような気がしてしまう。
だが何とか王妃の願いとやらを叶えようと足腰に力を入れると、俺は彼女の後について1歩1歩地上へと続く階段を上って行った。

「ここは・・・?」
王妃に連れられるがままに広い城内を歩き回った末、ようやく目的地と見える1つの部屋が見えてくる。
城の最上階にある燭台に照らされた廊下の奥にあったその部屋は、城の構造をよく知らないこの俺でも一目で寝室だということが見て取れた。
まさか王妃の願いというのは・・・夜のお相手・・・?
いや・・・いくらなんでも流石にそれはないだろう。
第一そんなことは王が黙ってはいないだろうし、ましてや今の俺は犯罪者として扱われている身だ。
一国の王妃ともあろう人が、わざわざ地下牢から引っ張ってきた男と一夜を過ごすことなどあるはずがない。

ギイィ・・・
だがそんな俺の疑問をよそに、重々しい音を立てて内開きの扉が開かれていく。
そして王妃とともに部屋の中に入ると、俺は部屋の中央に置かれた馬鹿でかいベッドに座るよう促されていた。
「そこに座りなさい・・・」
「あ・・・ああ、わかった」
ポフッという柔らかな音がして、腰かけたベッドが緩やかに沈み込む。
「それで・・・俺は一体何をすれば・・・?」
「ふふふふ・・・すぐにわかるわ。すぐにね・・・」
そう言いながら、彼女が着ていた服をその場に脱ぎ始める。
「お、王妃様・・・まさか・・・」
有り得ないとは思いながらも薄々想像していた通りの展開に、思わず王妃に向かって制止の声を掛けてしまう。
だがその瞬間、俺の視界は一面眩いばかりの白一色に塗り潰されていた。

ピカッ
「うあっ!」
まるで雷が落ちたのかと思った程の激しい閃光が、寝室の中を明るく照らし出す。
そしてようやく視界が元に戻った時、ついさっきまで王妃がいたはずの場所に全く予想だにしていなかったモノが突如として姿を現していた。
「う、うわああああ!!」
凄まじい恐怖に彩られた俺の悲鳴にゆっくりと眼を細めた巨大な紫色の雌龍が、幾重にもとぐろを巻いて眼前の獲物を睨め降ろしていたのだ。
「な・・・な、何だお前は・・・」
あまりの驚きに腰が抜けてしまい、ベッドから腰を上げることもままならない。
だが龍はその俺の言葉にクスクスとした哄笑を浮かべると、突然大きな顎を俺の前に突き出してきた。

「ひっ・・・!」
半開きになったその龍の口から鋭い牙の群れが覗いていて、一瞬食われるのかと思って咄嗟に身構えてしまう。
そしてベッドの上に倒れ込んだ俺の上に、紫色の鱗と白い被膜に覆われた極太の龍の体がドスンと乗せられた。
そのずっしりとした龍尾に押し潰され、柔らかなベッドの上に腹部を縫いつけられてしまう。
「う、うぐ・・・ぅ・・・」
「クフフフフ・・・いくらあがいても無駄さ・・・妾から逃げられるとでも思うのかい・・・?」
やがてバタバタともがく俺の両腕をベッドの上に押し付けると、龍がねっとりとした老婆の声でそう囁いてきた。
「お、お前が・・・お前が王妃の正体なのか・・・?」
「そうさ・・・なかなか察しがいいじゃないか」
「い、いつからなんだ・・・?」
俺がそう言うと、龍がいささか驚きを含んだ視線を俺へと向ける。

「そんなに気になるのかい・・・?」
絶体絶命の窮地にもかかわらず妾のことを訊いてくるこの人間に、妾は少しだけ興味を抱いていた。
王妃と入れ替わってからこの3年間、実に百数十人もの男達をこの身の糧としてきたものだが、その全てがほぼ例外なく妾に捕えられただけで泣き叫んでは無益な命乞いを始める腑抜けどもばかりだったのだ。
なのにこの男は、これから自分が辿るであろう結末をもう既に悟っているらしい。
「ど、どうせ俺を食い殺すつもりなんだろ・・・?だったら・・・その前に教えてくれ」
「3年程前からさ・・・クフフ・・・王妃の生活っていうのも、なかなかやめられなくなっちまってねぇ・・・」
そう言いながら、荒々しく組み敷いた男の顔にペロリと分厚い舌を這わせてやる。
「何しろ毎週のように人間が味わえるんだからねぇ・・・願ったり叶ったりというところさ・・・クフフ・・・」
だが軽い脅しのつもりで言ったその言葉に、男は何故か納得の表情を浮かべていた。

「そうか・・・道理で国の様子が変わっちまったわけだ・・・王妃が、こんな化け物と摩り替ってたんだからな」
「クフフフ・・・妾を面と向かって化け物と呼ぶなんて、なかなか面白い男だねぇ・・・」
ドシッ・・・
妾はそう言うと、更にとぐろを一巻き男の上に重ねてその全身を広いベッドの上に押し付けていた。
「う・・・はぁ・・・」
巨大な蛇体に容赦なく押し潰された男の口から、息苦しげな喘ぎが漏れる。
だがそれでもなお、最早完全に無力と化したはずの男の顔に絶望の影は見当たらなかった。
両の手足を封じられて無防備となったその首や頭にはすぐにでも妾の牙が届くというのに、この不思議な余裕は一体どこからくるのだろうか・・・?
そんな妾の疑問の色を感じ取ったのか、男の方が先にその心中を口にする。

「何だ・・・あんた、俺が今までの獲物と違うっていう顔をしてるな・・・?」
「おやおや・・・人間に考えを見透かされちまったのは初めてだよ。お前は、妾が怖くはないのかい・・・?」
「怖いさ・・・本当はこうしてる今だって、必死に体が震えちまうのを我慢してるんだ。お前らが・・・」
その瞬間、男の顔に深い悲しみの伴った激しい憎悪が一瞬だけ顔を出す。
だがそれもすぐに消えると、彼は1つ大きな息をついて先を続けていた。
「俺の両親は・・・お前のような人間に化けるドラゴンどもに殺されたんだ・・・今から8年前にね・・・」
そう言ってそっと妾から視線を外した男の目に、苦い過去の溶け込んだ熱い雫がジワリと溢れ出す。
「それ以来、俺はずっと独りで生きてきたんだ。パン切れを盗んじまったのだって、それが苦しくて・・・」
「ふぅん・・・それでお前は、妾を憎んでいるのかい・・・?」
「お前には恨みなんてないよ・・・両親を殺したドラゴンどもはノーランドの兵士達が仇を討ってくれた」

そこまで言うと、どこにそんな力が残っていたのかすっかりベッドに縫い付けられて動けぬはずの男が妾の尾の下でギュッと拳を握り締める感触が伝わってくる。
「でも・・・俺はもうドラゴンどもに弱みを見せるつもりはない。たとえこのままお前に食われたって・・・」
成る程・・・つまりこの男は、妾の正体を知ったその瞬間にもう生き延びることを諦めたのだろう。
死に対する恐怖は、生きることへの渇望から生まれるもの。
最初から死を覚悟した者に、どんな苦痛や脅しも用を成すはずがなかったのだ。
だがこの男なら・・・或いは妾の伴侶としてはより相応しいのかも知れない。
あんな妾の顔色を窺ってばかりいる腰抜けの王などとよりも、もっと刺激的な生活ができるような気がするのだ。

「でも・・・お前も本当は助かりたいんだろう・・・?」
その龍の言葉には、どこかさっきまでとは違う雰囲気があった。
生を求めて無駄なあがきに懸命になる無様な獲物を嘲るような口調から、まるで俺の心を覗き込むような静かで落ち着いた声へと変わったのだ。
「・・・・・・ああ・・・」
思いの内を吐き出した俺は全身の力を抜いて眼前の龍に体を預けると、虚空を見つめながらそう返事を返した。
「もしお前にその意思があるなら・・・助けてやるよ」
「ほ、本当か?」
「もちろんさ・・・ただその時は・・・一生妾の傍にいてもらうことになるけれどねぇ・・・」
一生こいつの傍に・・・?一体どういう意味だ・・・?
いや・・・そんなことはどうでもいい。
決して表に出すつもりはないが、生きる望みがあるのならそれに縋りたいのは誰でも同じだ。

「どうすればいいんだ・・・?」
「クフフフ・・・お前も所詮は人の子さね・・・なぁに、簡単なこと・・・朝まで生きていればいいだけさ」
朝まで生きていること・・・?
それじゃあこの龍には、当面俺を殺すつもりはないということなのだろうか・・・?
だがその時、どこからともなくクチュリという小さな水音が聞こえてきた。
「でもお前を食い殺す代わりに・・・クフフ・・・こちらの方をたっぷりと頂くことにするさね・・・」
俺はその言葉を聞いて、初めてこの雌龍の目的を理解していた。

やがてゴクリと息を呑んだ俺の下半身に雌龍が体を揺らす感触が伝わってくると、股間の辺りに何か先の尖った物が数本押し当てられる。
これは・・・こいつの脚の爪だろうか・・・?
ビ・・・ブチッ・・・ビリリリッ
だが次の瞬間、雌龍はその脚で下に履いていた俺の服を鷲掴みにすると力任せにそれを引き千切っていた。
「うああっ・・・な、何を・・・」
激しい衝撃の割に大した痛みは感じなかったものの、その凄まじい龍の膂力の前に恐怖で体が震えてしまう。
そして散り散りの布切れと化した服の残骸をポイッとベッドの外に投げ捨てると、破れた服の間から顔を覗かせた俺のペニスに体をうねらせた雌龍の秘所がぬらりと滑り込んできた。

ヌル・・・ニュルル・・・
「くっ・・・あっ・・・こ、これ・・・は・・・」
ペニスを押し付けられた淫唇がまるで喜んでいるかのようにペロリとその先端を舐め上げ、ジュクジュクと煮立った熱い粘液がたっぷりと敏感な部分に塗り込められる。
その極上の媚薬のような雌龍の愛液がペニスの先端を覆った途端に、俺はそれまで小さく縮み上がっていた雄槍がムクムクと急速な成長を遂げていく感触を味わっていた。
「想像以上の心地良さだろう・・・?そぉら・・・もっともっと、たっぷりと味わわせてやるさね・・・」
「う・・・ふ・・・くあぁっ・・・」
そしてそう言いながら、雌龍が未知の快楽に仰け反って悶えている俺の顔を眺め回す。
「でもこの程度で音を上げているようじゃ、妾の中なんて到底耐え切れないよぉ・・・」
だがそんな脅し文句などわざわざ言われなくとも、ペニスの先端が触れているその秘裂の中が一体どれほどの威力を持っているのかはその片鱗を味わっている俺が1番よくわかっていた。
雌龍がもうほんの少し体を捻れば、固くしこった俺の雄槍がいとも容易くその熱い坩堝を貫くことだろう。
自力ではどうすることもできずに両手を力一杯握り締めながら、俺はやがて訪れるであろうその瞬間をじっと待ち続けていた。

「なかなか我慢強いじゃないか・・・あの男なら、今頃はとっくに妾に泣き付いている頃だろうにねぇ・・・」
あの男・・・?もしかして、王のことを言っているのだろうか・・・?
もしそうだとすれば、王もまた毎夜のようにこの恐ろしい妃に弄ばれながらもその秘密を誰にも打ち明けられないままこの数年間を過ごしてきたのだろう。
立場上王妃を遠ざけることのできない王にとって、秘密の漏洩は即座に死に直結するはずだ。
だがふとそんな思いに耽っていたのも束の間、雌龍はいつの間にかその両手を自らのとぐろの隙間に差し込んでいた。
そしてその鋭くも冷たい爪先が、衣服の上から俺の両の乳首に添えられる。

「クフフ・・・さぁて・・・そろそろお前のモノを搾らせてもらうとするよ・・・」
「あ・・・ああ・・・」
クリクリと胸の蕾を軽く弄ばれる快感に顔を歪めながらも、俺はキッと龍の顔を見返しながらそう返事を返した。
その眼前で、雌龍がククッと不気味な笑みを浮かべていく。
ズ・・・ジュブ・・・ニュブ・・・グブブブ・・・
「はぁっ・・・あぅ・・・ぐ・・・くは・・・」
その瞬間、何の予兆もなしにいきり立った俺の肉棒が燃え上がる柔肉の海へと沈められていった。
蕩けた肉壺がペニスを扱き下ろすその挿入の刺激に、背筋がビクンと跳ね上がる。
そして抵抗する間も無く根元まで丸呑みにされた肉棒の根元がキュッときつく締め上げられると、いよいよ雌龍が捕らえた獲物を嬲り尽そうとその巨体を躍らせていた。

ギュッ!グチュッ!ヌチャ・・・グギュゥ・・・!
「うあああ・・・こ、こんな・・・あ・・・はあぁぁ・・・」
ペニスを激しく吸い上げられては膣を満たした熱い愛液と肉襞に勢いよく揉み潰され、俺の精を根こそぎ搾り取ろうと雌の野性が暴れ狂う。
入れているだけでも果ててしまうのではないかと思える程の熱い肉洞が、まるでそれ自体意思を持った別の生き物のように捕らえた雄をしゃぶり尽していた。
「ほぉら・・・とどめだよぉ・・・」
クリクリ・・・ギチュ・・・ヌチュウウウゥ・・・
だ、だめだ・・・こ、こんなの・・・人間に耐えられるわけない・・・!
「あ・・・わ・・・うあああああああ・・・!」
ドク・・・ビュビュビュ~~・・・
爪先で乳首を転がされるこそばゆい快感と本当にペニスがペシャンコされてしまうのではないかと思える程の激しい圧搾を同時に叩き込まれ、俺はついに雌龍の前で屈服の嬌声を迸らせながら熱い精を搾り取られていた。

グブ・・・グシュ・・・
「かは・・・ふあぁっ・・・」
辛うじて尿道に留まった精の残滓までもを啜り上げようというのか、射精の刺激に痙攣しているペニスがなおも力強く揉み上げられる。
その容赦のない雌龍の蹂躙に、俺はロクにもがくこともできぬまま弱々しく首を振って息を吐き出していた。
快楽に弛緩した体に鱗を纏った蛇体の重量がメシメシという音とともに預けられ、ベッドの底が抜けてしまうのではないか思う程に柔らかな褥の中へと塗り込められてしまう。
ピュッ・・・ピュルッ
「うっあっ・・・あぁ・・・」
そして勢いよく肉棒を扱き上げた肉襞の波とともに尿道に残っていた数滴の精が搾り出されると、龍が酷く憔悴した俺の頬を満足げに舐め回していた。
「クフフフ・・・可愛い顔だね・・・まるで屈辱が滲み出しているようじゃないか・・・ええ・・・?」
「うぅ・・・く、くそ・・・」

かつてこの龍の餌食となった数多の男達も、きっとこうしてジワジワと嬲り尽くされては深い絶望と耐え難い恥辱に塗れて命を落としていったのだろう。
もしこんな責苦を朝まで続けられたとしたら、たとえ死ななかったにしてもまず正気は保っていられそうにない。
それに・・・これ以上体の力が抜けたらこの龍の巨体にペシャンコに押し潰されてしまいそうだ。
両の手足はもうどこもすっかりと余すところなく暖かい尾の下敷きにされていて、何とか自力で動かすことができるのはベッドととぐろの間から僅かに飛び出している頭だけ・・・
しかも胸の上へと載せられた龍の胴体はまるで俺の胸骨を残らず圧し折らんとばかりに肺を圧迫し、それでいて敏感な乳首を弄ぶ龍の腕を巧みに避けながら呼吸とともにゆっくりと上下している。

「ほ、本当に俺を助けるつもりがあるのか・・・?」
「さぁねぇ・・・流石の妾も、一旦燃え上っちまったら獲物に加減なんてできやしないのさ・・・」
「お、おいっ・・・そ、それじゃ約束・・・が・・・あっ・・・」
そう言い掛けた途端に胸にかけられた龍の体重が少しだけ増し、詰まった息が抗議の語尾を切り落とす。
「お黙り・・・夜が明けるまではお前も妾の生贄・・・力尽きたが最期、妾の糧になるだけなんだからね・・・」
「そ、そんな・・・」
「クフフフフ・・・随分と饒舌になってきた所を見ると、そろそろ続きを再開してもいいのかい・・・?」
もう既に精も根も尽き果てかけた俺へ更なる追い打ちをかけるように、ニヤついた紫龍がベロリと大きな舌舐めずりをする。
もしこの龍が先程俺に言った救いの言葉を今までの生贄とやら全員に掛けていたとしたなら、憐れな犠牲者達は皆その到底叶うべくもない希望に縋ったまま無残な死を迎えていったことだろう。
だがたとえこの溢れんばかりの嗜虐心を剥き出しにする雌龍の言葉がどれほど信じ難いものであったとしても、俺にはもう風前の灯火となった命の炎を踏み消されぬよう必死に死守する以外道はないのだ。

クチュ・・・ニュブ・・・
やがて微かに聞こえ始めた淫らな音が、1度は過ぎ去ったはずの快楽の嵐が再び吹き返し始めたことを告げる。
「あはっ・・・は・・・はぁ・・・」
俺は今にも潰れてしまいそうな肺に辛うじてハッハッという短い息を吸い込みながら、股間に叩き付けられる甘すぎる暴力に必死に抗っていた。
何よりも恐ろしいのは、この雌龍に俺に対する殺意が全くないということだ。
完全に欲情し切っている今のこいつは、ただ自らの本能の求めるままに身をくねらせながら腹下に捻じ伏せた雄からその精を奪おうとしているだけに過ぎないのだろう。
だが同じドラゴンが相手であるならいざ知らず、脆弱な体と薄弱な心しか持たぬ小さな人間がその巨大な体躯から発散される激しい欲求の捌け口にされて無事で済むはずがない。

グシュッ・・・ジュル・・・ジュルル・・・
「うあっ・・・あがああぁ・・・」
「クフ・・・クフフフ・・・なんていい声なんだろうねぇ・・・そぉら、もっと盛大に出しな・・・!」
クチュクチュクチュクチュクチュクチュ・・・
「・・・・・・っ・・・!」
やがて早くも底をつきそうな薄い白濁が雄槍の先端からピュッと小さな雫を飛ばしたその直後、トロトロに蕩けた極上の膣壁が限界一杯まで張り詰めた俺の怒張を勢いよく摩り下ろす。
そしてその想像を絶するあまりの気持ちよさにほんの一言の声も上げることができないまま肉体と意識を繋ぐ糸をぷっつりと断ち切られ、俺はようやく雌龍の支配する苛烈な快楽の泥沼から引き上げられていった。

ズ・・・プツ・・・
「う・・・あっ・・・い、痛・・・」
「ほら、さっさと起きな・・・一体いつまで寝てるつもりだい・・・?」
突然喉元に感じた鈍い痛みに驚いて目を覚ますと、俺の喉元に鋭く尖った龍の爪先が押し付けられていた。
そして危うく永遠の眠りにつかされそうだった俺が恐る恐るゴクリと唾を飲み込むと、ようやくその切っ先が取り除かれる。
咄嗟に辺りを見渡すと既に夜明けを迎えていたようで、寝室の大窓から差し込む明るい朝日が部屋中を爽やかに照らし出していた。
気を失う直前まで俺を下敷きにしていた幾重もの重い龍尾は既に退けられていて、どこから取り出してきたのかほとんど全裸に近い体が冷えぬように暖かい毛布まで掛けられている。
そして広大なベッドの中央で眠る俺をグルリと取り囲むように、龍がその長い体を器用に積み重ねていた。

「お、俺は・・・助かったのか・・・?」
つい数分前の意識が記憶していたのとはあまりに違うその光景に、思わずそんな馬鹿げたことを訊いてしまう。
「クフフ・・・助かったと思うかどうかはお前次第さ・・・そら、さっさと服を着な」
そう言われた俺の毛布の上に、龍がひょいっと豪華な装飾の施された男性用の服を放り投げる。
「何だこれ・・・これを着ろっていうのか?」
「何さ・・・嫌なのかい・・・?」
俺はふとその服の本来の持ち主について考えを巡らせようとしたものの、妖しく細められた雌龍の鋭い眼差しに恐れを成して素直に従うことにした。
折角命が助かったのだから、今またこいつを挑発するような真似はすべきではないだろう。
そして意外な程にピッタリとサイズの合った上下の皇族衣装を身に付けると、俺は再び龍から下されるであろう次の命令を静かに待っていた。


「うう~ん・・・」
誰にも見られていないのをいいことに、私は寝室へと続く廊下を歩きながら大きく背を伸ばしていた。
昨晩は実に心地よい、そして深い深い眠りについたものだった。
まぁこの3年間ぐっすり眠れる日はたったの週に1度だけという過酷な生活を送っているのだから、貴重な休みによく眠れないことの方がどうかしているというべきなのだが・・・
そんなことを考えながら角を曲がると、やがてその突き当たりに例の寝室が見えてくる。
昨夜は、一体どんな男があの怪物の餌食になったのだろうか?
きっと残酷さを露わにした雌龍に想像するのも恐ろしい責苦を味わわされては、無残に泣き叫びながら暗い腹の底へと呑まれていったのに違いない。
生贄候補として今も地下牢に捕えられている男達には気の毒なことをしたと思ってはいるものの、彼らの命が私の束の間の安息を支えているのだと思うとその憐憫が感謝の念へと摩り替わってしまう。
そしてようやく寝室の重い扉へと手が掛かると、私はいつもの儀式のように大きく息を呑んでいた。

ギイイィ・・・
軋んだ扉が開く音とともに、部屋の中の光景が少しづつ切り取られて視界の中に飛び込んでくる。
そしてその途中ベッドの上で静かに佇んでいた雌龍の姿を目にして、私は思わずビクリと体を震わせた。
「ど、どうした・・・まだ準備ができていないのか・・・?」
いつもの龍ならとっくに妃の姿に化けては姿見の前で紫色の髪をせっせと黒く染め上げている頃のはずだ。
来る時間を誤ったのだろうか・・・?
「ああ、そうさ・・・生憎、まだ1つだけやることが残っていてねぇ・・・」
雌龍はそう言うと、その長い尾の先を音もなくそっと私の方へと伸ばしてきた。
そのいつもとは違う雌龍の様子に一瞬本能的な身の危険を感じたものの、そうかといって逃げるわけにもいかずされるがままその屈強なとぐろの中へと誘われてしまう。
だが本当はその時・・・私は何が何でもその場から逃げ出すべきだったのだ。

ややあって、カタン・・・という耳慣れない物音が私の背後から聞こえてくる。
一瞬衛兵か誰かが何用かあって寝室に入ってこようとしたのかとも思ったが、龍のとぐろに巻かれたまま背後を振り向いた私の目に飛び込んできたのはもっと予想外のものだった。
「だ、誰だ!?」
今まで内開きの扉の陰にでも隠れていたのか、見たところ私と大して歳の変わらぬ若者がふらりと立っている。
だが何よりも私の目を引いたのは、その男が煌びやかな皇族衣装を纏っていたことだった。
「あの男は・・・昨夜の生贄か・・・?一体どういうことだ?」
突然の闖入者にもかかわらず雌龍が全く慌てたような反応を見せていないことを考えれば、昨晩この怪物と共に過ごした人間なのだと考えるのが自然というものだろう。
「クフフフ・・・お前は相変わらず鈍い人間だねぇ・・・」
楽しんでいるのか呆れているのか、私に逃げられぬように手足を絡め取った龍の顔が微かに綻ぶ。

「お前にはもう愛想が尽きたのさ。その男の方が、似非の王を気取ってるお前なんかよりずっと骨があるしねぇ」
「ふ、ふざけるな!あの男は生贄だろう?生かしておけばお前の正体も皆に知られることになるんだぞ!」
「おやおや・・・まだわからないのかい・・・」
そう言うと、雌龍が王に巻き付けた自らの尾を軽く引き絞った。
ギュッという音とともに寝間着姿の体が締め上げられ、こちらを向いた王の顔に苦しげな表情が浮かぶ。
「う・・・あ・・・ま、まさか・・・よ、よせぇ・・・」
まるで巨大な紫色の寝袋に収まっているかのように、王は不気味に嗤う雌龍の下で必死でもがき続けていた。
だがやがてその抵抗が無意味であることを悟ったのか、暴れるのを止めた憐れな獲物が恐怖に震え始める。
それを見届けると、龍がとぐろの端々から覗く王の寝間着をその鋭い爪で引き裂いていった。
パラパラと細かな布切れが辺りに舞い、まだ辛うじて威厳を保っていた王が全てを剥ぎ取られていく。
そして・・・皮むきを終えた食事を前にした龍がガバッという音とともに大きくその顎を開けていた。

「う、うわああああ・・・!」
やがて龍がとぐろから突き出していた王の上半身をパクリと咥えた瞬間、凄まじい恐怖に彩られた悲鳴が上がる。
そしてその首に長い舌をクルリと巻き付けると、驚くべきことに龍がベッドに寄りかかったまま王を捕らえているとぐろの方を頭上へと持ち上げていた。
15メートルもの長大な巨龍の体重が全て大きなベッドへと預けられ、メキメキという軋みが王の悲鳴と重なって寝室中に響き渡る。
「や、やめろ・・・やめてくれぇ・・・わあああぁぁ・・・」
俺の眼前で、稀に見る龍の捕食の光景が展開されていた。
すっぽりと肩口まで龍の口内へと押し込まれてしまった王が、今度はとぐろの上から突き出した両足をバタバタと暴れさせている。
だが龍の方は何ら表情を変えることもなく、一巻き、また一巻きととぐろを解きながら王を呑み込んでいった。

あ、熱い・・・誰か・・・助けて・・・
舌と顎と尾の巧みな締め付けに、私は成す術もなく龍の口内へと押し込められてしまっていた。
力強く蠢く舌で熱湯のように煮え滾る唾液を全身へと余すところなく塗りたくられ、ジンジンとした不思議な痺れが私のあらゆる感覚を少しずつ奪っていく。
そして足の方からバクンという顎の閉じられた音が聞こえてくると、私はついに逃れようのない完全な闇の中へと囚われてしまっていた。
ズルッ、ズルッとぬめる食道を少しずつ滑り落ちるうちに、次第に死の恐怖すらもが薄れていってしまう。
皮膚の灼けるような粘液が痛みとも快感ともつかない奇妙な感覚を呼び覚まし、ゆったりとした龍の脈動と早鐘のように打ち続ける私の鼓動が静寂の中で不規則な旋律を奏でていた。
早く意識を失いたいと思っても龍の呼吸とともに腹の中にも幾分か新鮮な酸素が送られてくるらしく、ただただいつ果てるとも知れぬ闇に覆われた狭い肉洞の中を飲み下されていくばかり・・・

「クフフフフ・・・」
あっという間に人間1人をペロリと呑み込んだ龍が、満足げな顔で俺を眺め下ろしていた。
そのただでさえも太い胴体の一部はまるで大きな獲物を丸呑みにした大蛇のように不自然に膨れていて、今もなお俺の代わりに生贄となった王がその腹の底に向かって落ちていく様が見て取れる。
まだ息があるのか時折その膨らみがもぞもぞと小さく揺れ動くものの、それは寧ろ王にとっては不運なことだったに違いない。
何故なら、彼はこれから数時間もの長い時間を掛けてじわじわと溶かされていく恐怖を、一条の光も差し込んでこない完全な闇の中で味わい続けることになるのだ。
だがこれで・・・この国は一体どうなってしまうというのだろうか?
「お、王を殺しちまって・・・大丈夫なのか・・・?」
「なぁに・・・お前が次の王になるのさ。妾が一体何のために、お前にその服を着せたと思っているんだい?」
「なっ・・・」
やがてあっさりと言い放たれたその雌龍の言葉に、俺は初めてあの時言われたことの意味を理解していた。

「俺に一生傍にいてもらうっていうのは・・・こう言うことだったんだな・・・」
だがそうは言っても、いきなり王が変わるなどということが民衆に受け入れられるのだろうか・・・?
この雌龍が一体どんな企みを抱いているのかは知らないが、少なくともそうすんなり事が運ぶとは思えない。
「お前は黙って妾の言うことを聞いていればいいのさ・・・逆らえばどうなるか・・・わかるだろう・・・?」
そう言いながら、龍がもう腹の中程まで移動した不気味な膨らみをその手で摩る。
まあ・・・1歩間違えば今頃は俺があの暗い腹の中で喘ぎながら死を待っていたのだと考えれば、王妃に化けた雌龍の傀儡として生かされている方がまだマシというものなのだろう。
「それで・・・俺はどうすればいいんだ?言っておくが、俺は政治のことなんて何も知らないんだぞ?」
「妾が教えてやるよ・・・クフフフ・・・もう3年もこの国を治めてきたんだ・・・簡単なものさ・・・」
まさか俺がこの国の王になってこんな雌龍から人間の国の政治を教わることになるとは・・・
それはそれで人間の俺としては複雑な気分なのだが、それよりももっと重大な疑問がふと頭をもたげてしまう。

「でもそれって・・・俺・・・必要なのか?」
「必要さ・・・お前がいなかったら、妾は毎晩一体誰から搾り取ればいいと言うんだい・・・?」
「ああ、そうか・・・あんたにとって必要だってことなんだな」
思わず諦め顔でそう漏らしたその瞬間、長い龍の尾が不意に俺の体へクルリと巻き付けられる。
そしてグイッと力任せにベッドの上へと引き寄せられると、俺は白い皮膜に覆われた龍の腹に寄りかかるようにしてその顔を見上げさせられていた。
「自惚れるでないよ・・・お前の代わりなんて、そこらにいくらでもいるんだからねぇ・・・」
ベロリという音とともに分厚い舌で頬を舐め上げられ、そのザラザラとした熱い感触が俺の心を縛ろうと恐怖という名の鎖を持ち上げる。

だがここで負けてしまっては、結局いつかはあの王と同じように見限られて食われてしまうのに違いない。
俺は歯を食い縛って今にも消えてしまいそうだった精一杯の勇気を掻き集めると、勝ち誇ったかのように笑っている雌龍に一矢報いるべく声を絞り出した。
「へっ・・・そ、そういうあんただって、もし周りに正体がバレた時は俺が直々に引導を渡してやるからな」
「おやおや・・・この妾に向かって、また随分と生意気な口をきいてくれるじゃないか・・・」
その言葉とともに、俺の体を巻き取った龍の尾が少しだけきつく締められる。
「うっ・・・」
「クフフ・・・だけど、妾はお前のそういう所が気に入ったのさね・・・」
そう言ってもう1度俺の頬を舐め上げた雌龍の仕草に、俺は少しだけ心を落ち着けていた。


王が行方不明になったという噂は、その日の内にまるで山火事の如く国中へと広がった。
もちろん、情報の出所があの王妃であったことは言うまでもないだろう。
俺はその王妃から騒ぎが収まるまでのしばらく間、前王の書斎で暮らすようにと言い渡されていた。
ここには既に前王の捜索の手が入っていたため、たとえ1日中篭っていても時折俺の様子を見に来る王妃以外にやってくる者はいないのだ。
今は国中が蜂の巣を突いたような騒ぎになっているのだろうが、やがて民衆の関心も王の後継者の話題へと切り替わっていくに違いない。
そうしていざ誰か新たな王を立てねばならないとなった時、最も発言力が大きいのは他でもないあの王妃だ。
彼女はその席で、俺をこの国の王として民衆に認めさせようと考えているのだろう。
全く・・・冷静になって考えれば余りに荒唐無稽で馬鹿馬鹿しい計画だが、どうにも状況を窺っている限りでは情けないことにあの怪物の思惑通りになってしまいそうな雰囲気がある。
いかに小国とはいえ仮にも国の中枢で働いてきた城の人間達までもがたった1匹の老獪な雌龍に手玉に取られているのだから、案外彼女の言う通り国を治めることなど造作もないことなのかも知れない。
ぼーっとした頭でそんなことを考えながら、俺は書斎の窓から覗く城下町の様子におぼろげな意識を傾けていた。

かくして前王の失踪から2週間後、王妃の希望により1人の男が新たな国の指導者として国民に紹介された。
前王と同じくまだ年若いその男に民衆は初め様々な疑惑や好奇の目を向けることになるだろうが、所詮王族や城内の事情など一般庶民には手の届かぬ話。
やがては彼らの関心も、またとりとめのない日常へと戻っていくことだろう。
そして夕焼けに染まる大きな城の中では、どことなく落ち着かぬ様子で玉座に身を預ける王に美しい黒髪を揺らす王妃がそっと寄り添っていた。
「本当に・・・これでいいのか?」
やがて不安げな面持ちで、王が傍らの王妃にそう問い掛ける。
それを聞くと、王妃は周囲を見回して誰もいないことを確認してから新たな夫の耳元に口を近づけた。

「クフフフ・・・そんなことより、お前は今夜の心配でもしていた方がいいんじゃないのかい・・・?」
「今夜・・・?どうして?」
今夜・・・一体何があるというのだろうか?
「なぁに・・・この2週間、妾も贄を取らずに随分と飢えちまってたからねぇ・・・今夜は覚悟おしよ・・・」
「あ、ああ・・・そういうことか・・・」
今晩閨の中で味わわされるであろうその容赦のない龍妃の宴に不安と期待の入り混じった息を呑む俺の隣で、王妃がその顔にねっとりと絡み付くかのような妖艶な笑みを浮かべて佇んでいた。



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