Lunatic

    

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月の光がもたらす狂気。
視界に伸ばしたその腕は、漆黒の鱗をまとう。



都会。
夜も深けて、車の音がまばらに聞こえる住宅街。
会社の残業で遅くなってしまい、こんな深けた時間になってしまった。
人間の息吹を感じない、いつもと全く違う公園の遊歩道を歩いていると、
突然後ろから大きな影に襲われた。
心臓が大きく痛むような感覚と息の詰まるような驚きを覚え、
体が動くままに飛びのいた。
その姿は他の人から見れば、実に滑稽だっただろう

襲われた影のほうをよくよく見てみれば、誰もいない。
街灯の周りを蛾が飛んでいる。
時折、蛾の影が地面に映る。

深けた時間と言うことで、私の気が小さくなっているのだろう。
これが正体かと、ひと時の安堵を覚えたが、
いつも歩いている道だというのに、今までこんなことなどなかった。

影と言うものは、光源に近づけば近づくほど大きくなるが、
同時に濃さが薄らいで輪郭がぼけてしまう。
実際、蛾の影をよく見ても、少し光が地面で揺らぐくらいで、
私の襲われた影を思い出すと、その違いは歴然だった。

蛾では無いとなると、また別な何かが背後にいたと言うことになる。
影の正体が分からなくなったことで、私は再び焦りを覚えた。
あたりの空気全てが私を襲おうとしているようにさえ感じる。
もし私が、次の一歩を踏み出した瞬間に、
この空気の何処からか、影が私を襲うのだ。

首をゆっくりと動かして当たりを見回す。
街灯、遊歩道、茂み、木、小石、空き缶…。
眼に留まるもの全てを敵では無いと認識してから、私はゆっくり歩を進めた。
一歩、二歩、三歩…。
どうやら、何も起こらないようだ。
一歩ごとに体中の力を振り絞った。

公園を出ると、突然私は脱力感に襲われた。
何故だか分からないが、危機を脱したと直感的に感じたのだ。
座り込みそうになる体を無理して奮い立たせながら、公園を振り向いた。

振り向いた私の眼に映りこんだのは影。
そして、私は見たのだ。
影の正体を…。
黒尽くめの人間?
いや、漆黒の龍。
大きな羽をマントのように体に伝わせて、そこに立っていた。
その様相は、ヴァンパイアのようにさえ見える。
実際、その鋭い牙、暗闇に浮かび上がる紅い月を思わせる眼、
どちらもヴァンパイアのイメージそのままだが、
違うのは、その鱗で覆われ、鼻先が突出した顔。
トカゲのようにも見えるその顔は、冷酷そうな笑みを浮かべているように見える。
漆黒の龍は、マントを翻すかのように羽を広げ、そのまま飛び去った。



目覚ましの電子音が当たりに響く。
確か目覚ましがあった辺りを手当たり次第に叩いていたら、鋭い痛みが走った。
反射的に引っ込めた手を見つめると、手に鱗が刺さっていた。
昨日の恐怖を一気に思い出し、飛び起きた私の眼に映ったのは、何の変哲も無い私の部屋…。
無視されて憤慨したかのように目覚ましのテンポと音量が上がっていく。
私は、最大値までうるさくなった目覚ましを止めると、
他に鱗が無いか探してみた。
しかし、私の手に刺さった鱗以外には、何も見つからなかった。

掌から引き抜いた鱗は、つまんだ私の指先で血と混ざり合い、少し溶けかかっていた。
指先をこすり合わせる。
鱗は私の血と混ざり合うと形を失い粘性の高い赤黒い液体に変化した。
私の指先にそれがついている。
龍の鱗…。
私は、その液体を何の気なしに舐めてしまった。
赤黒い液体が塗られた指先が、まるで他人の粘膜のように感じられる。
舌先が痺れるような感覚。



ふと、我に返った私は、慌てて指先を拭き取ると、そのまま会社へと向かった。
与えられたルーチンをこなしながら、何故あの溶けた鱗を舐めてしまったのだろうかと、何故もう一度口に含みたいと自分が思うのか、考えをめぐらせた。
朝食を口にしていない、しかし昼食を取る気にもなれなかった。
私は、自動販売機の前に立つと、かろうじてバランス流動食の缶を喉の奥へと追いやった。

いつもは開けない窓を開けて、風邪を体に取り込む。
少し熱が醒めた頭で、私は傷口を見た。
鱗が刺さった傷口は既に塞がっていた。
しかし、其処にはかさぶたの代わりに黒く艶のある塊が張り付いていた。
私は、指先を擦り合わせながら鱗を舐めたときの感覚を思い出した。
そして、私はこの体に沸いている感覚の正体に気付いた。
龍。
交わりたいという、体の疼き…。
私は、狼狽した。
「そんなはず無い!…でも。」
…舐めた鱗の味と感触が、私の頭を占領する。



気付くと、私はあの公園のあの場所に立っていた。
無心のまま空を仰いで、赤みが掛かった月を見ていた。
時計を見ると、既に真夜中になっている。
今度は公園の外ではない、中にいる。
私は、どうしてここにいるのか全く分からなかった。
会社はどうなったのだ?

そんな私の前にあの漆黒の龍が現れた。
月の光を閉じ込めたように、その眼が輝き、私を見据えている。

恐怖で動けない私を前に、ゆっくりともったいぶるように近づく。
いや、もしかすると、喜びで打ち震えているのかもしれない。
龍は、私の中に芽吹いた疼きに気付いているのだろうか、
息が掛かるほど近づくと、龍はそっと私を抱き寄せた。
そのまま私に口付けをする。

私は、逃げたい一心で体に命令を送った、離れろ!、と…。

しかし、私の体は離れるどころか、両手を龍の背中に回し、
激しく舌を絡ませながら、深い口付けに酔い始めた。
互いの腕が、互いの体を撫であう。

誰かに見られてしまう!
しかし、抑えられない。

私の片手が龍の体を撫でるように伝い、
龍の股の間へと手を滑らせる。
しっとりと濡れた♀の病がそこにある。
どうしてそうしたかは分からない。
私はズボンのチャックを開けると、一気に私のそそり立つ♂の病を其処にあてがった。
まるで、私が龍を押し倒したかのように龍は仰向けに倒れこんだ。
龍の胸の上で、私は一心不乱に龍を突いた。
しっとりと湿った龍の病が、水を打ち合う音を立て、私に更なる疼きを与える。

私はワイシャツのボタンを外し、はだける様に皮膚を露出すると、龍の胸の感触を肌で感じた。

私が龍を突き上げる度、下向きに生えた鱗に逆らう私の肌は、
少しずつ傷つき血を滲ませていった。
痛みよりも、突き上げる悦びが無意識に私を突き動かす。

滲んだ血が龍の鱗に触れると、やはり鱗は私の血に溶け始めた。
龍は、それを望むかのように一段と強く私を抱き寄せた。

抱き寄せられたことで、裸の皮膚に鋭く突き刺さった鱗が、更なる血を私から滴らせる。
完全に私の血で染まった龍の胸は溶け、
私の体の中で粘膜特有の艶やかな感触を帯びた。
突き上げる私の体の中で、龍は私の血に染まり、溶けていく。
解けた龍の鱗の下から、龍の血が滲み始める。
その血が私の皮膚に触れた瞬間、今度は私の皮膚が形を失い、溶け始めた。
突き動かす悦び、互いが溶け合う感触。

滑らかなで温かな感触だけが、二人を繋ぎ止めあう。

「ふっ…ぐ、はぁっ!」
喘ぎ漏れる声。
ただ、想いを放つ。
硬直する体、心臓の鼓動にあわせ、1度、2度、3度と波を送る。

私に想いを放たれた龍は、人間は到底出せない和音の聞いた叫びのような声を上げると、
私の骨がきしむほど私を抱いた。

途端、私の首元に咬みついた。
私の首元から噴出した鮮血が、龍を溶かしていく感触。
私のむき出しの皮膚組織から、龍が吸収されていく。
軋む体、音を立てて破け広がっていく腕。
背中から延びて行く未知の感覚。

自分の中に広がっていく新しい狂気を感じながら、
私の意識は暗く広い宙の中へと落ちていった。



月の光がもたらす狂気。
自分の視界に伸ばした自分の腕は、漆黒の鱗をまとう。
今までに感じたことの無い翼の感触を確かめるように、ただ羽ばたく。
私の体は、いとも簡単に空へと誘われる。

どんなに高く舞い上がっても、消してぼやける事の無い視界で、私は冷ややかに街を見下ろす。
その心に龍を宿す、新たな魂を求めて…。

END


感想

  • あっさりとしていてミステリアス。続編共々最高です。 -- 名無しさん (2009-11-08 01:45:27)
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