押掛女房朱鷺色恋記3

    

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 いや、これは。ひょっとして。

 (気持ちいいのかも?)

 『はぁ……はぁ……ハヤく……入れさ、せて、イレ……』

 私の推測を裏付けるようにヴィストさんの官能の呻きが応え――。

 ――瞬間。私の中にとんでもない推測が閃いた。

 (入れる……挿れる――まさか!)

 今彼が見ている夢は――罪悪感が一気に焼き尽くされる。
これは、嫉妬だ。私がこんなに、こんなにも悩んでいるのに……彼は手の届かない所で誰かとよろしくやっているなんて!

 (私と、私というものがありながらっ!!)

 頭の芯がカッと熱くなる。身勝手なのは百も承知で、私はヴィストさんに覆いかぶさっていた。

 (じゃあ……私もこちらのヴィストさんと、シテしまってもいいですよね!)


 猛る情欲のままに口を大きく開いて獲物に狙いを定める。一思いに楽にはさせてあげない。ゆっくりと、思いのままに楽しんで味わってから……。

 バクッ!……ジュブジュブジュブ!

 あつかましくいきりたつ彼の勃起に舌を絡めてしゃぶり上げる。途端に生臭くも芳しい……雄の性臭が私の脳髄を痺れさせた。

 (コレが、これが欲しかった……)

 ニチュッ、ニチュルルッ。


 頬張った肉棒に舌を巻き付けながら口腔内に擦り付ける。先走るほろ苦い性汁を味わう度に強まる背徳感がたまらない。

 (あぁ…私はこんな淫らじゃないのに…… スーフィ、でも今貴方はこんないやらしい息遣いで……大好きな雄の精を求めてるのよ)

 自分自身に語りかけて羞恥と興奮をさらに強める。もう、貞節なんてどうでもいい。私はメス、淫らに発情しきったメスなのだ。そして、ヴィストさ、いやこの組み敷いているオスは――私だけのモノ。

 ブチュルッ……ピチャッ。

 私の股間が熱く濡れ爛れて、滴っていた。その奥が飢えて疼いて蠢いて我慢ができな
い! あぁ……早く。はやくハヤク!


 (でも、その前に上のお口で……ね?)

 舌をしっかりとオスのイチモツに巻き付け直し、緩急を付けて締め付けを繰り返しては、力強く扱き上げて射精を促していく。

 ギチュルッ! ギチュギチュ……。

 『うぅぅっ! がっ……まだ……だ。こんな……』

 往生際の悪い事に彼は必死に耐えている。我慢しなくていいんですよ……その節操の無い肉棒から出したかったんでしょう?

 『こんな……は嫌だっ。だって俺には……』

 『グルウゥ……嫌? なんデ? 雌なら誰でモいいンじゃなかったんですカッ?』

 なかなか陥落しない雄に私は苛立ってしまう。問いなど聞こえてない筈なのに、またもや的確な返事が返ってきた。

 『俺はぁっ……本当は……が好きなんだっ! だからこんなカタチでしたくな……』

 (ァッ!……あっ。あああああああ?)

 超特大の雷が私の全身を直撃した気がした。

 (ヴィ……さんの好きな、好きなヒト?)

 じゃあ彼は。


 誰かと交尾を楽しんでいるわけではなくて。

 誰かに犯されかかっている……のだろうか。

 誰だろう。

 (まさか私?……いや。そんな筈は)

 全身から欲望のほてりが一気に引いた。勘でしかないけれど、私の責めに耐えるかの様なヴィストさんを思い返すと意外と当たっている気がする。でもそんな事よりも……もし彼に心に決めた異性がいたとしたら。

 (これまでの修行の日々は何だったのだろう?……私ってバカだ)

 その可能性は十分予測できたのに。おばあさまいわく恋は盲目だとはいうけれど、いくらなんでも間抜けすぎる。

 (イヤ……せっかくココまで辿り着いたのに。いやだ嫌だ嫌だ嫌だ!)

 世界が自分中心に回っていると勘違いして踊り続けた……哀れな私。泣き叫びそうになるのをかろうじて押さえ込んだ私はどうにもならない絶望に煩悶した。

 『ヴィストさんっ……! 好きな人って誰ですか? 誰なんですかっ?』

 乱暴に彼の体を揺すって見ても反応は無かった。正直聞いてどうするのか自分でも分からない。潔くあきらめるのか、嫉妬に狂って相手や……彼を傷つけるのか。それとも。


 (せめて体だけは……私のモノに)

 危険な考えに戦慄するが、すぐに心地良い誘惑に変わる。目の前に格好の獲物がいるのにわざわざ逃す道理なんて、ない。ないのだ。ないのだけれど……

 ニュチュパッ……。

 私の雌の器官がパックリと開いた。答えなんて待たなくても本能のまま貪りつくせばいいと粘っこく訴えてくる。

 (私は、私はヴィストさんが欲しい……でもこれは、きっとこんなのじゃない)

 心に欲望を止める力はもはや無く、ゆっくりと体勢を変え彼の腰に跨った。

 (それならば。彼の何が……何が欲しかったのだろう?)

 倒錯した喜びと悲しみに流されるままに。私は虚しい交わりに身を委ねようとしていた。

 ――ああ、腰が……堕ちて、イク。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 ニュプ……ギュプププ……。

 淫らな音に己がペニスを飲み込まれた瞬間。ヴィストは圧倒的な快楽に押しつぶされた。

 『は! あ! やめっ……』

 『うふふふ。どうですか? 私のココ……ずっと欲しかったんでしょう?』

 嘲る様なスーフィの囁きと共に、ジュルジュルと彼女の雌肉がまるで舌の様に彼の肉棒を舐め回す。

 『お い し い ですよ。ヴィストさんのお ち ん ち ん。でもわたしはもっと美味しいものが飲みたいです……』

 『うぅぅっ! がっ……まだ、嫌だ。こんな、カタチなんて……』

 肉と共にしゃぶられ蕩けていく自我の残りをヴィストは必死に言葉にして繋ぎ合わせる。
自分でも何を言っているか理解はしていないが、それが辛うじてただのオスに堕ちる事を防いでくれていた。

 『嫌?……まだ言うかねぇ。じゃなくてまだそんな事をおっしゃるんですか?』

 スーフィの声に剣呑な響きが混ざる。今までと異なる伝法な口ぶりに違和感を感じる余裕はヴィストにはなかったが、それでも必死に想いを紡ぎ続けた。

 『こんなカタチでスルのは嫌だっ。だって俺には……』


 『んー? 俺には何だって言うんだい。まさかこの仔、もとい私以外に好きなヒトでもいるんですか?』

 その割にはアタシに色気を出していたじゃないか、とさらに股間の責めを激しくする
雌竜にヴィストは声も無く仰け反った。いつ達してもおかしくない状況ではあったが不思議と持ちこたえていられるのは、手加減されているからだなとぼんやりと思う。

 『グルウゥ……嫌? なんデ? 雌なら誰でモいいンじゃなかったんですカッ?』

 何故か清風の如き感じの問いかけと共に、突如快楽地獄が止んだ。

 『う……? いッ!、イクぁああっ!』

 気の緩みにより自制が崩壊し精が腰の奥から激しく湧き上がる。敗北と絶望に抗う様にヴィストは全身全霊を込めて叫び返した。

 『俺はぁっ……本当にスーフィ、オマエが好きなんだっ! だからこんなカタチでしたくないんだぁああああ!』

 ギュチュッ!

 『……フゥーッ』

 『うぐ! ぁああああっ!』

 彼女のため息と共に突如彼の根元が急激に締め付けられ、甘美な苦痛と共に絶頂が一時押し止まる。

 ニチャリッ……ヌボボッ。


 『う!……くはっ……』

 引き抜かれた。と感じると同時に意識が遠ざかっていく。さらに不明瞭になった視界に腰を上げてこちらを見下ろす紺色の巨影が見てとれた。その巨大な翼がばさりと羽ばたき囁きを残していく。

 『……やれやれ、手間をかけさせるオトコだねぇ。さっきの言葉、忘れるんじゃないよ。あの仔はアンタに任せるから……しっかりと受け止めてやっとくれ』

 (な、んだ……スーフィ? いや……う! ああああああっ!)

 明瞭になりかけた違和感を味わう暇も無く、ヴィストの意識は今度こそ解放された射精に押し流されていった。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 ドビュルッ! ドビュルルルルッ!

 『ガ? アァ……ああああ?』

 欲望に麻痺した私の嗅覚に染み渡る強烈な匂い。何より求めていた熱い証が下半身に染み渡っていく。

 ビュルル……ビュクッ……ビュクビュクッ!!

 幾分か理性を取り戻した私――組み敷いた彼の股間、雄の部分から吹き出した性の泉。
性……精液。その奔流が飢えた私の淫らな肉腔を……かすめて下腹部に粘り付く。

 ――私は。

 (私は、ナニを?)

 何をしようと、いや。してしまったのだろうか?

 (私は……ヴィストさんを、オ、おおお、おかっ!)

 ――犯ソウトシテ……イタ。

 『ガ、きゃ、ぁあ、っぐ……ガァッ』

 理性が弾劾する現実を感情が拒否。言葉とも唸りともつかない音に舌が引き攣る。涙が目尻を伝うのどこか他人事に感じながら、全身全霊で自分の体を彼から引き剥した。
ぼやける視界を拭う気力すら失い、そのまま床にへたり込んでしまう。

 (私最低な事をケダモノじみたワタシじゃない誘ったのは彼だし違うワタシが悪いもう終わりいやだそんな)

 知恵を持つ事がこれほど恨めしく思えた事はなかった。自責と言い訳のせめぎ合いに耐え切れず再びただのケダモノへと堕ちようと……。

 『うっ……す、スーフィっ。嫌だ……すまないっ……』


 (すまないって! それは私のっ……!)

 うなされ続けているヴィストさんの苦しそうな呻きが私に喝を入れてくれた。自分を責めるのは後回しでいイッ! 今は彼を介抱しなくては。

 『すぐ居間までお連れしますから……失礼しますっ!』

 ぐったりとしたヴィストさんの身体を優しく抱き起こす。壁を支えに座らせると、私は後始末に執心したのだった。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 『ううっ……うーん』

 まず感じたのは柔らかい枕。僅かな収縮からヴィストは自分の居場所をおぼろげに把
握した。

 (つくづく俺は……介抱されるのが好きなんだな)

 緩慢な覚醒に任せて眼を開くと、そこには見知った安らぎがあった。

 『あっ……ヴィスト……さんっ』

 ずっと膝枕で彼を看護し続けたスーフィの歓喜の声。は何故か尻すぼみに終息した。

 『居間まで着いて来てくれたのか……大変だったろうに』

 『あ、いえ。たった1、2時間ぐらいです』

 場所と時間を勘違いしたらしい彼女の微笑ましい返答も、どこか元気が無い。まるで失態を隠す子供の様に落ち込んでいるような感じがする。いぶかるヴィストの記憶がようやく現実に追いつき――。

 (お、俺はたしか風呂場で!!!!)

 何だかアレでナニで恐ろしい目にあったような、かなりの部分が忘却の霧に包まれていたが、とにかく気絶したままここまで運ばれてきたのは確かなようだった。――つまりその、さらけだしたままであったりするのだが。


 (み、みみみ見られた……よな。やっぱり)

 しかも、まあ生理現象というか、その元気溌剌とした健全きわまりないトコロをかもしれない。ヴィストは顔に朱が上るのを誤魔化す為、勢いを付けて起き上がると何故か柔軟運動を始めた。

 『オイチニッ!サンシっと! ……おし。おかげでなんともないみたいだしな。まー気にするな、な?』

 『……』

 (頼むっ。何とか言ってくれよ……)

 突然の奇行にも変わらず沈黙を貫くスーフィに、ヴィストは内心泣きそうになった。さすがにアレは年頃にはショックな見モノだったに違いない。

 (それとも、まさかとは思うが……期待はずれで失望された、か?)

 種族や体格の違いを理解はしていても、感情や本能は容赦なく判定を下すだろう。それはそれである意味キツイ。どちらに転んでも地獄の状態にヴィストは頭を抱えるしかなかった。

 『うーむ。もうこんな時間か。色々あったけどまぁお疲れ様ってコトでそろそろ』

 それでも彼は健気に奮戦した。声はうわずってもう救いようの無いぐらいの悪あがきであったが……


 『ヴィストさんっ!!! 私……わたしぃッ!!!』

 ムギュッ。

 『むぐぶっ……』

 効果はあった。劇的に。

 ムギュギュギュ。

 突如朱鷺色の体躯に抱き潰され、もとい抱きすくめられてヴィストは悶絶した。容赦なく加わる圧力に息が意識が途切れそうになる。

 『よかったっ……わたし取り返しの付かないヒドイ事してしまってっ!もうお詫びの言葉も見つからないけど……それでも生きててよかったですっ……』

 (……今のほうが死にそうなんだが)

 嗚咽交じりのスーフィの述懐に意識の片隅でツッコミを入れつつも、ヴィストは両腕を彼女の背中に回して愛撫――というより断末魔の痙攣に近かったが――して気持ちを伝える。抗議一つしないのは彼なりのオトコの甲斐性(?)のつもりではあった。

 『あ……!ご、ごめんなさいすみません嫌いにならないでお願いします!!』

 彼の窮地を察したのか、どこかで聞いたような叫びと共に束縛が止んだものの、今度は意識が頭から飛びだしそうなぐらい強烈な揺さぶりに襲われる。が何故か彼の口元は幸せそうに緩んでいた。


 (とりあえず嫌われてはいないようだし、後はタイミングと――)

 自分のタフさ加減の問題だとヴィストは結論した。同時に自然に彼女への求愛を考えている己に軽く驚くが、"あの時に覚悟はできている"ので今更思い悩む事ではない。

 (ん? あの時?)

 『あ、私……また』

 振って沸いた強烈な違和感に戸惑うが、今にも崩れそうなスーフィの嘆きに彼は追憶を放り出した。さっきのお返しというわけではないが、優しく大胆に抱きしめて――体格の違いから抱きつくというのが正確だが――愛撫を加える。それは出会った時とは違う、ある種の気持ちが伝わるほどあからさまなモノだった。

 『あ……駄目、ですっ』

 雌竜が喘ぎに近い形で羞恥を訴えてくる。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 『ナニが……駄目なんだい?』

 意地悪な調子が混ざった(様に聞こえる)ヴィストさんの囁きが私の耳から意識を甘くくすぐる(と感じるのは私の気のせい)。きっと取り乱す私を落ち着かせるために身体を張ってくれているだけだ。

 『あ、いえなんでもない、です。すみません……もう落ち着きましたから』

 私の背中を優しくさする手。もっとこうしていたい……いたいけれども。

 『あの、熱いですから』

 『おっと。そう、そうだよな』

 やや不興を帯びた声と共に彼の身体が離れていく。それはまるで私達の未来を象徴する様で、のた打ち回りたいほどの喪失感に必死に耐えた。

 (これで、これでいいんだ。だって私は最低の求愛をしたんだもの)

 自分勝手に恋をして、押掛けて迷惑をかけた挙句、理不尽な嫉妬を言い訳にして自分の肉欲だけを満たそうとしたなんて。

 (彼は何度も、何度もチャンスをくれたのに)

 きちんとした手続きを踏めば、もしかしたら成功していたかもしれない……失敗してもきっと良い関係になれた、そんな気がする。でももう遅い。全ては終わったのだ。


 (例え彼が許しても、私は私自身を許せない)

 『さてと……また風呂に入るのもめんどくさいし。このまま寝ようか?』

 手痛い仕打ちなどどこ吹く風といった調子のヴィストさん。その笑顔は心の痛みを確実に和らげてくれた。でもそれを自覚した瞬間、罪悪感をあおる風となって理性を吹き荒らすのだ。

 (どうして! そんなに優しく誘ってくるんですか?)

 ――彼は知らないから。私の犯した過ちを。打ち明けるしかない。でないと、でないと私は……。

 (また、甘えたくなってしまう)

 『私は……その……泊まっても』

 『む。寝るところがない、よな。コイツはまいった。うーむ』

 大仰なそぶりで真剣に悩むヴィストさんの瞳が怪しげに輝いた、気がした。

 『じゃあ、その、だ。俺のベットで……ってのはどうかな?』

 『え……ええええええええ?』

 今度こそ、私ははっきりと絶叫した。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 自身の悲鳴の大きさにしまった、と思ったが余りの衝撃に内心の吐露が抑えられない。

 『わ、わたっ、わた……一緒に寝、ねねねね……い、嫌じゃないんです!そんなせ、狭いですし』

 嫌がられていると取られたら最悪だ。私は真っ赤になりながら、おろおろとヴィストさんの顔を伺った。

 『あ……そうか。いや単に俺のベットを使ってもらおうかと思っただけなんだがな。俺はソファーでも床でも問題ないし』

 さすがに合点がいったのか、少し呆れたような、同時にばつの悪そうな調子で彼が誤解を解いてくれた。

 『すみません。あ、あああの、私……とんだ勘違いを』

 『いいっていいって。配慮が足りなかった俺がいけないんだ。さぁいつまでもしょげてないで休んでくれ』

 ヴィストさんが自分のベットを空けてくれているのを見ながら、私はそっと足元を確認した。今回も床は焦がさずに済んだらしい。

 (……なんなんだろう。私)


 溜息と共に内心ひとりごちる。今の私は自身の心が分からなくなっていた。あれだけ、あれだけ自分の愚かさを痛感したはずなのに。

 (やっぱり、駄目だ。我慢できない)

 『あの……お気持ちは嬉しいんですが、やっぱり家の主を寝床から追い出すなんて私にはできません』

 おずおずと切り出した私の言葉にヴィストさんはやっぱりなという顔をした。

 『俺も客人を床に寝かせるような無礼な真似はできないんだ。ここは家の主に従うという事で一つ頼む』

 きっぱりと言い返されたが私は引かなかった。だってもう抑えが利かなかったから。

 (今夜一晩だけでも、彼を)

 『じゃあ……一緒に寝る、というのは……どう、でしょう?』

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 ――来たか。

 戦いに赴く前に近い緊張感がヴィストの背中を走り抜ける。しかしそれは本来とは異なる快感すら感じさせるものだった。

 (ここからが最初にして最大の――)

 そして最後のチャンスだと彼は気を引き締めつつ、あくまで通常の反応、驚きと戸惑いを適度に含ませて探りを入れる。

 『え、えと……その狭いし汗臭いしさすがに何だかマズイ気が……あ、いやアンタじゃなくて俺がだ。とにかく不快な思いをさせるかもしれないし』

 『人間の体臭ぐらい気になりません。私は寝具の一部ぐらいに思って頂いて結構です』

 ですから何とぞ、といつに無く押しの強いスーフィにヴィストは驚きを隠せなかった。
彼女の尻尾は獲物を狙う猫の如く左右にゆっくりと振られ、鎌首と言うほどではないが人間より長い首をやや曲げた前傾気味の姿勢は中々の迫力。逆らえば襲われるのではないかと危惧を抱かせるほどだ。

 まあそれはともかく彼女から言い出すとは予想外であり、それが嬉しくもあったのだが。

 『俺は……寝相悪いぞ?』

 『私は頑丈ですから』

 最後の一押しを確認し、ヴィストは自ら折れた体を繕った。

 『確かにこのままだと夜が明けそうだしな……じゃあ今夜一晩……宜しく頼む』

 『こちらこそ……宜しくお願いいたします』


 互いにぎこちなく礼を交わすと、まずはヴィストから慎重にベットに横たわる。彼は
スーフィに配慮して背中を向ける姿勢を取り、彼女を待ち受けた。

 『そ、それでは……失礼します……』

 ギシッ……。

 雌竜の質量が寝具を軋ませながら背後の空間に納まっていくのをヴィストは感じ取った。
彼の居場所を確保しようと健気に身体を縮める気配が伝わってくるのが微笑ましい。

 『そんなに端によると落ちるぞ。もっと、もっと近くによって』

 『……え! でも身体が触れたら』

 『膝枕して風呂に入った仲だ。今更どうってことは無いだろう?』

 スーフィの沈黙。風呂場での一件を思い出させたのはまずかったかとヴィストが後悔しかけた時、背後から確かな存在感が柔らかく擦り寄ってきた。互いの体温が身体を繋ぐぎりぎりの距離。ここまでが彼女の限界なのだろう。

 『……』

 ヴィストは無言で僅かに、身じろぎする範囲で身体を雌竜に密着させた。心地良い肌触りがぴくりと反応する。

 『ぁ……』


 スーフィが微かに喘ぐが、離れる事無くそのまま彼を受け入れる。こうしていわゆる添い寝の形に両者落ち着いた。

 (――今夜は永くなりそうだな)

 床に付くのにここまでとはと、ヴィストは苦笑しつつもこれまでにない安らぎを楽しむのだった。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 それから一時間程たっただろうか。

 『…………ぅ』

 『…………ぁん』

 ときどきみじろぎしてしまうけれど、私達は互いに寄り添ったまま沈黙の時を過ごしていた。もちろん眠れるわけが無い。この安らぎを味わえなくなってしまうから。

 (ヴィストさん。ご迷惑をかけてすみません。でも)

 背中を向けているので確かではないけれど、きっと彼も起きていると思う。

 (もう交尾なんて贅沢は言いません。せめて一晩、あなたを感じさせてください)

 実を言うと今の状況は、おばあさま最終口伝『添い寝から誘えば雄はイチコロ(略)』
に当て嵌まる。その前(偶然にも実行した形になっただけ)の『裸の付き合いは雄の守りを突き崩す(略)』は大失敗に終わったが、結果がこの好機に繋がったのはおかしな話だ。

 でも私は策を実行に移すつもりはなかった。これで十分。これで幸せなのだ……。

 (だってほら……まるで長年連れ添ったつがいみたい)

 もし私達が同じ種族だったら。ふと湧き上がった妄想が拡大していく。

 (なんとなくだけど、ヴィストさんは青鋼(あおはがね)の装甲竜かな。一見ぶっきらぼうでものぐさそうで、でも実はすごく気が利くの)


 そして夜は巣穴の入り口から私を守る様に眠ってくれる。私はその城砦のように堅固な背中に寄り添って甘い時を過ごすのだ。

 (でも気を使いすぎて、交尾の時も絶対に襲ったりしないのがちょっと不満。しょうがないから私の方から誘ってあげるんです)

 そっと尻尾を彼の下半身に絡める。前足をさりげなくずらして。ここに、こう。

『うっ! ……クウッ』

 (うふふふ。だいぶ硬くなってきたじゃないですか。駄目ですよ我慢しちゃ)

 私がヴィストさんの股間を優しく撫でさすると、欲望を抑えた呻きと共に雄の欲棒が……出てこない。割れ目の周囲はこんなに盛り上がっているのに。きっと大きすぎて引っ掛かっているのだろう。

 (かわいそうに。すぐに出してあげますからね)

 私は大胆に、雄の裂け目に指を入れ……。

 (あれ? 入らない)

 薄くかさかさした皮膜のような感触が邪魔をしている。その下で確かに湿った昂ぶりは増し続けているのに。違和感に戸惑いながら懸命にまさぐり続ける私の耳に、気まずそうな声が掛けられた。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 『あの、な。そろそろ起きウッ! く、くれないか?』

 出そうだ、とまでは流石に言えなかったが。突如始まったスーフィの極めて情熱的な悪戯に、ヴィストは逃れる間もなく、というより尻尾で下半身を拘束されて動くに動けず、チャックの隙間から下着越しにまさぐられて……早くも陥落寸前まで追い詰められていた。

 『んもぉ、アナタも早くおっきしてくださぁい。そんなマクで隠しちゃ嫌ですぅ……』

 『イッ、いや。下着が』

 雌竜の寝ぼけた応答にも、間抜けな返し方が精一杯の状況。

 『んふぅん。下着って人間じゃないんですから……ぁ』

 『ぅ……』

 再びの沈黙。そして。

 『と、とりあえず、手、手をどけ』

 『だ、だメでですぅぅうごきませぇ、んん』

 動けないのか動きたくないのか、ヴィストはゼンマイの切れた仕掛け人形の如くカタカタと震えながら懸命に身体を引き離そうと試みて……放棄した。それはスーフィも同じ様子だったが、その動きがさらに刺激となって彼の股間を追い詰める。

『くっ……うぁ』


(マズイ。このままでは)

 ヴィストは焦っていた。このままでは自身の欲望か欲棒のどちらかが制御を失って噴き出しかねない。

(ならば、その前に――)

 『こ、こんな格好で何なんだが……話しておきたい事があるんだ』

 スーフィの唾を飲む音。多少予定が早まっただけだと自らを奮起させると、ナニかの時間を稼ぐようにゆっくりと話を切り出した。

 『……俺は……あんたに謝らなくちゃいけない』

 『え? いえ!私の方こそ今まで色々とご迷惑を……』

 『悪い。少し黙って聞いてくれ』

 機を得たかのように取り乱しかけた雌竜を無理矢理黙らせ、彼は自身の中にあるどろどろとした、しかし決して不快ではない想いを吐き出し続けた。

 『思えば出会った時からおかしかった。けど気が付いた時にはどうしようもなかった』

 『…………』

 『確かに人恋しくなっていたさ。でもだ。いくらなんでもこれだけ違う相手に。正直自分が狂ったかと思ったよ』

 再びスーフィの唾を飲む音。彼女もわかっているとヴィストは確信する。でも言葉にしなけれ最後の壁を破る事はできないのだ。


 『俺は……あんたを女性……メスとして欲しくなってしまった』

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 (あぁ、やっぱり)

 想像していたほどの喜びはなかった。この一言、この瞬間。これほどまでに恋焦がれ、あれほどまでに夢に見たというのに。

 『失礼な話だが、女性の代わりを探していただけだと思い込もうともしたんだ。でも無駄だった。俺の心はあんたの気持ちをどんどん知りたくなって、色々やってしまった。きっと悩ませてしまったと思う。その辺はすまなかった』

 ヴィストさんの述懐が続く。私は納得した。感慨が薄いのも当然だ。

 『で、うぬぼれかもしれないが受け入れてくれるとわかった。でも人間はややこしい生き物でな。こういった……確認が必要なんだ』

 私も同じ。彼の言葉の通りもうとっくにわかっていた。これは確認の行為に過ぎない。
でも、それでも一番欲しかったもの。

 『俺をオスとして、受け入れて欲しい。これが本気の証だ……』

 皆まで言わずとも。私も口を開こうとした時だった。

 『"眼を逸らさずに"俺を見てくれ』

 瞬間。何の前触れも無く振り向いたヴィストさんの瞳が、私の魔眼を"真正面から見つめていた"。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 『い、いやぁああ! ダメ! 駄目です見ないで下さい!』

 『ナ、にが……駄目、ナンダい?……』

 案の定私の魔眼に侵食されていくヴィストさん。その瞳が破滅の喜悦と共に歪んでいく。
最初の時は幸運にも生還できたけど、さすがに二度目など無い。このままでは、このま
までは……。

 『どうして……どうしてなんです!』

 半分は自身への問いかけ。今すぐにでも眼を閉じるか顔を背ければいいものを、彼の瞳から目が離せない。私もまた魅入られていたのだ。

 『ひぐっ! 嫌ですっ。ヴィストさぁん……お願いですから私を見ないで……』

 もはやどうしようもなく泣きじゃくるしかできない私の頬に、優しい指先が絡みつく。

 『オれ、は。オレハ……』

 『ひっ……』

 消える前の蝋燭の火にも似た、ヴィストさんの瞳が私に迫る。恐怖の余り悲鳴を上げてしまった。彼を失うという恐怖に。

 『俺は……お前になら、犯されても侵されてもいい、ダから』

 『い、ヤ……あ。あああああああっ』

 ――チュムッ。


 気が付くと、私は必死にヴィストさんと舌を絡めあっていた。ファーストキス? どうでもいい。消えて行く彼をなんとしてでも繋ぎとめたくて。

 (いかないで! 私を置いて行かないで!)

 チュパッ……ジュムジュム……。

 私の魂でも何でも注ぎ込む想いで情熱を重ねる。身体だけじゃ駄目だ。私は……ヴィストさんの心も欲しい。だから、だから!

 『ケホッ……だから、そんなに自分を嫌わなくてもいいんだぞ』

 『え……』

 涎が糸の橋を紡いで、途切れる。私から顔を離したヴィストさんは……。

 『お前は俺が受け止めてやるから。もう自分から眼を逸らさなくてもいいんだ』

 瞳の焦点はまだ怪しかったけれど、はっきりとした意志の元で彼は言った。

 『自分の中のイヤなものってのは……遠ざけたらどんどん手に負えなくなる。暴れ馬は手綱を放したら……もっと暴れるもんだ』

 確かに私は、相手の精神を破壊する眼の力を本当の意味で"使おう"とはしなかった。被害を撒き散らすのを恐れる余り、見ないフリをして御する事を放棄していた。
短い触れ合いの中でそこまで、そこまで私を理解してくれていたのだ……この人は。


 『でも……いきなりそんな事を言われても』

 『そりゃそうだ。最初から完璧にできるわけなんかない。だからこそだ』

 完全に私の視線を受け止めて。彼は笑った。この上も無く自信たっぷりに。

 『俺ならいいパートナーになれると思うぜ? どうかな?』

 ……ああ。

 何かが、吹っ切れた気がした。

 私は、初めて、初めて自分の意志を込めて――相手を見据える。

 『私は……』

 (ヴィストさん、いいえ……ヴィスト。あなたが)

 眼に想いを集中させるイメージ。大丈夫だきっと。

 『ぐっ……』

 ヴィストの瞳が魔力によって喚起された情欲に歪む。息も荒く……今にもケダモノ
の如くはじけそうな勢い。けれど決して、彼は自身の手綱を放さなかった。

 『あなたが……欲しいですっ!』

 はじけたのは、ワタシ。もう一度、彼の顔を引き寄せて強引に唇を奪う。舌を絡ませて、涎を送り込み貪り……それでも。


 『ぷはぁっ!……ず、随分荒っぽい、ぷ、プロポーズだよな』

 『あ……アナタっ、が悪いんです。私をその気にさせるなんて……』

 ヴィストさ、ヴィストはあくまで自分を崩さずに。小憎たらしいまでに堅固に私を受け止めてくれた。正直あのまま抱いてくれなかったのが少し悔しくて、責めるように問いただしてしまう。

 『でも……どうしてなんです。人間に耐えられる筈が無いのに』

 悔しさを隠し切れない私に、ややばつの悪そうに彼は呟く。

 『んー。いや俺にもよくわからんのだが……"慣れ"かな?』

 『そんな……いい加減なコトがあるわけないですっ!』

 いくらなんでも馬鹿らしい……竜族のプライドとか以前に、常識的にありえない。

 『いやー、でも実際、"風呂場"での強烈なヤツに比べればマシだったからな……?』

 『『風呂場!?』』

 私たちの声は同じ疑問を唱和した。

 『え? でもそこは……私の尾に撥ねられてずっと気絶してたじゃないですか……ぁ』

 無抵抗のヴィストを犯そうとしたあの狂乱の痴態が脳裏に蘇り、羞恥で言葉が詰まってしまう。そんな私を気にする風も無く、彼は追憶に没頭していた。


 『ありゃ? でも確かに……あれは風呂場で。それになんか……頼まれたような?』

 わからんわからんと首を捻る彼になんだかイライラして、私は怒鳴るように流れを打ち切った。せっかくのイイ雰囲気が台無しだ。

 『もういいですっ! とにかくアナタと私は"つがい"になれたんですから』

 『あぁ……そうだな。だったら』

 突然、ヴィストは私にくるりと背中を向けた。

 『さっきの……続きをしようか?』


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 背後で息を呑む雌竜の気配が変容する。戸惑い――理解――興奮へ。それを確信し確認しながらヴィストは自身の股間を用意した。

『……』

 さっきと同じくしゅるり、とスーフィの尾が優しく彼の下半身に巻き付き……艶かしく
さすり上げてくる。同時に彼女の手が、腰から下に降りてきて――。

『うっ……』

 あらかじめ悪戯しやすい様に下着の前を開けておいたおかげで、つるりとした滑らかな指先が衣服の下に侵入。既にそそり勃ったヴィストの男性をふわふわと包み、揉み始める。
思ったよりも限界点が近い事に若干焦りを覚えながら、彼はうわずった問いを発した。

 『なっ、なぁあ、さっきは、こんな事をしながら何をゥッ! 考えていたんだい?』

 同じく興奮が爆発寸前なのだろう。息も荒くスーフィが喘ぐように、熱く囁く。

 『はぁっ……ハァッ。知りたいです、か? うふふっ。それはですねっ』

 整えられた勃起が下着の割れ目から引き出される。

 『もし私達が……同じ種族だったら、ですよ……』

 意識が真っ赤に染まりそうな錯覚。かろうじてこらえながらヴィストは続きを促す。
最期の堰を、切る為に。

 『じゃあ……この後俺はっ、どう、するのかな?』

 合わせる様に。彼女の声が欲望の槌となる。

 『ふふっ。唸りながら、我慢しきれずに私を組み敷いて……あ、アアアッ!』

 『ぐる、オおおおおっ!』

 演技なのか本気なのか自身でもわからないまま、ヴィストは雄叫びと共に決壊した。緩められた束縛を振りほどき、雌竜を押さえ込ませてもらう。身体を包む邪魔な布切れを荒々しく取り払い、獲物をじっくりと視姦して――舌なめずりするとその股間に喰らい付いた。

 ジュルルル!グチュッグチャッ!

 『そんなぁ、あ!アぐるぅ! アガッ、あああっ』

 アグオオオオオオゥウウウウウ!

 スーフィの断末魔に似た嬌声が響く。驚くほど感じやすい雌の肉をヴィストに執拗にしゃぶられて、彼女はあっけなく絶頂に達した。歓喜の痙攣に寝台が嫌な音を立てて軋む。

 『グガ、ァはあっ、はぁ、ハァ……ハ――あ、す、凄い、すごイイッ』

 『凄い、感じようだな。そ、そんなに溜まってた、のか?』

 軽く飢えを癒したヴィストが意地悪く問いかけると、目の前の肉孔が答えるようにぐわっと開く。

 『もうっ、ずっと前からぁ……なのに、なのにぃ……』

 おあずけなんてひどいです。とスーフィの恨みがましい睦言も心地良い。ヴィストの雄も同様の非難を浴びせてくるが、彼はあえて無視して拷問を再開した。

 『そうか、そんなにコレが欲しかったんだな。そりゃあ悪かった』

 グチュリッ。

 『あうっ! ま、またぁ……もう、ううんっ!』

 期待外れの陵辱――雌竜の肉洞に差し込まれたヴィストの指に、それでも嬉しそうな締め付けが応える。食いちぎられそうな勢いに若干肝を冷やしながらも、彼は倒錯的な欲望を滾らせて指を引き抜いた。そのまま彼女に身体を重ねる。

 『こんなに凶暴なのに入れたら、本当に喰われてしまいそうだ……』

 そう言いつつもヴィストは逞しく漲る自身の得物を握り締め、淫らな涎をたらす肉の牙口に差し出す。後戻りはさせませんよとばかりにスーフィの尾が彼に巻きついた。

 『グルル。ハァ、全部、食べちゃいます。アナタの大事なトコ……くださいな』

 『ああ。……うんっ……ウウウウッ!』

 ジュブリッ! ズズズズッ……ギチュッ!

 『あ、ハァ、グルっ、ガァあっ、やっと、やっと……』

 ようやく繋がった事に感極まったのか、スーフィの声が途切れた。挿入と言うより引きずり込まれたヴィストの肉棒は容赦なく咀嚼され、呑み込まれて行く――。

 キジュルッ!ジュルジュル……ギチュチュ!

 『そ、そんなにがっつくな、ぁっ。で、出る――』

 『ガッ……アオッ! オ、お、オウルルルッ』

 責めるよりそこから逃れるつもりで必死に腰を振るヴィストだが、雌竜の前にはそれすらオードブルにしかならず、欲望を掻き立てるばかり。

 『グルォ……お、おいしいですよ。アナタのおちんチん、んんっ! で、でも』

 ――もっと、美味しいものが、呑みたいです。

 記憶の奥から響いてきた気もするその声に、ヴィストは被虐的な喜びと共に己を差し出し、屈服した。

 『ウグっ! あっ! あおおおおおおおおッ!』

 ドグッ!ドグググッ!ドグッ!……。

 身体の奥から噴き出す精が、溢れんばかりにスーフィの深奥に注ぎ込まれる。

 『あ! 熱いッ……いぐっ。グルルル……』

 ビュグッ。……ギジュルルル。

 最期の一滴まで搾り出そうと、残酷にも雌の締め付けがヴィストを責め立てる。が彼は主人に仕えるのを喜ぶ奴隷、あるいは神に身を捧げる狂信者にも似た奉仕の快楽に身を震わせ、渾身の力を込めて搾取に応えた。

 ビチュッ……。

 『は、あはっ、はぁ。はぁ……どう、かな?』

 『はう、はぁ、はい……よかった。ですぅ……』

 (これで、これで俺は……)

 月並みながら欠かせない男女のやり取りをしながら、壁を越えることができたのだと感慨に浸るヴィスト。きっとこれからも彼女がいれば越えられないモノなどないだろう。その、越えてはいけないものまでも、かもしれないが。

 (さてと。このまま終わるってもいいが……雄の沽券に、いや股間に関わるぜ)

 これで一勝一敗。まだまだ戦いは始まったばかりなのだと自らを奮起させると、彼はできるだけ凶悪な笑みを浮かべてスーフィを押さえ込む。

 『まさかこの程度で恩返しができたなんて思ってないよな? 今夜は朝まで――』

 『眠らせませんよっ。うふふふ……』

 見透かしたような雌竜の笑みが返ってくる。本当に――心の通じ合ったつがいの様だとヴィストは苦笑した。いや、そうでありたい。そうならなくてはならないのだと強く確信する。その決意を込めて己を突きたて、掻き回していった――。

 ――そして空が白み始めてもなお。

 『はぁっ。すー、スーフィいい。イイッ』

 ギシッ。ギチュッ、ギシギシ……

 『グルっ、あ、アアッあなたっ、ア、アグおおオオオッ』

 グシッ! グジュッ! グシィイイイッ!

 交わりに耐え切れず、崩れ落ちた寝台に合わせる様に失墜した二匹のケダモノは、数分と待たず互いを貪りあう。

 『『ぐあぉッ! おおおおおウウウウ、ぐるるルルウウウッ』』

 朝日がまるで祝福するかのように……彼らの愛の巣に光を投げかけていた。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

【……さてと、何とか上手くいったみたいだねぇ】

 孫娘の"嫁ぎ先"から遥か離れた山頂の洞窟。そこに身を潜めていた巨体が安堵と共に集中を解いた。賢毛の二つ名にふさわしい豊かな藍色の鬣を一振りして流れを整えると、知恵ある古竜はひとりごちる。

 【全く竜らしくさっさと襲ってモノにしてしまえばいいのにさ。人間の小娘みたいに惚れただの、はれただの気持ちが先に立って足踏みするんじゃ世話ないね。……まぁアタシの血筋じゃ無理も無いか】

 明らかに苦笑と呼べる表情を浮かべて、彼女は長時間の魔術行使で凝り固まった筋肉をゆっくりとほぐしていく。結局色々と手の込んだ介入をしてしまったし、孫の魔力が安定するまで定期的に面倒は見なくてはならないだろうと言う事はわかっていた。

 【ま……その内あの人間にもこちら側に来てもらうとしようか。かわいい孫娘に釣り合う雄に仕込んでやらないと。ウフフフ……】

 いかなる内容を想起したのかは分からないが、竜の瞳に一瞬欲情にも似た色が奔る。軽く眼を閉じた後には再び知性をたたえたソレに戻ってはいたが。

 ……クチュッ。

 【んん?……おやおや、まぁアタシとした事が】


 "催して"しまったらしい己が股間に眼をやると、彼女はゆっくりと洞窟の入り口へと歩を進めた。朝焼けの光と共に山間部特有の強い風が吹き付けてくる。

 【スーフィや、最後は随分見せ付けてくれたじゃないかい? おかげでアタシも欲しくなっちまったよ。アハハハハ】

 笑い声――小さい咆哮。藍色の翼が雄雄しく広がり風を受ける。

 【さぁ、ウチの寝ぼすけ旦那から久々に搾り取ってくるとしようかねぇ】

力強く足場を蹴ると、雌竜は自らの夫――長年眠りを貪る火竜の巣へと疾る藍の風となった。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 ちなみにこの後、とある休火山からこの世のものとも思えぬ悲鳴が三日三晩響き渡り、付近の住民を色々な意味で悩ましくしたらしいが、それはまた別の話である。

【押掛女房朱鷺色恋記 終】


感想

  • やっと最後のオチを見れて感激 笑
    スーフィが可愛い杉 -- nanasi (2007-09-22 07:02:36)
  • スーフィえろすぎ -- 名無しさん (2007-09-22 23:28:13)
  • スーフィがエロすぎ
    賢毛のヴィストにこちら側にきてもらうという台詞
    の意味が気になる。この後ヴィストはどういう目にあうのかな -- 名無し (2008-01-01 20:17:58)
  • スーフィ絵炉杉 -- カイザー (2010-09-09 19:24:36)
  • スーフィリューンー名前かわゆす -- シズル (2010-09-09 19:27:50)
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