隻眼の蒼竜

    

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狂っている。
鼻をつんざく酒の臭いも、大地を揺らす人間達の舞踏も。
祭りの炎にかき消され、夜空に遍く筈の星すら見えない。
自慢の翼は縄で背に縛り付けられ、動く度に足枷が肉へと食い込む。
まだ捕らわれの身になって然程の時も経っていないはずなのに、森での暮らしが遠い昔の事のように思える。
何故、こんな事になったのだろう…


──季節は春。
忌々しい雪の季節は去り、動植物達がその息吹を取り戻し始めた頃であった。
柔らかな花々の香りが風に乗って、俺のねぐらへと吹き込む。
なんと気持ちの良い日か。
俺は春の陽気さにつられて、若草の生い茂る草原を散歩しに出かけた。
高台を吹く風が俺の翼膜をふわふわとたなびかせる。
ふと目に飛び込んだ小さな花を嗅ぐと、その香りにくすぐられた鼻は大きなあくびを出した。
と、その時である。
背後に大きな殺気を感じ、俺は大きく振り向いた。
あくびの音が"奴"を誘ったのかどうか、今となっては知る由も無い、が、確かに奴は俺の背後を取っていた。
狩人だ。
俺にとって、いや、森に棲む生き物にとって最大の脅威。
人間は脆弱な生き物である。
個々の能力は我々野生動物に及ぶところではない。
しかし、恐るべきはその知能と団結力。
彼らの操る道具と武器の前に、数多くの同胞が犠牲になっていた。
食物連鎖の頂点に位置する我々竜族ですら、だ。
俺は特に狩人から狙われやすく、日頃から注意を払っていた。
この蒼い体色が人間達にとって珍しく、価値のあるものらしい。

この日出会った狩人は、珍しく単独行動を取っていた。
俺のほうをじっと見つめ、剣の柄に手を添えている。
どうやら向こうはやる気らしいが、俺にとっては戦う理由など全く無い。
利を生まぬ戦いは避けるのが自然の常。
俺は威嚇のためにひと吼えすると、急ぎ足で巣へと帰った。
普段なら、これで難を逃れているところだ。
しかし、この日出会った狩人は、他の人間とは一味違っていた。
俺の行動はすべてこの狩人に読まれていたのである。
巣に降り立ち、寝床へ身を倒した瞬間、俺の体が大きく地面に沈んだ。
しまった…!罠だ!
気付いた時には既に遅かった。
巣に散らばる草食動物の亡骸。
その骨を被り身を潜めていた狩人が姿を現し、こちらへ駆け寄る。

「悪く思わないで」

狩人は俺の耳元でそう囁くと、手にした薬瓶を俺の鼻頭に吹きかけた。
即効性の薬品は俺の意識を猛烈な勢いで奪って行った。

…そこから先は、何も覚えていない。
目が覚めればこのザマである。
見たことも無い石造りの建造物と、それらに囲まれた大きな広場。
おそらく、ここは人間たちの集落なのだろう。
狩人に生け捕りにされた俺は、彼らの"獲物"として処分される運命にあるらしい。
全身を拘束具で締め上げられ、汗臭い男達に縄で引っ張られる俺の姿は、さぞ情けなく人間たちの目に映っていることだろう。
俺を囲む踊り子たちは打楽器を激しく打ち鳴らし、狩りの成功を祝っている。
酔っ払った老婆が酒樽を倒すと、俺の顔に大量の酒がぶちまけられた。

「はっ、情けねえな、怪物さんよ?」

思わず咳き込む俺の姿を見て、観衆の宴はさらに盛り上がりを見せる。
興奮した子供が俺の脚に軽くナイフを突き刺す。
痛い。
こいつらは俺が痛みを感じないとでも思っているのだろうか。
狂っている。
俺が一体何をしたというのだ?
芳しい柔草の香りを楽しんでいただけなのに。
いや、これが弱肉強食という自然の摂理なのだろうか?
俺がこれまでに食い殺してきた草食動物たちの報復なのだろうか?

数人の男が、俺の体に括りつけた縄を手繰り寄せる。
じゃらじゃらと醜い音をたて、俺の体は広場の中央に引きずられていった。

「村の者よ、この記念すべき収穫祭によくぞ集った!
 村の発展も平穏も治安も、お主らの貢献があってこその賜物である。
 今宵は存分に浮かれるがよい。」

集落の長らしき人物が、俺の眼前でけたたましく祝辞を挙げた。
それに呼応するように、他の人間たちの興奮も最高潮に達していく。

「そして今回の収穫祭には、記念すべき"貢ぎ物"が用意されておる。
 見よ!一人の勇敢な狩人の手によって生け捕りになった禍々しい蒼竜の姿を!
 これより、このおぞましい怪物の心の臓を取り出し、この地を守る精霊へ捧げん!」

その場に居合わせた全ての人間が、手にした農具や武器を天に掲げた。
俺を見る彼らの目には、次第に殺気が込められていった。
彼らの言葉を理解することは出来なかったが、どうやら俺は生きてこの場から出る事が許されないらしい。
殺すのなら一思いに殺して欲しいものだ。
嬲り殺されるのはごめんである。

しかし、その微かな願いもすぐに踏みにじられた。
数人の男が俺の頭を押さえつけると、奇怪な器具を俺の左目にあてがった。
まぶたを押し分け、金属の刃が侵入する。

「グァ…グゥォオオオオオオ!」

激痛のあまり、まともに吼えることすらできない。
舌が痙攣を起こし、呼吸を奪う。
脚はがくがくと震え、意識が一瞬遠のいた。
左目の視界が真っ赤に染まっていくのが分かる。

「とくと見よ!これが竜の目だ!」

くりぬかれた俺の眼球を、長が天高く掲げる。
滴り落ちる血に、村人の歓声がどっと沸き起こった。
その場に崩れ落ちる俺を見て、村人たちが無慈悲に嘲り笑う。
次は右目か?はらわたか…?
絶望に体が震え、身動きすら取れない。
俺は一体どうなってしまうのだろうか。

生への渇望が絶望へと形を変えていく。
もう終わりだ…そう心の中で呟いた、その時である。
俺の目の前で歪んだ笑みを浮かべる長の首筋に、きらりと一筋の光が走った。
剣。
何者かが長の首筋に剣を突き付けていた。

「騒ぎを聞いて駆けつけてみれば、これはどういうことだ…長老。
 捕獲した竜は生態調査のために数ヶ月飼育した後、森へ返すのでは無かったのか?」

冷酷で強い口調ではあったが、その声は確かに雌の…いや、女性の声だった。
俺を驚かせたのは声だけではない。
この端麗な顔立ちには見覚えがある。
…そう、彼女は確かに"あの時"の狩人であった。

「収穫祭の貢ぎ物に使うとは、とんだ契約違反だな。
 私が捕獲専門…それもごく限られた一部の依頼のみを請け負っていたことは知っていただろう?
 その判断基準も事前に説明していた筈だ。
 捕獲した生体をこのような用途に使うなど言語道断。
 …この落とし前、どう付けてくれる?」

村人の間にどよめきが起こる。
が、誰一人として彼女に歯向かおうとはしない。
俺の頭を押さえつけていたあの屈強な男達ですら。

「ル、ルゼルよ…
 契約違反については素直に謝罪しよう。
 報酬も倍額払う。だから、命だけは…」

弱弱しく掠れた声で祈願する長。
その首は間もなく彼女の剣から解放された。

「命は助けてやる。
 だが、貴様らの薄汚い金を受け取る気はない。
 もちろん、契約違反の代償として、この竜は森へ帰させてもらうぞ。
 異論は無いな?」

村人全員がこくりと首を縦に振った。
この反応、どうやら彼女は只者では無いらしい。
俺の体に括り付けられた拘束具の上を彼女の剣が通り抜ける。
信じられないことに、その剣は俺の体に傷ひとつ付けることなく、拘束具のみを寸断した。

「竜よ、私について来い。
 傷の手当てをしよう。」

どうやら俺は、俺をこんな目に合わせた張本人に助けられたらしい。
不思議と怒りは沸かなかった。
むしろ、怒りに身を任せることができないほどに疲弊していた。
彼女が何故俺を助けたのか、彼女が何を言っているのか、この人間を信用してよいのか。
理解できない事は多かったが、この場に留まるよりはこの人間についていったほうが安全そうである。
そう踏んだ俺は、村を去る彼女の後を追った。

どれほど歩いただろうか。
大した時間ではなかった筈だが、今の俺にはとてつもない距離を歩かされたように思えた。
先ほどまで嵌められていた足枷により傷ついた脚の所為だろう。
人里離れた森の中。おそらく、俺の棲んでいた森とさほど離れてはいない場所。
そこに、彼女の棲家はあった。
木で作られた簡素な家ではあるが、広々とした庭には美しい草花が咲き誇っていた。
彼女は俺を庭へと座らせると、傷の手当てを始めた。

「本当に申し訳ないことをした。
 許してくれ、とは言わない。
 私のせいで、お前は片目を失ってしまったのだから…
 ならばせめて、私の気が済むまで詫びさせてくれ。」

俺の左目があった場所に、水に濡れた布が優しく触れた。
程無く、全身の傷口に白い布が巻かれていく。

「私に出来る事はこのくらいしか。
 …夜が明けたら森へ帰るといい。お前はもう自由だ。」

彼女は森を指指すと、家の中へ戻ってしまった。
森へ帰れって?こんな姿で?
冗談じゃない。片目で狩りができるか。
滑空からの一撃離脱を生業とする竜にとって、片目があるかどうかというのは非常に重要な要素だ。
両目が揃っていなければ獲物との距離感が掴めない。
このみっともない姿では、雌にだって相手にされないだろう。
帰る場所を失った俺は、軽くふてくされながら彼女の庭で一夜を明かした。

「お前…まだいたのか?」

翌日、窓から顔を出した彼女は、俺を見てため息を漏らした。
困惑していた、というよりも、驚いていたようである。
しばらくすると、外出の支度をした彼女がドアを開けた。

「困った奴だな」

彼女は軽く笑みを浮かべながら、俺の頬を擦った。

「私は街へ買出しに行く
 …帰宅する頃には森へ帰っていてくれよ?」

俺に背を向けて歩き出そうとした彼女の体がぴたり、と止まる。
ふと気付くと、俺の顎が彼女の服を甘噛みしていた。
驚き振り向く彼女。
…俺は、明日も知れぬ状況の中で、彼女の存在に依存し始めていた。
彼女と別れるのが怖くなっていたのだ。
俺は自慢の翼を大きく広げると、彼女の目の前に首を降ろした。

「乗せて…くれるのか?
 ありがとう、感謝するよ」

もう、故郷の森には戻れない。
そんな気がしていた。

数日ぶりに舞う大空。
全身で風を受け天を仰げば、悩みなどは塵と吹き飛ぶ。
これこそ、鳥と竜にのみ与えられた特権だ。

「私は、空を飛んでいるのか。
 こんな幻想的な光景が、この世に存在していたなんて…」

背中の彼女は、眼下に広がる光景に目を輝かせていた。
人間にとっては空を飛ぶと言う行為がとても感動的なものらしい。
いつにも増して自慢の翼に力が入る。
背に感じるぬくもりが、そうさせる。
不思議だ。
誰かを乗せて飛ぶのは初めてなのに、懐かしさにも似た感情が沸き起こる。
まるで、幾千幾万の空を彼女と共にしてきたかのように感じるのだ。

「…ありがとう。
 誰かに優しくされたのは、これが初めてだ。」

彼女の腕が、俺の首をぎゅっと抱きしめた。
横目でちらりと彼女の表情をうかがうと、頬を軽くあからめている様子が見て取れる。
今まで気丈な面しか見せなかった彼女が始めて見せたあどけなさに、一瞬、胸が熱くなった。

街での買出しが終わるまで、俺は近くの丘に身を潜めていた。
程無くして大量の荷物を携え戻ってきた彼女を、再び背に乗せる。

「ふふ…今日は楽しかったぞ。
 こんなに気分のいい日は久しぶりだ。」

彼女の端麗な顔から笑みがこぼれる。
皮肉なものだ。
己が片目を奪う直接的な原因を作り出した人間に、心を奪われるとは。

「そこで待っていてくれ、お礼がしたいんだ」

彼女を家に送り届けた俺は、そのままこの地を去ろうとした。
行く当てなど無い。故郷に帰るつもりもない。
片目で生活していけるのかどうかも疑問だ。
だが、これ以上彼女と共に過ごせば、これ以上彼女の存在に依存してしまえば、俺は二度と野生に戻れなくなってしまう。
本能の警鐘に、俺は翼を広げた。

「腹を空かせていたのだろう?
 街で買った極上の肉だ。食べていってくれ。」

飛び立とうとした矢先、彼女の声が庭に響く。
と、同時に、俺の翼もぴたりと動きを止めた。
差し出された肉など、どうでもよかった。
ただ、縋るような目でこちらを見つめる彼女の瞳が、俺を引き止めた。

「もう一晩くらい、ここにいてもいいんだぞ?
 いや、私から頼む。もう一晩、ここにいてくれないか?」

俺が肉を平らげる頃を見計らって、彼女が話を切り出す。
困った。
去りたくないのは俺も同じ。
彼女と共に在ることが許されるのであれば、永久にそうしていたいところだ。
しかしこのままでは…いや、一日くらいなら…
結局、彼女の誘惑に負けた俺は、庭に体を倒した。

月が夜空の頂上に上った頃、灯りの消えていた家のドアが静かに開いた。
月明かりに照らされた金色の髪を夜風に靡かせながら、彼女がこちらへ近づいてくる。
昼に見た皮の服とは違い、随分と軽装だ。

「ち、近くに寄ってもいいか?」

何やらおどおどした雰囲気で、彼女が俺の翼に触れた。
青白い月光に遮られて確認しづらいが、頬を赤らめているようだ。
今更畏まる必要も無いだろうに、と思いながらも、俺は翼を広げ彼女を懐に招き入れた。

「…昼間、お前に言った言葉を覚えているか?
 優しくされたのは、これが初めてだ と。」

恥ずかしそうに語る彼女であったが、その口元は微かに笑っていた。

「私は孤児だ。
 父の顔も母の顔も知らない。
 見も知らぬ川辺に捨てられていたところを辺境の村の民に拾われて、私は育った。
 聞いた話によると、この村の若き長が私の鳴き声に心を痛め、拾い上げてくれたらしい。
 容姿が人よりも優れていたせいか、私は孤児として見合わないほどに周囲の愛情を受けた。
 しかし、それも幼い頃の話。
 私の体が女性として発育し始めると、それまで純粋に私を可愛がってくれていた村人たちの目が変わっていった。
 自分で食い扶持を稼いでいる訳でもない穀潰しの娘だ。
 "そっち"の用途に使う以外、利用価値などあるはずが無い。
 …そしてある夜、決定的な事件が起こった。
 村の男達が数人で私の寝床へ押し入ったのだ。
 いや、男達だけではない。
 私のことを良く思っていなかった女達と、私を拾い上げてくれた村長の姿も…」

語りを進める彼女の表情から次第に笑みが消え、ついにはその目から一筋の涙が零れ落ちた。
俯いたまま背中を震わせ、すすり泣いている。
我々竜は驚いた時に涙を流すが、どうやら人間は悲しい時に涙を流すようだ。
俺は慌てて彼女の涙を舐め取り、翼でその背を擦った。

「…ありがとう。大丈夫だ。」

彼女はゆっくり顔を上げると、再び口を開いた。

「私は彼らの腰から狩猟用の短刀を抜き取ると、寝床に押し入った人間に飛び掛った。
 そこから先は何が起こったのか覚えていない。
 気付いた時には、彼らの死体と血溜まりが私の足元に広がっていた。
 騒ぎは瞬く間に村中へと広がり、同族殺しの汚名を着せられた私は村を追われた。
 私は逃げた。ただひたすらに。
 …それからだ。人間を信じられなくなったのは。
 私はこの人里離れた森に篭り、ごく僅かな狩猟依頼を請け負って生活してきた。
 皮肉にも、自らを追い詰めた剣術は天賦の才と賞賛され、食い扶持を繋ぐのに役立った。
 村を追われてから8年。
 私は未だに、本気で人間を信じることが出来ない。」

彼女の手が、俺の顎を擦る。
優しい香りだ。
故郷の丘で嗅いだ小さな花のように優しい香りが、俺の鼻をくすぐった。

「そんな矢先だ、お前に出会ったのは。
 お前は私の所為で片目を失ったというのに、私を怨もうとすらしなかった。
 それどころか、私を背に乗せて空からの絶景を見せてくれた。
 …身が震えるほどに嬉しかったよ。
 心から信じられる誰かにようやく巡り合えた、そう思った。
 私は、お前と別れるのが怖い。
 もう二度と…孤独に戻りたくないんだ…」

彼女は泣きながら、俺の首を強く抱きしめた。
人間の言葉を理解することはできない。
ただ、彼女が俺を必要としていることだけは確かに伝わった。
どうやら俺は野生に戻る運命にないらしい。
失った片目よりも大切なものを、この人間の中に見つけてしまったのだから。

意外にも、先に行動を起こしたのは彼女の方だった。
俺の鼻先にその唇がゆっくりと近づく。
俺も彼女の意思に応えようと口を軽く開き舌を伸ばそうとしたが、
あまり深く絡ませると、今度はこの牙で彼女を傷つけてしまう。
戸惑う俺の姿を見て察したのだろうか。
彼女は俺の頭を両手で優しく持ち上げると、自ら舌を滑りこませてくれた。
今まで体験したことの無いほど甘美な時間が互いの間に流れる。

「っ…ふぅ…」

口付けが終わると、彼女は顔を赤らめたままこちらに笑みを投げかけた。
その笑顔に確信を持った俺は、体を寄せ彼女の体を仰向けに倒した。

「えっ?…あっ!待って…」

彼女の腕が俺の胸元を押し返す。
彼女に交尾の準備が出来ていなかったのか、タイミングが悪かったのかは定かではない。
ただ、時期尚早であったことには間違いないようだ。
どうやら人間は交尾において雰囲気を重視するようである。
まだまだ慣らしが必要と判断した俺は、
そのまま体を後ろに下げ、彼女の秘所に首を運んだ。
ふと、目の前に白い三角の布が飛び込んでくる。
衣服の一部ではあるようだが…

「あっ…んっ…」

俺の鼻息を受け、彼女がぴくっ、と小さく身動ぎをしている。
気持ちがいいらしい。
俺は白い三角の布を口に咥えると、そのまま真下に引き下げた。
薄い桃色をした二つの山が姿を表す。
同族のメスは横に割れているが、人間は縦に割れているのが普通らしい。
それにしてもサイズが小さい。
体格差故、ある程度の予想は付いていたが、本当に交尾が可能なのだろうか。
軽い不安を感じつつも、俺は眼前に現れた小さな果実に舌を伸ばした。

「ぃ…ゃあっ!…う…あっ…」

途切れ途切れに声を漏らす彼女。
表面を舐めただけでこの様子だ。
余程、竜の舌がいい具合らしい。
俺は舌に彼女の愛液と自らの唾液を絡ませ、硬く閉ざされた入り口に添えた。
徐々に、焦ることなくゆっくりと舌に力を込めていく。
彼女の門が ぷちゅっ と音を発した瞬間、俺の侵入が始まった。

「あっ…んっ…いやあっ…はっぐ…あっ…」

彼女の声が先ほどまでとは別人のように高くなり、艶めかさを帯びていった。
膣からは愛液がとめどなく溢れ、俺の口内に甘味と酸味が広がる。
と、その瞬間、彼女の喘ぎ声が一際大きく周囲に響いた。
それに呼応するように大量の体液が勢いよく飛散し、俺の顔を濡らしていく。
こんな反応は竜でも見た事がない。
怖くなった俺は、彼女の入り口で舌を止めた。
これだけの体格差である。
一歩間違えれば、相手に怪我を負わせてしまう可能性も十分にある。
あまつさえ、俺の体を覆うは岩にも匹敵する強固な鱗。
不用意に体を擦り付けようものなら、彼女の肌を一瞬で傷付けてしまう。
それだけ、この交尾には危険が伴うのだ。

俺が舌を止めても、彼女はしばらく肩で息をしていた。
苦痛を与えていなければよいのだが。

「…だ…いじょうぶだ。お前には…恥ずかしい姿を見せてしまったな」

起き上がった彼女の顔は真っ赤に染まっていた。
彼女の表情に笑みが含まれていたことに、俺はほっと胸を撫で下ろした。
どうやらまんざらでもなかったらしい。
俺は赤らむ彼女の頬に翼を添え、もう一度軽く口付けを交わした。

「次は私の番だ」

俺の胸に彼女の腕が伸びる。
どうやら、俺のことも愉しませてくれるらしい。
俺はされるがままその腕に従い、体を仰向けに倒した。
彼女は俺の尻尾に馬乗りになる体勢を取ると、そのまま下腹部へと視線を投げてきた。
しかし、何故か彼女はそれ以上動こうとしない。
何やら不思議そうな目で俺の下腹部を見つめるばかりである。
成る程、竜のオスと人のオスも逸物に違いがあるようだ。
俺は自らの性器が格納されているスリットに翼を伸ばし、軽く開いた。
それを見て仕組を察したのか、彼女の手が俺のスリットに伸びる。

「ゥ…グゥ…」

彼女の柔らかい掌が、俺の穴に侵入してきた。
無造作に掻き回される感覚が、次第に快楽へと昇華していく。
男根の根元、即ち排泄孔の終点辺りを重点的に攻められ、俺の一物は見る間に大きさを増していった。
凄まじい快感だ。
野生では到底味わえない代物である。
彼女の手は徐々に場所を変え、俺の一物を擦るように動き始めた。
口はさらにその先端に当てられ、じゅぱじゅぱと卑猥な音を発しながら食らい付いてくる。
限界が近かった。

「…ぁうっ!」

あまりの攻めに射精をコントロールする余裕すら与えられず、俺は彼女の顔に精液をぶちまけてしまった。
喉にも混入したのか、軽く咳き込んでいる。
俺の白濁液で淫らに汚されてしまった金色の髪が、だらだらと長い糸を引いた。
射精はしばらくの間収まらず、精液が彼女の上半身と俺の下半身にまで及んだ。
余程驚いたのか、彼女の表情は唖然としたまま動きを見せない。
どうやらオスの射精を見ることすら初めてだったようだ。
俺は急いで起き上がると、彼女に付着した精液を舐め取った。

「しょ、娼婦の真似事をしてみたのだが…気に入ってもらえたか?」

彼女は涙目になりながらも、口の端に残った僅かな精液を指で拭き取り俺の眼前に運んだ。

「お前の"これ"、結構…美味しかったぞ」

まだ夜は続きそうである。

俺達は互いの感情を再確認するかのように、再び唇を重ねた。
様々な粘液が口内で混じり合う。

「さあ、来い…」

彼女は自ら体を倒すと、両腕を開き俺を招いた。
俺は彼女の上に覆い被さり、両足と両翼をがっしりと地面に固定した。
腰のみを自由に動かせる体勢を確保する為である。
精液と愛液と唾液が混ざり合うその孔へ、俺の陰茎がぴたりと触れる。

「ぐっ…痛っ…」

彼女の表情が苦痛に歪んだ。
俺は少しでも挿入の痛みを和らげようと、彼女の顔をやさしく舐めた。
しかし、いくら腰を動かしても、彼女の"そこ"はみちみちと音を立てるばかりで一向に俺を受け入れようとしない。
いや、受け入れることができないらしい。
やはり人と竜が愛を育むなど絵空事なのだろうか。
襲い掛かる痛みに耐えようと必死に歯を食いしばる彼女。
耐えかねた俺は行為を中断しようとした。
が、彼女の腕が俺の顔を抱きしめ、引き止める。

「心配することはない、覚悟は出来ているから。
 私がお前の左目を奪ったように、お前も私の純潔を…奪ってくれ」

こちらを見つめるその目には、一点の迷いもなかった。
俺は彼女の決意を見くびっていた。
この人間は俺が思っていた以上に崇高であり、かつ尊い。
…今一度、彼女の意思に賭けよう。
俺は心を鬼にして彼女の秘所に己の男根をあてがった。

「ぐあっあっ、うあああああっ!」

彼女の門から力が抜けた瞬間、肉棒の先端がその中に姿を消した。
破瓜の衝撃により、結合部から血がにじみ出す。
人間の男の数倍はあろうこの器官を、まさか本当に呑みこむとは…

「これで…お互い様だ」

彼女は涙を浮かべながら尚も微笑んだ。
俺もその笑みに応えるように首を伸ばし、顔をすり寄せる。
下半身では想像を絶する膣圧が男根を締め付け始めた。
同時に、先端部に絡み付く肉壁が躍動を始める。
腰が砕けるほどの快楽に襲われ、身動きすることすらままならない。

「…んっ…いいっ…よ…」

情けないことに、俺の抽送は見る間に勢いを失ってしまった。
口の端から垂れた唾液が地を濡らす。
精液で滑る髪を激しく揺らし、息を荒げる彼女。
俺は、既に限界に近づいていた。
精液を搾り取られるかのような律動を繰り返し与えられ、頭の中が真っ白になっていく。

「そのまま、中…に、出して…!
 私は…お前の仔なら…平気だから」

彼女が初めて、自ら腰を動かした。
締め付けられ擦り上げられ、俺は呼吸をするのも困難なほど絶頂に追い詰められる。
もう、耐えられない。

「グゥ…ォオオオオ!」

その瞬間、下半身に電撃が走った。
自らの肉棒がどくん、どくん、と脈打っているのが分かる。

「あっ…熱い、っ…!」

子宮全体、そのさらに真奥まで俺の精液が行き渡って行く。
行き場を無くした体液が結合部から外部へと流れ出ようとするが、俺の肉棒が栓となり、それを許さない。
次第に彼女の腹部は目に見えるほど隆起していった。

「あっ、お腹が、お腹が破れ、るっ…」

彼女が絶頂を迎えたのか、膣内の肉壁がさらに激しく波を打った。
射精中であったにも関わらず、俺は二度目の絶頂を迎えてしまう。
射精の度に、全身の筋肉がぶるぶると震える。
あまりの快感に、一瞬意識が遠のいた。

「…ん…あ…」

ぶぼっ、という激しい音と共に、結合部から大量の白濁液が噴出し、男根を押し出した。
その量は凄まじく、俺の尻尾にまで飛散した。
彼女は天を仰いだまま、恍惚とした表情で体を痙攣させている。

「これで、ずっと一緒だ…」

行為の余韻に顔を紅く染めながら、彼女が俺の胸に抱きついた。
俺も負けじと彼女の体を翼で包み込む。

俺はふと頭上に広がる夜空を見上げた。
遍く万点の星達が、目に焼きつくほど鮮明に飛び込んでくる。

"片目でも見えるじゃあないか。"

俺は口元を緩ませながら、懐で寝息を立てる彼女に身を寄せた。

青みを帯びた夜空の下。
明日からの生活に心を躍らせながら、俺は日が昇るのをじっと待っていた。

「起きていたのか?」

傍らで眠っていた彼女が耳元で囁いた。
そのやわらかい手が、俺の首を抱きしめる。

「…日が昇るとお前が消えてしまいそうで怖いんだ。
 お前の色は、この夜空のように蒼いから。」

彼女の手が小さく震えている。
恐れることなど何もない。
案ずる必要などどこにもない。
孤独など、吹き飛ばしてしまえば良い。
俺は彼女を背に乗せ、自慢の翼を羽ばたかせた。

朝の訪れを祝福する鳥達の鳴き声が、叙情的に心を打つ。
青い空に星が輝く様はどこまでも美しい。
この景色に何度心を癒されたか。

「きれい…」

上る朝日が連なる山々の間から顔を出した。
やわらかな陽光が俺と彼女の体を優しく包む。
ふと振り返ると、一筋の雫が彼女の頬を伝っていた。

「ありがとう。
 お前のお陰で、何もかも吹っ切れた気がする。」

彼女の掌が俺の首を幾度も撫で上げた。
隻眼の代償、か。
このぬくもりを得られるのであれば、片目など安いものだったと、今ならば思える。
そうして眼下の景色を眺めながら物思いに耽っていると、不意に彼女の手が俺の肩をぽん、と叩いた。

「朝食は何にしようか?」

願わくば、この穏やかな時間が悠久に続くことを。
純然たる風よ、我らを祝い吹け。



感想

  • 何とか生延びられて良いよ!? -- nakachik (2007-08-16 13:47:46)
  • 最高傑作。ここのサイトの小説の中で一番良かったです -- 名無しさん (2008-01-12 14:49:49)
  • 確かに本格的な文学のニオイがするな
    俺も見たことあるけど -- 名無しさん (2008-01-13 01:33:30)
  • �������̏����͂��̃T�C�g���ň��Ԃ̍��i���Ǝv���܂��B -- �
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