―――凛が自分のサーヴァントを失った後、
士郎とペレロフォンは彼女と同盟を結び、夜の街を歩いていた。
だが、そんな彼らに不審な影が姿を表す。
そのサーヴァントはまるで西部開拓時代のカウボーイのような姿をしていた。

「アンタ……。サーヴァント!?」

その凛の言葉に、その謎のサーヴァントは深々と頭を下げる。

「お初にお目にかかります……。
俺の真名は、ペコス・ビル
クラスはライダー。宝具は『駆け抜けた漢の勲章(スルーフット・スー)』
炎や水、光などの形のない物に形を与え乗りこなす能力だ。
そう把握していただきたい。」

「「「な―――っ!!?」」」

その言葉に三人は絶句する。
自ら己の真名のみならず、宝具の能力まで親切に教えるサーヴァントなどいるはずがない。

「士郎!騙されないで!
そいつのいう事は嘘よ!自分の能力を親切に話すサーヴァントがいるはずがない!
それにライダーのクラスが二人もいるはずないわ!」

「宝具にも真名にも俺には嘘はない。
ライダーが二人いるのは、聖杯の手違いなのだろう。
……公正なる『一騎討ち』は己の内にある
『開拓精神(フロンティア・スピリット)』を向上させる。
困難に打ち勝ってこそ、開拓精神は目覚めるのだ。」

「己の弱さを乗り越え、困難を乗り越え、開拓者精神は光り輝く。
その「黄金の精神」こそ俺はもっと素晴らしいと考えている……。
それゆえ、君たちに全てを隠さずに話している。
これが『開拓精神(フロンティア・スピリット)』……。
今の時代、価値観が「甘ったるい方向」へと進んでいるようだがな……。
決めるのは君たちだ……。」

「本気で言っているの?こいつ……どうかしてるわ。」

そのあきれ果てたような凛の言葉に対し、ペレロフォンは爆笑する。

「は、はははは!!
いいじゃないか。ここまで骨太で堂々とした奴が近代の英霊にもいたとはな!
我が名前はペレロフォン。その一騎討ち、受けて立とう!!」

「……感謝いたします。」


ペレロフォンが所有しているのは、第四次聖杯戦争の際、
セイバーが操っていたV-MAXだ。
士郎と同盟を結んだ凛が、ペレロフォンを強化するために、コネを使って入手したものである。
ペレロフォンと士郎は、そのV-MAXにまたがってエンジンを吹かす。
一方、ペコスは、何かを待つようにじっとその場に立ちすくしていた。
しばらくのにらみ合いのあと、一陣の逆風がペコスの背中からペレロフォンへと向かってひゅうと吹き抜ける。
その瞬間、ペコスは叫んだ。

「《駆け抜けた漢の勲章(スルーフット・スー)》!!」

その瞬間、ペコスは己の宝具を開放し、吹き抜けた風へと跨った。

「待ってろ……!今、お前に魂を吹き込んでやる……!!
《黄金の手綱(ポリュエイドス)》!」

ペレロフォンの黄金の手綱によって、彼が乗っているV-MAXに魂が吹き込まれ、
擬似的な幻想種へと変貌する。
瞬間、凄まじい轟音を立てながら、弾丸のようにV-MAXは地面を疾走する。
人間では扱う事が難しいそのモンスターマシンは、ペレロフォンの力によって文字通りの怪物へと変化したのだ。
弾丸のように疾走するペレロフォンのV-MAXと真正面から向かい合って進むペコスの疾風。
それはまさしく古代の騎馬戦を連想させた。
恐らく、ペコスはすれ違い様に、こちらの急所に弾丸を打ち込んでくるつもりなのだろう。

「確かの通常の機械では風といった概念までは破壊できない……。
だが、魔獣化したこのV-MAXならば別だ!!」

魔獣としての属性を与えられたV-MAXは、まるで貪り食らうように、
ペコスの乗った疾風を打ち砕く。
運良く、すれ違いざまの士郎の振るった双剣はペコスはかすり傷ですんだが、
乗り物である疾風を失ったペコスは、そのまま空中へと放り出される―――。

「《駆け抜けた漢の勲章(スルーフット・スー)》!!」

だが、ペコスは己の宝具を使用すると、
V-MAXが発生させた衝撃波へと乗り、ペレロフォンに向かって銃弾で攻撃を仕掛ける。

「ハッ!なかなか面白いマネしやがって!!」

だが、ペレロフォンは、見事なハンドル裁きで、銃弾を全て回避する。
そして、ペコスは再装填を行うと、銃弾を明後日の方へと撃つ。

「《駆け抜けた漢の勲章(スルーフット・スー)》!!」

ペコスは、その『弾丸が発生させた疾風』に乗ったのだ。
さらに、明後日の方に弾丸を放つとそれを踏み台にして空中の三次元起動を行いながら、
空中から地上のこちらへと弾丸を降り注ぐ。
それを回避しながら、ペレロフォンは不敵に微笑む。

「なかなか楽しめたぜ……。だが、それもここまでだ!!
《屠獣熔鉛(カウンター・キマイラ)》!!」

その瞬間、意思を持つ流体金属である屠獣熔鉛(カウンター・キマイラ)が展開し、
三次元移動を行なっていたペコスを包み込んで動きを封じる。

「今だ!やれ士郎!!」

その瞬間、士郎は干将を投げると、その剣は、流体に封じられたペコスの胸へと突き刺さる。

「グ……ふっ……!!」

口と傷口から大量の血液を吐き出すペコス。
だが、それでも彼は震える手で、こちらに向かって銃を構える。
それが無駄だとわかっていても、だ。

「やめるんだ、ペコス!もう十分だろう!?」

「だから価値観が甘ったれているというんだ!
精神(ココロ)を見ろ……。光り輝く黄金の精神を!!
『社会的な価値観』がある。そして『開拓精神』がある。
昔は一致していたがその『2つ』は現代では必ずしも一致していない。
『開拓』と『社会』はかなりずれた価値観になっている。」

「だが『真の勝利への道』には『黄金の精神』が必要だ。
聖杯戦争を勝ち進み、それを確認しろ……。」

その瞬間、引き金を引こうとしたペコスの胸に、士郎の莫耶が突き刺さる。
血を吹き出しながら、満足げにペコスは微笑む。

「ようこそ……。『フロンティア』へ……。」