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追憶の闇2

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匿名ユーザー

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「ぅ・・・ぁ・・・・・・・・・ゲホ・・・ゴホッゴホッ・・・」
だが窒息したレオルが意識を失いかけたその時、万力のように彼を締め上げていた尻尾が少しだけ緩められる。
「く、苦しい・・・よ・・・お姉ちゃん・・・たす・・・ぁ・・・」
ギシィッ・・・ミリミリ・・・
そしてようやくか細い声が出せるまでに回復したのを確認すると、ドラゴンが再びレオルの体を締め付け始めた。
「うぁっ・・・あぁ・・・」
「やめて・・・もうやめて・・・お願い、その子を放してぇ・・・」
「ククククク・・・なんとも心地よき声よ・・・もっと聞かせるのだ」
メキッ・・・メシッミシッ・・・
容赦のない締め付けと時折与えられるわずかな休息の繰り返しに、レオルはドラゴンに捕えられてからものの3分もしないうちに尻尾の中でぐったりとうな垂れていた。
完全にもがく気力もなくなってしまったのか、ピクリとも動けぬまま時折微かに呻き声を上げている。

「う・・・・・・ぅ・・・」
「酷い・・・酷過ぎるわ・・・まだ幼い子供になんてことを・・・」
「ククク・・・それもそうだな・・・では、そろそろ楽にしてやろう・・・」
そう言うと、ドラゴンはレオルの体をその尻尾で高々と持ち上げていた。
終始ニヤニヤと私の顔を見つめていた残酷なドラゴンの口元が、ククッと少しだけ吊り上がる。
「な、何を・・・あ・・・ああ・・・そんな・・・!」
私がその悪魔じみた顔に現れている恐ろしい意図を悟った次の瞬間、ドラゴンは頭上に持ち上げた獲物に向かってガバッと巨大な口を開けていた。
そしてその赤と黒と白が織り成す死の肉洞に、尻尾を解かれたレオルが音もなく真っ直ぐに落ちていく。

ドサッ
「うあっ・・・!」
それに数瞬遅れて柔らかくも弾力のある舌の上へと勢いよく落下し、レオルがくぐもった声を上げた。
すかさずたっぷりと唾液を纏った長い舌がクルンとレオルの首や体に巻き付き、慌てて口の中から這い出そうとした獲物の最後の足掻きを封じ込める。
「あぅ・・・や、やだ・・・ぁ・・・お姉ちゃあん・・・」
「や、やめて!私は何でもするから・・・その子だけは殺さないでぇ!」
巨大なドラゴンの口内に囚われの身になった弟の姿に、私はいよいよ半狂乱になって叫んでいた。

ズリュリュッ・・・ペロッ・・・ヌチュ・・・
「う、うああっ・・・」
ドラゴンの下顎から生えた2本の巨大な牙を両手で掴んで、僕は必死で恐ろしい口の中から脱出を試みていた。
だがその間にも体に巻きついた長い舌が僕の頬を舐め回し、器用にも僕の履いていた靴や着ていた服をまるで剥ぎ取るかのように脱がせていく。
そして獲物の皮むきが終わると、ドラゴンがプッという音とともに唾液に塗れた靴と服を外へと吐き出した。
「あっ・・・やめて・・・食べないでぇ・・・」
ヌリュ・・・ジュルッ・・・
お姉ちゃんと同様素っ裸にされてしまった僕の体を、ドラゴンがまるで飴玉を転がすかのように舌先で弄ぶ。
牙を掴んだ手にわずかばかりの力を込めて抵抗すると時折舌の拘束が緩められることもあるが、いざ口の外へ飛び出そうとした瞬間には再び舌に絡め取られて口内に引き戻されてしまうのだ。
ドラゴンは明らかに、後は呑み込まれるだけになった僕の恐怖と狼狽を楽しんでいる。
やがて僕に口の外へまで体を乗り出す体力が無くなったのを確認すると、ドラゴンがバクンという音とともにずっと開いていた顎を閉じていた。
「レオル!」
これまでは多少なりとも月明かりに照らされていた周囲が一瞬にして暗闇になり、僕が食べられたと思ったお姉ちゃんの甲高い声が口内に響き渡る。

シュルッ・・・ギリリッ・・・
「あぅぁ・・・う・・・は・・・ぁ・・・」
僕はなんとかお姉ちゃんを安心させるために声を上げようとしたがドラゴンの舌に突然首を締め付けられて返事をしようにも声が出せなかった。
そしてもうほんの僅かしかなくなった僕の体力を残らず殺ぎ落とそうと、完全に逃げ場の無くなった口内で容赦の無い舌の愛撫が開始される。
「クク・・・クククク・・・」
ドラゴンの笑い声に、ますます愉悦の色が濃くなっていた。
恐らく、外ではお姉ちゃんが真っ青に蒼褪めた顔で僕の身を案じていることだろう。
生きたままドラゴンに食われるのはもちろん恐ろしかったが、僕はそれ以上にお姉ちゃんを苦しませようとするこのドラゴンが心の底から憎たらしかった。
せめて死ぬ前に一矢報いてやりたいという気持ちが、胸の内に沸沸と湧き上がってくる。

「うっ・・・こ、この・・・」
ガブッ
「ヌアッ!?」
僕は首に巻き付いていたドラゴンの舌先を両手で掴むと、その大きな肉塊に思い切り噛み付いていた。
既に完全に制圧したと思っていた獲物の意外な反撃に舌が緩み、ドラゴンが思わず口を開ける。
だが逃げるなら今しかないとばかりにドラゴンの口内を這い始めた瞬間、怒ったドラゴンが僕の体を舌で思い切り持ち上げた。
ベシャッ
「あぐっ!」
「ひっ!」
僕は一瞬にして上顎と舌の間に勢いよく挟み潰され、その様子を見ていたお姉ちゃんが短い悲鳴を上げる。
「おのれ小僧・・・そんなに早く死にたいか!」
ドラゴンはそう言いながら獲物に巻き付けた舌を先程までよりきつく締め上げると、暗い胃袋へと通じる喉の奥に僕を少しずつ引き込み始めた。
やがて恐怖と苦しみにばたつく足の先がぬめった食道の中へと押し込まれ、あっという間に腰の辺りまでがドラゴンの喉へと落ち込んでいく。
「わっ・・・い、いやだっ・・・お姉ちゃん!」
「レ、レオル!いやっ!やめて!お願いだからやめてぇっ!」
擦り傷だらけの体を捩って僕よりも必死に泣き叫ぶ姉を前に、僕は口内にいながらにしてドラゴンがうっとりと恍惚の表情を浮かべているだろうことを確信していた。

「クッ・・・クッククク・・・それ、早く助けてやらなくてよいのか・・・?」
それぞれ異なる恐怖と苦しみに悶える姉弟の様子を嘲笑うかのように、ドラゴンの楽しげな声が口内に響く。
「うっ・・・うわぁ・・・」
んぐっんぐっという嚥下の動きだけで、僕は少しずつドラゴンの喉の奥へと引き込まれていった。
両手でドラゴンの舌を掻きながら必死で落ちまいと踏ん張ってみるが、体力の砂時計は確実に流れ落ちていく。
これ以上ドラゴンが何も手を下さなくても、僕が力尽きれば胃袋へと真っ逆さまに落ちていってしまうのだ。
そしてドラゴンは愛しい弟が成す術もなく食われていく様をたっぷりと見せつけようと、大きく口を開けてお姉ちゃんの前に近づけていた。
「いや!いやっ!レオル!ああ・・・神様・・・!」
「お、おねぇ・・・ちゃん・・・僕、もう・・・だ・・・め・・・」

ズルッ・・・
「レ、レオ・・・」
私の見ている目の前で、レオルが声もなくドラゴンの口の中へと呑み込まれていった。
ゴクリという音とともに大きな膨らみがドラゴンの喉を通り過ぎ、巨大な腹へと達して消えていく。
「う、嘘よ・・・レオル・・・」
村長達にここへ連れて来られる途中私が一切抵抗を示さなかったのは、他でもない弟を守るためだった。
私の犠牲で村が・・・弟が救われると思ったからこそ、私は素直にここに縛り付けられたというのに・・・!
その私にとって唯一の守るべき対象は、今や目の前の残虐極まる悪竜の腹の中で命の灯火を消そうとしていた。

「ククク・・・さあ、よく聞くがいい・・・」
そう言いながら、ドラゴンが私の前に大きく開けた口を更に近づける。
「な、何を・・・」
「・・・お・・・ちゃん・・・・・・しい・・・よ・・・・・・すけ・・・」
「レ、レオル・・・!」
真っ暗なドラゴンの巨口の奥からは、腹の中で泣き喚くレオルの声が漏れ聞こえてきていた。
「おね・・・ちゃん・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
そして私の助けを呼ぶその声が少しずつ小さくなり、やがて何も聞こえなくなっていく・・・
「あ、あああ・・・そんな・・・いやあああああ!!」
「クク・・・クハハハハハハッ!」
私の心を完膚なきまでに嬲り尽くしたドラゴンが、森中に聞こえるような大声で高笑いしていた。



「・・・それから・・・?」
どれほど忘れようと思っても決して忘れられないあの光景・・・
最愛の弟がドラゴンに呑み込まれていく瞬間が頭の中に蘇り、私は話をしながら泣いていた。
止めど無く溢れてくる涙に咽ぶ私を慈しむような目で見つめながら、白竜がそっと先を促す。
その優しげな声には、ズタズタに引き裂かれた私の心に対する憐れみがこもっていた。
悲惨な弟の死に様を聞いたことで、この白竜の中にも非道な黒竜に対する幾許かの憤りは芽生えたのだろう。
しかしそれ以上に、白竜の顔にはどうして私が生きてここにいるかが不思議で仕方がないという様子が窺えた。
ここから先の話は、私が黒竜への復讐を望む理由の10分の1にも当たらない。
だが白竜の疑問を解消してやるためにも、私は涙を拭って息を落ち着けると暗い身の上話の先を続けていた。



一頻り深い悲嘆に暮れる私の様子を満足げに眺め回すと、弟を食い殺した憎きドラゴンは私を木に縛りつけていた麻縄を1本1本、その鋭利な爪で断ち切っていった。
そして全ての拘束が解かれた瞬間、最早生きる気力も失った魂の抜け殻がその場にドサリと崩れ落ちる。
「う・・・うっう・・・レ、レオル・・・・・・」
何時まで経っても次々と溢れ出す涙が止まる様子はなく、私はドラゴンにされるがままに地面の上へとうつ伏せに寝かせられていた。
「クククク・・・実に愉快な見世物だったぞ・・・」
「ああ・・・わああああぁぁ・・・」
弟を失ったというあまりにも大き過ぎるショックにしゃくりあげていた私の背後から胸を深く抉るようなとどめの一言を投げつけられ、悲しみが慟哭へ、絶望が諦観へと変わっていく。

「さて、次は貴様の番だな・・・ククク・・・どうしてくれようか・・・?」
「好きにすればいいわ・・・もう・・・私生きていけない・・・早く殺して・・・」
地面に突っ伏したまま、私はもう抵抗することも逃げることも完全に諦めていた。
死に対する恐怖などはとうの昔に塵と化し、あらゆる感情が私の中でガラガラと音を立てながら壊れていく。
願わくばこのドラゴンの巨口に丸呑みにされ、愛しいレオルを掻き抱いて死にたい・・・
それが、私に許された最後の望みだった。
「フン・・・最早悲鳴を上げる気にもならぬか。それなら望み通り、心ゆくまでたっぷりと可愛がってくれるわ」
そう聞こえた直後、巨大な黒い影が私の上へと覆い被さってきた。
グッと力を込めて股間に押し当てられる太い肉棒の感触に、ビクッと体が硬直する。

「クク・・・どうした?震えておるぞ・・・」
レロッ・・・クチュッ・・・
「あ、あう・・・」
腹の下に差し入れられたドラゴンの手にグイッと持ち上げられ、私は強制的に四つん這いにさせられていた。
生暖かい唾液を纏った長い舌が首筋に這わせられる度に、既に風化したはずの恐怖が再び潤いを取り戻していく。
だが私はたとえこれ以上どんなに酷いことをされたとしても、このドラゴンを喜ばせるような悲鳴だけは絶対に上げないと胸に誓っていた。
メ、メリ・・・ググッ・・・
「ああっ・・・あぐ・・・う、うああっ・・・」
無防備な姿を曝け出した私の膣へ到底収まり切らぬであろう自身の巨大な肉棒を無理矢理に捻じ込みながら、ドラゴンがまるで楽器を奏でるかのように舌先を翻しては私からか細い喘ぎを絞り出そうとしている。
やがて今にも極太の雄に貫かれようとしている私の膣から、淫らな水音が響き始めていた。

ヌチュ・・・ヌリュッ・・・クチャッ・・・
「ク、ククク・・・たった今しがた弟が死んだばかりだというのに、もう我に犯されて興奮しておるとは・・・」
「うぐ・・・うぐぐ・・・」
ドラゴンに対していかに激しい嫌悪と憤怒を差し向けようとしてみたところで、私は刺激を受けた膣から少しずつ滲み出していく愛液を止めることだけはどうしてもできなかった。
耐え難い侮辱と羞恥、そして何よりも真実を告げられず弟を死に追いやったという自責の念が、微かにこの身に残った人間としての尊厳を少しずつ溶かしていく。
グググッ・・・ズ・・・ズズリュッ!
「きゃああっ!」
ドラゴンの肉棒を濡らした愛液が潤滑油のような役目を果たし、私はほんの少しだけ体を弛緩させた隙に深々と膣の奥底を突き上げられていた。
人間には規格外の巨根が最大の性感帯に勢いよく突き入れられ、体が真っ二つに裂けてしまうかのような激痛とそれに匹敵する強烈な快感が同時に背筋を駆け上がっていく。
「いい声だ・・・クク・・・貴様もまだまだ鳴けるではないか・・・」
あれほど上げまいとしていた悲鳴をいとも容易く上げされられ、私はまたしても味わわされてしまった空虚な無力感に歯軋りしていた。

「クク・・・何だその顔は?くだらぬやせ我慢など、余計に苦しむだけだぞ・・・それ、もっと喘がぬか!」
ズブッ
「あぐっ・・・い、痛っ・・・ああっ!」
激しい衝撃とともに子宮口を突き上げる雄の抽送に歯を食い縛った瞬間、ドラゴンはその体の硬直を見計らったように私の胸から顔を出した小さな赤い蕾を爪の先で摘み上げていた。
クリッと転がすように乳頭が捻り回された途端に鋭い快感が脳天を直撃し、思わず力を込めた膣がドラゴンの巨根をきつく締め付ける。

「おお・・・なかなかよく締まるではないか・・・ククク・・・それなら、こんなのはどうだ?」
ペロッ・・・ジュル・・・ジュルルッ・・・
そう聞こえたかと思うと、ドラゴンは秘所を固く結合したまま長い首をグルリと巡らせてそれまで手付かずだった私のもう一方の乳首へと吸いついていた。
年齢の割にふくよかだった私の乳房はベロベロと遠慮なくドラゴンに舐め回され、敏感な乳頭にはチュッチュという音とともに切ない快感を伴った断続的な吸引を味わわされる。
「あは・・・ぁ・・・や、やめ・・・て・・・ひあっ・・・」
クリクリッ・・・レロッ・・・ペロッチュパッ・・・
ともすれば全身の力が抜けて地面の上に倒れ込みそうになるのを無理矢理に支えられ、私は両の乳首を容赦なく弄ぶドラゴンの舌と爪先に悶え狂っていた。

既に死を覚悟した身だ・・・仮にそれが苦痛であるならば、私はいくらでも沈黙を保っていられただろう。
だが、相手はこれまで何人もの若い娘を陵辱し、その獲物達が決して抗えぬ快楽の泥沼に成す術もなく引きずり込まれていく様を残忍に笑いながら眺めてきたような悪魔なのだ。
そんな過去に同じ屈辱を味わわされて食い殺されていった憐れな生贄達の悔しさを想像し、私もついぞその無慈悲なドラゴンの責めに屈服の声を上げずにはいられなかった。
グブッ・・・グジュッ・・・
「あっ・・・いや・・・お、お願い、やめて・・・ああ~~~~!」
自分では固いと思い込んでいた私の意志が陥落したのを見計らったように再び膣壁が肉棒でこそぎ上げられ、庇いようもない無防備な双丘がこれでもかと責め嬲られる。
その立て続けに流し込まれる快感が、私を絶頂に向かってグイグイと押し上げ続けていた。
膣の中に捻じ込まれたドラゴンの雄は射精直前の戦慄きにギチギチと張り詰めていて、快楽に果てて力尽きた私にとどめを刺す準備は既に万端に整っている。

「クククク・・・それ、果ててしまうがいい・・・楽にしてやるぞ・・・」
そう言うと、ドラゴンは乳首を弄くっていた手で私の体をグイッと持ち上げていた。
そして立ち上がったドラゴンに背後から抱き抱えられるようにして、肉棒に真下から膣を刺し貫かれてしまう。
グブッ・・・ニュブッ・・・レロックリリッ・・・クチュッ・・・
「うあっ・・・た、助け・・・あっ・・・あああっ・・・!」
全身に止めど無く流し込まれる快楽の電流に身を捩る度、私の全体重を受け止めたドラゴンの槍がほとんど根元まで膣の中へと捻じ込まれていく。

「ひぐっ・・・う・・・あ、ああ~~~~~~~~~っ!!」
ギチュッ・・・
そしてついに耐え切れずに絶頂を迎えた次の瞬間、私は図らずもドラゴンの雄をその膣で思い切り圧搾していた。
それを待っていたかのように熱く滾った竜精が私の膣を満たすべく肉棒から勢いよく吐き出され、強烈過ぎる刺激がビクンと痙攣した四肢の先にまで跳ね回っていく。
やがて人間の膣では受け止め切れなかった大量の白濁がボタボタという音を立てながらドラゴンの股間を汚すと、長らく苦しめられ続けた私は2度と生きては目覚めぬであろう眩い光の世界へ向けて自らの意識を放っていた。

チュン・・・チュチュン・・・
「う・・・んん・・・・・・」
霞みがかった意識の奥底に届いてくる雀の声に、私は閉じていた目を薄っすらと開けてみた。
木々の間から差し込んでいる朝日が地面に倒れていた私の周りを優しく照らしていて、思わずここが死後の世界なのかと馬鹿げたことを考えてしまう。
だがやがて頬についた土の感触と草の匂いにそれが現実だと悟ると、私は慌ててガバッと飛び起きていた。
「あ、あのドラゴンは・・・?」
そう呟きながらキョロキョロと辺りを見回してみたものの、あの恐ろしいドラゴンの姿はどこにも見えない。
どうして、私は殺されなかったのだろう・・・?
気を失った小さな人間の命を摘み取ることに、あのドラゴンなら微塵の躊躇もなかったはずだ。

だが考えが纏まらずにフラフラと泳ぐような視線を辺りに向けた時、私はその理由を理解していた。
ドラゴンの唾液にとっぷりと濡れた小さな靴と服・・・
もう2度と顔を見ることのできぬ愛しい弟の遺品が、私の眼前にこれ見よがしに放置されていたのだ。
「ああ・・・!」
その物言わぬ弟の存在の証を目にした瞬間、私は無残な死を迎えたレオルの最期を思い出して泣き崩れていた。
ドラゴンは自らこう言っていたではないか。
"我は深い絶望に瀕した人間の苦悶が何よりの好物なのだ"と。
唯一の家族と貞操を奪われてあらゆる希望と生き甲斐を失った私を敢えて殺さずに生かしておいたことが、ドラゴンが私に課した最大の拷問なのだ。
後になって思えば、ドラゴンはこの時深い悲しみに咽び泣いていた私の姿をどこからか眺めては愉しそうに笑っていたのかもしれない。
だが今更になって自らの命を絶つ覚悟など到底あるはずもなく、私は涙が枯れるまでその場で泣き続けると湿った弟の服を裸の体に巻きつけて山を下りていった。



「それでお主は住んでいた村を飛び出し、人伝に私の噂を聞いてここへとやってきたのだな?」
「ええ・・・でも、やっぱり馬鹿な考えだったのね・・・ドラゴンへの復讐を他のドラゴンに頼むなんて・・・」
力なくその場に座り込んで悲嘆に暮れる娘の様子に、私は顔にこそ出さなかったものの酷く胸を痛めていた。
最愛の弟を失ってからこの半年間、今この瞬間まで傷心の彼女を絶えず奮い立たせてきたのは、きっと黒竜に対する強い怒りと憎しみだったのだろう。
激しい怒りや憎しみは、確かに深い絶望に抗し得る数少ない感情には違いない。
だがその危険な黒き炎は、憎むべき対象があってこそ初めてその者を勇気付けることができるのだ。
復讐の相手である黒竜がもうこの世にはいないことを知って、この憐れな娘は行き場のなくなった憎しみに己自身を焼かれ始めている。

「他に、私に何かできることはないか?」
私がそう聞くと、今にも消え入りそうな細々とした声が俯いたままの娘の口から漏れてくる。
だが最初にその願いを言わなかったのは、恐らく娘にもそれが無理な注文であることがわかっているのだろう。
「レオルを・・・弟を生き返らせてはくれないの・・・?」
「それはできぬ・・・ここにその弟とやらの亡骸があれば別なのだが・・・済まぬな・・・」
確かに一部の竜族には、私を含めて己の命と引換えに他者を蘇らせる力を持っている者達がいる。
だがその蘇生の儀式を行うには、生き返らせようとする者の亡骸が必要なのだ。
またしても娘の顔に失望の色を浮かばせてしまい、私は最早かけるべき言葉を完全に見失ってしまっていた。

「そう・・・わかったわ・・・」
小さな声でそう呟くと、娘が震える両手を地面について疲れ切った体を無理矢理に立ち上がらせる。
そしてフラフラと足元も覚束ないというのに、娘は既に真っ暗になった洞窟の外へと向かって歩き出していた。
「お、お主、そんな体で一体どこへ行こうというのだ?」
「今まで私の話を聞いてくれてありがとう。ほんの少しだけど私・・・何だか救われたような気がするわ・・・」
その言葉を最後に、娘の姿が夜の闇に溶け込んで見えなくなる。
「憐れな・・・後はもう、独り死に行くを残すのみか・・・」
冷たい風の鳴るヒューヒューという甲高い音に耳を傾けながら、私は娘の消えていった外の闇をじっと見つめ続けていた。

「むぅ・・・やはり、放ってはおけぬな・・・」
私は娘が洞窟を出ていった時から感じていたほんの5分程の葛藤に決着をつけると、長らく上げたことのなかった重い腰をゆっくりと持ち上げていた。
パラパラという音とともに体の上に薄っすらと積もっていた砂埃や小石の欠片が体毛の上を流れ落ち、運動不足に錆びついた1対の巨大な翼がギシギシと軋む。
「まだ間に合えばよいが・・・」
そして誰にともなくそう小声で呟くと、私は失意の娘の後を追うようにして闇に支配された外へと出ていった。

「ハァ・・・ハァ・・・」
ドラゴンのいた洞窟から急な坂を一気に駆け下りてくると、私はようやくなだらかになった山道に立ち止まって大きく息をついていた。
そして眼前に見える大きな谷間にかかった吊り橋を、1歩1歩踏み締めるようにして渡り始める。
半年前にあの村でドラゴンの生贄に選ばれたその時から、私達姉弟の人生は大きく狂ってしまった。
いや、他でもないこの私が、レオルの人生を狂わせてしまったというべきだろう。
生贄の人選を終えて村長の家から帰って来たあの時、何故私はレオルに本当のことを言えなかったのだろうか?
何故私のことは早く忘れて、村の人達とともに頑張って生きていってくれと言えなかったのだろうか?
弟を悲しませたくなかったから?
違う・・・弟の悲しむ顔を、私が見たくなかったからだ。
その愛情という名の皮を被ったエゴが、私にとってこの世で1番大切だった弟の命を奪ったのだ。
何度思い出しても、どんなに時間が経っても、もうこの悲しみが色褪せることは決してないだろう。

ヒュウッという音とともに体を撫でた谷風に、私はふと吊り橋の真ん中で足を止めていた。
レオルに謝ろう・・・
私のせいであんなに酷い目に遭わせてしまったのだ。
弟が私を許してくれるとはとても思えなかったが、夢も希望も失ったこの世界では、私はもう生きていけそうにない。
私はふっと吊り橋の手摺りになっているロープから身を乗り出すと、深い黒で覆い尽くされた奈落の底を見下ろしていた。
「レオル・・・私も、今そっちにいくわ・・・」
そう遠くにいる弟に向かって囁いた声が、暗い谷底に微かに響いては消えていく。
そしてまるでその闇の中に吸い込まれていくかのように、私は吊り橋の上から躊躇いもなく身を投げていた。

「ふむ・・・やはりここにおったか・・・」
長い吊り橋の上で立ち止まった娘の様子を遥か下から見守りながら、私はやがてくるであろうその瞬間を今か今かと待ち構えていた。
そして娘が吊り橋のロープを乗り越えたかと思った次の瞬間、空中に投げ出された人間の小さな体が私の方へ向かって猛烈な勢いで落下してくる。
「さてと・・・あれを受け止めるのは少々骨だな・・・」
だが、仮にもあの娘は私の同族に苦しめられて命を落とそうとした人間だ・・・私が救ってやらねばなるまい。
私は谷底に近い低空を飛びながら落ちてきた娘を幾重にも折り畳んだ柔らかな尻尾の網でボフッと受け止めると、その体を優しく尻尾で包んでから住み処の洞窟へ向かって翼を羽ばたかせていた。

暖かい・・・まるで、厚い羽毛布団にでも包まれているかのような感触だ。
視界を覆った一面の眩い光の向こう側で、レオルが笑顔のままこちらに手を振っている。
「レオル・・・!」
私は思わず弟の名を叫んだものの、レオルはじっと黙ったままニコニコと幸せそうな笑みだけを浮かべていた。
だがそれでも構わず彼に対して詫びの言葉を口にしようとした途端に、今度は辺りの景色が真っ暗に変わる。
「レ、レオル・・・?レオルー!」
突如として見失った弟を探すように大声で呼んでみると、レオルとは別の、聞き覚えのある穏やかな声が私の耳に聞こえて来た。
「やっと起きたか・・・怪我はないか・・・?」
慌てて目を開けると、洞窟の天井と明るい朝日を背景にしてあの白竜が私の顔を心配そうに覗き込んでいる。
「え・・・こ、ここは・・・?」
「私の住み処だ」
その言葉に辺りを見回すと、夜風で冷え切った手足は私の体にクルクルと巻きつけられていた太くて柔らかなドラゴンの尻尾によってジンとした心地よい温もりに包まれていた。

「どうして・・・私を助けたの?」
「私の力では、お主の望みは何も叶えてやれぬ。だが、まだできることは残っておるのだ」
「できること・・・?」
そう聞き返すと、ドラゴンは私の体に巻きつけていた尻尾をそっと解いてくれた。
「それは、お主自身を救うことだ」
「でも私・・・生きていてももう居場所なんてどこにも・・・」
起き上がって地面に座った私を暖めるように再び毛尾を絡ませながら、ドラゴンがそっと顔を近づけてくる。
「お主に行き場がないというのなら・・・ここで、私とともに暮らさぬか?」
「え・・・?」
「ここには、私の生気が満ちておる。初めてここへ来た時、体が楽になっただろう?きっと元気になれるとも」
そのドラゴンの提案に、私は正直心が揺らいでいた。
この心優しいドラゴンとなら、新しい人生をやり直すこともできるかもしれない・・・
「どうだ?」
「そうね・・・夢で会った弟にも謝れずに追い返されちゃったし・・・私、もう1度だけ生きる努力をしてみるわ」
「・・・そうか・・・それなら、もうしばらく寝ているといい・・・小さな傷なら、すぐにでも塞がるだろう」

娘が半年振りに心休まる穏やかな眠りについたのを確認すると、私は娘の体を尻尾でそっと揺すってやりながらすっかり明るくなった外を見つめていた。
それにしてもレオルとかいう小僧め・・・せっかく私が夢の世界で姉に引き合わせてやったというのに、気の利いた言葉の1つでもかけてやればよいものを・・・
だが小さな寝息を立てて眠っている娘の頭の中を覗き込んだ瞬間、私は思わず苦笑してしまっていた。
「・・・ふふ・・・私としたことが・・・どうやらそれも、いらぬ世話だったようだ・・・」

かつて彼女が暮らしていた村の、いつもと変わらぬ平和な日常風景。
小さな家の食卓についた姉と弟が、ピーマンを抜いた野菜炒めを食べながら幸せそうに談笑している。
「今日はどこかに出かけるの?レオル」
「ううん、僕、ずっとお姉ちゃんと一緒にいるよ!」
「そう・・・ふふ・・・そうね、今日はずっと一緒にいましょう・・・」
その幸福な光景を見て娘の心にかかっていた後悔と悲しみの暗雲がすっかり晴れたことを確信すると、私はゆっくりと地面の上に丸まって眠りにつこうと静かに目を閉じていた。



感想

  • うう…、切ない…。けど娘さんには強くなってほしいものだな。皮肉なことを言うようだが、良い経験。白竜!頼んだぞ!TO BE CONTINUED?
    -- Nakachik/UP (2007-10-15 11:00:44)
  • とりあえず黒竜は地獄に行って苦しめばいい☆ -- みー (2010-02-13 18:08:43)
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