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焼け跡に残った光2

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匿名ユーザー

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爪を振り翳すことも牙を剥き出すこともせずに無防備な姿を晒したそのドラゴンの様子に、俺は武器を持った腕を振り上げたまましばらくの間硬直していた。
人間の言葉に不慣れなせいなのか物言いにはどこか高圧的な態度が見え隠れしているものの、このドラゴンの言った言葉が嘘でないことだけは直感的に信じられる。
今朝方に出遭ったあの禍禍しい黒竜に比べれば、従順に人間の前に傅いたこの橙色に輝くドラゴンにはある種の正義のようなものすら感じられた。
そしてゆっくりと振り上げた腕を下ろし、周りにいた他の男達に指示を出す。
「よし・・・いいだろう。おい!こいつに新鮮な果物を持てるだけ持たせてやれ!それにミルクもだ!」
「な、何だって?食料を差し出すのか・・・?」
「そうだ。いいから早く持ってこい。人の子の命が懸かってるんだろう?」
驚きとともに目を開けた私がコクリと頷くと、首領に反論した男も渋々ながら町の方へと走っていく。

「何故・・・思い留まったのだ?」
目をきつく閉じてはいたものの、1度は確かに私を斬りつけようと手にした武器が振り上げられたはずだ・・・
私はその心変わりの理由が読めずに、恥ずかしながらも目の前の人間にそう尋ねていた。
「今日の朝、お前とは別のドラゴンがこの町にやって来たのさ」
首領のその言葉に、周囲に残っていた別の男達も急に神妙な顔つきで朝の出来事を脳裏に思い浮かべたらしい。
「全身真っ黒な、山のようにでかい奴だったよ。しかもそいつは、この町に姿を見せるなりこう言ったのさ」
「生贄か・・・?」
「ああ、そうだ。今月の末に1度、その後は半年に1度、若い娘を我に差し出せときたもんだ」
成る程・・・恐らくそれは、あの住み処の近くにあった人間の村を滅ぼしたドラゴンに違いない。
新たな生贄を求めて、焦土と化した村の代わりに遠くこの町にまで魔の手を伸ばしたといったところだろう。
そういう事情があったのであれば、彼らがドラゴンという存在に対して過敏なまでの反応を示したのも頷ける。
「だが・・・生贄を出すつもりはないのだろう?」
「当たり前だ!あの野郎、今度町に来やがったらただじゃおかねぇぞ!」
「おお!そうだそうだ!」

どこか無理をしてでも盛り上がろうとしている彼らの様子に、私は暗い未来を想像していた。
同族の中でも決して大柄な方ではない私にすら内心の恐れを抱いていた彼らが、悠久の齢を重ねた猛る巨竜を前にしてもこの虚勢を保っていられるとは到底思えなかったのだ。
たとえ強情に生贄の提供を拒否してみたところで、彼らの言葉で言えば"痛い目に遭わされて"、絶対的な暴力への服従を余儀なくされてしまうに違いない。
だがそうこうしている内に、美しい光沢を放つ林檎を山ほど詰め込んだ大きな籠とミルクの入った細長い透明な容器が数本、次々に私の目の前へと運び込まれてきた。
「さぁ、持って行け。だがもしまた新たな食料が必要になったら、その赤ん坊をここへ連れてこい。いいな?」
「あ、ああ、わかった・・・礼を言うぞ・・・」
私は差し出された食料の籠を両手でそっと掴み上げると、小さく畳んでいた翼を大きく広げて夕暮れの迫った空へと身を翻していた。

大きな籠を両手一杯に食料を抱えて空を飛ぶ私の姿を、群れを成した小鳥達が遠巻きに眺めては何かを囁きあっている。
快く人間に協力してもらえたお陰か、私は奇妙な清々しさを胸に森の切れ間に覗く住み処へと降りていった。
薄暗い洞窟の中では赤子が相変わらず泣き声1つ上げることもなく眠っていて、またしても愛らしいその寝顔に視線を引き寄せられてしまいそうになる。
「さてと・・・後は、この子が腹を空かせて目を覚ますのを待つだけか・・・」
だが小声でそう呟いた次の瞬間、眠っていた赤子が手の甲で瞼をゴシゴシと擦りながら空腹を訴えるように甲高い泣き声を上げ始める。
「ふ、ふえぇぇっ・・・ふぎゃああ・・・」
「ああ、わかったわかった・・・少し待ってくれ・・・」

私は町の人間が持たせてくれた籠の中の林檎を1つ手に取ると、それを尖った爪の先で細かく刻み始めた。
そして甘酸っぱい果汁の溢れる林檎の欠片を切り出すごとに、赤子の小さな口の中へとそれを押し込んでやる。
シャクッ・・・シャリッ・・・
「あむ・・・はむ・・・うむ・・・」
やがてまだ歯も生えていない口の中で咀嚼された林檎が、赤子の顔を甘い幸福で満たしていった。
「ふふふ・・・どうだ、美味いか?」
その問に赤子からの返事はなかったものの、笑顔に蕩けた顔を見れば答えなど聞くまでもない。
そんな楽しげな一時に時間を忘れ、私はとっぷりと日が暮れるまで赤子に食事を与え続けていた。

2週間後、私はすっかり空になった大きな籠と赤子の眠る小さな籠を手に再びあの町に向けて翼を羽ばたいていた。
近くに綺麗な水場があるお陰で、竜の子供すら育てた経験のない私にも一応はこの子の命を繋ぎ止めることができているらしい。
しばらくして眼下に見えてきた例の町中に慌しく動き回る大勢の人々の姿を確認すると、私は今度は堂々と町の入口に向かって真っ直ぐに滑空していった。
そしてフワリと風を受けて静かに着地した私の元に、大勢の人間達がワラワラと集まってくる。
どうやら先日の一件以来、生贄を要求する悪竜とはまた別に、人間の赤子を育てている不思議な竜の噂も町中に広がってしまっているらしかった。
「おお、今度は子供を連れてきたんだな!」
「俺にも見せてくれ!」
「私も!私にも見せて!」
やがて予想外の反応に困惑顔を浮かべた私の手から籠を奪い取ると、集まった大勢の人々が可愛い顔で眠っている赤子に群がり始めていた。

「これは・・・一体どういうことなのだ・・・?」
竜の子の話題で盛り上がる人々の輪から少し離れた所に取り残されてしまった私は、あの血気盛んな群集を率いていた首領の男を見つけるとそっと歩み寄って小声で語りかけた。
「なぁに、皆ドラゴンが育てているっていう子供に興味津々なだけさ」
常日頃から身に着けているかのような小振りの斧の柄で肩を軽く叩きながら、男が楽しそうな苦笑を浮かべる。
「それに、2週間後にはこの町を襲ってくる奴もいることだしな」
「ではやはり・・・お前達は戦うつもりなのだな?」
「当然だろ。人の子を育ててるあんたは別にしても、ここにはドラゴンにくれてやるものなんぞ1つもないからな」
一夜にして村を1つ灰にしてしまうほどの巨竜が町を襲ってくるというのに、何故彼らはこうも明るい顔をしていられるのだろうか?
それが彼ら人間の人間たる部分であるというのならそれまでの話なのだが、私はどうしてもこの町の人々が同胞の手によって傷つけられるのを見たくはなかった。

「それなら、私もお前達と共に戦うとしよう」
「何・・・?どうしてあんたが?」
相手は私と同じドラゴンなのにといった様子で、男が疑問の声を上げる。
だが、そんなことは関係ない。
もし理由があるとすれば、くだらぬ先入観で愚かしいと思っていた人間達の同族を想う気持ちの強さに私も魅せられてしまったというべきだろう。
だからこそ、私は力を誇示して己の利益の為だけに他者を傷つけようとする仲間に腹を立てていた。
それに、あの赤子だけはどうしても私の手で育ててみたいのだ。
だがこの町が血の気の多い仲間のドラゴンによって痛手を被ってしまったなら、それは少なからず町の人々に私への忌避感を植え付けてしまうに違いない。

「私もそこに集まっている大勢の人間達と同じように、赤子の成長を無事に見守りたいのだ」
人間に対する心情の変化を悟られまいと言葉を選んだ私の返事に、男は納得したとばかりに頷いた。
「それなら今日から16日後、またこの町へ来てくれ。恐らく、奴は夜中の内にここへやってくるだろうからな」
同感だ。ドラゴンは、夜に人間達の力が衰えることを知っている。
暗き闇は人の心を脆弱にしてしまうし、ドラゴンの口から吐き出す灼熱の炎を更に眩く引き立てることだろう。
「わかった・・・私の力が役に立つかはわからぬが、必ず来ると約束しよう」
するとまるでその返事を待っていたかのように、林檎が山と盛られた新たな籠が私の前へと運ばれてきた。

「よーしお前ら、もういいだろう?彼女が困ってるぞ。子供を返してやれ」
男の言う彼女とは、もしかして私のことを指しているのだろうか・・・?
とても人間がドラゴンに対して使うとは思えぬ意外な言葉に呆けた表情を浮かべていると、ようやく人だかりの中から解放された赤子の籠が若い娘の手から直接私に手渡される。
「はい!きっとまた来てくださいね!」
「あ、ああ・・・」
弾けるような明るい娘の声と、その後ろに並んだ人々の期待に満ちた朗らかな表情。
体の大きさでは私の半分にも満たぬ程に小さい人間達の行動にたじろぎながら、私は来る時にもそうしたように重い2つの籠を手にして町を後にしていた。


新たな年を迎えてから早くも1ヶ月・・・
深まる冬の寒気に更に寒さの厳しくなった森の上空を飛びながら、私は来るべき悪竜との戦いよりも籠の中の赤子が凍えたりはしないかという不安を胸に人間の町へと急いでいた。
やがて地平線の向こうに見えてきた町を空から見下ろすと、決戦を迎えた男達が忙しなく動き回っている。
「成る程・・・彼らにも、一応は危機感というものがあるのだな・・・」
夕焼けに赤く染まり始めた空の下、私は村の入口に着地すると例によってその場に集まってきた人々に赤子を預けることにした。
そして悪竜と戦うために武装していた男達のもとへ歩いていくと、あの首領の男が声をかけてくる。
「おお、本当にあんたが来てくれるとは!」
初めて会った時は武器を振り上げて一触即発の状態にまでなったというのに、人間とはたった数度の邂逅でそんな深い溝すら埋めてしまえるものらしい。
まるで10年来の友とでも語り合うかのように親しげな彼と何度か言葉を交わすと、私は町の外れにある広場に蹲って静かに喧騒の夜を待つことにした。

すっかり陽の落ちた漆黒の夜空に浮かぶ、宝石の如く眩く輝く無数の星々。
いよいよ生贄を差し出さなければならないという期限が過ぎ去り、暗い森の奥から件のドラゴンのものと思われる怒りの咆哮が轟いてきた。
1ヶ月前にあの小さな村が壊滅した前夜にも聞いた、不穏な大気の震え。
私は凍て付く夜の寒さのためか、それとも無謀な戦いの前の緊張のためか、ブルッと大きく身を震わせた。
私が連れてきたあの赤子も含めて女や子供達は頑丈な(と言っても、荒らぶる巨竜の前には無意味だろうが)建物の中へと既に身を潜めていて、外に出ているのは皆思い思いの武器を持った男達だけになっている。
きっとあの村の最期となった夜も、こうして絶望的な戦いを前に人間達が身を寄せ合っていたのに違いない。

ドオン・・・ドオオン・・・
それからしばらくして耳に届いてきた死神の足音に私は静かに地面から起き上がると、強敵の出現を今か今かと待ち構えている男達の群れに加わった。
ガサッ・・・ガサガササッ
心の中にピンと張られた緊張の糸を切らすことなく待つこと数分後、やがて町と森の境界にある深い茂みを掻き分けて巨大なドラゴンが衆目の前にその首を突き出す。
「クククク・・・これはこれは・・・近頃の人間どもは身の程も知らぬ愚か者どもが多いとみえるな・・・」
そして眼前に立ち塞がっているちっぽけな人間達の姿を目にすると、ドラゴンが愉快そうな笑い声を漏らした。

「たった1人の犠牲でその他大勢が救われるなら、貴様らに選択の余地などないと思っていたのだがな・・・」
「ふざけるな!この町のものはそこらの石ころ1つ、貴様なんぞにくれてやるものか!」
「・・・何だと・・・?」
首領の男が精一杯声を張り上げて挑発すると、ドラゴンは思いの外その声に激しい憤りを滲ませていた。
そして黒々しい腹が膨らむほどに鼻から大きく息を吸い込み、紅蓮の炎を空に向かって勢いよく吹き上げる。
ゴオオオオオッ!
「うわっ!」
「ひいぃっ!」
まさか炎を吐くなどとは夢にも思っていなかったのか、夜空をが紅く照らされた途端にその場にいた数人の男達が情けない悲鳴を上げながら腰を抜かしていた。
別に町を滅ぼさなくとも、強大な力をもって威圧すればまだ己の命令に従う芽があると思っての行動なのだろう。
その証拠に、既に戦意を喪失してしまったと見える男達がじりじりと後退さり始めている。

"待て!この竜族の恥晒しめ・・・この町の人々には手を出すな!"
私は小さく畳んでいた翼をバサッと大きく広げながら人間達と悪竜の間へ踊り出ると、口の端から漏れる炎を得意げに見せつけようとしていた黒竜に向かって大声を張り上げていた。
その後押しの甲斐あってか、その場から逃げ出そうとしていた数人の男達の足が止まる。
"何だ小娘・・・貴様・・・まさか同胞のくせに人間どもに味方するというのではあるまいな・・・?"
明らかな侮蔑を伴った、それでいて鋭い視線を黒竜からグサリと突き刺され、私は思わずゴクリと息を呑んだ。
"それがどうしたというのだ!己の欲のためだけに人間の町を襲うなど、恥を知れ!"
人間のそれとは異なる竜族の間でのみ交わされる不思議な言葉に、男達が頻りに聞き耳を立てている。
だが言葉の意味はわからなくとも、そこに流れている意識のやり取りは彼らにも伝わることだろう。
"黙れ!身の程を弁えろ小娘が・・・そこをどかぬと言うのなら、貴様も痛い目に遭うことになるぞ!"
"やれるものならやってみるがいい!"
まるで自らを奮い立たせるように大きな声でそう叫ぶと、私は精一杯の威嚇のために広げていた翼を翻して目の前の巨竜へと飛び掛っていった。

牙の大きさも、爪の鋭さも、そして心に染みついた残忍さも、私はこの巨竜の足元にすら及ばないことだろう。
だが人間達が早くも戦う気力を失いかけてしまっている今、もし私が敗れてしまえば、この町もあの村と同様に長い時間をかけてゆっくりとこの暴君に食い潰されていくに違いない。
私は唯一の強みである翼を大いに羽ばたいて空高く舞い上がると、黒竜の爪が届かぬ上空から急降下していった。
あまり長い間地を離れていては、地上にいる人間達が危険に晒されるだろう。
両足の先から生えた鉤爪に精一杯の力を込めながら、奢りきった悪竜に天誅を下すべくそれを一気に振り下ろす。
"フン・・・貴様なんぞの鈍らな爪が我に通じるとでも思っているのか?"
だが黒竜は微塵も慌てる様子を見せることなく鼻で笑うと、硬い鱗に覆われた頭を自ら私の爪に向けて突き出していた。

ガッ!
そして次の瞬間、岩と岩がぶつかり合うような重く鈍い音が辺りに響き渡る。
"うあっ!"
全身を襲った激しい衝撃に悲鳴を上げたのは・・・攻撃を仕掛けたはずの私の方だった。
永きに渡る年月が張り重ねた巨竜の厚い鱗は私の爪を弾き返し、砕けて折れた数本の爪の欠片が星明かりにキラリと輝きながら宙を舞う。
ドサッ
"ぐ・・・うぅ・・・"
更にバランスを失って地面に落ちた私の片翼の上へ、ブゥンという風を切る音とともに丸太のような巨竜の尾が勢いよく振り下ろされた。

ズン!
"ガアァッ!"
醜く叩き潰された翼の痛みに悶える私の上に、勝ち誇ったような笑みを浮かべた巨竜がのしかかってくる。
そして圧倒的な巨腕で両腕を押さえつけられると、私はいつしか地面の上に仰向けに組み敷かれてしまっていた。
"くっ・・・は、離せっ・・・離さぬか!"
"クククク・・・口ほどにも無いわ・・・貴様のような生意気な小娘には、少しばかり仕置きが必要なようだな"
そう言いながら、黒竜が真っ赤な舌をペロリと舐めずる。
"な、何をするつもりなのだ・・・"
"なぁに・・・2度と我に逆らおうなどと考えられぬように、恥辱の沼の底へと引きずり込んでくれるまでよ"

黒竜はそう言うと、私を組み敷いたままほんの少しだけ身を引いていた。
そしてフワリと広がった視界の端に、信じられないものが飛び込んでくる。
"なっ・・・そ、それは・・・!"
"ククク・・・何をそんなに驚いておるのだ?雄のモノを間近で見るのは初めてか?ククククク・・・"
そこにあったのは、全身を覆った鱗と同じく禍禍しい黒光りに満ちた巨大な雄の象徴・・・
その歪な形をした醜悪な肉の槍が、私の眼前でビクビクと断続的な脈動に戦慄いている。
"さぁて・・・大勢の人間どもが見守る前で、精々無様な痴態を晒してもらうとしようか・・・?"
黒竜に言われて初めて、私はその光景を周囲を取り囲んだ数十人の人間達に見られていたことに気がついた。
ま、まさか・・・こんなに大勢の人間達が見ている目の前で・・・犯される・・・?
"あっ・・・なっ・・・よ、よせっ・・・よさぬかぁっ・・・!"
私は今更ながら改めて事態の深刻さに気が付いて必死に身を捩ったものの、こんな巨大な雄竜に力でなど到底敵うはずもない。
やがて息を荒げた私の顔に絶望の色が浮かんだのを見て取ると、黒竜が固くそそり立った肉棒を私の膣に向けて真っ直ぐに構えていた。

"ククク・・・観念したようだな・・・"
最早どう抵抗したところで無駄だということを思い知らされ、ザワザワという奇妙なざわめきが全身を跳ね回る。
武器を持った男達はいつの間にか一定の距離を保ちながら周囲をグルリと取り囲んでいたものの、あのうねる黒竜の尾に阻まれては誰1人私達に近づくことはできそうになかった。
ズ・・・ズブゥ・・・
"ぐっ・・・あっ・・・あぁっ・・・!"
自分よりも2回りは大きな雄竜のモノがすんなり受け入れられるはずもなく、下腹部の皮膜に隠れていた秘裂が太い肉棒によって無理矢理に押し広げられていく。
私はできるだけ声は上げないようにと堪えていたものの、初めて侵入を許した雄から与えられる未知なる刺激につい艶のかかった喘ぎ声を上げてしまっていた。
その稀有な光景に、周囲の人間達から不安と困惑の入り混じったどよめきが湧き上がる。

ズッ・・・ズズッ・・・ズン!
"ああぁ!"
やがて固くしこった肉棒を強引に根元まで突き入れられると、私の全身を電流にも似た激しい快感が突き抜けた。
ズリュッ・・・ドスッ・・・グブッ・・・
必死に拒絶しようとする私の意思とは無関係にトロリと桃色がかった愛液が一瞬にして膣内を満たし、雄竜の激しい抽送に更に拍車をかけていく。
"あっ・・・あがっ・・・うああ・・・!"
地面に押さえつけられた全身が揺れるほどに力強く腰を叩きつけられ、私は意識が徐々に真っ白な霧に覆われていくのを感じていた。

"クククク・・・どうだ、人間どもの前で惨めに犯される気分は?案外、貴様も興奮しているのではないのか?"
"ふ、ふざけ・・・うあっ・・・や、やめ・・・がぁっ・・・!"
本来は雄を搾るためにあるはずの幾重にも重なった分厚い肉襞が巨竜のモノに容赦なく摩り下ろされ、逆に私の中へと耐え難い快楽の奔流を送り込んでくる。
辺りを取り囲んだ人間達の顔には流石に愉悦の色は見えなかったものの、誰もが皆呆然と眼前の痴態を傍観し続けていた。
"もう限界のようだな・・・そろそろとどめを刺してやろうか・・・?"
残忍で巨大な雄竜に成す術もなく一方的に犯され、嬲られる屈辱・・・
そしてその極限状態の最中にあっても感じられてしまう、漲った肉棒の限界。
大勢の人間達に見られているというこの上もない羞恥は絶頂の予感を前に興奮へと変わり、雄の前に平伏した情けない雌の表情を浮かべた私に熱い精を注ぎ込むべく肉棒が躍動する。
"そぉら、我の滾りを、たっぷりと貴様の中に注いでくれるわ・・・!"
黒竜がそう叫ぶと同時に、激しい鼓動のようなドクンという音が全身に響き渡った。

「やめろおおおぉ!」
だが体内を満たすであろう雄竜の飛沫を受け入れようと全身の力を抜いた次の瞬間、聞き覚えのある人間の声が静寂の闇の中に響き渡る。
ドスッ
「グッ・・・ガアアッ!」
続いて聞こえてきた野太い悲鳴。
何事かと思って薄れかけた意識に喝を入れて目を開けると、あの首領の男が隙を見て投げつけた小振りの斧が見事に黒竜の右目に深々と突き刺さっていた。

「お、おのれ・・・許さぬぞ人間どもめ・・・!」
激しい痛みか、それとも片目を失った動揺からか、黒竜が反射的に目に突き刺さった斧へと手を伸ばす。
その瞬間フッと体が軽くなり、私は身動き1つできなかったはずの拘束が解かれたことにようやく気がついた。
恍惚の淵からハッと我に返って辺りを見回せば、眼を潰されて怒り狂った黒竜の注意が完全に私から逸れている。
私は素早くもう片方の腕の自由をも取り戻すと、抽送の途中で半分ほど膣から突き出していた黒竜の巨大な肉棒目掛けて両手の爪を思い切り突き立てていた。

ガリッ
「グワアアアッ!?」
いくら鈍らな爪だとて、それで無防備な肉棒を引っ掻かれては流石の巨竜も一溜りも無いことだろう。
不幸にも最も大事な部分に痛手を負った黒竜は思わず私の膣から傷ついたモノを引き抜くと、苦悶の声を上げながら激しく地面の上をのた打ち回った。
雄にしかわからぬ身を引き裂かれるような苦痛はそれでも限界を間近に迎えていた黒竜にとってはとどめになってしまったのか、バタバタと巨大な体で転げ回りながらブシュッという音とともに白濁を吐き出し始める。

ビュビュッビュルルルルッ!
「アッガァッ・・・ウアァッ!!」
あ奴に一矢報いるとしたら、今をおいて他に無いだろう。
私はギシギシと軋む体に最後の気力を注ぎ込むと、射精しながら悶え苦しむ巨竜に飛び掛かって無事に残っていた左目へと尖った爪先を抉り込んでいた。
ズッ・・・ブシュッ!
「ギャアアアアアアッ!」
その途端まるで人間が上げるかのような甲高い断末魔にも似た悲鳴が上がり、真っ赤な鮮血の噴き出した両目を押さえながら黒竜が闇に包まれた森の中へと消えていく。
そしてあまりにも突然に訪れた勝利の瞬間を、その場にいた人間達全員が唖然とした表情で見つめていた。

「や、やったのか・・・?」
ハァハァと息を切らして黒竜の消えていった森の方向を睨みつけていた私に、背後から震える声がかけられる。
後ろを振り返ってみれば、救いの斧を投げてくれたあの首領の男がガタガタと体を震わせながら立っていた。
きっとあの隻眼の黒竜に激しい殺意の視線を叩きつけられて、あまりの恐怖に心底震え上がってしまったのに違いない。
「ああ・・・あ奴もあれだけの痛手を負っては、もう人間の町を襲おうなどという気は起こさぬだろう・・・」
光を失った挙句に雄の象徴まで傷モノにされてしまった同胞に一抹の同情の念は浮かんだものの、私はすぐにそれを忘却の彼方へと振り払っていた。
今の私には、守るべきものがある。
他でもないあの赤子の命と、それを手助けしてくれるこの町の人間達の命だ。

ズキッ
「ぐっ・・・う・・・」
だが母性的な力強さを胸に体を起こそうとした次の瞬間、黒竜の尾で叩き潰された翼に激痛が走った。
翼膜は傷ついていないようだったが、翼の付け根の骨は完全に砕けてしまっているらしい。
「おい、大丈夫か?」
「フフ・・・この翼では・・・当分の間は空を飛ぶことなどできぬな・・・」
だが無謀な戦いに身を投じた己の浅はかさを笑いながらそう呟いた私の耳に、若い娘の声が聞こえてくる。
「あの・・・大丈夫ですか・・・?」
「何・・・?」
何事かと思って周囲を見回すと、黒竜という最大の脅威が去ったことを知った大勢の女や子供達がぞろぞろと家の中から出てきては私の周囲に集まって黒山の人だかりを作り出していた。

「こ、これは一体・・・?」
「皆あんたに感謝してるのさ。俺達なんて、あいつがちょっと火を吹いただけで皆びびっちまったからな・・・」
誰かが言ったその言葉に、大勢の男達がうんうんと頷く。
「し、しかし・・・私は・・・」
衆人環視の中で曝け出してしまった己の淫らな一面が脳裏に蘇り、思わず言葉に詰まってしまう。
首領の男も私が何を考えているのかを悟ったらしく、急に子供を諭すような柔らかな口調で語りかけてきた。
「大丈夫さ・・・あんたが思うほど、人間は不義理じゃない。誰もあんたを貶めたり、蔑んだりなどするものか」
その言葉に俯いていた視線を恐る恐る上げてみれば、視界に広がるのは子供や娘達の屈託の無い笑顔。
あの現場を見ていた当の男達でさえもが顔に満面の笑みを浮かべ、私を、そして救われたこの町を祝福している。

「なあ、あんた・・・いっそのこと、この町に住んでみないか?」
「な・・・何だと・・・?」
やがて幾許かは落ち着いたところに投げかけられた思いもよらぬ提案に、私は首領の男の顔を見上げていた。
「その怪我じゃ、住み処に帰るのは無理だろう?それに、獲物だって獲れるかどうか不安なんじゃないのか?」
「それは・・・確かにそうだが・・・」
「ああ、そいつはいい考えだ!それにまたあんなバケモンが襲ってきたりしたら、俺達じゃ何もできないしな」
彼らはそう言うものの、竜と人間が同じ所に共存することなど果たしてできるのだろうか?
だがそんなことを考えていると、人込みの中を割ってあの赤子の入った籠が私のもとへと送り届けられる。
「それにほら・・・この町なら、あんたも安心してこの子を育てられるだろう?」
ガヤガヤとした喧騒の中でも聞き取ることができた、スースーという赤子の静かな寝息。
私は籠の中で眠る小さな命を慎重に両手で掬い上げると、誰にも見られぬように心の内で苦笑した。
フフ・・・何を馬鹿なことを・・・竜と人間の共存など、私の住み処の中で既に実現していたことではないか。
両手で作った揺り篭の中で赤子を揺すってやりながら、私はようやく笑顔を浮かべると男の問に答えていた。
「そうだな・・・では、お言葉に甘えさせてもらおうか・・・」

その日から、私は人間の町の片隅にある納屋に住まわせてもらうことになった。
彼らは痛めた翼のせいで狩りにも行くことのできなくなった私に毎日新鮮な肉や魚を届けてくれるし、時折私ではどうしようない程に激しく泣き喚く赤子の不満を解消してくれたりもしている。
そして何より、大勢の子供達が赤子ではなく私を目当てに頻繁に納屋へと遊びにきてくれるようになったのだ。
朝から晩まで楽しそうにはしゃぐ子供達の相手をしていると、不思議と傷の回復も早まるような気がしてくる。
いつしかこの赤子もこんな腕白坊主に育つのかと思うとたまに溜息が漏れてしまうものの、それでも彼に"お母さん"などと呼ばれることを想像すると私は楽しくて仕方がなくなってしまうのだった。

3年後・・・
竜が住んでいるという噂が立ったおかげでますます活気に満ち溢れた人間の町の上を、橙色の鱗を纏った大きな雌竜が優雅に飛び回っていた。
すっかり翼の傷も癒えた彼女の腕の中にはようやく言葉を覚え始めた小さな男の子が抱かれていて、大空から見下ろす町や森の壮大な景色にキラキラと目を輝かせている。
バサッ・・・バサッ・・・
「どうだ・・・怖くはないか?」
「うん!お母さん、空を飛べるなんて凄いんだね!」
「フフフフ・・・お母さん、か・・・まるで、不思議な夢を見ているような気分だな・・・」

そう呟きながらふと町の方に目をやると、あの首領の男がこちらに向けて大きく手を振っていた。
どうやら、昼食の用意ができたらしい。
私では子供の食べられる食事を用意することができないため、この子が固形食を食べるようになってからはいつもこうして人間達が食事を作ってくれているのだ。
「おっと、そろそろ食事の時間のようだ。お前もお腹が空いただろう?」
だがそう言うと、まだ遊覧飛行に満足していないのか子供が不満そうな声を上げて反抗する。
「え~・・・僕、もうちょっと飛んでいたいな・・・」
「それなら、食事の後に今度はもう少し遠い所を見に行ってみるか?」
「ほんと?ほんとに?うん!それじゃあ、早くご飯食べようよ!」
全く・・・私も何時の間にか、随分と子供の扱いに慣れてしまったらしい。
私は胸の内に湧き上がる幸福感を噛み締めると、眼下の賑わいに向けて清々しい空を滑り降りていった。



感想

  • やっぱりハッピーエンドでしょう -- 名無しさん (2007-06-30 19:42:30)
  • 楽しくもありはらはらもあり

    ・・・・・そしていろいろな意味で考えさせられたお話しでした。
    素晴らしいお話し、どうもありがとう。 -- 名無しさん (2007-07-05 02:30:35)
  • 続編希望 -- 名無しさん (2009-02-11 20:53:50)
  • 考えてみます・・・ -- SS便乗者 (2009-02-14 23:42:35)
  • 大人になったコリンが見たいです。 -- 名無しさん (2009-10-11 03:24:09)
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