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スティルカ2

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匿名ユーザー

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その日、学校が終わって、僕は行くのを止められたはずのハーバーに行く。
ミイラになってしまった父さんよりも、どこと無く居心地の悪い町よりも、
寂れたハーバーのほうがずっと心が安らぐのだった。
ボートはクレーンで持ち上げられている、
それなのにいつもいるはずのスティルカはいない。
「スティルカーっ!」
大きな声で呼んでみたが、帰ってきたのはさざ波の音だけだった。
スティルカのいないハーバーで一人たたずんでいると、
なんだか僕は急に、独りぼっちになってしまった気がした。
クラスのみんなも先生も、父さんすら分かってくれない。
急に胸が苦しくなって、涙が出てきた。

「スティルカ!スティルカってば!」
「お~い!」
泣きそうになったがバカみたいだった。
声のした方を振り向いたら、スティルカはそこで釣りをしているところだった。
「ごめんごめん、懐かしくて夢中になってた。
見てよ、倉庫の中にこんなのがあったんだ。」
スティルカはそういって、釣具を僕に渡した。
「もう、水にはだいぶ慣れたんじゃない?
もっと海を楽しもうよ?」
言われて見ると、僕はスティルカに会った当初より、だいぶ海に近づけるようになっていた。
今だって、桟橋ぎりぎりのところに立っているが、足が震えたり、気分が悪くなったりしない。
きっと、スティルカがそばにいてくれるからに違いないが…。
「僕がこんなに水のそばに入れるのは、
スティルカがそばにいるからだよ。」
「ふふっ、そうかなぁ。
ほら、ちょっとやってみなよ。面白いから…。」
スティルカに釣竿を渡されて、僕は初めて桟橋に足を踏み入れた。
桟橋から足を出して、ふちに腰をかける。
スティルカがそばにいるから怖くない。
スティルカは、こんなにもかわいいのに、優しいのに…。
病気だって移らないって、スティルカ本人が言っている、町の医者も言っている。
信じていないのは、町のバカな人たちだけだ。
現に、ここ何週間も一緒だというのに、
僕はスティルカから病気をもらっていない。

ぼんやりと考え事をしていた私の腕に、鋭い振動が走る。
釣竿が、ぐんと強い力で海に向かって引っ張られた。
「大丈夫っ!」
スティルカが、僕の肩をがっしりと掴んでくれている。
耳のそばすぐにスティルカの顔がある。
「ほら、引いて。引きながら巻くんだ!」
「お、重い!」
「すごい!きっと大物だよ!」
強いしなりに腕が震える。
リールが一回りするたびに、ノッチが軽快な音を立てる。
水面に影が見えた。
吊り上げようと、ここ一番に引っ張った瞬間、釣り糸は切れてしまった。
僕とスティルカは、反動をもろに浴びて、思いっきりひっくり返ってしまった。
何が起きたか分からず、倒れたまましばらく空を見ていた。
隣でひっくり返ったスティルカの方を振り返る。
どちらともなく噴出して、僕たちは笑った。

「釣り糸が古かったかな。やっぱり。」
スティルカが、両手で残りの糸を張って眺めている。
「じゃあ、僕が新しいの買ってくるよ。」
「うん、じゃあ頼もうかな。僕じゃ新しいの手に入るまでに時間かかるし。」
「え、どうして?」
「だって、町の人に頼んで、暇なときに買ってきてもらって、雨の日に取りに行くからさ。」
「直接買いにいけないの?」
「まだ、僕が病気を悪くするって思っているらしくてね。
町の人が僕を店に入れないように、掲示板に僕が貼ったメモとお金で
頼んだものを掲示板の下に置いて行ってくれるんだよ。
雨の日に歩くのは、水に濡れるから飛散感染しにくいからだとか。
まぁ、雨に歩く方が好きなくらいだし、やっぱり僕も町の人に嫌な顔されると悲しくなっちゃうよ。」
「そうだったんだ。」
「でも、君が来てくれたときはうれしかったよ。
はじめて、僕と間近で話してくれたんだから。
あ、でも…。」
スティルカは、急に何かに気付いたような顔をした。
「僕と会っていると、やっぱり町の人が不気味がるでしょ?」
「うん、まぁ、…ね。」
「やっぱり…。学校とか行っているんでしょ?
君くらいの年だと、いじめとかない?」
僕は、クラスの状態を思い浮かべた上で、こう答えた。
「みんな自分のことで忙しいから…。」
嘘ではない、みんな自分の交友関係を護るのに忙しいのだ。
その絆の一部が、スティルカを迫害することで保たれているに過ぎない。
僕は、そのルールを知らなかっただけなのだ。
「そっか、何か困ったら…、無理して僕のところに来ることは無いからね…。」
僕は、思いっきり首を横に振った。
「無理どころか、ここに来ない方が無理なくらいだよ。」
「ははっ。それはうれしいな…。」

僕たちは、仕掛けのなくなってしまった釣竿を倉庫に戻すと、ボートへ乗り込んだ。
僕がスティルカに頼んだのだ。
「ねぇ、スティルカ。」
「何だい?」
スクリーンいっぱいの海を体に映してボートを操舵するスティルカ。
僕は、いつの間にか海を見るとスティルカを思い出すようになっていた。
僕にとって、大きな水は嫌なものには違いなかったが、
それ以上に僕にとって大切な存在と結びついている、そのことが、
僕の水嫌いを大変小さな問題へと直して行ってくれた。
「…もし、良かったら、このまま夜まで海にいない?」
沖合いで波間に揺れながら、データを取り続けているスティルカのボート。
「え、僕はかまわないけど…。
ずっと海の上でも、大丈夫なの?」
僕は頷いた。
「うん、スティルカのおかげで、水はそんなに怖くないって分かったよ。」
「そう、それは良かった。
じゃあ、今日はいいものが見れるね。」
「いいもの?」
「うん。夜になるまでのお楽しみ。」

時間がゆっくりと過ぎていく。
スクリーンに映し出された様々なグラフがだいぶ画面の左に流れて行ってしまった頃。
スティルカは、背伸びをすると立ち上がった。
「そろそろかな?」
スティルカは、ボートのハッチの前に立った。
「ね、今からハッチを開けるけど、準備はいい?」
僕は慌てた。
スクリーン越しには慣れたけれど、実物と対面して落ち着いていられる自信が無い。
「まって、やっぱり、実物は…。」
スティルカが、僕の手を握ってくれた。
少しだけ冷たい、だけどその手は僕にとって暖かな存在だ。
「大丈夫、僕がいるから。…きっと怖くない。」
スティルカが深く頷いた。
僕は、そのスティルカの眼を見て、決心した。
「分かった。きっと、大丈夫。」
「じゃ、開けるよ?」
「うん…。」
スティルカがハッチを開けた。

僕は、一瞬何が起こったか分からなかった。
空と、海がごちゃ混ぜになっている。
…、いや、そうではなかった。
空は空、海は海のままだった。
しかし、空の星達が越してきたかのように、波という波が光を放ち輝いている。
月だ!
満月の光が波に反射して、海にもうひとつの星空を映し出している。
海の星空は絶え間なく形を変え、空の星空は静かに僕たちを見下ろしている。
「うわぁ…。」
「海もいいもんでしょ…。」
「うん…。」
それ以上声が出せない、ただ沢山の光の欠片に包まれた中。
スティルカの瞳には、それらの光が取り込まれて、ここにもうひとつの星空が出来ていた。
「スティルカ…。僕、スティルカのこと、好きだよ。」
星空のマジック…、僕は今まで一度も行ったことの無い心のうちを漏らしてしまった。
「え、あ…うん、僕も君の事は好きだよ。」
なんとなく煮え切らない答えだったが、スティルカも僕が好きだといってくれた。
急にスティルカと近づきたくなって、僕はスティルカを抱き寄せた。
「ど、どうしたんだい?」
スティルカは嫌がりさえしなかったが、僕の行動に戸惑った。

「僕のこと、嫌い?」
「い、…いや、だから嫌いじゃないよ?好きだよ。」
僕は、そう話したスティルカの口元を奪った。
それは、長い間に感じた。もちろん、僕が勇気を出した時間なんて、たったの数秒でしかない。
しかし、ゆっくりと眼を開けると、スティルカはとても驚いたような顔をしていた。
「好き、…なのは分かったけど…さ。」
スティルカの頬がいくらか紅い。
僕は、スティルカが紅くなっているのを見て、急に自分のしたことが怖くなってしまった。
なんて事をしたんだろう!スティルカは、こんな僕をきっと嫌いになってしまう。

「ごめんよ!スティルカ!こ、こんなことするつもりじゃ…!
でも、僕、ずっと好きだったんだ、君にあったときからずっと…。
僕にとっては、スティルカはスティルカなんだ!
どんな女の子も比べ物にならない!
君は素敵な子なんだ!」
僕は、謝ると同時に、想いの内をすべて吐き出した。
スティルカは、きょとんとしていた。
「え、女の子…って?…僕が?」
スティルカが自分を指差しながら、ポツリポツリと聞いた。
何か嫌な感じがした。
「え、お、女の子じゃないの…?」
「い、いや、君と同じだよ、男、だよ?」
「う、嘘…?」
情けない声で僕は、そう聞いた。
スティルカは、今にも壊れそうなガラスを前にして、
どうしようも出来ないと引きつった顔をしながら、首を横に振った。

真っ白になった!
いや、今は夜だから真っ黒かもしれない。
とにかく、僕の意識の中が全部、単色で塗りつぶされてしまった。
絵の具が入ったバケツをひっくり返してしまったように、
単色がものすごい勢いで、僕の意識を染めていく。
…もう、何にも考えられない。
怖がっているようにも見えるスティルカの顔を見ながら、
僕の頭の中は、「ええと、ええと…」という単語だけを繰り返した。


「…僕のこと、嫌いになっちゃった?」
スティルカがそう聞いた。
僕が悩んでいた時間は、きっと、長い長い時間だったと思う。
でも、考えるにはぜんぜん時間が足りなかった。
僕は、頭を乱暴にかきむしった。

スティルカは…、スティルカは…、何なんだ!
そして、僕は、僕は…何なんだ!どうして!

一瞬だけクリアになった意識。
残っていたのは、やはりスティルカが大切な存在であるということ…。
「ううん、やっぱり…好きみたい。」
「ふふっ。それはうれしいな…。」
優しく微笑んだスティルカを見ていた僕は、またスティルカの口元を奪いたくなった。

どちらが先だっただろうか、いや、そんなこと関係ない。
僕とスティルカは再び口を合わせた。
今度は、さっきとは違う。
互いを確かめ合うように、口を開け、舌を絡ませあう。
やっぱり僕は、スティルカのことが好きなんだ。
息が続かなくなったら、喘ぎ、そしてまた絡む。
互いを抱きしめていたはずの腕は、まるで互いの輪郭をなぞり合うかのように、体を伝う。
「…いいのかい?」
僕はそう聞いた。
スティルカは頷いて、再び僕の口を奪う。
すべてを受け入れてくれるような、スティルカの暖かな感触を体全体で感じていたかった。

ほとんど同時に口を離す。
ひと時の休息。
互いの体に手を回したまま、ほんの少し顔を離して、互いの上気しきった顔を見つめあう。
スティルカの瞳は、いつにも増して輝きを増し、本当に僕を飲み込んでしまいそうだった。
今すぐにでも燃え上がってしまいそうな僕の頬に、スティルカが手を当てる。
僕も、ほんのりと紅いスティルカのひんやりとした、それでもいつもよりは温かい頬に手を触れた。

スティルカが称える笑顔は、僕の衝動を燃え上がらせる。
スティルカの近くにいたい、それだけじゃ足りない、僕は、もっともっと近い距離を望む。


はちきれそうなほどの力を溜め込んでいる僕の♂の部分。
スティルカも僕と同じように、♂に力を溜め込んでいるのだろうか。
そう、いつもなら絶対に出来ない行為。
スティルカから受けた暖かな感触だったはずなのに、
その存在は、僕の衝動の鎖をすべて焼き払う存在になっていた。
それは、ほんの小さなこと…。
いたずら心に、僕の腕がスティルカの脚の間へと滑る。
そこには、服の上からであるが、確かに♂である所以の輪郭を感じ取れた。
僕と同じく硬くなっている。
「んっ…。」
僕に♂を触られたので、スティルカは少々驚いたようだ。
しかし、思いはスティルカも同じだったのだろう。
スティルカがお返しとばかりに僕の♂を触る。
最初はそんな小さな出来心、悪戯…。
ここで終わるのも悪くない。

しかし、ここは誰もいない地上の星空の上。
満月と幾千の星達が僕たちを見下ろしているが、彼らは僕たちを止めることなど出来ない。
僕たちを阻む鎖は、すべて千切れていた。
僕達が互いの性を確認しあう行為…、互いが互いの♂に触りあう。
自分以外の誰かが、その特別な部分を触れるという行為それ自体が、
僕とスティルカを異常に興奮させていた。
形を認識する行為だけでは足りなくなっていく。
何が足りないかなんて分からない。でも、足りない。
止まっていた手は少しずつ動き出し、互いの存在を擦り合う。
それで認識する行為は終わるはずだった。
しかし、互いの♂を伝わってくる感触は、その行為をやめるには惜しい感覚。
なんでもないのだが、ただ惜しい。
やめたくない。
もう少しだけ…。
もう少し強く…。
僕たちが、互いの♂を握って手を上下させる行為へ行くのに、そう時間は掛からなかった。


二人とも荒い息を吐きながら、互いの♂に触れ合っている。
服の上から引っかかり引っかかり、もがく様に存在を確かめあう。
手が引っかかる、その一瞬すらもどかしい。
荒れていく二人の感情は、互いの服すら邪魔になる。
もっと、確かな存在を…。
僕の手が、その確かな存在を求めるように、
ベルトの無い、体全体をしっかりと覆うようなスティルカの服に伸びる。
ゆっくりとチャックを下げていくと、突然、跳ねるようにスティルカの♂が露呈する。
人間のそれとは少し違う、青みの帯びて尖った♂。
スティルカは、自分の♂が空気中にさらされてしまったことに驚いて、下を見た。
そしてスティルカもまた、僕の♂を空気中にさらそうと、ベルトとチャックに手を掛けた。
スティルカが恥じらいを持って、ゆっくりとそれらを解いていく。
しかし、僕にとっては、スティルカがまるで僕をじらしているようにさえ感じられたのだ。
…そして、僕の♂も露呈する。
決して交わりえない二人の性。

波の音が静かに聞こえるボートの上で、ハッチは開け放したまま。
熱の帯びたボート内に、海の香りが絶えず吹き込む。
暗闇のボート内に差し込む月明かりが、スティルカを照らす。
その艶やかでしっとりと汗をかいた肌が、月の明かりを受けてキラキラと光る。
僕たちはゆっくりと横になり、互いを抱きしめながら、そのままひとつになれないことを恨めしく思った。
互いの♂に触れながら、上へ下へと手を滑らせる。
スティルカの手が僕の♂を伝う、僕の心臓が驚くほどに大きな音を立てる。
僕の体中に、スティルカの手からもたらされた感覚が這い回る。
それはスティルカもきっと同じこと…。
僕が滑らせた手で、スティルカは息を荒げ、顔を高潮させている。
うっとりと静かに閉じたまぶた、荒げる息が漏れる口元からは、時折その透き通った声が共に漏れる。
ただ、愛しい。
僕の体に数え切れない渦が湧き上がり、それらが一つ一つ僕を熱している。
少しずつ、弾けてしまいそうな感覚、はじけてしまったら、戻ってこない感覚。
僕は、自分自身をじらすように、ゆっくりとスティルカと共にあり続ける。
僕は、…昇っていく。


その時!
船が一段と揺れた。
スティルカとの行為に夢中になっていた僕は、自分の体制を崩してしまった。
僕たちの好意を唯一止めた存在、それは風邪が起こした悪戯な波だった。
開いたハッチから、そのまま海の中へと僕は落とされた。
上も下も分からないなかで、僕は暗闇へ沈んでいく。
スティルカによってもたらされた、暖かな感覚が僕を麻痺させている。
意識まで進入した暖かな感覚で、僕はこのまま沈んで行ってしまってもかまわない気がしていた。
そう、眼を閉じたまま、僕は漂うような感覚に気持ちよささえ覚えていた。
あれだけ嫌っていた海の中で、僕は不思議と静かな気持ちになっている。
沈んでいく僕の体。
そんな体を誰かが掴んだ。
静かな世界を邪魔した存在を確かめようと眼を開けてみれば、
それはスティルカだった。

僕が足りないものをスティルカは知っている。
僕と口を合わせ、僕に空気を吹き込んだ。
そのままスティルカは僕を胸に抱きしめ、水面へと向かって浮上した。
スティルカがいるかのようにしなやかに体を動かし水を蹴るたびに、
スティルカの体と僕の体が激しく擦れ合う。
上も下も分からない中で、僕の♂がスティルカの体で刺激されていく。
僕の意識の中で、踊り狂うような衝撃が♂の中で結晶化していく!
僕は、スティルカの胸の中で、初めてとも言える例えようの無い一瞬を味わったのだった。

何かが一枚剥がれ落ちたような、小さな衝撃、しかし、
あの時、僕は海に体が解けてしまったような感覚に襲われた。
下腹に強い反射を感じた瞬間、僕の♂から結晶がひとつこぼれていった。
いや、ひとつ、ふたつ、ばらばらになって何度も…。
結晶が僕からこぼれていく度に、僕の体は輪郭を失っていく。
僕がいなくなってしまう恐怖、僕は水の中で叫んでいる。
スティルカから離れたくない、それだけの理由で…。
こんなに怖いというのに、…それなのに、何故か満たされていく。


何も覚えていない。
気がつけば、船の中。
下半身裸の僕の上でスティルカが胸を押している。
そう思った瞬間、僕は急に喉にいがらっぽさを覚えた。
「げぼっ…げほげほ…。」
自分でも驚くほどの海水が口の中から出てきた。
「気がついた…っ!?」
あせりと言う鋭さを持った、心配の声。
「僕は…?」
「僕が注意していなかったばっかりに…。」
スティルカが今にも泣き出しそうに眼を細めた。
スティルカの一言で、僕は海に落ちた事を思い出した。
「ううん、僕が悪いんだよ。
…きっと、スティルカに変な事をしたバチなんだ。」
スティルカは首を大きく横に振って、言った。
「変なことだなんて…!
僕、…あんなに暖かな感覚を持ったのは初めてだったんだよ。
君が、教えてくれたんだ。
あれが、きっと好きになるってことなんだよね…?」
「…分からないんだ。」
僕は曖昧に答えた。
「分からないって?」
「僕は、あんなことするつもりなんか無かったんだ。
でも、スティルカとキスしたら、もっとスティルカに近づきたい!って、そう思ったんだ。
そしたら、僕の頭の中が変になって、気がついたら、スティルカにあんなこと…。
そうだよ!スティルカに変な事をしちゃったんだ。
…その、男しかもっていないものを…。」
言葉に出すのさえ恥ずかしくなってきた。
頬に熱を感じる、きっと僕の顔は真っ赤だろう。
「そんな事言われたら、ぼ、僕だって…。」
スティルカも顔を赤らめた。

僕たちは、しばらく何も言えずに互いの顔を見つめていた。
スティルカが再び、僕の♂に手を伸ばす。
あれほどまで露呈して、触れ合って、感じ合って…。
考えただけでも、もう一度衝動が襲ってきてしまう。
それなのに、僕の♂をスティルカに触れさせることが、見せていることすら、
ひどく恥ずかしく感じられる。

僕は、海の中で、スティルカの胸の中で、スティルカの暖かな結晶をばら撒いてしまったのだ。
それに比べて、スティルカは、僕の結晶を体の中で踊り狂わせたままなのだ。
「スティルカ…。じっとしていて…。横になって…。」
横になったスティルカの体をなでる。
僕の恥ずかしさを打ち消すように、もう一度スティルカの暖かな結晶を僕の中に取り込んでいく。
結晶を取りこんだ僕は、スティルカの♂に再び触れた。
優しく手のひらで包み、僕のせいで踊っている結晶が吐き出させるように促す。
静かになった僕の意識は、ただスティルカの近くにいたいという純粋なものだったはず。
それが悪かったのだろうか。
僕は、何も考えない透明な思考のままに、スティルカの♂を僕の口でくわえ込んだ。
スティルカの感触を舌で確かめながら、頭を上下させる。
「だ、だめだよ…っ!?そんな…そんなっ…。」
スティルカが、僕の頭を掴んだ。
しかし、その手には力がこもっていない。
そう、結晶が中で暴れまわるのは苦しい。
なんでもないのだが、ただ惜しい。
やめたくない。
もう少しだけ…。
もう少し強く…。
でも、苦しい。
僕は、スティルカの手を避けて、頭の動き、舌の動きを速めた。
「駄目だよ…駄目だよぅ…。」
スティルカは、そう小さく叫び続けた。

スティルカが、何回目の駄目だよ、を言ったときだろうか。
「駄目だ…ふぅっ…!」
スティルカは、大きく息をつくと黙り込んだ。
「ふ…うぅっ!ああっ!」
スティルカの下腹が波打ち、僕の喉に温かな液体の感触が伝わる。
僕は、その暖かな結晶を飲み込んだ。
スティルカは、力が抜けたような顔をしながら、肩で、浅く速い息をついている。
「僕…。」
荒い息の合間に、スティルカはそう言った。
「何…?」
僕はスティルカの口元に耳を近づけた。
「僕、僕は…。僕だよね?」
超えてしまった事への罪悪感なのだろうか。
僕は、スティルカを強く抱きしめた。


僕が家に戻ったのは朝早くだった。
どこに行っていたんだ、と父さんが強い調子で分かりきった質問をする。
「スティルカのところだよ。」
こんなことになったんだ、もう行くな、あいつにたぶらかされたんだ。
「スティルカは何も悪くない!
悪いのは、僕を分からない父さんと、
スティルカを分かろうとしない町の皆なんだ!」
父さんに向かって怒鳴ったのは初めてだった。
父さんはしばらく眼を丸くして、動けないでいた。
僕は、その場から走り去った。

僕は、もちろん学校を休んだ。
でも、今からスティルカの元に戻ったら、学校を休んだ事を聞かれるだろう。
スティルカのことだから、そんな野暮なことは聞かないかもしれない。
でも、その代わり、きっと心配するだろう。
あんなことがあったんだ。
僕は、スティルカとの間をしばらくそっとして置きたかった。

町の人に見つからないように、町から外れたところ、
スティルカのハーバーと町をつなぐ長い道路の、ちょうどハーバーと町の真ん中くらいで、
僕は足を止めた。
電柱に背を当てて座ると、とてつもなく疲れた体は、急に眠気に襲われた。

上も下も無い漂う空間。
そこは、暗い海の中だった。
でも、怖くない。
スティルカが僕のそばにいるから。
スティルカが手を引いているのか、僕が手を引いているのか分からない。
互いが強く手をつないだまま、僕らは光が届かないくらい深い海の中を進んでいる。
怖くない。


…冷たい。
夢が一気にはじけ、思い出せない欠片となって散っていった。
僕は、体中が水に濡れていることに気付いた。
土砂降りの雨の真っ只中に僕がいる。
今までかき消す方法があった、聞きなれないノイズ。
僕の周りには、雨を防ぐ方法も、そのノイズを防ぐ方法もない。
このまま、僕は雨に飲み込まれてしまうのだろう。
でも、怖くなかった。

しばらく雨に濡れていると、
寒くて、風邪を引いてしまいそうだな、と思った。
そして、僕は自分がなんておろかな事をしているのかを悟った。
もし、今ここで僕がどんなに軽い病気になっても、
町の人はおろか、父さんまでスティルカのせいにするだろう。

雨に濡れていてはいけない。
雨は弱まる気配を見せず、空間は水で満たされていく。
僕は、立ち上がった。
でも、その足はすぐには動かない。
スティルカの方へ?
町の方へ?

…いや、どっちに行くかなんてもう決まっている。
僕は、迷っていたのがバカらしいくらいに、わき目も振らず走り出した。

END


感想

  • 見ていてはまったとても続きが気になる!ぜひ続きを書いて欲しい!! -- rdsknms (2007-08-24 13:54:57)
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