「よし、終わったぞ」
衛宮士郎は、“サーヴァント”の分解掃除を終えた。
目の前にはカラシニコフと呼ばれるアサルトライフルが存在する。本物ではあるものの、別にヤバイルートで手に入れた物では無い。彼(あるいは彼女)も冬木の地に召喚されたサーヴァントの一柱、機械も英霊になる事はあるらしいとは魔術の師匠であるあかいあくまの弁だ。
「士郎さん、ここの掃除は終わりましたか?」
振り向くと土蔵の入口には、女性が立っていた。
絶妙な形で作られた顔の造形。
衣服の上からでも分かる豊かな双丘とくびれた腰。
うなじ付近でまとめられた緑がかった美しい髪。
間違いなく美女と呼べる外見を持っているが、全身から発せられる慈母のように温和な雰囲気のおかげで、すこしもとっつきにくくない、共にいるだけで安心させてくれるような女性だ。ただ、何故か固く目を閉じている。
「ラミア、庭の掃除は終わったのか」
「ええ、大勢手伝ってくれましたから、もうすぐ終わります」
ラミア―――かつてリビアの王女だった女性は、「当然」とも言うように笑顔を見せた。


ある忍者は、植木を整える。
ある忍者は、掃き掃除をする。
ある忍者は、ごみを出しに行く。
「よう。衛宮の、庭の掃除はもうすぐ終わるぞ」
縁側に座って、乱破衆の指示をしている黒衣の暗殺者が呑気そうに言った。
「ありがとうな、小太郎、茶でも出すからゆっくりしていってくれ」
「そりゃ、ありがとさん」
アサシン―――風魔小太郎は、頭巾を脱がないように、器用に口に茶を注いだ。
「美味い」
「悪いな、宝具まで使って大掃除手伝ってくれて」
「構わんさ、俺達もこの屋敷にはだいぶ世話になっている」
そこで小太郎は明後日の方向をあごでしゃくる。
エウロペが修理を終えた家電をアステリオスが運び出す。
巴御前が畳の埃を叩いている。
トム・サムが排水溝に潜り込んで掃除をしている。
ラシードは天井裏に上がって本格的に掃除をしている。
皆、世話になっている衛宮の屋敷の大掃除に来てくれた英霊達だ。
「本当に、みんな頑張ってくれているよ。お礼の夕飯は奮発しないとな」
「料理を頑張るのはいいですが……あまり、無茶はしないようにしてくださいね?」
「わかってる、わかってる。自分の身体は大事にするからさ」
ラミアが心配そうに注意するが、士郎のさほど気にしていない様子に、ラミアと小太郎はそろってため息をついた。
元々この地にあった聖杯を大勢のキャスター達が改造した『大聖杯・マークⅡ』のおかげで、この地に集う英霊達に本来食事は必要無いのだが、それでも食べたいというのが人情だ。
快く食事を作ってくれる衛宮士郎の人柄に甘えて、衛宮邸は多くのサーヴァントが集まっている。
当初は大挙して押し寄せてくるサーヴァント達(と、虎)の胃袋を満たすための材料費を稼ぐために士郎がバイトで働き続け、過労死しかけたことさえある。
その後は、熊太郎が魚を捕ってきたり、ハーロットが資金援助をしたり、行基の温泉で身体を療養したおかげで持ち直したが、もしあのまま突っ走っていたら、食事を作り続けるために世界と契約しようとしていたかもしれない。
絶対そうなっていただろうというのが、少年を知る者達全員の総意だ。
「しーろうー、お姉ちゃんお腹すいちゃったよぅー!!」
「ああ、わかった。今作る」
大河のご飯をねだる声に、士郎が立ち上がる。ラミアと小太郎も席を立った。
台所に行く士郎を見て、小太郎がラミアに耳打ちする。
「ありゃ、また無理するかも知れねえからな。俺達がまだ見てやらんといかんなあ」
「ええ、そうですね」
ラミアが苦笑する。手のかかる息子を見るような目で、二人の英霊は少年を見ていた。

「いただきまーす!」
掃除を一段落させた衛宮邸の住人達は、今のテーブルを囲んで昼の食事をとっていた。
最も、あまり手のかかった料理では無く、おにぎりやパンなどの簡単な食事になった。
「形が不揃いですけど、誰が作ったんですか?私は玄関の掃除していたし、姉さんは自分の部屋の掃除だし……」
不格好なおにぎりをほおばりながら、士郎の後輩である間桐桜が聞く。
「私と、メリーさんとイヴさんですよ」
「そうそう、イヴさんてば凄いのよ!腕のパーツを増やして中身が違うおにぎりを一秒に十個作っちゃうの!」
壱与の言葉に続く形でメリーが興奮した様子で話す。
皿の上に山盛りになっているおにぎりをよく見ると、半分は桜が食べているような形だが、もう半分は規格生産されたみたいに決まった形をしている。
「そういえば、形・量とともに一定だな」
「コンビニエンスストアで販売されているおにぎりを参考にしました」
抑揚の無い声で話すのはメイド服の女性。
その正体はキャスターの一人、ソロモン・イブン・ガビーロールが作り出した機構侍女・
『機械仕掛けの生命(イヴ・エクス・マキナ)』だ。本来なら主であるガビーロールの元で研究の補佐に当たっている彼女だが、大掃除に人手が必要という事で、凜がガビーロールに預けてある借金のカタに無理矢理引っ張ってきたのだ。
「ところで衛宮様、この家屋における清掃達成率は現在目標の85%を超えましたが、未だに手をつけていない場所があります」
「えっ、そうだったか?どことどこだったかな」
「パラケルスス様のラボです」
その言葉に、多くの英霊達の食事が止まる(虎と金時は構わず喰っていたが)。
パラケルススという名をこの冬木に住む英霊やその関係者の中で知らない者はまずいない。いたとしてもアホの子ローランくらいのものだろう。
何せ、彼は汚染されていた大聖杯を、他者の宝具まで使用して汚染を除去し、サーヴァント達が現界に支障が無い程度の魔力供給装置に改造してくれたのだ。
士郎にとっても時に魔術を見てくれたりしてくれるありがたい相手だ。
だが、パラケルススにも欠点はあった。
というより疑問だが、いついかなる時でも帽子を取ろうとしない事(行基の温泉にもかぶって入っていた)と、どうやらそれに関連する問題らしいのだが、変な薬をサーヴァントや魔術師に飲ませようとするという悪癖があった。
士郎自身紫色の液体を飲まされて毛髪が七色の極彩色に染まったことがある。
色々な意味で恐れられているパラケルススの工房、自然と身体が硬くなる。
「その……当のパラケルススはどうしているんだ?」
「「魔術師に年末年始もクソもあるか」と言い残され、中国の秘境に薬草を探しに行っております」
「……そうか、あそこを掃除しないと正月が来ない」
魔術師の工房に、基本他人は入れない。故に、魔術師は様々な防衛手段をこらす。
特にこの衛宮邸は様々なキャスターがむちゃくちゃな改造を施したために、地下室や隠し部屋、罠の類まで設置され、もはや冬木の謎の異空間と化しているのだ。
その中でも、パラケルススの部屋は同業のキャスター達でも入った事が無いらしい。
「パラケルスス様が中国に行く前に事前確認を行ったところ「危険な物は無いので勝手に片付けといていい」とのことでございます」
相変わらず抑揚の無い声で良い仕事をしたイヴに、心の中で喝采を送りながら衛宮邸大掃除実行委員会責任者の肩書きを持つ士郎は、指示を飛ばす。
「よし、藤ねえと桜を除いて、みんな後でパラケルスス・ラボの前に集合だ」
「せ、先輩。いくらなんでも危険すぎます。パラケルススさんの帰国を待った方が……」
「大丈夫だ。桜。危険な研究はしないように約束してるんだから……多分」

ガチャリ。金属が離れ合うような音が響いた。
「よし、終わったぜ。ヤローかなり複雑な術式を組んでやがった」
赤髪に赤い目をしたガラの悪そうな男、魔術王ソロモンの手によって、禁断の扉は開かれた。
「よし、行くぞ。みんな、準備はいいか?」
士郎は投影した剣を握りしめ、共に突入する仲間達を見つめた。
「おう」
風魔小太郎は手裏剣を投げられる体勢のまま、片手には雑巾とバケツを持っている。
「大丈夫よ」
メリーの右手には出刃包丁、左手にはハタキが握られている。
「いざという時はすぐに逃げましょう。メリーさんと一緒なら大丈夫です」
ラミアは、少し緊張した様子で箒を握りしめた。
人選には理由がある。
掃除が得意であり、周囲の状況が視覚以外の情報で理解できるラミア。
瞬間移動ができるメリー。
敏捷性に優れ、また忍者であるために罠にたいして鼻がきく小太郎の三人だ。
他のメンバーには、いざという時に備えて待機して貰っている。
「じゃあ……いざ突撃!」


結論から言えば、何もおこらなかった。
ただ、部屋には机と、荷造りされた荷物が少しあっただけだった。
「生前は協会だかに追われてた御仁だ。いついかなる時でも移動できるように癖がついちまったんだろ」
とは、小太郎の弁だ。兎にも角にも四人は掃除を始める事にした。
「士郎、この荷物はどうすんの?」
「あまり、触らないように、あとでパラケルススに聞いて、いらないものなら捨てるんだ」
「なんだよ。こりゃ、漫画じゃねえか。あの人本当に大昔の魔術師か?」
「必要な物かどうか分からないから、隅にまとめておきましょう」
順調に進む片付けに、ラミアも安堵しながら物を運ぶ。
「ええと、これは」
―――もしゃり。
「ん?」
何か奇妙な音が聞こえた。音がした方向を見てみると、そこには押し入れの扉があった。
「あの、士郎さん。ここはまだ片付けていませんよね?」
「あ、うん。そういえばその押し入れの中には何が入っているんだ?」
「ええと、それが……」
「何々?この押し入れ掃除すれば良いの?」
ラミアが止める暇も無く、メリーが取っ手に手をかけ、思い切り横に引いた。

「帰ったぞー」
「あ、パラさん。お帰りなさーい」
扉を開ける中国帰りのパラケルススに、かたづけをしていた壱与が声をかける。
「衛宮のぼうやはいるかい、壱与ちゃん?薬草酒でも作って貰おうと思ったんだがよ」
「ああ、士郎さんなら今パラケルススさんの部屋を片付けていますよ」
「へー、そりゃ悪いな……あ、そういえば押し入れは開けてないよな?」
「え?押し入れが何かまずいんですか?」
「ああ、言い忘れたんだが……」

「ぎゃああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!」

「こ……これは一体」
「何コレ何コレ何コレ!!!!」
パニックになったメリーとラミアの指さす先にいるモノに、士郎も呆然となっている。
それは毛だった。毛の塊だった。最初はモップか何かだと思ったが、それが素早い動きで壁や天井を這い回る姿は、生き物でしかあり得ない。
「け……毛羽毛現?」
毛羽毛現、あるいは希有希現とも称される。毛むくじゃらの妖怪であるそれを、士郎は連想していた。
「妖怪変化の類かよ!?」
流石に小太郎は日本の英霊だけあって、その手の話にも強い。故に行動も素早かった。
「衛宮の、嬢ちゃんがた、当たるなよ!」
手首のスナップを最大限に生かし、天井に垂れ下がっている毛玉へ向かって手裏剣を投擲する。
空気を切り裂くそれは標的に殺到した。並の英霊では回避すら難しいそれをしかし―――。
「何!?」
手裏剣の全てを毛玉は回避した。それは避けたと言うよりむしろ―――。
「飛んだ!?」
鳥のようにというよりも、昆虫のように部屋中を飛び回るそれはもはや尋常な生き物ではないだろう。女性軍も戦闘態勢を整えた。

「私メリーさん、今あなたの横にいるの!」
瞬間、メリーの姿がかき消える。そして毛玉の至近に出現したメリーは力一杯出刃包丁を振り下ろす。
「やったか……いや、浅すぎる」
斬撃は、妖怪の毛を僅かに切り落とす程度の戦果しかもたらさなかった。
更に―――。
「士郎さん、避けてください!」
「しまったあ……ムググ!」
一瞬の隙を狙い、毛玉は狙いを士郎に定めたらしい。毛の塊は士郎の顔に着地し、そのまま離れようとしない。
「なろお!」
「士郎から離れなさい!」
メリーと小太郎が引っぺがそうとするが、下手に手をつけると士郎に何をするか分からない。結果的に見ているしかできない。
「ムググムグムググググ」
士郎の身体が痙攣を始める。口と鼻がふさがれて呼吸困難に陥っているのだろう。必死に毛玉を剥がそうとするが、それでも離れようとしない。
「キャスター連中呼んでこい、メリーの嬢ちゃん!こいつの正体調べん事にはどうにもならん」
「分かった!私メリーさん、今あなたの後ろにいるの!」
そうしてメリーの姿がかき消える。残された小太郎はともかく毛玉をどうにかしようと小刀を取り出した。
「どけよ毛玉―――」

「くふ、くふふふふふふふくふふふふふふふふふふふふふふふふふふくふふ」

奇妙な笑い声に言葉が遮られる。
含み笑い。それを発していたのは、先ほどまで呆然としていたラミアだった。
見ると、表情は陰になってよく分からない。
だが、口角だけがつり上がっていた。
ぺろ。
妙に長い舌が形の良い唇を舐める。傍目から見れば妖美な仕草だが、小太郎にとっては肉食獣がうなっているようにしか見えない。
「悪い子ねぇ……悪戯しちゃダメっていつも言ってるでしょ……」
ようやく台詞を発したラミアは、そのまま床で呻いている士郎に馬乗りになる。
そのまま毛玉を鷲掴みにした。
むんずと掴まれた毛玉は、じたばたと動き続けるが、ラミアは決して離そうとしない。
「くふふ、柔らかな毛並みねぇ……」
すると、おもむろにブチリと毛を毟り始めた。
毟る。毟る。毟る。毟る。毟る。毟る。毟る。毟る。毟る。毟る。毟る。毟る。
解放された士郎を診ながら、小太郎はラミアを止めようとする。
「なあ、そいつの正体が分からない以上、下手に手を出すのは」
ラミアは小太郎の言葉を全く意に介さず毛を毟り続けている。
「なあ、そろそろ……」
そこでぴたりと毛を毟る手が止まる。そして、顔を向けずにラミアが一言。
「嫌です」
そして毛を毟る行為が再開された。
小太郎はあくまで正体不明な生物に対し、不用意な行為はやめておいた方が良いと思うから忠告したのだが、ここまで拒絶されては立つ瀬が無い。
おまけに、本気で怒っているラミアに無理矢理止めさせるということもできそうにない。宝具を使われれば自分は粉々にされるだろう。
「……仕方ねえか、危なくなったら助けりゃいい」
ラミアが無言で毛を毟っていく内に、毛玉の体積が小さくなっていく。
そしてその姿が現れる。
小太郎は驚愕したが、ラミアに告げるのはあまりにも危険だと判断し、無言を貫く。
「あら、これ何かしら……」
目の見えないラミアが感触で『それ』の正体を理解した瞬間――――――時が止まった。

「ぎ……」

「■■■■ッ!?あれは■■■■だったっての?」
廊下を走るのは帰国したパラケルススと、助けを呼びに来たメリーだ。メリーは初めに待機していた英霊に助けを求めようとしたが、パラケルススが帰ってきた事を聞き、急遽部屋の主に助けを求めた。
その時に、毛玉の正体について聞き出した結果、恐怖の正体が明らかになった。
「そういえば、最近見なかったけど……」
「寒いと動きがにぶるとか相談されてな、試薬を試したらもっさり毛が生えてきてよ。そのまま繁殖しない事を条件に俺の部屋に住まわせてたんだ」
「住ませるな!!あいつは黒い悪魔よ!!医者が■■■■保護してどーすんの!!」
「実験台を志願してくれる結構いい奴なんだよ。しかし、暫く見なかったもんだから、忘れてたぜ。突然掃除されて、パニックになってなけりゃいいが」
「パニックになってるからこんなことに……」
轟音。
屋根瓦が梁ごと飛び、ついでに天井裏を掃除していたラシードがべちゃりと庭に叩き付けられる。
ペンテシレイアを口説こうとしていたパリスが瓦礫に頭をぶつけ、倒れたところをヘクトルとカサンドラにフルボッコにされていた。
ブーディカは二人の娘が瓦礫に押しつぶされそうになった事に激怒し、戦車を走らせ暴れまくっている。
「ぎゃああああああああああああがあああああああああああああああああ!!!!!!」
獣の唸り声に似ているが妙にリズムが良く、聞きようによってはオペラ歌手のように美しい声が周囲に響き渡る。
それを発しているのは蛇の下半身を持ち、紅玉のように美しい瞳に狂気の色を浮かべた女性の姿。彼女は現在進行形で衛宮邸を破壊していた。
ぶーん。
メリーとパラケルススの元に、毛を中途半端に抜かれた■■■■が飛んでくる。その姿に生理的な嫌悪を覚えるメリーだが、それ以上の根源的恐怖が■■■■を狙っていた。
「ぎいいいいいいいいいいいいいいぐああああああああああああああああああ!!!!!」
「い!?」
「ちょっと、タイム!私、メリーさん今あなたの後ろにいるの!」
メリーが消える。何処か安全地帯に逃げた事は明白だ。
残るのはパラケルススと■■■■、そして宝具全開で暴れるラミア。太い蛇の下半身が、怨敵を押し潰そうと持ち上がる。
「な……おい、ちょっと待て。おい、たんま、タイム、ストップ!ヘルプー!!!」
ずん、という重い音と共に周囲が沈黙する。が、

ぶーん。

敏捷A+は伊達じゃ無い。■■■■はそのまま逃げ続けようとする。
当然、ラミアがそれを逃すはずも無く、彼女が正気に戻るまで被害は拡大し続けた。

ごお~ん。
「鐘の音は、心が洗われますね……」
「和の心ってやつかね」
しみじみした様子で聞き入るラミア、包帯でグルグル巻きにされたパラケルススもそれに続く。
「ああ、除夜の鐘は煩悩を打ち払うっていうもんな」
年越しそばを持ってきた士郎は、英霊達に配っていく。
メリーはそばを口に含むと、顔をほころばせた。
「あら、美味しい。鶏肉入りね」
「お代わりはまだあるぞ」
「……なあ、現実を見ろよ」
「ああ、風通し良さそうだな」
小太郎の冷静な突っ込みに、士郎は衛宮邸だった物体を見た。
真っ二つ。
ちょうど母屋の中心部からラミアの尾が直撃した衛宮邸は包丁で切られたスイカ宜しく二世帯住宅になっていた。
ラミアは蒼白になりながら、謝罪の言葉を口にする。
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい」
小動物のように身体を震わせるラミア。その彼女に、士郎は優しく声をかける。
「大丈夫だ。俺正義の味方だから」
「し、士郎さん……」
「例え聖杯戦争のたびに何度も何度も何度も家がぶっ壊されて、保険会社に説明もできないから保険金がさっぱり下りずに、
修理費が自腹を切る羽目になってバイト先を増やしたり、黄金律持ってる連中に頭下げて金を借りたりしないといけなくて、
近所の人達の噂になって肩身の狭い思いをして、修理が終わるまで寒風が吹き込む家の中で暮らさないといけなくても、
大丈夫だぁ……ははははははははははははははははははははははははははは」
「し、士郎さぁん!」
「今は泣いててもいいぞ。衛宮の……とりあえずあけましておめでとうございます」
除夜の鐘が響く夜空に、一台のソリが飛んでいく。
聖ニコラウスが乗り込む『聖夜の架け橋(シュティレ・ナハト)』だ。
ソリの上から何かをまくとそれは爆発し、色とりどりの花火となった。
火花が夜空に文字を描く。


HAPPY NEW YEAR!!



新年おめでとうございます。
初めてSSを投稿する者です。
思えば去年だけでも多くの英霊達が召喚されました。今年もまた、皆鯖の発展を祈って、このSSを贈りたいと思います。それでは皆様お元気で。