ちょっと電波を受信したので勢いそのままに書いてみました。
分かる人には分かるネタのようなものですが。
あとこの物語はフィクションです。



間違った過去、誰かが選択を誤った世界。

犯罪結社・フィオナ騎士団の牛耳るアイルランドに、一人の男が舞い戻る。

彼の名は、フィン・マックール。

手には一槍、斃すは5人……魔都アイルランドに報仇雪恨の槍が哭く。



ケルト街~The Unlucky Lancer



部下の裏切りによって死線を彷徨った彼は、一年の時を経てアイルランドに舞い戻るものの、既に裏切り者たちは騎士団の権力を掌握し、
そればかりかフィンの最愛の婚約者、グラニアまでもが辱めを受け殺された挙句、その意識を五体のホムンクルスに分割転写されてしまったことを知る。
怒りに身も心も焼き尽くされたフィンは、自分を裏切り婚約者を殺した者たちへの復讐と、グラニアの意識が記録されたホムンクルスを奪取し、
彼女の意識を再統合させるため、その手に復讐の槍をとる。

仇は五人。
一人また一人と血祭りにあげながら、孤高の槍兵は魔都アイルランドの夜闇を駆け抜ける。


          ×          ×


「何故だ、どうして俺の『刺し穿つ死棘の槍』が当たらねぇ!?」

「ふん、当たらない必中の槍とは笑わせる。貴様がいくら呪いの魔槍を繰り出そうと無駄な事。
『全知なる白き指』によって因果逆転のからくりが暴かれた以上、貴様には万に一つの勝機も無い!」

魔槍から繰り出される、因果逆転の呪いを帯びた回避も防御も不可能の刺突を、捌き、躱すフィンの槍が最初の仇敵の心臓を穿つ。


          ×          ×


「貴様がそう言うなら是非も無い。貴様お得意の『蝕む黒水』、五手までは見逃してやる。俺が攻めるのはその後だ」

「はっ、内家騎士風情が本気で俺たち外家騎士に勝つつもりなのか?」

「のみならず、殺す気でいる……」

ケルトハルの全身を泡立つような恐怖が襲う。
たかが利器型宝具使いの内家騎士如きに、真名開放型宝具を使う外家騎士の自分が――


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「結局俺は人間じゃあねぇ。お前らの腕前の優劣なぞ区別つかんし、騎士道なんぞに拘る気は毛頭ねぇ!」

目の前の復讐鬼に対する恐怖を打ち払おうと、クラン・カラティンは咆えた。

「27人の息子たちと合体したか。やはりお前は槍兵などより狂戦士のクラスの方が似合っている」

今しがたまで騎士団の精鋭たる外家騎士たちを相手に大立ち回りを繰り広げ、些少だが傷を負った筈のフィンは無傷で立っている。、
全ての敵を斬り伏せた後、『全治なる白き掌』で掬った水を飲み、全ての傷を完治させたのだ。


          ×          ×


「久しく忘れていたぞ、この血の滾り。今宵の我が『屠殺者』のキレは一味違うぞ、フィン・マックール!」

「貴様ら外家騎士は真名開放型宝具の威力に頼るしか能の無い奴ばかりだな。
まぁいい、この世の見納めに拝ませてやろう、内家利器型宝具の技の冴え、我が槍『血統の青槍』を!」

ピサールにしてみれば、フィンの手に握られた槍は『屠殺者』と比るのも馬鹿らしい、ただの利器型宝具でしかない。
だというのに、あの槍から迸る魔力の量は何だ? 
真名を解放した『屠殺者』を遥かに上回る魔力の奔流が、ピサールの総毛だった全身を蹂躙する。



          ×          ×


「騎士であるためのよすがを失い、生きたまま守護者に成り果てたか。
仮にもフィオナ騎士団の次期団長と目された貴方が、随分と堕ちたものだ。なぁグラニア?」

「あ……うぅ……」

「ディルムッドォォォ、貴様ぁぁぁぁ――グッ!? ゴホ、ゴホ、ゴホ……」

激昂しディルムッドに飛び掛かろうとした瞬間、フィンの顔が苦悶に歪み、口から大量の血が流れ出る。

「おやおや、苦しそうですね、フィン殿?
まぁ負担の大きい『全知なる白き指』をこうも連日使用すればこうなることは分かっていた筈――」

「黙れ! 俺は貴様に復讐するためだけにこの1年を生きてきた。
ディルムッド、貴様が騎士団を裏切り、グラニアを殺した理由を今更問うつもりはない。だが、贖いだけはしてもらうぞ、その命で!」

「出来ますか? 貴方に」

激突する2人。
ディルムッドが2本の真名開放型宝具『大いなる激情』と『小なる激情』を使用すると考えていたフィンの眼に、信じられない光景が映し出される。
ディルムッドが両手に携えた長柄の獲物。それはフィンもよく知る“内家騎士 ディルムッド・オディナ”の宝具、
『破魔の紅薔薇』と『必滅の黄薔薇』以外の何物でもなかった。

「ぐあっ!?」

フィンの身体をディルムッドの槍が穿つ。既に全身傷だらけのフィンに対し、未だ傷ひとつ無く涼しい顔でディルムッドは双槍を繰り出す。

「無駄ですよ、フィン殿! 貴方の『血統の青槍』は我が『破魔の紅薔薇』と打ち合う度に魔力を絶たれる。
その瞬間『血統の菁槍』により向上していた貴方のステータスと対魔力は無効化され、その脆弱な肉体は地金を晒す。
外家の馬鹿どもには通じても、この私にその槍は通じない!」

「くっ、だがまだ『全治なる白き掌』と『全知なる白き指』があれば形勢は――」

「無駄だと言った! 『必滅の黄薔薇』で穿たれた傷の前には『全治なる白き掌』は意味を成さない。
そして『全知なる白き指』を使わせる隙など与えはしない!」


そして決着の時――

「終わりにしましょう、フィン殿。我が秘奥、戦場に咲いた徒花の心意気――『悲恋繚乱』!」

「未だ開眼至らぬ身なれど、この場で体現できなければどの道命は無い……勝負!
受け継がれし血統は我が代にて滾り、青銅は全能なる白銅へと昇華する。奥義、『正統の白薔薇』!!」




サーヴァントバンク騎士道片 『ケルト街』 ケルト歴333年3月3日発売予定!


――――――――――我はこの一槍に賭ける修羅――――――――――




登場人物

フィン・マックール
主人公。
外家騎士の真名開放型宝具を利器型宝具で圧倒する内家騎士。人呼んで『白指掌』。
ディルムッドに裏切られ、瀕死の重傷を負うも一命を取り止め、1年振りに戻ったアイルランドで騎士団の変貌と婚約者の死を知り、
自らとグラニアの復讐のため、騎士団に戦いを挑む。
惨殺され分割されたグラニアの意識を再統合させるため、大聖杯を内蔵した少女型ホムンクルスを連れている。


グラニア
フィンの婚約者。
惨殺されてその意識を切り裂かれ、5体のホムンクルスに内蔵された小聖杯へと吸い出されてしまう。


クー・フーリン(EXTRA)
幹部の座を手に入れ騎士団を牛耳る4人の外家騎士の1人。人呼んで『四枝浅瀬』。
呪いの魔槍の使い手。


ケルトハル・マク・ウテヒル
幹部の座を手に入れ騎士団を牛耳る4人の外家騎士の1人。人呼んで『黒炎凶犬』。
ペットである3匹の犬を使ってホムンクルスを嬲るのが趣味。


クラン・カラティン
幹部の座を手に入れ騎士団を牛耳る4人の外家騎士の1人。人呼んで『熔合毒血』。
元々は英霊ではなく怪物。27人の息子がいる。


ピサール
幹部の座を手に入れ騎士団を牛耳る4人の外家騎士の1人。人呼んで『魔人王』。
現フィオナ騎士団長の補佐を務める。


ディルムッド・オディナ
かつてのフィオナ騎士団におけるフィンの部下であり、騎士団随一の戦士であったが、今は最大の仇敵。人呼んで『輝貌麗人』。
騎士団の副団長であり、老齢のコールマックを差し置いて事実上騎士団を牛耳っている。
かつては利器型宝具を扱う内家騎士だったが、現在は強力な真名開放型宝具を扱う外家騎士となっている。
2本の槍を2本の剣に持ち替え、槍から剣の騎士へと鞍替えしたらしいのだが……


言峰綺礼
幹部たちが持つ5体のホムンクルスと、フィンが連れているホムンクルスの製作者。人呼んで『外道神父』。
かつては悩める求道者だったが、『この世全ての悪』の存在を知り、人の嘆きや絶望を悦とする破綻者として覚醒した。
己の人生に解答を得る為、幹部たちがグラニアの意識を霊核転写しホムンクルスに記録することに協力した。


青セイバー 黒セイバー 白セイバー 赤セイバー
グラニアの意識を分割転写された5体のホムンクルスの4体。それぞれ容姿は微妙に異なる。
幹部の4人に与えられており、それぞれの下で様々な扱いを受けている。


グラニア
フィンの婚約者だったグラニアの意識を分割転写されたホムンクルスの1体で、ディルムッドが所有。
外見は生前のグラニアに瓜二つの美女。


コールマック・ マックアート
フィオナ騎士団の団長でグラニアの父。
自らも真名開放型宝具に頼らない内家騎士だったが、外家騎士を取り込み騎士団の実験を握ろうとした副団長のディルムッドに殺害される。
ディルムッドの虚言により、グラニアはフィンに殺されたと騙されたまま死亡。


フーリン兄弟
槍とルーン魔術を武器とするフィオナ騎士団の戦士。
兄のクー・フーリン(SN)と弟のクー・フーリン(PT)からなる双子の兄弟。人呼んで『不幸槍犬』。
かつてのフィンの先輩にして好漢。クー・フーリン(EXTRA)とは無関係。


コンラ
フィンを慕う、騎士団の見習い。