師弟

    

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 猟銃の音が森に響き渡った。いきなりの轟音に驚いた鳥たちが、木々の間からバサバサと飛び去ってゆく。
俺の視線の先には倒れてぐったりと動かなくなった兎の姿があった。どうやら命中したらしい。
「…………」
 茂みの中から這い出すと、俺は兎の元まで駆け寄った。
正確に頭を打ち抜くことができていた。今回も、うまくやれたらしい。
兎はぎょろりと白目をむいたまま絶命している。俺はその目をそっと閉じてやった。
「そんな目で俺を見ないでくれよ」
 もう生きてはいないと言え、底のない瞳で見られるのはどうも好かない。
無言で恨みの視線を送られているような気がしてならないのだ。

 獲物にしてはやや小さいが頭意外に傷もないし、品質としては悪くはないだろう。
俺は兎を拾い上げると軽く泥を払い、袋の中に詰め込んだ。
今日の収穫はこんなところだろう。粘った割には少なかったが、暗くなる前には森を出るべきであろう。
視界の効かない夜の森では、いくら銃を持っていたとしても危険が溢れている。
熊や狼に不意を突かれれば逆に俺の方が獲物にされかねない。
「……戻るか」
 小さなため息と共に兎の入った袋を持ち上げると、俺はその場を後にした。

 村に着く頃にはちょうど日が暮れるぐらいだろうか。
得られた獲物が兎一匹だけでは皆をがっかりさせてしまうかもしれない。
そんなことを考えながら、俺は森の間にある細い道を歩いていた。
この道が村と外を繋ぐ唯一のルートだ。それだけ俺の村は外界から隔絶された位置にある。
 村には年寄りばかりで、若者はいない。俺の知っている奴は皆、街に出ていってしまった。
残った俺が村を支えるべく、こうして狩りをしているというわけだ。
村の中では一番若い俺でも、もう三十過ぎだ。若い、とは言いづらい年齢である。
元は狩猟などほとんど行っていなかったが、長年農作を続けてきたせいで土地が痩せ作物の育ちが悪くなっている。
止む終えず森の動物を狩って毛皮を売り、得た金と残った動物の肉でなんとか生計を立てていると言った感じだ。

 もともと俺は狩りなんてしたことがなかった。自らの手で動物を殺すなんて考えたこともなかった。
初めて猟銃で動物に狙いをつけたときは、手が震えてどうしようもなかったのをよく覚えている。
狩りをし始めて何年にもなるが、未だに引き金を引くときに躊躇いを感じてしまうのだ。
動物を殺す、という行為に背徳感を感じずにはいられない。つくづく俺は狩りには向いてないんだな、と毎回思わされる。
 割り切ってしまえば楽なことなのかもしれない。
生きるために仕方ないことなんだと、自分に無理矢理言い聞かせてしまえば、
例えそれが欺瞞や気休めであろうとも、やるせない気持ちを抱くことはなくなる。
 だが俺は、今抱いている心のもやを誤魔化してまで狩りを続けようとは思わない。
自分の心に嘘をつくくらいならば、とことんもやと付き合う方を選ぶ。

 確かに狩りは辛いと思うこともある。
だがそれでも俺は故郷を愛していたし、離れてよそへ行こうという気持ちは不思議と湧いてこなかったのだ。

 帰路についてどれくらい経っただろうか。
森と森の間の少し広い隙間。それが今俺が歩いている道を表現するのにはふさわしいだろう。
当然舗装なんてされてない。しかし、俺と同じように狩りに来た者達がこの道をたびたび通るので踏み固められ、草が生えていなかった。
草がないだけまだ通りやすい。この細い道を抜けていくと、上手い具合に村へと通じる道へと出るのだ。
おそらく俺のような森に慣れた人物でないと気がつかないだろう。
もうすぐ日も傾き始める。このまま行けばいつものように村にたどり着ける、はずだった。

 茂みを?き分けて広い道へと出る。さっきの小道よりは大分広いがやはり舗装などはされていない。
時々この道を通る同業者に会うこともあるのだが、今日は誰の姿もなかった。この道をまっすぐ進めば俺の住む村はすぐだ。
「……!」
 足を踏み出した俺の頭上を巨大な影が通り過ぎて行った。地面に映った影の大きさからすると、鳥ではない。
鳥ではないのに空を飛んでいる、そしてずっと大きい。一抹の不安が俺の脳裏をよぎった。まさか。
「…………」
 恐る恐る上空を見上げる。そこには空中で旋回し優雅に空を舞うドラゴンの姿があった。
何度か遥か遠くの空を飛んでいくのを見たことはある。しかし、こんなにも近くで姿を拝むのは初めてだった。
俺が想像していたよりも体はずっと大きかったし、手足に宿す爪もずっと鋭く見えた。

 ドラゴンがいることは別におかしなことじゃない。偶然ここを飛んでいただけだ。
じわじわと湧き上がってくるいやな予感を振り払い、自分自身に言い聞かせながら俺は足を進めた。
早足になった俺に合わせるかのように、地面に映るドラゴンの影が一回り大きくなる。
最後の望みと共に、俺はもう一度だけ空を見あげた。一瞬だが、空中のドラゴンと目が合う。
それが合図になったかのようにドラゴンはグッと俺との距離を縮めてきた。もう確信できる。奴は俺を狙ってる。
「……くそっ!」
 冗談じゃない、獲物になるなんてごめんだ。俺は勢いよく駈け出した。
力の限り走る。路面の悪さに何度も足を取られそうになりながらも俺は走った。立ち止まったら間違いなくドラゴンの餌食だ。
そんな俺を嘲うかのようにドラゴンはやすやすと俺に近づいてきた。もう翼で巻き起こる風が伝わってくるぐらいだ。だめだ、逃げられない。
「ぐあっ!」
 強い衝撃を感じた。丸太で背中を殴られたような感覚だ。幸い意識はある。再び足を動かそうとして、俺は地面がもうそこにはないことに初めて気がついた。
ドラゴンが前足で俺の肩を掴んだまま、空を飛んでいるのだ。人間一人持ち上げるのは体の大きなドラゴンにとって造作もないことなのだろう。
俺をどこに連れていくつもりなのかは分らなかったが、この先どうなるかを考えるとじっとしてなんかいられなかった。
「くそっ! 離せっ!」
 肩を激しく揺さぶり、俺は今自分にできる精一杯の抵抗を試みる。
「あ、暴れるな! 落ちるぞっ!」
 ドラゴンがバランスを崩し俺の体がぐらりと傾く。抵抗に必死になりすぎて気付かなかったが、下を見れば目がくらむほどの高さの場所に俺はいる。落ちればただではすまない。
このままドラゴンに連れて行かれても無事ではいられないのは確かだろうが、この高さから落下して地面に叩きつけられるという恐怖を目前にして、俺の抵抗はいつの間にか止まっていた。
「おとなしくしてろよ。落ちて死にたくなかったらな」
「……俺をどうする気だよ?」
「…………」
 ドラゴンは答えなかった。どうせ俺を食うとかそういった類のことだろうとは思うが。

 何で俺なんだ。別に俺じゃなくても他の奴を狙えばいいだろう。若い奴のほうが肉は美味いんじゃないのか。何でよりによって30も過ぎたおっさんの俺を。
嘆いたところで今の状況が変わらないのは俺だってわかっている。どうしようもない。手も足も出ない絶望的な状況だ。
 ここで暴れて振り落とされるか、このままドラゴンに連れて行かれるか。二つに一つ。どちらも救いようのない結末がその先に待っている。
だが今の俺にはどうすることもできなかった。がっくりと力なくうなだれたまま、ドラゴンに身を預けるよりほかになかったんだ。

 岩窟特有のひんやりとした空気の中で、俺は大きなため息をついた。天井を見上げれば遥か上のほうにぽっかりと丸い穴があいている。
唯一の出口はそこだ。ドラゴンはそこから入り、俺をこの岩窟の中に閉じ込め外に出て行った。
見張りもいない所に俺を一人残して行ったのは、それだけここが脱出困難なつくりになっているからだろう。
「……登るのは厳しいか」
 俺は壁際まで歩いて行き岩壁に触れる。頑丈そうな岩だ。
体重をかけても崩れるようなことはなさそうだったが、壁の角度はほぼ垂直と言っていい。
また、この岩窟は天井に近づくにつれ空間が狭くなり全体として壺のような形になっている。上るとなると垂直な壁以上に過酷だった。
かといって、このまま何もしないでいればいつかはドラゴンが戻ってくる。その前に何とかしなければ。
「くそっ、せめて銃があれば少しは太刀打ち出来たかも知れないのに……」
 ここに放り込まれるまで気づかなかったが、ドラゴンに肩を掴まれたときの衝撃で猟銃と獲物の兎を落としてしまったようだ。
丸腰でドラゴンに挑んでも、その結果は火を見るより明らかだろう。簡単に返り討ちにされて終わりだ。
 逃げようにも上れるような壁ではない。抵抗しようにも武器がない。まさしく八方塞がりだった。

 天井の穴から差し込む光に黒い影がよぎった。ドラゴンが戻ってきたのだ。
俺から見ればそれは絶望の使者だ。禍そのものである影は、岩窟の底に降り立つとゆっくりと近づいてきた。
「うわあっ!」
 俺は一目散に駈け出した。逃げるといってもここに抜け道なんてないことは分かっている。
逃げたところでいつかは追い詰められてしまう。それでも、目の前の恐怖から逃げ出さずにはいられなかった。
 そう時間が経たないうちに、俺の前に巨大な岩壁が立ちふさがる。行き止まりだ。もうだめだ。
脱力感ともに背後を振り返ると、もうそこまでドラゴンは迫ってきていた。あと何歩か踏み出せば手の届く範囲だ。
「お、お前、俺を喰う気なのか!?」
「……ああ」
 意外と小さな声だったが、しっかりと聞き取ったその言葉。喰う、すなわち俺をここで殺すということだ。
「な、何で俺なんだよ! 他にも人間はたくさんいるだろう?!」
「一番最初に見つけた人間が君だった。……それだけだよ」
 つまり運が悪かっただけ、そういうことか。狩りに出かけて獲物が取れかなった日は、その言葉を使うのも嫌いじゃない。
そうやって自分を納得させられたのならば、何の問題もない。だけど今回はそうはいかなかった。
自分の命がかかっているのだ。運が悪かった。だから死んでくださいと言われても、到底納得できるわけがない。
「た、助けてくれ、頼む」
「…………」
 ドラゴンは無言のままさらに俺との距離を縮めてきた。もう後ろに下がれない。
すぐそばにドラゴンがいる。鋭い爪を携えた前足は、薄暗い岩窟の中でもはっきりと俺の目に飛び込んできた。
「う……あ……」
 今からその刃の餌食になるんだと、改めて実感させられ俺はその場にへたり込んでしまった。
ドラゴンが片方の前足を振り上げた。そのまま下ろせば俺の命は消える。
見たくないはずなのに、目をとじられない。体中の筋肉が強張っている。
俺は凍りついた表情のままドラゴンから目を逸らすことができなかった。

 俺はここで死ぬのか? いやだ、死にたくない!
俺が死んだら村のみんなはどうなる。誰が生活を支えていくんだ。
助けてくれ、頼む、頼む、頼む、頼む。
唇までもが震えて声にならなかったが、心の中では必死に命乞いをしていた気がする。
「……っ」
 少しだけ、ドラゴンの表情が歪んだ。どうしたんだろうか。よく見ると、振り上げた前足が小刻みに震えている。
怯えているのか。そうだとしても、いったい何に対してだ?
「……見るな」
「えっ……?」
「見るな……そんな目で僕を見るなっ!」
 その外見からは想像もつかないようなか細い声で叫ぶと、ドラゴンは翳していた前足を下ろしぐったりとうなだれてしまった。
今まで恐怖の対象でしかなかったドラゴンが見せた意外な姿。さっきまでの恐ろしさはまやかしだったとでもいうのだろうか。
母親とはぐれ一人で震えている小動物のようなドラゴンを見て、俺は自分の中の震えがおさまっていくのを感じていた。

 いったい何が起こったんだろう。俺は何もしていない。なのにいきなりこのドラゴンは震えだした。
何か恐ろしいものを見てしまったかのように、ぶるぶると震えている。
何がドラゴンをそうさせたのか、俺には皆目分からなかった。
「……駄目だったんだ。やっぱり僕には……無理だ」
 蚊の鳴くような声で何やらぶつぶつと呟いている。もしかして俺を油断させる作戦なのか。
俺が逃げ出そうとしたらいきなり襲いかかってくるとか、そういうのは勘弁してくれよ。
このままでは埒があかないので、俺は腰を上げ恐る恐るドラゴンに歩み寄る。
「駄目とか、無理とかってなんなんだよ……わけわかんねえ」
 近くで聞こえた俺の声に反応して、ドラゴンが顔を上げる。間近で見るとやはり想像よりも大きかった。
だがそんなことよりも、ドラゴンの目に涙が浮かんでいたことのほうに俺は驚かされたのだ。
「お前……泣いてるのか?」
「え……あっ」
 泣き顔を見られて恥ずかしかったのか、あわてて涙を拭うドラゴン。
こうして見ると言動や顔立ちになんとなく幼さが見え隠れするような感じだ。まだ若いドラゴンなのかもしれない。
「ごめん、君をこんなところに連れてきちゃって。でも安心して。もう、君を食べるつもりなんて……ないからさ」
「あ、ああ。それはよかった……」
 なんだかよく分からないが命は助かったらしい。嬉しい知らせのはずなのに、素直に喜べないのはどうしてだろうか。
「本当にごめんね。すぐに君を元の場所に……」
「なあ、何で泣いてた?」
 俺の質問に、ドラゴンは少し気まずそうに目をそらす。あまり触れてほしくないことのようだ。
とはいえ、やはりそこは気になる。俺はドラゴンが目を合わしてくれるのを待った。
「……こんなこと、人間の君に話しても仕方のないことかもしれないけど、聞いてくれる?」
「ああ。俺がこんなこと言える立場じゃないかもしれないが、なんか……心配だしな」
 殺されかけたというのに、のんきな物言いだったかもしれないが、涙を流すドラゴンの表情がどうも目に焼き付いて離れなかった。
相手は俺を殺そうともした。それでも俺はこのドラゴンを放っておけなかったのだ。
「ありがとう」
 ほっとしたような安堵の笑み。本当は誰かに聞いてもらいたかったのかもしれない。
俺は再び腰を下ろすと、ドラゴンの話に耳を傾けた。

「殺すのが……怖い、か」
「生き物の肉を食べるには、どうしても殺さなくちゃならない。それがどうしても怖くて……」
 鋭利な爪と鋭い牙、そして空を自由に飛び回る身体能力を持つドラゴンだ。
その気になれば、森一つ分くらい簡単に支配できそうな勢いだ。
そのドラゴンが、他の生き物を殺すのが怖いと言っている。
ぱっと見は強そうで恐ろしい外見に反して、ひどく不釣り合いに思えた。
「この爪をつきたてたら痛いだろうな、とか、相手だって死にたくないはずだよな、とか、いろいろ考えちゃってさ」
「だが、お前だって他の生き物を食べて今まで生きてきたんだろう?」
 話を聞くうちにだんだんはっきりと分かってきた。このドラゴンは狩りに向いていない。おそらく俺以上に。
俺が狩りのときに抱くやるせない気持ち。俺は割り切るよりはそっちを選んだ。
自分をごまかすよりは、自分の気持ちと付き合いたいと思ったからだ。
このドラゴンは割り切ることも、気持ちと向き合うこともできていない。これでは上手に狩りができるはずもない。
「僕だって食べなければ生きていけない。本当に仕方なくだけど、動物を殺したことは何度もあるよ……」
「大丈夫だったのか?」
「今はもう泣かなくなったかな。昔は泣きながら獲物の肉を食べてた。でも、やっぱり今でも辛いよ」
 優しいと言うか、それとも弱いと言うか。野生の世界でそれは弱いと言うのだろう。
だが俺はこのドラゴンはとても優しい心を持っているんだなと思う。
形は違えど、似たような境遇の俺がドラゴンに弱いだなんていう資格なんてない。
俺が動物を殺すのにためらいを感じることも、他人からみれば弱さなのかもしれないからだ。

「今まで……人間を殺したことはあるのか?」
 俺の問いかけに、ドラゴンは黙って首を横に振った。
その答えに俺はほっと胸をなで下ろす。このドラゴンに人間の血の味を知ってほしくはなかったからだ。
「ここのところ、狩りが全然うまくいかなくてさ。空腹に耐えきれなくなって……」
「偶然見つけた俺を襲ったってわけか」
「うん……でも、僕に人間は殺せなかった。殺そうとすれば、助けを乞う言葉が聞こえてくる。たとえ喋らなくても、目で訴えかけてくる」
 俺が発した命乞いの言葉や、懇願するような視線。これらの全てがドラゴンを躊躇わせていたのだろう。
視線はともかく、他の動物は言葉を喋りはしない。直接耳に飛び込んでくる言葉の力はやはり大きい。
「君を前にして舐められないように強がってみたけど、やっぱり駄目なものは駄目だった。表面を繕ってみても、中身まで簡単には変えられないんだね」
 虚勢であろうとも、この外見だ。俺は相当怖かったし、相手をおびえさせるには十分すぎるほどの効果がある。
だから余計に今のドラゴンの姿と、さっきの姿とのギャップに違和感を感じずにはいられないのだ。
姿形は似ていても、全く別のドラゴンを見ているかのようだった。
「お前がもし草食動物に生まれていたら、もっと幸せだったかもしれないな。草や木の実で腹は満たせないか?」
「何度か試したよ。でも、植物は僕には合わないらしい。食べると気持ち悪くなってすぐに吐いちゃうんだ。
本当にどうして僕は肉食で生まれてきたんだろうかって、何度も思うよ。草食なら、こんなに苦しむこともないのにね……」
 忌々しそうにドラゴンは自分の右足を見た。そこには鋭い爪が、暗闇の中でも不気味な輝きを放っている。
どんな生き物の肉であろうと簡単に引き裂いてしまいそうな爪。それは彼が肉食動物であることの証でもあった。
「もしここで俺を逃がしたとして、だ。お前はこれからどうするんだ? 狩りもろくにできないんじゃ、またやむ負えず人間を襲うことになりかねないぞ」
「……そうなったとしても、きっと僕には人間を殺すことなんてできないよ。もし殺してしまったら、その先ずっと後悔して何もできなくなりそうな気がする」
「一度はお前に殺されかけた俺が、こんなこと言える立場なのかどうかは分らない。だがお前、このままじゃそう遠くないうちに……死ぬぞ?」
 狩りが上手くいかなければまた俺以外の人間を襲うことになる。
本当に追い詰められたなら、このドラゴンでも人間を殺してしまうかもしれない。
こいつの性格を見る限り、そうなってしまったあとには救いようのない結末が待っているような気がしてならないのだ。
あるいは、俺の時と同じようにように殺せなかったとしてもだ。
人間を殺そうとする危険なドラゴンがいるということで、猟師たちが駆り出されることになるだろう。
同胞に危害を及ぼす他の動物に対して、人間が恐ろしいまでに非情になれることを俺は知っている。
集団で銃撃を浴びせられれば、いくらこのドラゴンでも死んでしまうだろう。
「……そうかもね。でも、こんなに苦しい思いを続けるくらいなら、それも……悪くないな」
「やめろ。縁起でもない」
 叫んではいなかったが、俺の声はいつの間にか鋭くなっていた。
岩窟内は響くため余計に迫力を感じたらしく、ドラゴンが一瞬身を竦ませた。
「苦しいから死んでも構わないなんてのは、ただの逃げだ!
お前が肉食だってのは変えようにも変えられない現実なんだ。だったら、それと向き合うしかないだろうが!」
 これは俺の自分自身に対しての叫びであったかもしれない。
狩りをしなければ生きていけない現実。これは俺の場合でもドラゴンの場合でも同じことだ。
俺が動物を殺すのが苦手なことは俺が一番良く知っている。だから俺は気持ちと向き合うことを選んだ。
殺すことを割り切ってしまえないならば、自身の気持ちと向き合っていくしかないのだ。
「そんなこと言われても……僕は弱いドラゴンだ。そんなこと簡単にできないよ!」
「簡単にやれなんて言ってないさ。焦らなくても、ゆっくり気持ちを整理して向き合っていけばいい。
ドラゴンなら、人間よりもずっと時間があるはずだぜ?」
 実際俺も、猟銃を持ち始めた当初は罪の意識に苛まれたこともあった。
動物を殺すことが苦手という、元来の性質を簡単に変えるなんてことはできない。
気持ちの整理はゆっくりでいい、大事なのは自分が納得できる答えを見つけ出せるかどうかだ。
いきなり言われても難しい問題だろう。ドラゴンが今まで悩んできたことに、決着をつけるということなのだから。
それでも生きていくのならば、ドラゴン自身が決断をしなければならない。

 ドラゴンは黙ったまま俯いている。ちょっとやそっと考えたところで答えの出るような問題ではない。
俺も何も言えずに黙っていた。これは俺が口出しするべきところではなかったからだ。
沈黙を破ったのは、ドラゴンの腹の虫だった。岩窟全体に響いたのではないと思えるほど大きな音だった。
「あ……」
 ドラゴンは照れ臭そうに苦笑する。
張りつめていた空気が解けてしまった。戻そうとしてもなかなか元には戻らない。
俺もドラゴンも、どこか緩んだ表情のままだ。
「お前、動物なら狩ったことがあるんだってな?」
「うん……」
「俺は猟師だ。あんまり自信を持っては言えないが、少なくとも俺はそのつもりだ。
狩りの仕方を教えてやるよ。俺流のやり方だが、今よりは狩りの腕が上達するとは思うぜ。
お前が森でちゃんと獲物を獲れるようになれば、人間を襲う必要もなくなるだろ?」
 決して有能な猟師ではない。
もしかすると猟師にもなりきれていないかもしれない俺だったが、ドラゴンにアドバイスをすることぐらいはできるだろう。
「えっ? だけど……」
「狩りが上手くなりたいのか、なりたくないのか、どっちだ?」
「……なりたい」
「なら話は早い。まずは森に行って、俺が直接指導してやる。ここいらの森なら、鹿や猪や兎やら、結構いるぞ?」
 ドラゴンがごくりと喉を鳴らすのが聞こえた。動物を殺すのが怖いとは言っていても、名前を聞けば食欲は湧いてくるらしい。
何日も食べていないというなら尚更だ。ここは一人の猟師として、何とかこいつを餌にありつかせてやりたかった。
「じゃあ早速外に……おっと、その前にお前の名前を教えてくれ。俺の名前はレヴィンだ」
「……ハール。僕の名前はハールだよ。でも、どうして?」
「俺が傍に立って、狩りを教えるんだ。そのときはお互いに名前で呼び合ったほうがしっくり来るだろ?
それに、いつまでも『お前』や『君』じゃよそよそしいしな」
 いきなり名前を聞かれ、少し戸惑いの表情を見せたハール。だがすぐに微笑むと、
「そっか。よろしく頼むよ、レヴィン」
「ああ、任せとけ。ハール」
 良い手本になる自信は正直言ってない。
だがそれでも、俺は自分とよく似た苦しみを抱くハールの力になってやりたかった。



「どこで降りればいいかな?」
「あ、ああ。そうだな……」
 ハールの首にしがみつき、俺は恐る恐る周囲を見渡す。
肩を掴まれて運ばれるよりはきっと楽だろうと思っていたが、案外そうでもない。
肌身に感じる風は予想以上に強く、バランスを保つのが難しかった。
「よし、この下の森に降りてくれ」
「え……うん、分かった」
 飛び始めて幾ばくも経っていないのだが、俺はとにかく地面に足をつけたかった。
どこで降りようと森の中ならば動物はいるだろう。
ハールはすぐに降りるように言ったことに少し疑問を感じた風だったが、素直に従ってくれた。
師匠面した手前、背中に乗っているのが恐いなんてのは情けなくて言えない。
そんな俺の気持ちを知ってか知らずか、ハールは森へと下降をし始めた。
心なしかスピードがゆっくりだったのは俺への気遣いだろうか。

 森の中に降り立った俺は、まず周囲の確認をする。
やや暗くなりかけてはいたが、狩りができないほどではなかった。
今のところ辺りに何か動物のいるような気配はない。
最も、気配を感じ取る感覚はハールの方が俺より優れているのかもしれないが。
「ハール、今まではどんな感じで狩りをやってた?」
「えっと……森の中を探して、見つけたらとにかく追いかけてた」
 ハールの体の大きさで獲物を追尾して捕らえるのは至難の技であろう。
獲物を追いかける狩りの仕方は、木々の間を縫って走れるような小柄な動物に向いている。
それでも何度かは成功しているのだから、そこはハールの努力と苦労の賜物なのかもしれない。
「お前の体の大きさなら、追跡して捕らえるのには不向きだ。俺が森でいつもやってるのは待ち伏せだ」
「待ち伏せ……?」
「ああ。茂みに身をひそめて獲物が近くを通りかかるのをひたすら待つ」
「それでうまくいくの?」
 どうにも半信半疑といった様子のハール。とにかく追いかけて捕まえるやり方よりはずっと効率がいいと思うんだが。
うまくいくかどうかはかなり運に左右されるが、俺はこの待ち伏せでしか狩りを成功させたことがないのだ。
ハールに教えられることと言えば、この方法だけだった。
「俺は今までこれで狩りをしてきたんだ。隠れて待っていればいつかは獲物が来るさ。
そうだな……そこの茂みあたりがいいんじゃないか。隠れるには十分な大きさだろ」
 俺は近くにあった茂みを指さす。緑が小さな丘のように盛り上がっていて大きい。
中で息をひそめていれば、俺とハールがいることも気づかれないだろう。
「気長に待たなきゃならないが、やってみる価値はあると思うぞ?」
「分かった。やってみるよ、レヴィン」
 ハールは頷くと、小枝と葉を散らせながら茂みの中に潜り込んだ。
夕暮れ時の薄暗さも手伝って傍から見れば、ここにドラゴンが隠れているだなんて想像もつかない。
これならば他の動物にも気付かれないだろう。俺も茂みの中に身を潜め、獲物の到来を待つことにした。

 俺とハールが茂みの中に身を潜めてからどれぐらいの時間が経っただろうか。
辺りはずいぶんと暗くなってしまった。俺の目もそろそろ周囲の様子を把握しづらくなってきた。
「ハール、暗くなってきたがまだ続けられそうか?」
「大丈夫。これくらいの暗さなら問題ないよ。レヴィンのほうこそ大丈夫なの?」
 ドラゴンであるハールは人間の俺よりも優れた視力を持つらしい。
俺が狩りを続けるのは無理だが、ハールができるのなら問題ない。狩りをするのはあくまでハールだからだ。
「俺は大丈夫だ。獲物が近付けば茂みの音や足音で分かるさ」
「その時は……頼むよ」
「ああ、ちゃんとサポートしてやるよ」
 俺の声を聞いて、少なからずハールはほっとしたようだった。
俺を頼りにしてくれているハールのためにも、ここはなんとしてでも狩りを成功させなければ。

 かすかな物音が聞こえてきたのはそのあとすぐだったような気がする。
草の間を縫って進んでいるようなざわめきが、森の静寂の中わずかだが響いてきたのだ。
生き物が動作で立てる音と、風が吹いて立つ音とでは明らかな違いがある。今のは間違いなく前者だ。
「……レヴィン」
「静かに。たぶんこっちに近づいてきてる。もう少し待とう、できるだけ音を立てるなよ」
「分かった」 
 小声でやりとりを交わした後、俺もハールも物音を聞き洩らさないように耳を澄ませた。

「音の正体は……あいつか」
「みたいだね」
 さっきから聞こえていた音は徐々にその大きさを増し、やがて茂みの中からひょっこりと顔を出した。
俺とハールが隠れている茂みの向こう側にある小さな茂みから、一匹の鹿が現れたのだ。
茂みから出てくると、鹿はきょろきょろとあたりを見回す。
こんな時間に何をしているのか分らなかったが、獲物にするならば今がチャンスかもしれない。
「ど、どうするの、レヴィン」
「あいつは俺達に気づいていない。それにここは十分広さがあるし、狙ってみるか」
 俺達が隠れている茂みと鹿のいた茂みの間には、程よく開けた空間がある。
体の大きなハールが力を発揮するにはある程度の広さは必要になるが、この空間の広さなら問題ないだろう。
鹿はちょうど茂みから出てきている。狙うなら今だ。
「いいかハール、よく聞けよ。お前はこの茂みから素早く飛び出してあの鹿の首筋に噛み付くんだ」
「え、う、うん。わ、分かったよ」
「上手く狙えばそんなに苦しませずにやれるさ。俺はいつもそうしてる。できるだけ一撃で済ませたいからな」
 殺すなら苦しませないように。それが俺のやり方だ。
獲物がもがき苦しんで死に絶える様子を見て耐える自信は俺にはない。
勝手な自己満足にすぎなかったが、一撃で仕留めることができると俺は少しだけ安堵できるのだ。
「や、やってみる」
 ハールは姿勢を低くして飛びかかる体勢をつくる。しかし、地面を踏み締める前足は小刻みに震えていた。
やはり怖いのだろうか。震えるハールはまるで、猟銃を初めて構えて震えている昔の俺を見ているかのようだった。
もしあの頃の俺に何かアドバイスができるなら、俺は何と言っていただろうか。
「余計なことは考えないで、あいつを狩ることだけに集中するんだ。腹、減ってるんだろう?」
 俺はハールの耳元でそっと囁いた。ハールは前を向いたまま小さく頷く。
そして後ろ脚で強く地面を蹴ると、茂みの中から鹿へ向かって跳躍していった。

 俺の言葉がハールの本能を動かしたのかどうかは分からない。
だが、さっき一瞬垣間見えたハールの表情は今までの頼りない雰囲気ではなく、獲物を狙う野性のものだった。

 ハールが飛び出して行った直後、鹿の小さな悲鳴が聞こえた。
そして声を出そうとしても出せずに喘いでいる苦しそうな呼吸の音が。
俺は急いで茂みから這い出し、ハールのもとへと駆け寄った。
ハールの狙いは正確だったらしい。見事鹿の首筋に牙を突き立てていた。
鹿は時折脚をばたつかせ、必死の抵抗を試みる。
脚が動くたびにハールの表情が苦痛に歪んでいく。
もしここでハールが鹿を離そうとすれば、俺は声を掛けていただろう。
ここで離せばもっと苦しませることになる、と。
しかしハールは牙を離そうとはしなかった。やがて、鹿は抵抗をやめぐったりと動かなくなった。
「どうやら……仕留められたようだな」
 ハールは黙って鹿を牙から解放する。ドサリと音がして鹿は地面に倒れこんだ。
口元を少しだけ血で染めたその姿は、外見だけ見ればドラゴンとして様になっている。
俺の想像していたドラゴンは体のどこかは獲物の血で染まっている、そんなイメージなのだ。
内面を考慮すれば、ハールほど血の似合わないドラゴンもいないが。
「う、うん……」
「……大丈夫か?」
「何とか、ね」
 心なしか声が震えている。獲物を殺したとき、昔は涙が流れたとハールは言った。
今のハールの瞳に涙は見えない。だが、心の中では涙を流していたのかもしれない。
しかしそれでも、ハールは倒れた鹿から目を逸らそうとはしなかった。

 俺は倒れて動かなくなった鹿に歩み寄る。首筋を牙が正確に貫いていた。
これならばそこまで苦しませることもなかったかもしれない。
もし俺がこの鹿を銃で仕留めていたら、どうだっただろうか。
やはり罪の意識を感じて、やるせない気持ちになっていたか。
昔の俺なら自分のしたことが信じられずに茫然と立ち尽くしていたに違いない。今のハールの心境はそれに近いものだろう。
「せっかく仕留められたんだ。喰わないのか?」
「分かってるよ。でも……思い切りがつかなくて」
 ハールの性格だ。たとえ動かなくなった後でも、獲物に牙を立てることに抵抗があるのだろう。
俺はその場にしゃがみ込み、目を閉じてそっと手を合わせた。
「レヴィン、何してるの……?」
「祈ってるんだよ。死んだ鹿に対しての祈りだ。
鹿の命は潰えた、だがそれは決して無駄にはならない。無駄にしてはいけないんだ。ハール、分かるだろ?」
 獲物の死を決して無駄にしない。それが猟師としての心得だ。少なくとも俺はそう信じていた。
ハールは少しの間俺の顔を見ていたが、やがて小さく頷いた。
「お前も祈っとけ。そうすれば、ちょっとは気持ちが落ち着くかもしれない」
「うん……そうするよ」
 地面に腰を下ろすと、ハールは静かに目を閉じた。
さすがに手を合わすことはできなかったようだが、きっと祈りは届くと思う。
動物に対する感謝の意を表すことは大切だ。
命を奪うというやるせなさにばかり捕われて、最近俺も忘れかけていた。
思いだすことができたのはきっとハールのおかげだろう。
「……ごめんね」
 目を閉じたまま、ハールは蚊の鳴くような声で呟く。閉じられた瞳から、一筋の涙がこぼれ落ちた。

 しばらく経ったが、ハールはまだ動こうとしない。石像のように全く身動きをせず目を閉じたままだ。
心の中で思うことはいろいろとあるだろう。ハールの気のすむまで祈ればいい。
「……ふう」
「少しは落ち着いたか?」
 ゆっくりと腰を上げ、小さく息をついたハール。
もう表情に弱々しさは見受けられなかった。瞳にも力が宿っている。
「うん、もう大丈夫。レヴィンのおかげで僕、自分と向き合えた気がする」
「俺は背中を押したまでだ。向き合うかどうかを選んだのはハール、お前自身だよ」
「それでも、レヴィンがいなかったら狩りは上手くいかなかったと思うから……本当にありがとう」
「はは、どういたしまして」
 面と向かって礼を言われ、どこかくすぐったいものを感じ俺は照れたように苦笑する。
猟師としての腕前に自信はなかったが、どうやらハールの役に立てたらしい。
「レヴィン、少しの間、離れててほしいんだ。鹿を食べてるところ、あんまり見られたくないから」
 さすがに蛇のように丸のみするわけにはいかない。
ハールの鋭い爪や牙を考えると、食事はかなり凄惨な光景になるだろう。
俺もその場に居合わせたいとは思わない。食事が終わるまで離れておくのが無難だ。
「分かった。俺はさっきの茂みにいるから、終わったら声を掛けてくれ」
「そうするよ」

 俺は早足で茂みまで行き、身を潜めた。
覗こうと思えば覗けるが、見たいとは思わない。しかし、見なくとも音は聞こえてくる。
ピチャピチャという水音、骨を砕くようなゴリゴリという音。さらには血の匂いも漂ってきた。
優しい性格をしているが、やはり野生の動物としての本能は持ち合わせているようだ。
一度牙を立ててしまえば躊躇いよりも、空腹を満たすことが優先される。
もしかすると、俺があの鹿の立場だったかもしれないのだ。捕まったのがハールで本当によかったと思う。
「レヴィン、終わったよ」
 背中に声がかかる。俺は心を落ち着かせてからゆっくりと振り返った。
予想していた通り、口の周りと前足の爪を紅く染めたハールの姿がそこにあった。
覚悟はしていたものの、自然と俺の心臓は速くなる。落ちつけ、今更何を恐れているんだ。
「川とかが近くにあればいいんだけど、ごめんね。血の匂いとか、大丈夫?」
「ああ……。大丈夫だ。悪いな、気を使わせて」
 大丈夫とは言ってみたが、血を見るのにそこまで慣れているわけではない。
猟銃を使えばそれほど血を出さずに仕留めることができる。
あとの処理は村に毛皮をとる専門の奴がいるので任せていた。
とはいえ、猟師のくせに血が怖いだなんて情けないにも程がある。
ハールにそれは知られたくない。おかしな見栄だったが、俺はできるだけ平静を保つように努めた。

「さて、と。お前の腹も膨れたことだし、そろそろ行くか」
 ハールの体についた血でなく、目をみて俺は話しかけた。
「……そうだね。もう、行かなくちゃいけないのか」
「ああ。俺は村に帰らなくちゃならない」
 年寄りばかりで、何の面白味もない村だったが、それでも俺は故郷である村を愛していた。
村の中では若い俺が、皆を支えてやらなければ。
「次に狩りをするとき……レヴィンがいなくてもちゃんとできるかな?」
 不安げな瞳を投げかけてくるハール。狩りのときに垣間見えた野性はもうどこかに身をひそめてしまっていた。
今俺の目の前にいるのは、どこか頼りなげな雰囲気を持った一匹の優しいドラゴンだ。
「お前は逃げずにちゃんと自分と向き合えたじゃないか。その気持ちを忘れなければきっと、大丈夫さ」
「……今日、レヴィンが教えてくれたこと、僕はずっと忘れない。ありがとう……レヴィン」
 再び礼を言うハール。本当に心からの感謝の言葉だ。俺も今度は照れ笑いでなく、屈託のない笑顔で答えた。
「こんな俺でもお前の役に立ててよかったよ。じゃ、行こうか?」
 ハールが頷いたのを確認すると、俺は背に跨った。
ずいぶんと暗くなってしまったが、俺の村は分かるだろう。
何しろあたりは森ばかりなのだ。空から見ればとにかく目立つはずだ。
 ハールは地面を強く蹴り、翼を大きく羽ばたかせ、夜の空へと飛翔する。
やはり背中では風に揺られて安定しないので、俺はハールの首にしがみつく。
もう、血の匂いは気にならなかった。


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