―――遂にここまで来た。
天には聖杯とよばれた黒い太陽がある。ソレは今にも生まれ落ちそうだ。
衛宮士郎はそれを一瞬だけ見上げると、自分の右手に握られた相棒を見やった。
鉄と木材で構成された相棒は当然、身じろぎなどしていないが、それでも士郎は相棒が言っていることを感覚で理解した。

―――戦わせろ。

―――人類の敵、討つべし。

―――撃つべし!!

相棒も分かっているのだ。
アレは人間のためにもこの世にあってはならない物で、そして自分はあれを撃つために作られたのだと。
「ああ、ここまで来たんだ。頑張ろうな、AK」
ミハイル・カラシニコフによって作られ、以降半世紀の間、戦場を駆け抜け続け、
『地上で最も人を殺した銃』と呼ばれた衛宮士郎のサーヴァント、バーサーカー。
正義の味方に握られたそれは静かに沈黙し、弾丸を吐き出す瞬間を待ち続けている。

色々なことがあった。士郎はその全てを思い出していた。


「見てはいけない物を見てしまった自分の不運を呪え、抵抗しなければこの『薔薇園の王』が苦しまずに送ってやる」
夜の校庭で人外の戦闘を繰り広げていた内の一人、身長50㎝程度しかない髭をたくわえた男は、その矮躯では想像もつかない程の殺気で自分の身体を縛り付けていた。
「死ぬのか―――ふざけるな。俺はまだこんな所で―――」
首をかっ切られる寸前に喚起した自動小銃で半ば狂奔状態になりながらサーヴァントにも通用する銃弾を乱射し、駆けつけてきた遠坂凜とそのサーヴァントである『復讐の女王』ライダーの力によって事なきを得た。
その時初めてこの銃が、自分が呼び出した物だと知った。


夜道で出会う雪の少女と、神々しさを感じる鏡を手に持つ少女。
「ふふっ、じゃあ戦おうか。やっちゃえ―――「イリヤちゃんいけません!血は繋がっていなくても弟さんでしょう!」」
ぷんすかぴーと他人のために鏡を持つ少女は怒っていた。
「あれだけかっこつけて出てきたのに、今更何言ってるのよ。キャスター!大体貴女は聖遺物を間違ったおかげで出てきちゃったのよ!『偶像王』とか呼ばれていたくらいなら頑張って戦いなさい!」
イリヤと呼ばれた少女も顔を真っ赤にして怒り出す。そのまま子供の喧嘩を始める二人。
「命は尊いんです!簡単に殺すとか戦うとかいっちゃいけません!」
「しょうがないでしょ!お爺様や一族の連中からは最弱のキャスターを召喚したことで白い目で見られるし、さっさとお城を追い出されちゃうし、他のサーヴァントには勝てるわけないし、
それでもしょうがないから戦うしか無いでしょ!
トオサカやそのサーヴァントならともかく、お兄ちゃんなら弱そうだから倒せるかも知れないわ!」
「確かにあの人は弱そうですし、その上無鉄砲で朴念仁みたいだから、戦えば勝てるかもしれないけど、だからって弱い物イジメみたいなことしちゃかっこ悪いです!」
あまりといえばあんまりな自分の評価に、士郎は一言呟くしか無かった。

「なんでさ」

結局、二人の間に士郎が割って入ることでイリヤスフィールとそのサーヴァント、キャスター、イリヤのお供の二人はそのまま衛宮邸預かりとなった。
なし崩し的に同盟も組むことになったのはまた別の話。


「ははっなんだよ衛宮、その屑鉄がお前のサーヴァントだって?そんなのでこの『雷鳴王』セイバーに勝てるもんか!」
両刃斧を持った黒人の大男はその異名にあるとおり、紫電を纏い雷鳴を引き連れていた。
「朕のいた時代の後に作られた武器が英霊と化したか、しかし魔術師。それだけではこの朕には一矢すら報いえぬぞ」
戦闘。
打てる手を全て打ち、使える手段を全て使った戦闘は正義の味方の敗北に終わる。
そのまま首をはねられ終わろうとした時―――。

「よう、己れも混ぜろよ。この『神槍王』であるランサー様をなァ!!」

男性的な女性とも、女性的な男性ともとれる外見と、三つ叉の槍を持つ槍兵が戦いに乱入し、乱戦状態となったところを一瞬の隙を突いて逃走することができた。


「お前さんとそのサーヴァント、消去法で行くとバーサーカーは相当にヤバイ、オレの勘と計算がそう言っている。ここで終わりにしようや」
柳洞寺に立てこもり、街中全てを射程に収めた『革命王』の砲列が一斉にこちらを向く。
キャスターの宝具は魔術では無い砲弾には通じず、もはや打つ手は無しと思われた時に、士郎は自分の手にある令呪に気づく。

「……ひょっとしたら、もしかしたら……令呪をもって命ずる、バーサーカー、俺を……」

AKの銃剣が『革命王』の霊核を貫いた。
「……へへへ、やっぱり思った通りだ。まあ、なかなかおもしれえ戦争だったからいいか。誇れよ坊主。オレを正面から堂々と殺した奴なんてお前が最初だぜ。
しかしロシア人に土つけられたオレがロシア人の作った武器で殺られるたあなあ……」
子供のように笑いながら一人目の王が消えた。

「あ、このおかずもーらい」
「あーっ!タイガが私の卵焼きとったー!
「お嬢様、淑女たるもの、おかずの取り合いなど……」
「シロウ、おかわり」
「イリヤちゃん、私のあげますから」
「……騒がしくなってしまってすまん、桜」
「気にしてませんから……たはは」
衛宮邸での穏やかな日常、だがその平穏はマキリの怪老とそのサーヴァントの手によって終わることとなる。
「道具が何を一人前の人間のようなことを言うておる?」
「聖杯に別に興味は無い。しかし、その娘を手中に収めてこそ朕の勝利は完全な物となる」
答えは決まっていた。

「断る!」

桜を救うために手を組んだ凜と共に間桐の屋敷へ向かう一行の前にセイバーが三度現れる。
嵐を操る魔術にも長けた神の如き『雷鳴王』に苦戦する中で、『復讐の女王』は戦車を止めた。

「私は負けない、今度は負けない。そのために召喚に応じた」
そこでライダーは自らの娘達を戦車から降ろすと、マスターである凜に預けた。
「二人を頼むぞ。リン、私はあの傲慢なセイバーを屠る……なあに、うまくすれば戻ってこれるさ」
幼い娘を預けられた凜は、自らのサーヴァントであるライダーを見た。その目は復讐鬼としての怨念では無く、慈母としての安らぎに満ちている。
「私が消えても、お前は戦いをやめはしないのだろう。もし聖杯がその通りの物だったら、どうかその子達に幸福な第二の生き方を与えてやってくれ」
「ライダー!アンタは……」
背を向ける自分の従者に呼びかけようとする凜を止める手があった。
「母上はリンを信じました」
「リンは母上を信じてください」
エスィルトとネッサンの言葉に、凜は口をふさぎ、己の従者の背中を見つめた。


雷電と火炎が襲い、爆風が身を焦がす。
(この程度なら、問題ない。我が部族の足音は雷鳴よりも地に響き、その勢いは大火よりも街々を蹂躙する)
すでに神の鉄槌は戦車を飲み込み破壊している。それでもライダーはセイバーの元に疾走し、その胸に亡き父から譲り受けた剣を突き立てた。
「……お前は空を飛べたはず。何故、避けなかった」
「……避けてはならないと思っただけだ。痩せた狼のように怯えて後退するなど二度としたくない。朕は勝つためにこの戦いに参加した」
「奇遇だな。私も勝利を求めてこの戦いに参加した……が、それも終幕だ。そうだろう?」
「その通り。お前にだけ勝利はやらん」
ライダーの胸の前で止まっていた両刃斧は雷光に変化すると、そのままライダーを飲み込み、天へと帰った。


「勝利を望むのならば、戦え。この『薔薇園の王』とな」
間桐臓硯を追って屋敷に潜入した士郎達を待ち受けていた暗殺者。
鉄槌と刀の猛攻が士郎を襲う。姿が見えない敵に徐々に傷つけられ、壁際に追い詰められる。死を覚悟した瞬間、救いの手は差し伸べられた。

「―――神獣鏡!」

真名開放と共に眩い光が周囲の空間を包み込み、目の前に不自然な影が存在していることに気がつく。
「シロウ!その影を撃って!」
イリヤの言葉に、反射的に身体が動いた。弾倉が空になるまでAKを撃ち続ける。何も無い筈の空間に鮮血が舞った。

満身創痍。
そうとしか言いようのない身体を蜂の巣にされた姿で、それでも『薔薇園の王』は王の名にふさわしく、堂々と立っていた。AKの銃身を掴むと、銃口を自分の額に押し当てる。
「殺せ。小僧、もはや二度と情けをかけられ誇りを傷つけられ生きることはしたくない」
轟音。
これで四人の英霊が散ったこととなる。


「なんだその無粋なガラクタは?そのような物でこの『英雄王』を前にするなど、我を笑い殺す気か?」
「タ……ス……ケテ」
間桐臓硯を追い詰めた先に待っていたのは、おぞましい程に輝く黄金が、妖蟲を宝物の剣が持つ熱量で焼き殺している光景だった。
「まあいい、その鉄屑も聖杯にくべなければならん。我の手間を省いたことに関しては褒めてやろう。足掻いてみろよ?雑種」
『英雄王』の背後に数多の宝具が顕現する。それらは牙をむいて襲いかかってきた。

「―――己れを忘れんなっての」

『神槍王』が、立ちはだかる。
「ふん、自分の宿命から逃げ出した下手物が王を名乗るか、まあいい、その辛苦に満ちた前世に免じて甘美な死を与えよう」
「バゼットがコトミネにやられたのはあいつが弱かったからだ。それに関しては何も恨み言は言わねえ……それでもてめえはぶち殺す」
「ランサー……お前」
「コトミネにだけは気をつけろよ。あの腐れ神父本気で世界を滅ぼそうとしてやがる。救えるのはお前と、お前のバーサーカーだけかもな」
それは、自分はここで死ぬという事。絶望を口にしたにもかかわらず、神槍を持つ王は傲岸に笑った。
「湿気たツラしてんじゃねえ、これから楽勝で勝ってくるんだからよ」

そして戦争が始まる。
『神槍王』の海神より賜った肉体は、『英雄王』の宝具でも致命傷を与える事はできない。三つ叉槍が『英雄王』の喉元に去来する―――。
「グァッ!?」
寸前のところで肩に直撃した巨大な矢から、身体が弾性を失い凍結していく。
「それは『千斤神矢・陰』の原型よ。面白い身体が自慢らしいが、その矢を前にしてはどうしようもなかろう―――終わりだ」
『蛇刈る鷹爪(ハルペー)』の原型を『英雄王』が振り下ろす。
しかし自分の身体が砕け散る寸前まで、砕け散っても、不敵な笑みを崩さなかった。
「あとは、あの頑固な正義の味方に任せるさ」


そしてこの地に残った英霊は『英雄王』、『偶像王』、そして自分のサーヴァントであるAKのみ。長い回想を終え、士郎は再び銃把を強く握りしめた。


「……よく考えたら、殆ど運だけでここまでこれたようなもんだな」
「自分にもたらされた奇跡をようやく理解したか?雑種と鉄屑」
目前に立つ『英雄王』、宝具は出していない。自分如き何時どのようにでも捻れると思っているんだろう。
―――事実だ。このままならば、それは絶対な事実だ。
「……何もしなければ運だって引き寄せられないんだぜ『英雄王』、それにこいつはただのサーヴァントじゃ無い」
―――だが、こいつが一つ勘違いしていることがある。
「ほう?ヒトではなくヒトが生み出した道具が英霊となったと聞いた時はなかなか珍奇なモノだと思ったが、一度見れば何という事は無い、ただの鉄屑だろう?何が違うというのだ?」
「こいつは『王様』だ」
瞬間、殺気だけで自分が何回も殺される感覚に襲われた。目前の『英雄王』は怒りを隠そうともしない。
「世界の王たる我と、その塵芥を同列に語るか……命がいらんと見えるわ」
濃密な怒りの波動によって、息もできない程の緊張。それでも、自分の手に相棒が握られている以上、手も口も動くはずだ。
「命はいるさ。それにこれからこいつが王だってことを証明してみせる」
言葉を紡いだ俺に、『英雄王』は僅かに怒りを収めた。
「興味が湧いたぞ雑種、戯れ言を許す。申してみよ」
生存を許された僅かな時間に、俺は腕に二角残された令呪を掲げる。
「令呪をもって頼む。バーサーカー、お前と共にかつてあり、今でもある全ての戦士達の記憶を俺に貸してくれ」
手が光り、そして俺という人間の自我が、彼等という人類の意識に飲まれていく。
それは理想(ユメ)だった。
祖国を蹂躙された一人の技術者が、国を守るために生み出した一丁の銃だった。
それは一人一人の兵士達の手に渡り、多くの兵士達の命を守った。
そして一人一人の人間をその牙で屠り続けた。
それが武器である以上、理想(ユメ)を叶える方法は血の海にしかなかった。
兵士に、民兵に、犯罪者に、警察官に、男に、女に、子供に、老人に、ありとあらゆる人間に手渡され、そしてその数倍の人々を葬り去り、今でも葬り続けている。
血塗られたユメに、エミヤシロウという人間が飲み込まれようとしている。


「―――違う」

それだけじゃないだろう。お前はそのためだけに生まれたわけじゃ無いだろう。
声が聞こえる―――それは自由を求める人々の叫びだ。
音が聞こえる―――それは尊厳を取り戻すために旅に出た兵士の足音だ。
国旗が見える―――そこにはかけがえのない相棒が誇り高く描かれている。
そうだ。お前は俺で俺はお前だ。肉体が俺である以上、お前達と共に俺はある―――!!
大地を踏みしめ、相棒の銃口を突きつける。
【俺達】を見ている『英雄王』の目が、軽い驚きに開かれる。
「雑種―――理解はしているようだな。ヒトという狭い器に、同じくヒトとは言え数限りない人類の想念を流し込めば、容易に器は自壊する……それともサーヴァントがお前を生かしているのか?」
俺は言葉を吐く。
「相棒は誰か一人が担い手じゃない。数限りない人達が相棒と共に有り、今でも相棒と共に有る。『世界で最も大勢の人と共にあり続けている兵器』それがこのAKという英霊の本質なんだ。そして、その兵器は俺の手に渡った。
創造の理念を鑑定し、基本となる骨子を想定し、構成された材質を複製し、製作に及ぶ技術を模倣し、成長に至る経験に共感し、蓄積された年月を再現するおそらく世界でただ一人の魔術使いの元に」
「相性が良かったというわけか贋作者。確かに貴様以外が持っても、単なる凡百の英霊として終わっていただろう―――だが、それだけで何故『王』を名乗る」
「わからないか『英雄王』、相棒程多くの人々を守り、多くの人々を殺めた英霊はいない。それはもう神か悪魔の領域だ」
「そしてヒトに作られた以上、神にも悪魔にもなり得ない、なぜならヒトはヒト以上のモノを作れぬからだ……なるほど、ならばそれは王の称号を掲げる程度の蒙昧は許される」
「だから、相棒は『兵器王』、お前が千の武器を繰り出すのであれば、億を超える戦士の魂がお前を屠る―――征くぞ。『英雄王』、『兵器王』とその相棒達が相手になる」
宣言した俺と相棒を、黄金のサーヴァントはただ見ていた。まるで遠い昔の誰かを見ているように。そして、口を開く。
「悪足掻きを許す。我を退屈させるなよ」


『英雄王』の背後には数限りない宝具の群れ。
それを数十本顕現させるそれは、サーヴァントと人間を仕留めるには十分過ぎる代物だろう。しかし、『英雄王』はやり過ぎだとは思っていなかった。王としての目が、『兵器王』が背負うモノを見抜いていた。
『兵器王』の背後には数限りない戦士の群れ。
兵士がいた。民間人がいた。男がいた。女がいた。子供がいた。老人がいた。悪党がいた。善人がいた。共産主義者がいた。資本主義者がいた。宗教家がいた。生者がいた。死人がいた。数限りない人間達がAKを構えていた。
「砲撃開始」
宝具の群れが殺到する。
その全てを【俺達】は回避した。無傷で済むはずも無い。身体は破片で傷つけられ、舞い散る粉塵が喉を焦がす。
―――それでも負けない。負けるわけにはいかない。
『薔薇園の王』
『復讐の女王』
『偶像王』
『雷鳴王』
『革命王』
『神槍王』
彼等との戦いで得た経験が、自分達を生かす。
中東
アジア
アフリカ
南米
地球上のありとあらゆる場所での戦いで得た経験が、自分達を生かす。
「うおおおおおお!!!」
叫声とともに銃弾を撃ちまくる。英霊ですら死に至らしめる銃弾が『英雄王』を―――。

「この程度か?」
花弁のような形をした盾が銃弾を遮る。
「石を幾つ重ねたところで、天の太陽までには届かぬ、これで終わるのであれば早々に逝け。見苦しい」
「見苦しくて、けっこうだ……!行くぞ。AK……『本懐なき殺戮の誉(Avtomat Kalashnikova)』!」
投影されたAK数十丁。宙に出現したそれらが地面に落ちる前に最後の切り札を使う。
「『行けぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!』」
手の令呪が光り、空間を跳躍したAKのコピーが『英雄王』の周囲、盾の内側に顕現する。
「な!?」
「壊れた幻想(ブロークン・ファンタズム)」
爆轟と熱風が顔を焼く。それに構わず残った力を総動員して駆け抜ける。
「キサマァ!」
全身に重傷を負い、黄金の鎧のあちこちが破損した『英雄王』が爆煙の内から現れる。
悪鬼の表情で、『赤錆鞘翅(スクレップ)』を振り下ろす。
それが振り下ろされる前に、AKを向けた。
「さよならだ。王様」
引き金を引く。鎧が無くなって無防備になっていた心臓付近に、弾倉の全てを撃ち尽くすまで撃ち尽くす。銃弾は顎となって、『英雄王』の霊核を噛み砕いた。


「最後まで我に喰らいつくとはな。現代の人間が作り出した武具を侮ったわ」
光となって消滅していく身体で、『英雄王』は確かに笑っていた。
「お前は俺達みんなに負けたんだ」
俺の言葉に、『英雄王』は然り、と呟いた。
「胞友がいるかいないかで随分と違うようになる。これがヒトか。今度は『あ奴』も誘って闘いを盛り上げたいものよ」
そこで黄金の英雄は言葉一つを残して完全に消滅した。
「次は、勝つ」


「終わったんですね。士郎さん」
キャスターが、こちらに歩いてくる。だいぶ憔悴した様子だが、命に別状はないようだ。
「ああ、言峰は?」
「火の精霊様の力を借りて焼き尽くしました。あとはこれだけですね」
キャスターは今にも生まれようとしている黒い太陽を見上げた。
「人を殺すことにしか使えない聖杯か、精霊様達の力を借りれば、崩せるでしょうけど」
「じゃあ、やってくれるか。イリヤも早く助けたい」
天に磔にされているイリヤを見たキャスターは、こくりと頷いた。
「分かりました。すぐに壊します。ですから士郎さん、最後の別れを」
「……分かっている」
俺は手に握っていた相棒を見た。相棒は何も言わないけれど、それは相棒自身がこの瞬間を望んでいたんだろうと思いこむことにした。
「ありがとう。AK、俺の相棒(サーヴァント)。お前に会えて良かった」
これが相棒との最後の別れ。
それをしばらく見ていたキャスターは、鏡を構えた。

「これで終わりにしましょう―――神獣鏡!」


聖杯戦争が終わって数ヶ月、魂喰いの被害者達は回復し、破壊された建築物もあらかた建て直された。
『……アフリカの紛争では、十歳にも満たない少年少女が、この旧ソ連製小銃を持って戦っています』
TVでは、昨日から明日まで続く世界のことを伝えている。
自分達が守った世界だ。
いつもの通り、世界は決して綺麗じゃなく、だが、そして誇らしい。
「シロウ、どうしたの?」
イリヤが不思議そうに首をかしげる。なんでもないよ、と返した。
庭に出て、空を見上げた。今でもこの空の下では相棒が誰かと共に戦い続けているんだろう。多分、もうしばらくの間はそのままだ。
相棒の存在で、血は流れるだろう。誰かが泣くだろう。それでも相棒の在り方が誰かを救える物であれば良いと思う。この世界を救ったように。
「シロウさん、ご飯の用意できましたよー」
「ああ、今行く。桜に手伝って貰ったのか?」
「キャスターちゃん、飲み込み早いから、すぐに追いつかれそうで、怖いです」
皆が笑いあう中で、俺は相棒のことをまた思い出していた。
AKは人殺しの道具だ。だけど、その前に誰かを守るために作られた物だ。
だから、きっとその存在は間違いなんかじゃない。
心地よい風が頬を撫でた。
春はもうすぐそこまで来ている。









無機物を主人公鯖に据えた作品は初めて書きました。
能力が投影と聞いて、士郎と組ませたら主人公補正がついてどうにか立ち回れるんじゃね?と思いました。でもギル様倒すのは無理があったかなあ。
何か変なところがあったら言ってください。

以下がサーヴァントの組み分けです。


セイバー:シャンゴ
神(ゴッド)シャンゴ。魔術もこなす素敵セイバー。だけど得物は棍棒と斧。
彼を出したSSが一個も無いので出しました。
召喚したのは桜ですが、そのままワカメの元へ。願いは一度逃走した過去を恥に思っているため、今度こそ逃げたりせずに戦うこと。同じような願いを持っていたライダーのカミカゼアタックで相打ちになりました。
ちなみにワカメはライダーの娘に手を出そうとしたのでライダーにしばかれてそれ以来女性恐怖症に。

ランサー:カイニス
元祖TS鯖。男前なお姉さん。
一度書きたいと思ったので出しました。『神槍王』は一分で考えてつけました。
召喚したのがバゼットで、言峰に奪われ、最期は金ぴか相手に大往生。男前に散りました。
願いは完全な男の肉体を手に入れること。もし固有ルートがあったら女らしいところを主人公にときたま見せる俺ッ娘に……頭の悪い妄想でした。忘れてください。

アーチャー:ナポレオン
世界的に知られている人。でも接近されたら士郎にも負ける人。
個人的にはもっと強くしても良かったかなと思っているサーヴァントです。
フランス革命で一番得したから『革命王』と付けました。
召喚したのは原作でキャス子さんの元マスターだったどっかの名無しです。
ライダー、キャスター、バーサーカー相手に一歩も退かずに戦い抜きましたが、バーサーカーの能力を引き出した士郎によって脱落。
名無しがランサーに序盤でぶっ殺されて、魔力不足のために柳洞寺に立て籠もったのが運の尽き。
マスターが健在なら他の戦略もとれて、最終的に勝利を掴むことも夢では無かったであろう鯖のイメージ。
願いは、他の時代の英雄達と戦って勝つこと。

ライダー:ブーディカ
普段は誇り高い冷静な女王、だけど娘に手を出されると怒り狂う最強のモンスターペアレント。マスターは凜。
基本的に突撃以外戦術を知らないので、つけいる隙はあるように見えて、実は宝具が強力なためにその隙を突くことがなかなかできない。性格以外は結構当たりなサーヴァント。
願いは、今度こそ戦いで勝つこと、そして二人の娘と共に現世で受肉して暮らす事。だが、ローマ人に復讐してもいいかなと思っているので、優勝させたりしたらイタリアが危険なことになる。
ライダー自身はセイバーと相打ちになって消滅しましたが、娘であるエスィルトとネッサンは凜からの魔力供給で今でも現界して平和に暮らしています。

アサシン:ラウリン
元々、名も無いどころか存在すら書かれなかったオリキャラの令呪を間桐臓硯が奪って召喚したサーヴァント。実はサーヴァント達の中では一番物持ちのリッチマン。
三つも宝具を持っている上に時間さえかければ更に作ることができるという素敵仕様。
もっとも、実力を発揮する前に士郎とバーサーカーによって倒されました。その理由は、マスターである虫ジジイが不老長命や、自分の護身に使う道具を作らせすぎたため、武器や防具が作れなかったから。
願いは、もう一度ディートリッヒに挑戦して勝つこと。

バーサーカー:AK
ご存じ僕らのカラシニコフ。多分殺した人間の数はエア以上。いろんな意味でチート。
幸運自体が無いものの、ザ・主人公、衛宮士郎に召喚されたのと、令呪のおかげで、
「世界中のみんな、オラに力を分けてくれ!」状態になって革命王と薔薇園の王と英雄王をぶっ殺す大金星を上げた。
当然聖杯にかける願いなど無いものの、その実はこの世全ての悪の顕現を危惧した抑止力によって、泥に汚染されない英霊として、サーヴァントシステムに割り込みをかける形で出現した正真正銘のイレギュラーである。
イリヤに持たせたら、作者が「子供に持たせるな!」と怒りに来る筈。

キャスター:壱与
このSS最大の萌えキャラ、古代邪馬台国のアイドル王。
日本武尊を呼ぶはずが、触媒を間違ったおかげでイリヤが召喚した。
元々、聖杯に願う望みは無く、ただ戦火に苦しむ民を見たくないという理由で召喚に応じた。サーヴァントの中では一番精神的に大人な人。イリヤに対しても思いやって接している。士郎のサポートに努めて、聖杯戦争の最後に大聖杯を破壊した。
その後はイリヤの体の治療を行いながら衛宮邸にメイド達と居候している。

前回のアーチャー:金ぴか
説明不要。最強チートラスボス我様。
新たに召喚された連中が王と名乗る者ばかりだったのが、気に触るかと思いきや、
「聖杯の正体を知った雑種の絶望を見るも一興」と、なんと終盤までおとなしくしていた。
結局最後まで残ったのがバーサーカーとキャスターだったため無意識に本気を出さずに、結局士郎とバーサーカーのコンビの前に敗北する。慢心が無ければ勝っていた人。