AATMの某シーンで言われていたのを元に、皆鯖版オマージュしてみた。


時は戦乱の時代。
故あって王宮や騎士団を追われた7人の騎士たちは、蛮族の被害に悩まされる農民たちに用心棒として雇われる。


「お願いです、騎士様。どうか私たちに力を貸してください」

「任せなさい、お嬢さん。このアロンソ・キハーナがお力になりましょう!」

「蛮族の横暴は見過ごせない。私などでよければご助力しよう」

「任せろ! 無辜の民を救うのが騎士の務めだ」

「一宿一飯の恩義もある……手を貸そう。(ここなら暫くは追っ手に見つからないだろう。心苦しいが利用させてもらう……)」

「飯と雨風を凌げる寝床にありつけるなら、用心棒ぐらいはするとしよう」

「我がゲッシュに誓い、この村のために戦おう」


当初騎士たちは、それぞれの事情や因縁、さらには一部の農民たちとの軋轢から衝突を繰り返す。


「ガウェイン卿!? どうしてここに――」

「我が兄弟を殺し、王に叛逆した裏切り者を斬る以外の理由があるとお思いか!
 王が許しても私は許せない。貴公の首を獲るため、私は円卓を去りここまで来た。覚悟!」

∞   

「悪いが事情は訊かせてもらった。この村を一時的な隠れ家にするってこたぁ、端からこの村のために戦うつもりは無いってことかい?」

「だとしたら、どうするつもりだ?」

「決まってらぁ、獅子身中の虫はいらねぇよ」

「そうか……」

槍を構えるケルトハルとディルムッド。

「よせ、2人とも」

「止めることはなかろう、勝手に殺し合わせておけばいい」

「あんた、仮にも元は騎士だろ。何故そんなことが言える!」

「ふん……忠義だの誇りだの騎士道だの、そんなモノは疾うに捨てたさ。
 私に言わせれば、未だにそんなモノにしがみついている貴公らの方が理解に苦しむよ」

「ハーゲン、貴様!」

「ほぅ、やるかね、ローラン?」

∞       

「お主、何故このようなことを――」

「うるさい、お前らが来てから村の連中は本気で蛮族共と戦うつもりでいる。勝てるわけも無いのに!
 逆らって殺されたり今まで以上に苦しめられたりするぐらいなら、奴隷としてでも生き延びた方がマシだ!」

「だから連中にこっちの情報を流したのか!?」

「そうだよ、こいつらさえいなくなれば村のみんなも目を覚ますさ。
 だいたい、騎士だか何だか知らないが、連日いがみ合ったりしてるだけで殆ど何もしていないじゃないか。
 そんな連中があの大軍に勝てると本気で思うのかよ!」

「そ、それは――」

「ぬぅ……」


しかし、主君無き流浪の身となった彼らだが、その心には未だ高潔なる『騎士道』が宿っていた。


白刃が閃き、髑髏の仮面を被った男が倒れる。

「ガウェイン卿、どうして――」

「貴公を助けたのではない、この村の民を助けたのだ。
 ランスロット、貴公との決着は蛮族を退けた後で、互いに後顧の憂いを無くしてから着けることとしよう。
 それまでは我らの因縁は預けておく」

「忝い。こんなことを私が言うべきではないのかもしれないが、我が剣に誓い、必ず生きて貴公との果し合いに応じよう」

∞         

「非礼を詫びよう。槍を交えて分かった、あんたにはまだ騎士の誇りがある。
 本当はこの村のために尽力したいのだろうが、彼女のためにあえて自分を殺していたのか」

「……」

「気に病むな、あんたの分も俺が頑張るからよ。
 だから早く彼女を連れてこの村を――」

「いや――俺も残って戦おう」

「いいのか?」

「アルスターの戦士よ、貴殿のおかげで俺は大事なものを失わずに済んだ。
 俺の奉じた騎士の道は苦しむ民衆を見捨て、自分だけが助かるようなものではなかった」

「へっ、アンタとは良い酒が呑めそうだぜ」


衝突、協力、そして戦いの中で、彼らは確かな絆で結ばれていく。


「話は聞いた、敵の斥候から村人を守ったそうじゃないか」

「……だったらどうだと言うのかね?」

「俺の誤解だったようだ、君はなんだかんだ言ってもこうして村に留まってくれている。やはり君も間違いなく騎士だ」

「ふ、たまにはらしくないことをするのも悪くないと思ったまでさ」

「何でもいいさ、共に頑張ろう!」

∞     

「村の衆よ、今更ではあるが我らは一丸となってこの村のために蛮族共と戦う決意を決めた。
 出来ることは何でもする。故にどうか皆も我らを信じて力を貸してほしい」

騎士たちが村人たちに頭を下げる。
数瞬の沈黙の後、村人たちから歓声が沸いた。
誰もが7人の騎士たちを信じ、共に戦う決意を瞳に宿して。

「おぉ……」

それは誰の洩らした呟きだったか。
今ここに、生まれも身分も違う者たちが一つになった。


そして7人は蛮族の軍団と対決する。

「来たぞぉ! 数は10万、見渡す限り敵だらけだ!!」

騎士たちがそれぞれの武器を手に持ち場へと散っていく。
戦端は、開かれた。


7人対10万人。一騎当千の騎士たちを以てしても覆らない、圧倒的な戦力差。
それでも騎士たちは戦う、騎士たちは倒れない、騎士たちは戦場を駆ける。
鍛え抜いた己が手腕と宝具を振るい、敵を迎え撃つ彼らの咆哮が戦場を揺らす。
そして――


「貴公、その槍は!?」

「ちっ、俺としたことが戦いに専心しすぎて、槍を毒液に浸すことを忘れてたぜ……」

「このままではいかん、急いで戻って――」

「いやもう遅い。戻る前に『蝕む黒水』は尽き、『蠢く黒炎』が暴れ出す。
 そうなっちまったらこの槍は敵味方お構いなしに襲いかかる。とても戦線を維持できる状況じゃなくなる。
 ならよ――」

「お前、まさか――」

「まぁ見てな、最低でも残りの半数は道連れにしてやるからよ!」

「止めろ、戻れ、ケルトハーーーーーーール!!!」


犠牲を出しながらも騎士たちは勝利する。
だがそれは、更なる戦乱の幕開けでしかなかった。


「見つけたぞ、裏切り者のディルムッドめ。
 しかも他所の騎士共と農民の下僕に成り下がっての蛮族退治とは……
 ふふふふ、閃いたぞ。グラニアを取り返し貴様を絶望の奈落へ突き落す、とっておきの妙案が。
 それとついでに他の騎士共とあの村にも消えてもらうとしよう。
 たかが数だけの蛮族とはいえ、あれだけの数を退けた連中をのさばらせてはおけんからな。
 そうと決まれば、まずは役者を揃えんとなぁ……クククククク」

不気味な笑みをこぼしながら、男は再びその白い指を口で咥えた。


ディルムッドを狙う『外道王』フィン・マックールンは「逆族の討伐」という名の下に、近隣諸国の『王』達を呼び寄せた。
『聖堂王』シャルルマーニュ、『闘王』ベーオウルフ、『海賊王』エドワード・ティーチ、『魔術王』ソロモン、そして『騎士王』アルトリア――


「マックール王、質問は1つだ。何故数名の騎士と小さな村を落とすのに我らを呼び寄せた?」

「『騎士王』よ、そんなに怒るとその可愛らしい顔が台無しだぞ?
 ――いやなに、書状にも書いたが、あの村は反乱分子の巣窟だ。しかもかつての名だたる騎士を傭兵として雇い蛮族を退ける力まで有しておる。
 これは見過ごすことは出来まい?」

「だがしかし……」

「では、その中にそなたの顔に泥を塗った『裏切りの騎士』と、奴を追って円卓を去った『太陽の騎士』もいると言ったらどうするね?」

「!?」

「我が手足たるフィオナ騎士団だけで事を運んでもよかったが、そういう事情もあるのでな。
 『騎士王』自ら不忠者達に裁きを下す機会を奪うのも忍びなかったのでなぁ、クックック」


暗躍する『外道王』、『海賊王』、『魔術王』


「ガハハハハ、さすがは『外道王』だ、こんなえげつない手を考えるとはな!」

「仇敵を討つだけでなく、他の王も戦場で暗殺しその国を乗っ取ると計画とは。実に悪知恵の働く男だよ」

「何を言う、こうして同盟を結んでいるお主らにもチャンスを与えているのだ。実に良心的ではないか?」

「違いねぇ。それじゃ約定通り村を滅ぼしたら金と女とフローズガールの国は貰うぜ。あの国の海は前からほしかったんだ!」

「では私はフランク王国と全ての死者を頂こう。信心深いあの国と戦火に散った生者の魂なら、我が悪魔たちには最高の餌になる」

「儂はグラニアを取り戻し、ブリテンを貰うとしよう。なんなら『騎士王』も儂の褥に囲ってやろうかのぅ? フハハハハ」


苦悩する『聖堂王』、『闘王』、『騎士王』


「シャルル翁、ベーオウルフ、貴方たちまでどうして……」

「言うな、『騎士王』。余も貴公と同じだ。かつての忠臣に手ずから誅を下すべくこうしている」

「私はフローズガール先王との盟約により、マックール王の助成に来た」

「貴方たちはそれでいいのか!?」

「それをお主が言うかね?」

「我らは個人ではなく王としての責務で動かねばならない。だからこそ君もここにいるのだろう?」

「くっ……」


6つの国により結成された連合軍が皆鯖村に迫る。


「むぅ……何という事だ。兵の数こそ蛮族たちより僅かに少ないが、相手は鍛え抜かれた騎士……戦力差は前回の比ではない」

「おまけに6人もの『王』が前線に立つとはな」

「フィン殿、貴方は……」

「シャルル王、なんでこんなことに……」

「まさか我らが王まで。当然円卓の騎士もいるという事か」

「くっ、私は――」


それでも必滅の戦場に彼らは立つ。


「よいのか、皆の衆? 間違いなく生きては帰れんぞ」

「だからって村を見捨てることは出来ない。今回は俺たちが原因のようなもんだしな」

「私はフィン殿の真意を確かめなければならない。もしあの方が外道に堕ちたのだとしたら、この手で――」

「かつて私たちと戦った男が生きていれば、ここで逃げ出すようなことはしなかっただろう。
 奴に胸を張って会うためにも、引き下がれんさ」

「ランスロット、貴公は我らが王の下へ行け。王も貴公との対面を望んでいるはずだ。行く手を阻む者は私が相手をする」

「ありがとう、ガウェイン。私は君と出会えてよかった」


かつての仕えた王と、主君と、騎士たちは対峙する。


「久しいなローラン。しかし、こんな形で再会したくはなかったな」

「シャルル王、何故一人で?」

「お主相手に数で攻めても犠牲が増えるだけだ。ならば余自ら相手をするのが一番だ。
 もっとも、お主がここで引いてくれるなら追うことはせんが――」

「申し訳ないがシャルル王、今俺の後ろには村の民とこの地で出会えた大切な仲間がいる。
 たとえ相手が貴方でも――いや、貴方だからこそ引くわけにはいかない!」

「ふむ。よくぞ申した、それでこそ十二騎士の筆頭だった騎士(おとこ)よ。
 参るがいい、『聖堂王』シャルルマーニュが相手をしよう!」

「参ります、王よ!」


「裏切り者め、よくも儂の前に姿を晒せたな」

「フィン殿、私一人を討つために何故ここまでの事を――」

「決まっておろう、貴様への罰だ。儂からグラニアを奪い我が名声を貶めた貴様の罪、これでもまだ生温いくらいだ」

「それならばなおのこと私一人を討てば済むはず。貴方のやり方は間違っている!」

「黙れ、間男が! 儂に逆らった貴様は悪。そして貴様を匿ったこの村も、貴様と共に戦う野良犬たちも同じく悪だ。
 悪は罰を受けてしかるべし、地獄で後悔するがいい!」

「……フィン殿、俺は貴方の真意を訊いたら貴方の手で討たれるつもりだった。貴方が望むなら自害して果てるのも厭わないつもりでした。
 この惨状を作り上げたのも、貴方が外道の道へ堕ちたのも、俺への憎しみからだと言うならこの命で償うつもりでした」

「戯けたことを。もう何もかもが遅いのだ! 今更潔く自決させるとでも思ったか? 
 貴様は苦しませ絶望させ誇りも名誉も踏み躙ったうえでこの手で殺さねば気が済まん」

「……成る程、たしかに気付くのが遅すぎた。多くの騎士たちが敬愛したフィン・マックールはもういないのですね」

「敬愛だと!? そんなゴミにしかならんものが何だと言うのだ。
 騎士共は儂に従っておればよい! それすらできん貴様には生きている価値すらない。
 貴様を殺したら他の連中は皆殺し。その後でグラニアには二度とふた心を起こさんように――」

「黙れ」

「!?」

「俺への罵詈雑言ならばどんなものでも受けよう。
 だが、かつてのお前を敬愛し果てて逝った騎士たち、この村の民、グラニア、そして我が友たちへの侮辱や手出しだけは断じて許さん!」

「黙るのは貴様だ、裏切り者がぁ!!!」

「来るがいい、フィン・マックール。せめてもの情けと罪滅ぼしだ。貴様は俺がこの場にて討つ!」


1人、また1人と倒れていく騎士たち。


「バ、バカな……。この俺様が、『海賊王』エドワード・ティーチが、こんな老いぼれに――」

「お主のような奪い侵すだけの男には分かるまい。
 儂らを信じてくれる村の民が、肩を並べる朋友たちが、そして我が胸の内に宿る騎士道がこの老いぼれに力を与えてくれるのだ」

「ぐうぉぉぉぉぉぉぉ、ドン・キホーテェーーー! この狂人がぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

「そうとも。儂は所詮自らを騎士と思い込んだ、ただの老いぼれた狂人よ。
 だがな、そんな儂を騎士と信じ最後まで仕えてくれた従者のためにも、儂は騎士として戦い、騎士として散ると決めたのだ。
 さぁ『黒髭』よ、儂と共に冥府へ逝こうぞ!」


「う、嘘だ。こんなことが……『七十二柱』の悪魔が全滅だと!?」

「生憎だったな。ご自慢の悪魔たちが好き勝手暴れたせいで、戦場に血が流れ過ぎた。
 これだけの血が流れれば、あとは私の『栄光無き破滅』の独擅場だ」

「!?」

「この戦場を覆い尽くす黒い炎は、この剣に宿りし呪いの顕現。悪魔だろうとコレから逃れることは出来ぬ。
 もっとも、かく言う私も満身創痍。あと数分で死ぬだろう――だが」

「ひいっ!?」

「では私の最後の相手を務めてもらうぞ、『魔術王』。
 なに、私は立ってるのがやっとの有様だ。戦い方次第では君でも勝てるさ。
 ただし、私を倒せても呪いの炎で覆われた戦場を生きて出られるかは、別問題だがね」


武器は血で穢れ、鎧は砕け、その身が泥に塗れても――


「おおっ!」

「はあっ!」

交差する拳と剣。
『無双の鉄腕』と『燦然たる陽光』の打ち合いは時を経るごとに激しさを増していく。

「さて、貴公1人にこれ以上足止めされる訳にもいかんのでな、そろそろ決着としよう」

「ベーオウルフ王、貴方ほどの勇士がどうしてそこまで――」

「……貴公らが王や主に尽くす騎士であるように、私もまた国や民に尽くす王というだけのこと。
 私はフローズガール王から次代を託された時、己が生涯を『王』として国と臣民に捧げると誓った。そこに私情を挟む余地は無い。
 そして互いに譲れぬものを背負っている限り、引くわけにはいかない――そうだろう?」

「……仰せの通りです。私の『騎士道』と貴方の『王道』がぶつかるのならば、力ずくで押し通る!」

「それでいい、『太陽の騎士』よ。
 では……参る!」

「お相手仕る、『闘王』よ!」


――彼らの『騎士道』は、揺るがない。


「ランスロット、どうして……」

『約束された勝利の剣』で貫かれたランスロットの口から鮮血が流れる。

「これでいいのです、王よ。
 『裏切りの騎士』は『騎士王』によって討たれ、遠い地で果てる。
 これで貴方の失墜を目論む者たちも、攻勢を保てなくなる。その間に円卓をもう一度まとめ上げ、親族や臣下との絆を確かなものにしてください。
 そうすれば『騎士王』の栄光は不変となり、ブリテンの繁栄につながるでしょう」

「貴方は、最初から私に討たれるつもりで――」

「それから、この戦いで王を失うことになる国もあるでしょう。それらの国のこともお願いしたい。
 勝手な頼みの上に、困難な道ではありますが、残った忠臣たちと協力すれば、貴方にならきっとできる」

「ランスロット……」

「それと、ギネヴィアのことですが――彼女を責めないでください。
 全ては私が唆して行ったこと、彼女は私の甘言につられただけで罪はありません」

「分かりました、分かったから、もう――」

「王よ、最後までご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした。
 それにしても、『騎士王』の腕に抱かれて最期を遂げるなど、まるで私が忠節の騎士の様では――」

「いいえ、貴方が、貴方こそが、本当の忠節の騎士です、サー・ランスロット!!」

堪えきれなくなった涙と共に騎士王の口から出た言葉に、ランスロットは己でも分からぬ内に、自然と涙した。

「身に余るお言葉、忝い、王よ……」


其は戦場の華、其は貴き理想、其は戦火の中で輝く希望――

其は―――――


             『KISHIDOU 7』


――――――――――これは、騎士道に生きた男たちの物語――――――――――



登場人物

7人の騎士 
ランスロット、ディルムッド・オディナ、アロンソ・キハーナ、ケルトハル・マク・ウテヒル、ローラン、ハーゲン、ガウェイン

皆鯖村の農民たち 
壱与、皆鯖マスターのみなさん

蛮族
王の軍勢、王の葬列、妄想幻像のみなさん

連合軍
フィン・マックール、アルトリア・ペンドラゴン、シャルルマーニュ(カール大帝)、エドワード・ティーチ、ソロモン、ベーオウルフ

その他 ギネヴィア、グラニア