忘れようとした記憶2

    

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Hunter-side
Lioleia-side

「なぁおっちゃん、これで弓を作ってもらえるかい?」
ようやく、憧れだった念願の武器が手に入る。
僕はそんな期待感に胸を膨らませながら真っ赤に溶けた金属の熱がこもる武器工房へと駆け込むと、いつものように腕を組んでふんぞり返っているおっちゃんにやっとの思いで集めてきた素材と金を差し出した。
「何だボウズ。お前はまだハンターになりたての青二才だろう?」
だがこれまたいつものようにというべきか、僕の依頼を聞いたおっちゃんが意地悪な笑みを浮かべながら僕の頭をクシャクシャと撫で回す。
「かっこつけて弓なんぞ使っても、お前にゃあの鬱陶しい猪どもだって狩れやしないだろうよ」
「うっ・・・い、いいだろ、別に・・・」

確かに、おっちゃんの言っていることにも一理はある。
僕がこれまで細々とでも鍛えてきた片手剣を捨てて弓を使い始めようと思ったのは、先日数人の手練のハンター達に怪鳥の討伐へと連れて行ってもらったことがきっかけだった。
熱液を吐き甲高い奇声を上げながら縦横無尽に暴れ走り回る怪鳥に近づくのを躊躇っていた僕をよそに、彼らは実に見事な狩りの様子を見せてくれた。
飛竜の中では小柄だが人間にとっては脅威と呼ぶに十分過ぎるほどの巨体を鮮やかにかわしながら、その体に浴びせられるのは雨のように降り注ぐ無数の矢。
結局、彼らは僕も含めて誰1人傷を負うこともなく巨大な怪鳥を仕留めてしまったのだ。
「まあいいさ。金と素材さえもらえれば、うちらとしてはハンターの頼みを断るわけにはいかないからな」
おっちゃんはそう言いながら僕から受け取った素材を奥にいる数人の鍛冶の男達に渡すと、その顔にニヤリと笑みを浮かべていた。

「ほら、できたぞボウズ。待たせたな」
工房のカウンターの前で武器の完成を今か今かと待っていると、奥の方からようやくでき上がったと見える真新しいハンターボウを手にしたアイルーと呼ばれる白猫が飛び出してきた。
知能が高い彼らは、このドンドルマの街の中でも大好物のマタタビと引換えに人間達に従事しているのをよく見かけることができるのだ。
そして僕の前にまだホクホクと熱を持った弓を差し出すと、アイルーが再び工房の奥へと走って行ってしまう。
「あ、ありがとう・・・」
「はは・・・あいつも、あれで結構忙しいんだ。だから、少しばかりせっかちなのは許してやってくれ」
礼を言う間もなく引っ込んでしまったアイルーに呆然としていた僕に、おっちゃんがすかさずフォローを入れる。
まぁ、きっといつものことなのだろう。

弓と一緒に矢のたっぷり詰まった矢筒も受け取って武器工房から出てくると、僕は早くその威力を試してみたくて仕方がなくなっていた。
だが長いこと工房の中で待っていたせいか、空にはもう橙色の夕焼けがかかり始めてしまっている。
温暖な気候の今はさして凶暴なモンスター達がいないお陰で新しい武器の試し撃ちにはもってこいなのだが、近場の密林は夜になると海の水位も上がってしまうほどに激しい大雨が降るのが困りものだった。
取り敢えず今日の所は明日の狩りの準備を整えて、ゆっくりと体を休めることにするとしよう。

次の日の朝、僕は子供っぽい興奮を抑え切れずにベッドの上から飛び起きていた。
マイハウスの外に出てみると、目を射抜くような眩い太陽が雲1つない快晴の空に輝いている。
今日は正に、絶好の狩猟日和といったところだろう。
僕は軽い朝食もそこそこに早速動きやすい軽装へと着替えると、矢筒とハンターボウを背に担いで大勢のハンター達で賑わう酒場へと入っていった。
「お、何だボウズ、今度は一丁前に弓なんぞ使い始めたのか?全く、気移りの激しい奴だな」
「それにそんな薄っぺらい皮の防具じゃ、あってないようなもんだ。いっそ裸の方が気が引き締まるだろうよ」
「ワッハハハハ!そいつは違いねぇ!」
ゴツゴツとした重厚な装備に身を包んだ経験豊かなハンター達が、何もかも半人前な僕の姿を目にして大きな笑い声を上げる。

僕は内心何だか悔しい気もしたが、今は笑われても仕方がないだろう。
本当に自分に合った生き方を見つけるのが、ハンターとしての目標でもあるのだ。
だから今はまだ、誰に何と言われようと色々なことに挑戦を続けていくしかない。
カウンターの奥に立っている綺麗なお姉さんに新しい武器を試したいことを打ち明けると、彼女は密林に生えている特産キノコの採集をしてきて欲しいと言った。
そんな簡単な依頼なら、その間に好きなだけ弓の試し撃ちができることだろう。
僕は快くその依頼を引き受けると、大勢のハンター達が見守る中、意気揚揚と酒場から出かけていった。

ギルドが用意してくれた船に揺られて密林のそばの海岸に到着したのは、もう昼をかなり過ぎた頃だったろうか。
ジリジリと肌を灼く温暖期の太陽が海面の波にキラキラと乱反射していて、船から降りた途端僕はその清々しい眩さに思わず目を細めてしまっていた。
目の前には見上げれば高さ数十メートルはあろうかという巨大な絶壁が聳え立ち、その縁からは幾本もの丈夫なツタの束が垂れ下がっている。
以前怪鳥の討伐に密林へとやって来た時、僕は他の仲間達がせっせとこの崖を登って行くのを地上でドキドキしながら眺めていただけだった。
別段高所恐怖症というわけではないのだが、こんないつ切れるともわからないツタを頼りに長い崖を登る勇気はまだ持ち合わせていないらしい。
「仕方ない・・・あれに挑戦するのは、また今度にしよう・・・」
僕は無謀なロッククライミングから目を背けると、崖の横の小道から深い森の中へと入っていった。

「さてと・・・キノコを探すのは後にして、まずはこいつを試さないとね」
小道の先に広がっていた広い草原で1匹の大きな針を持った蚊のような虫を見つけ、背に担いでいた弓と1本の矢を取り出す。
あの針で刺されればたちどころに全身が麻痺してしまうという厄介な相手だが、距離を取って攻撃を仕掛ける分にはさほど危険な敵ではない。
初めて扱う弓の試し撃ちの的としては丁度いいだろう。
僕は弓にあてがった矢を力一杯引き絞ると、何も知らずに宙に浮いている標的に狙いをつけて矢を放った。

ヒュン!ドスッ!
風を切って飛来した矢が、見事に空を飛ぶ敵の真ん中に命中する。
だが流石にとどめは刺せなかったのか、手傷を負った虫はあっという間にどこかへと飛び去ってしまった。
「ああっ、くそ・・・やっぱり、もっと練習が必要だな・・・」
そして惜しくも取り逃がしてしまった獲物に舌打ちしながら、再び弓を背中に背負い込む。
だが次の瞬間、突如として草原を取り囲んでいた崖の上から数匹のランポスが飛び出してきた。
「な、何だ・・・?」
しばらくその様子を呆然と眺めていると、やがて崖下にいた人間の存在に気がついたランポス達が一斉に僕へと襲いかかってくる。
「わっ!」
僕は崖から勢いよく飛び降りてくる彼らから逃げるように慌てて近場の岩棚に攀じ登ると、反対にランポス達が飛び出してきた崖の上に向かって駆け出していた。
流石に彼らの跳躍力をもってしても、1度飛び降りてしまったこの崖を登ってくることはできないだろう。
そして眼下でやかましく騒ぎ立てるランポス達の群れを一瞥すると、僕は深い木々に覆われた森の中へと入っていった。

「ふぅ・・・それにしても、何であいつらいきなり飛び出してきたんだろう?」
あのランポス達は最初から僕を襲ってきたというよりも、まるで何かから必死に逃げてきたかのように見えた。
もしそうだとすれば、この森の中に彼らが逃げ出した原因があってもおかしくないことになる。
「グルル・・・」
その時、どこからか低い唸り声が聞こえてきた。
何だかすぐ近くから聞こえたような気がするが、ここへやってきた時には何の気配も感じなかったはずだ。
だがキョロキョロと辺りを見回す内に、僕は目の前にあったくすんだ緑色の山がのそりと動いたのに気がついた。

「なっ・・・あ・・・」
そんな・・・まさか・・・何でこんな所に・・・?
僕の目の前にいたそれ・・・今の今までただの丘か茂みのように見えていたそれは、紛れもなく雌の火竜・・・リオレイアだった。
木陰で昼寝でもしようとしていたのか、地面の上に蹲ったままの彼女からは獲物を睨みつける鋭い視線だけが僕に向けてじっと注がれている。

は、早く何とかしないと・・・こ、殺される・・・!
初めて出遭った火竜の恐ろしさにカチカチと歯を鳴らしながらも、僕はそっと背負っていた弓を取り出していた。
後から考えれば、どうして僕はこの時逃げるという行動を選択できなかったのだろうかと思う。
震える手で矢筒から1本の矢を引き抜き、それを弦にかけて恐る恐る引いていく。
リオレイアも僕が攻撃を加えようとしていることを悟ったのか、ゆっくりとその頭を持ち上げていた。
「う、うぅ・・・うわああっ!」
ヒュン!キン!
だがガクガクと笑う膝のお陰で満足に力を込めることもできず、半端に引き絞られた弓から放たれた矢がリオレイアの顔の甲殻に傷1つつけることなく弾き返される。

「グルォ・・・!」
次の瞬間、明らかな怒りの表情を浮かべた雌火竜が地面から立ち上がっていた。
長い首から尻尾の先まで併せれば20メートル程もあるだろうその巨体を目の当たりにして、無駄な抵抗をする気力など一瞬にして消し飛んでしまう。
すっかり腰が抜けてしまい、僕は手にしていた弓を取り落とすとその場にどさりとへたり込んだ。
も、もうだめだ・・・助からない・・・
「あ・・・ぁ・・・」
ズシッ・・・
それでも最終的には死の恐怖が勝ったのか、やがて巨大な雌火竜の脚が1歩前に踏み出されると僕はロクに言うことを聞かなくなった足を引きずるようにして恐ろしい怪物から逃げようと地面の上を這い出していた。
ズシッ、ズシッ、ズシッ・・・
「う、うわあああ・・・い、いやだ・・・」
だが当然雌火竜からは逃げ切れるはずもなく、僕はたったの数歩でリオレイアに追いつかれてしまっていた。
そして僕の背後で、鋭い鉤爪の生えた巨大な脚が持ち上げられる。

ドシャッ!
「がっ・・・は・・・」
次の瞬間、僕は怒れる雌火竜に激しく背中を踏みつけられていた。
肺から漏れた空気が、苦しげな悲鳴となって吐き出されていく。
ドスッ!ズン!グシッ!ゴシャッ!
「あっ・・・が・・・た・・・すけ・・・」
だがそれだけでは終わらず、リオレイアはなおも執拗に何度も何度も僕の体を踏みつけた。
その巨体が誇る凄まじい体重をもってすれば人間など簡単に跡形もなく踏み潰すことができるだろうに、死なぬ程度に手加減された拷問のような踏みつけに成す術もなく悶えさせられてしまう。
やがてしばらくして僕が声も上げられなくなったことに気がついたのか、リオレイアは途中で踏みつけるのをやめると僕の体を脚の爪先でグイッと引っくり返していた。

「う・・・ぅ・・・」
奇跡的にもどこにも怪我はしていないようだが、散々に痛めつけられた体は既に指先にすら全く力が入らない。
そんな僕の目の前で、リオレイアがとどめを刺そうと再び大きな脚を振り上げる。
だが今度は勢いよく踏みつけられるようなことはなく、ゆっくりと胸の上に載せられた巨竜の脚からじわじわと凶悪な体重が預けられ始めていた。
メキッ・・・ミシッ・・・
「ひっ・・・や、やめ・・・て・・・」
やがて胸骨の軋む音が聞こえ、肺に溜まっていた空気がゆっくりと外へ押し出されていく。
く、苦しい・・・だ、誰か助けて・・・
それが叶わぬ願いだとは知りつつも、僕は泣きながらさっきまで動かなかったはずの手足を必死に暴れさせながら雌火竜の足下でもがき続けていた。
だがやがて踏みつけられた肺から最後の空気が押し出され、酸欠の苦しみにだんだんと視界がぼやけていく。
そして深い海の底にいるかのような息苦しさが限界を迎えると、僕はついにふっと気を失ってしまっていた。

「ぐ・・・う・・・げほっごほほっ・・・」
激しい咳とともに暗闇の中から現実の世界へと引き戻されると、僕はゆっくりと視線を辺りに巡らせた。
目に見えるのは、薄暗い洞窟の石壁と大きな縦穴から覗く朱に染まった夕焼けの空。
僕は・・・助かったのだろうか?
だが不思議に思いながらも軋む体をそっと起こしたその時、不意に背後から浴びせられる何者かの視線を感じ取ってしまう。
何かがいる・・・!
背に感じる圧倒的な存在感に恐る恐る背後を振り向くと、僕からほんの少し離れた所であのリオレイアが何も言わずにじっと僕の顔を見つめていた。

「ひっ・・・」
思わず反射的に周囲に手を伸ばすが、当然というべきか唯一の武器だった弓と矢筒はどこにも見当たらない。
僕は仕方なく腰に身に着けていたモンスター達の素材を剥ぎ取るための小さなナイフを手にすると、こんなものでは到底敵わぬことを知りながらもそれを両手で構えて巨大な雌火竜へと向けていた。
「く、来るなっ・・・」
そう叫びながら恐ろしさに噛み合わなくなった歯の根を必死で噛み締めたものの、ナイフの切っ先は依然としてガタガタと激しく震えている。

ズッ・・・
だがそんな僕の悪足掻きにも一切表情を変えることなく、リオレイアはゆっくりと前に脚を踏み出し始めた。
白刃の前に微塵も怯む様子を見せず、むしろ余裕たっぷりに眼前でへたり込んでいる獲物を睨みつけている。
そして雌火竜はゴクリと息を呑んだ僕の鼻先にその巨大な顔を近づけると、まるで刺してみろと言わんばかりにフッと熱い吐息を僕に吹きかけた。
「グルル・・・」
「ああ・・・ぅ・・・」
カララァン・・・
空気を震わせた威嚇とも嘲笑とも取れるような低い唸り声に、ナイフを構えていた手から力が抜ける。
硬い岩の上に転がったナイフの立てる乾いた音に、僕は死を覚悟して歯を食い縛るとギュッと目を瞑った。

ペロォ・・・
瞼の裏側から流れた涙が、熱い唾液に塗れた雌火竜の分厚い舌で掬い上げられる。
鋭い幾本もの牙が眼前に近づけられる気配。
声を出すこともできないほどの凄まじい恐怖に、大きく吸い込んた息がハッハッと断続的に漏れていく。
まるで眠った赤子のように無力な獲物を前にして、リオレイアは一体どんな表情を浮かべているのだろう?
自分に手向かった不遜な人間を粛清する前の愉悦の色だろうか?
それとも、自らの前に平伏した獲物に対する捕食者としての優越感なのだろうか?
だが暗闇の中でいつまで待ってみても、予想していたような衝撃や激痛が襲ってくることはついになかった。

「・・・・・・・・・?」
耐え難い静寂が、一体どれほど続いただろうか?
目を開ければ嗜虐的な笑みを湛えた雌火竜が大きな口を開いて僕が断末魔の悲鳴を上げるのを待っていそうで、僕は力なく地面の上にへたり込んで震えたままおかしな瞑想を続けていた。
巨大な体に見合ったリオレイアのゆったりとした呼吸の音が今も近くで聞こえ、思わずゴクリと息を呑む。
だめだ・・・もう、これ以上耐えられない・・・!
いつまでもとどめを刺されない生殺しの苦しみに耐えかね、僕は薄っすらと細目を開けて辺りの様子を窺った。
果たして、予想していたようなおぞましい竜の口内が眼前に広がっているなどというようなことはなく、涙を流して1人怯えている僕を少し離れたところに蹲ったリオレイアが愉しげな表情で眺めている。
何故・・・あのリオレイアは僕を殺そうとしないのだろう?
未熟な僕の放った矢では傷を負わなかったとはいえ、仮にもハンターから顔に向かって矢を射られたのだ。
しかもその後、あのリオレイアは確かに怒りに任せて僕の体を踏み躙った。
それなのにとどめも刺さずに僕をこんな洞窟の奥へと連れてきて、今もなお静かにこちらの様子を窺っているのは一体どうしたことなのだろうか。
「グルゥ・・・」
だがやがて僕の目を真っ直ぐに見つめながら上げられた雌火竜の穏やかな唸り声に、僕はどうやら命は見逃してもらえたらしいことを理解していた。

雌の火竜とはいえ彼女と呼んでもよいのかどうかはわからないが、どうやら彼女は僕を眺めながら何やら考え事をしていたらしかった。
だが僕の方もじっと彼女の顔を見つめていると、飛竜の巨大な体がゴロリという音とともに地面の上へと転がる。
そしてある意味で妖艶とも呼べるような雌特有の視線をこちらに振り向けながら、リオレイアが両脇に垂れ下がっていた巨翼の片方を遠慮がちに持ち上げていた。
もしかしてこれは・・・僕を誘っているのだろうか・・・?

「僕に・・・こっちへ来いって言うの・・・?」
その問に、彼女からの返事はない。
ただただ僕の意識を捕えて離そうとしない幻術にも似た不思議な視線に、思わず吸い込まれてしまいそうになる。
彼女が答えないのは、僕の言葉が通じていないからだけではないに違いない。
これは僕に対する巨大な雌飛竜の挑戦であり、懇願であり、そして期待でもあるのだろう。
自身の10倍以上もの体躯を誇る恐ろしい巨竜に、心を許すことができるかどうかを試しているのだ。

今なら、ここから逃げ出すこともできるのかもしれない。
リオレイアの塒となっているこの大きな洞窟にはいくつもの出入口があり、少なくともその内の3つの出口から外へと出ていくことができる。
そしてそれは、当然リオレイアに対峙した僕の背後にも大きな明るい口を開けていた。
だが・・・この密林にはリオレイアの他にもランポスを含めて危険なモンスター達が無数に跋扈しているのだ。
せめて奴らを追い払えるような武器があるのなら話は別なのだが、丸腰の今となってはむしろ彼女のそばにいるのが1番安全のような気さえしてきてしまう。

やがて僕は勇気を振り絞ってそっと地面から立ち上がると、気だるい体を引きずるようにして雌火竜のもとへと近づいていった。
それを待っていたかのようにクイッと翼が上がり、僕を自然にその傘下へと誘っていく。
そして見上げるように巨大な雌火竜の懐に、僕はドキドキという胸の高まりを抑えながら身を寄せていた。
暖かい・・・
火竜族の鱗はそれ自体が高い温度を保っているものだが、このリオレイアもまたそのご多分に漏れず、ポッと内側に炎を燃やしているような力強い暖かさがある。
更にはリオレイアと添い寝する姿勢になった僕の上に持ち上げられていた翼がそっと被せられ、まるで寝袋にでも包まっているかのような心地よさが全身を包み込んでいった。

「ああ・・・」
思わずそう声を漏らしてしまうほど、溜まりに溜まっていた疲労と緊張がまるで嘘のように消えていく。
飛竜など人間に仇なす恐ろしい存在だとばかり思っていたのに、いざこうして間近で身を寄せ合ってみるとそれがいかに愚かな先入観だったのかがよくわかる。
リオレイアは僕を翼で抱き抱えたまま、まるで思い出にでも耽っているかのように洞窟の外を見つめていた。
照れ隠しなのかそれとも無意識の内に表れた彼女の心情の一部なのか、雌火竜特有の大きな毒刺の生えた尻尾がパタンパタンと小さな音を立てて地面を叩いている。
何もかもが癒されるような巨竜の包容力に抱かれながら、僕はいつしか彼女の隣で深い眠りに落ちていった。

ビッ・・・ビリッ・・・ブチッ・・・バリリッ・・・
心地よい忘却の彼方に沈んでいたはずの意識が捉えた、ゆさゆさと体が乱暴に揺すられているような感触。
それに続いて、何か衣服の破けるような音と軽い衝撃が体のあちこちに跳ね回る。
だが何事かと思って目を開けた僕の体をリオレイアが激しく振り回している様子を目の当たりにして、僕は慌てて大声を上げていた。
「うっわっ・・・な、何をするんだ・・・レ、レイア・・・!」

ドスッ・・・グッ・・・
「うあっ・・・あ・・・はぁ・・・」
そして反射的にその場から逃げ出そうとした瞬間、リオレイアの巨大な顎が僕の上へと振り降ろされる。
滑らかな鱗に覆われた下顎でギュッと力強く地面の上へと押しつけられ、更にはもがこうとする僕の体力を奪うかのようにグリグリと胸や腹の辺りを磨り潰されてしまう。
「ぐぅ・・・うぅ・・・」
やがて圧倒的な雌火竜の力による荒々しい拘束に一切の抵抗を諦めると、僕はクタッと力なく両腕を地面に投げ出して彼女に服従の意思を伝えていた。
そして・・・無力な獲物の制圧を終えたリオレイアの視線が、無残に装備を破り取られた股間から遠慮がちに突き出しているペニスへと注がれる。
ああ・・・そんな・・・彼女は・・・僕を犯すつもりなの・・・か・・・
そんな僕の内に湧き上がったのは決して逃れられないという絶望に包まれた、背筋を震わせるような期待感。

パクッ・・・
「ふあっ・・・」
やがて人間をも丸呑みにできるような巨口が唐突に僕のペニスへと食らいつき、熱く煮え滾った唾液を纏う分厚い舌による抱擁に上ずった嬌声を上げさせられてしまう。
ジュル・・・ズ・・・ズリュゥ・・・
「うあっあっ・・・レ、レイアッ・・・」
山のように巨大な体に見合わぬ雌火竜の繊細な舌技に、僕は激しく身悶えながら彼女の名を叫んでいた。
ザラついた舌が唾液にぬめったペニスの根元をしなやかに締め上げながら容赦無く亀頭へと襲いかかり、蕩けるような甘い快楽と陶酔感を僕の髄にまで叩き込んでくる。

ギュゥ・・・グリュッ・・・ヌチュッ・・・
「はぁっ・・・レ、レイア・・・もう、だめ・・・」
絶え間無くペニスへと塗り込められるあまりの気持ちよさに腰から力が抜け、射精を堪えようとする気力は底に穴の空いたグラスに注がれたワインのように空しく零れ落ちていった。
「グルッ・・・ガァ・・・ウゥ・・・グオアッ!」
悶える雄にどどめを刺そうと滅茶苦茶にペニスを責め嬲る彼女の口から、抑え切れない興奮の唸り声が迸る。
グジュッジュルルッヌチャ・・・ギギュゥッ
「レ、レイッ・・・う・・・うあああああ~!!」
ビュビュッビュルルルルルッ・・・
昂ぶる性欲に灼けた舌に限界寸前のペニスを思い切り握り締められて、僕はついに彼女の口の中へ白く濁った屈服の証を吐き出していた。

ジュッジュルルッズゥ~
「あっだ、だめ・・・吸わないで・・・ああ~!」
果てたばかりの敏感なペニスを吸い立てられるというかつてない快感に、脳が、神経が、そして全身の血液が沸騰する。
だがバタバタと必死に手足を暴れさせたところで無慈悲な吸引が止んでくれるはずもなく、鋭く細められた雌火竜の瞳が無様に悶える獲物を静かに見据えているばかり。
ズッ・・・ズズッ・・・ズルルッ・・・
ああっ・・・ま、また・・・だめぇ・・・
ビュルッ・・・ビュルルッ・・・
声を出す気力も失ってしまったのか、射精の瞬間に大きく開いた僕の口からは微かな吐息が漏れるのみ。
そしてそんな気の抜けた精の残滓をもうっとりとした表情で飲み込むと、彼女がやっと僕のペニスを口内から解放してくれていた。

「はぁ・・・はぁ・・・」
「グルル・・・グルルルル・・・」
荒くなった僕の呼吸に合わせるようにして漏れ聞こえてくるその唸り声は、彼女の興奮の証なのだろうか?
僕の顔をじっと見つめているリオレイアの瞳は、まるで何かを恐れているように小刻みに揺れている。
もしかしたら・・・彼女は今の行動が原因で僕に嫌われたと思っているのかもしれない。
確かに僕も彼女に襲われた最初の内は驚きと恐怖を味わっていたものの、今はもう元の平静さを取り戻していた。
だが言葉の通じない彼女にそのことを伝えるためには、そして彼女がこの後に望んでいるであろう行動に躊躇いを感じないようにするためには、彼女のプライドを傷つけない工夫が必要になるだろう。
やがて少し考えた末に、僕はじっとりと汗をかいていた顔に相手を嘲るような表情を浮かべると内心ビクつきながらも巨大な雌火竜に向かって挑発的な言葉を投げかけた。

「あはは・・・何だ、大したことないじゃないか・・・もう終わりかい?」
たとえ言葉の意味はわからなくとも、僕の口調から侮蔑のニュアンスは十二分に伝わったことだろう。
その証拠に、リオレイアが突然怒りを露わにした恐ろしげな声を上げる。
「グオアァッ・・・!」
う、うわあ・・・
正直、僕は敵意を露わにしたリオレイアの様子に身の危険を感じていた。
もしかしたら、僕はこのまま殺されてしまうかも知れない・・・
いや、大丈夫だ・・・これはきっと、僕の心中を試すためのただの威嚇に過ぎないはず・・・
だがいくら自分にそう言い聞かせてみたところで、理性をほんの少しだけ上回った恐怖に打ち負けてゴクリと息を呑んでしまう。
それでも顔にだけは相変わらずニヤニヤと意地悪な笑いを浮かべ続けていると、彼女はようやく僕の誘いに乗ってきたようだった。

「ガアァッ!」
ドンッ
「うぐっ・・・」
耳を劈くような怒りの咆哮が辺りに轟いたかと思った次の瞬間、座っていた僕の体をリオレイアが顎をかち上げるようにして地面の上へと押し倒す。
そして足元に転がった不埒な無礼者の視界を広げた翼で一杯に覆い尽くすと、彼女はまるで自らの優位性を見せつけるように僕の顔を力任せにザラついた舌で擦り上げていた。
そんな彼女の下腹部では己に逆らった生意気で小賢しい雄に制裁を与えようと、薄っすらと桃色がかった愛液にたっぷりと潤った割れ目がヒクヒクと蟲惑的な律動を繰り返している。
「グルルルル・・・」
やがて覚悟しろと言わんばかりの高圧的で有無を言わせぬ声が彼女の口から発せられると、僕はようやく嫌味な人間の演技を止めて元の穏やかな表情を取り戻していた。

その唐突な雰囲気の変化を敏感に感じ取ったのか、不意に彼女の動きがピタリと止まる。
だが侮辱された怒りにまかせて僕に襲い掛かってしまった手前、彼女はたとえ僕の真意に気づいたところで今更後には引けないだろう。
そしてそれを裏付けるように、雌火竜はゆっくりと自らの膣口を広げて僕のペニスの上へと腰を降ろしていった。

ズ・・・ズプッ・・・ズズ・・・
「くっ・・・はぁっ・・・」
あ、熱い・・・!
彼女の繊細な舌技に翻弄されていた時も僕はその熱湯のような唾液の熱さに終始身を捩っていたというのに、膣の中を覆い尽くしているドロドロの愛液はさながらグツグツと煮え滾った油のよう。
入れているだけでもジンジンとした熱の刺激が、生贄と化した雄槍を果てしない快楽の高みへと押し上げていく。
ヌリュッ・・・リュリュゥ・・・
「あっく・・・うはぁっ・・・」
「グルゥ・・・グゥゥ・・・」
やがて蕩けそうなほどに柔らかい無数の肉襞が僕のペニスをねっとりと舐め上げると、彼女も快感を感じているのかとても飛竜の声とは思えぬ程に艶のある美しい調べが辺りに響き渡った。

その瞬間、それまで理知的な光が宿っていたはずの彼女の瞳に危険で荒々しい雌竜の本性が燃え上がる。
「グルオァァァーー!」
そしてビリビリと夜の闇を震わせるリオレイアの雄叫びが、永い永い夜の訪れを告げていた。
グッ、グシュッ、ヌチャッ、グチュゥッ
「くぁっ・・・かっ・・・ふぁっ・・・うあああっ・・・!」
張り詰めたペニスを根元まできつく膣に咥え込んだまま、雌火竜が全力で腹下の無力な雄を振り回す。
僕は熱く柔らかな膣壁に幾度も幾度も乱暴にペニスを擦り付けられながら、必死に彼女の胸に抱きついて激し過ぎる快楽に歯を食い縛っていた。

「ガアッ!グ、グオガッ!グルルァッ!」
「ぐ、ぐうぅ~~・・・!」
も、もう限界だ・・・そ、それに・・・彼女の体にしがみつく力ももう・・・
ギュッ、ギュウウッ・・・!
「ぐっ、うあああああああ~~~~!」
「グガアアアアアアァーーーーッ!」
深い密林中に響き渡った絶頂の断末魔は、やがて激しく降頻る雨音の中へと溶け込んでいった。

「う・・・うぅん・・・」
全身を襲う心地のよい倦怠感。
霞みがかった意識の中に昨夜の記憶が蘇り、僕はハッと目を覚ました。
雨水に濡れた地面の上で眠っていた僕の体の上に、暖かい温もりに満ちた雌火竜の翼が被せられている。
まだ眠っているのか彼女の円らな瞳は固く閉じられた瞼の奥へと身を潜めていて、低くこもった緩やかな寝息が僕の耳をサワサワとくすぐり続けていた。
「レイア・・・?」
遠慮がちに巨大な雌火竜の名を呼んでみるが、彼女が目を覚ます気配はまだない。
だがその凛々しい顔に何とも言えない満足感が漂っているのを見て取って、僕はホッと安堵の息をついた。

「レイア・・・僕・・・お前が好きだよ」
その僕の声が聞こえたのか、リオレイアが何時の間にか大きな目を見開いて僕を見つめていた。
告白の言葉を聞かれてしまったことに一瞬恥ずかしさを覚えたものの、やがて彼女の漏らした優しげな返事が僕の羞恥を洗い流していく。
「グルゥ・・・」
ああ・・・よかった・・・
そして彼女が再び静かな眠りに落ちていったのを見届けると、僕は胸の内に湧き上がる清々しい幸福感に浸りながらすっかりと雨の晴れ上がった明るい外の光に眩しげに目を細めていた。



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