マスターV教授(+フラット君)のサーヴァント講座 七時限目


 これはサーヴァント講座六時限目より前のお話である。(ナレーション)
 時系列的に最終回の前のお話である!(大事な事なので二回ナレーションが入りました)

「先生ー先生ー先生ー!! グモーニン、マイティーチャー! 先生センセセンセセンセセセセンンセ!(扉コンコン」
「先生ーーセンセ先生センセ先生先生センセセセセン教授センセーイ!!(扉ガンガン!」
「先生先生先生先生先生先生先生先生先生先生先生先生先生先生先生先生先生先生(扉ズガガガガガガ!!」
「センセ────」
「やかましいぞフラットォッ!! 日曜朝はクァメンライドゥーからプリキュアのダブルコンボを垂れ流しつつゲームするという私の平穏で安穏で安息なゴールデンタイムの邪魔するなぁッ!!(バターン!」
「イ────ぶるあぁぁーーーっ!? お、オゴ…、ド、ドアが顔面に……(流血」
「…………ほら、これでも振り掛けて消毒しとけ(パタン」
「ちょ、ちょっと! 先生待ってくださいよ!
 ってしかも先生がくれた消毒薬って除菌と消臭のファプリースじゃないですか!! こんなので消毒した人なんて聞いたことないですよ!?(扉ドンドンドン」
「ハァ……寝ても覚めてもうるさい奴だね君は……。(ガチャリ)
 で、何の用なんだフラット?」
「先生! サーヴァント講───」
「────(パタン。ガチャリ」
「センセェエエエエエエエ!! 無言でドア閉めて鍵まで掛けるなんてどういう了見ですか!? 俺まだ最後まで喋ってないじゃないですかー!」
「やかましい黙れ! オマエが何を言おうとしてるのかくらい最後まで聞かんでも分かるわ! 何年来の付き合いだと思ってる!?」
「駄目です先生! まだ新米の皆鯖マスターさんたちだっているかもですよ! 教鞭を振るう立場の者としてその態度はあんまりでしょう?!
 うわーーん!それでもプロフェッサー・カリ☆スマなんですか! 今度からロード・エルメロイ二世じゃなくてロード・エロめロリ二世って呼びますよ! いいんですか?」
「あー好きに呼んでくれ。平穏の対価としては安いものだ。
 ついでにその渾名にドン引きした生徒達が私の周りを付き纏うのを止めてくれるかもしれんしな。
 とにかく私はやらないぞ。ハートを略奪するハサンプリキュアを見るので忙しいからな。それにしても青い子はウザ可愛い」
「しょうがないですね。今回は本当に久しぶりの"ほんのちょっとだけ帰ってきたマスターV講座"なので教授にはイヤでも教壇に立って貰いますよ!
 さあスケさん! カクさん! やっておしまいなさい!」


「─────は? スケサン? 核酸? 人の部屋の外で一体何を騒いでるんだあの馬鹿者は?」
「よしきた(ドアノブこきゃっ!とな」
「控えい控えい! 頭(ず)が高い、頭を低くしろ!(ドア蹴破り」
「な、なんだーーー!!?(ビクッ!)っていうか誰が背の低いチビだ!!」
「控えおろう! ここに居らせられる御方をどなたと存じ上げるか! この御方こそはかの名高き聖堂王シャル───」
「俺フラット・エスカルドスです。シャルルマーニュ大帝じゃないッス」
「おおっとそうだった! ついいつものクセで。オホン! とにかく、このウイロウが眼に入らぬのかー!」
「印籠ですよ印籠! イ・ン・ロ・ウ! ういろうなんて日本旅行のお土産見せ付けてどうするんですか!?」
「………おいフラット君。その馴染み深過ぎてもはや見飽きた顔はなにかね?」
「スケさんにカクさんです!」
「アホタレッ! 一体どこのジャパンにそんな超絶マッチョで巨漢戦士なスケさんと、金髪碧眼で三枚目騎士風なカクさんがいるか! 大体君のどの辺が水戸黄門なんだ!」
「前振り不要で問答無用! さあ出番ですよファラオ様! モサドのように華麗に拉致っちゃてください!」
「ふははははーー!! 俺様こう見えて釣りも得意だからな! 流石最強ファラオ、何でも出来て格好イイ!(ポイーッとな」
「ちょ、おま、待てーーーーーー! これのどこが釣りだ!? 投げ縄を他人の足に引っ掛けて引き摺ってるだけだろう!! 
 これじゃ市中引き回しの刑じゃないか! っていうか学内でそんな馬鹿でかい戦車を乗り回すな、つか建物壊すなぁぁあ!
 ええい、もうツッコミ所が多過ぎて間に合わーーん!」
「さあ先生! アジアの端っこの半島にあるらしい"地上の楽園"に連れて行ってあげますよっレッツらゴー!」
「は、離せ! いーーやーーーーだーーーー!!(ズルズルズル」



  ~教室~

「さてようこそ地上の楽園へ!」
「……………」
「───おごッ!? よもや貴様───がっ!? む、無言でグーパンですか!? しかも二度もぶった!」
「…………………(ムスッ」
「さあ先生むくれてないで授業をどうぞ!
 その教壇は敬愛なる先生の為に用意した美的センス溢れるエレガントな机ですよ! なんとあの建築王が特注で作った一品物!
 これはプレミア物ですよ~やる気がみるみる湧いて来ないと嘘ですよねっ!」
「………金銀での過剰細工のせいで目が滅茶苦茶チカチカする。クァメンライドゥとプルィキュア見ながらゲームタイム…(ムスッ」
「なんだ貴様王の芸術に対してその無礼は!? 折角俺様が手間暇かけて作ってやったハイパーゴージャススペシャルに文句があると吐かすか!!?」
「先生過ぎたことを悔やんでも仕方がありません! さあさあその不満を講義にぶつけてください!」
「私としてはこの怒り全力でオマエにぶつけたいなあ」
「あ、そういえば言い忘れてましたけど仮面ライダーWとハートキャッチプリキュアは俺がちゃんと録画しておきました!
 講義終わったら先生に献上しますね?」
「よし、さっさとつまらない雑事は片付けて録画を見るか(即答」
「そ、そんなに観たかったのだな教授殿………それは申し訳ない事をした」
「さて、至極面倒で仕方ないが今回は皆鯖第七次の講義に入る………ではまずは、オイそこの何食わぬ顔で席に着いてる七騎。お前達にはとっとと退室することを命じる」
「えーーー!!」「な、なんだとーー!?」「英霊差別だー!」
「FateAS本編に帰れっ! さっき私の部屋にローランとベーオウルフが乱入してきてラメセス二世まで出てきた時点で相当嫌な予感はしてたがやはり案の定だ!!
 一体何が悲しくてサーヴァントにサーヴァントの講義をしなきゃならんアホ臭い! 大体君達の行動パターンなんてこっちは読めているんだ、自分の方が強い!とかいう主張しかしないだろう!
 はい退出退出!(ポチっとボッシュート」
「な、落とし穴!?」「ああああああーー落ちるーー!」「人をゴミのようにーーー!」「英霊は滅びぬ何度でも蘇るさーーーー!」
「にどとくんなーーっ! はぁはぁはぁ…! くそ、終始叫びっ放しで喉が乾いたじゃないか……おっ? 麦茶か気が利くなフラット」
「いえいえどういたしまして!」


「で、教授? すごく訊き難くはあるんだけどわたしたちは残っててもいいの?」
「君達はマスターだろう。どうせ居ても居なくても変わらんのだから君達の好きにしたまえ」
「では折角の機会だ。参加させて頂こうか」
「皆鯖第七次の顔触れだが────ふむ、セイバー:エンキドゥ。ランサー:孫悟空。アーチャー:アタランテ。ライダー:坂田金時。アサシン:ジェヴォーダンの獣。バーサーカー:ピサール。キャスター:プテサン・ウィ。以上か。
 やれやれ超メジャーから超ドマイナーそれに色物までなんなんだこの品揃えの豊富さは?」
「なんか全体的に皆さん戦闘スキルが少ないですよね」
「スキルが異様に豊富なのが皆鯖第七次の特色でもある。っというかどいつからも物凄い獣臭が風に乗って漂って来るんだが……?」
「なんかみんな野性化してない? 周りにいるの動物ばっかなんだけど」
「本来ならこの辺りでサーヴァントを選ぶ時に参考にしたい三つの条件をおさらいするところだが……面倒なのでカットカットカット!だ。強制労働で残業手当も付かんのだ。各自で復習したまえ。ついでにフラットに復讐してくれる者も随時募集中だ」
「ちょ先生!? 真顔でゴルゴ募集するのやめてください!」
「ではミスター雨生。君がこの皆鯖第七次の中で最も気になる奴はどれかな?」
「ピサール超くーる。(即答)ヤリたいコトもヤれないこんな世の中じゃ──ぽいずん!」
「君のヤリたいコトって解剖だろう。そんなものいつの時代でも駄目に決まってるだろう!」
「……先生先生、雨生さんってばバーサーカーフェチなんですかね?(ヒソヒソ」
「いや…あれは単に血に飢えたスプラッターフェチなんだろう。(ヒソヒソ)ジェヴォーダンカッコイイなどと寝言を絶叫してる君と同じだフラット」
「はあーーーー!? な、何言ってんですか先生! ジェヴォーダンの獣とか猟奇サスペンス風味で超カッコイイじゃないですかっ!」
「本当に同レベルなのね……」
「とは言ってもまあ今回のはメンツを見ただけで結果はほぼ決まってるようなものだがね。知名度と実力が他より頭一つ分は飛び抜けている。
 正直私には孫悟空とエンキドゥが一騎討ちしてるビジョンしか見えないのだが、君はどう思うねミス沙条?」
「わ、わたし?! し、指名があるなんて思わなかったわ……ええっと、坂田金時とかはどうかしら? 彼日本じゃかなり有名だし、もしかしたらとかない?」
「金太郎なんて貧坊ちゃま衣装のイメージしかないぞ。俺は坂田金時よりもアタランテの方がまだ使えると思うがね」
「間桐さん貧坊ちゃまに謝ってください! 彼のファッションセンスは時代を先取りし過ぎただけなんですから!」
「個別解説に入ろう。今回はマイナーな順にやることにしようか。
 最初はエロいことしようとすれば落雷でお仕置きよ!プリティ☆ウィことキャスター:プテサン・ウィからだ」


「プテサン・ウィ。出自はネイティブ・アメリカン伝承…つまりインディアンのスー族に登場する人物でクラスはキャスター。身長172───172cm!? デカッ!? 172cmとかどこの電柱だこの女?!」
「先生! そこは食いつくところじゃないと思います!」
「自分が"りとるまん"なのを気にしてんだね、ぷろふぇっさー?」
「ファック、連中と同様にボッシュートされたくなったらもう一度その口でクソを垂れるといいぞミスター雨生虎之介。すぐさま下水に流してやる。
 ……おほん、では続けるぞ。能力値は筋力D 耐久C 敏捷D 魔力A 幸運A 宝具B。………これは…、驚きだな。超マイナーなのに想像以上にステータスが高いぞ。
 なぜこんなに高いんだろう? 女神だったりしたパターンもある位だから生前は相当の力を持っていたのか?」
「え? 別に普通───でもないですね。彼女ってばキャスタークラスにしては凄く能力値に恵まれてますね先生」
「クラススキルは陣地作成:B と道具作成:C 。道具作成は特に動物の骨や皮といった自然物を利用した器具を作ることに秀でている。だそうだ。こちらは特に語る所がないので固有スキルに移ろう。
 固有スキルは神性:C 魔術:A で自然干渉系の魔術が得意。命の遺産:Bか。この中で一番の注目すべきは命の遺産だ」
「これって初めて出てきたスキルですよね先生?」
「そうだ。このスキルは一風変わっていて、まあ噛み砕いて説明するとキャスターが死ぬ時にマスターに必要なものを遺産として残す、という感じのスキルだ。消滅の時点でプテサンに残っている魔力が多ければ多いほど遺産の質が上がるのにも注意が必要だぞ。
 つまり敵にジワジワと弄られて魔力を削られるよりは、一撃で心臓や首を破壊されて死んでくれた方がマスター的には良いと言えなくもないスキルなわけだ」
「さて、ここまでの解説で質問はあるかね。
 同じキャスタークラスのマスターであるミスターソフィアリ、彼女を見て思うことは?」
「………本音で喋っても?」
「ああどうぞ。是非とも思ったことを素直に訊かせて欲しい」
「では忌憚なく述べさせて頂こうか────誰だこの女?」
「うわああああ! せ、先生ー! 先生ーー! 頭で思ってても絶対言っちゃいけない台詞でしょう今のソフィアリさんの発言は!?」
「いやまあ彼がそう思うのも無理はないんじゃないか?
 なにしろグーグル先生でも情報が殆ど手に入らない位だし、彼女は英霊の中でもマイナー中のマイナーに所属する人物だろうからなぁ。
 皆鯖第七次においても知名度ぶっちぎりの最下位っぷり。というかむしろこれ推薦した者はよくプテサン・ウィを知ってたなと感心したくらいだ」
「フン。こんな未開の先住土人どもなんぞ世界の文明人たる我ら英国人が知っている筈がなかろう」
「弱点らしい弱点は伝承自体が少なくて見付けられなかったが、強いて挙げればその知名度のあまりの低さか。
 そもそもスー族は19世紀半ばには2万人程度の人口だった部族だ。現在は約7万人まで増えているとは言えそれでもあまりに信仰数が少ない。
 こんな少数ではもし仮にアメリカ本国で彼女を召喚したとしても存在の劣化は避けられまい」


「エルメロイ教授。そろそろ宝具解説にも入って頂きたいですな」
「おっとそうだね。あまりキャスターにばかり尺は取れん。
 まずは『受け継がれる灯火』だが……聖杯戦争用の皆鯖にしては変わった宝具を所持してるようだな。カテゴリ的には非戦闘系の宝具、アヴェスターのようなタイプの補助系の宝具かな?
 ただ人の人生の記録を保存し、他者に対して記録を再生出来るという性質上、本来の用途とは違う使用法をすることで悪用出来なくもない。特に特定のトラウマが当たった場合結構な精神的ダメージはなるのではないだろうか。
 まあ確率的に考えればそうそう都合良くその人物のトラウマが当たるとも思えないがね」
「まさに人の振り見て我が振り直せ、ですね」
「やれやれ全く役にも立ちそうもない屑宝具ではないか。これではまだウチの屑キャスターの方が利用価値があるというものだ」
「うわあ……ソフィアリさんったら大英帝国上流貴族にありがちな倣岸な態度と選民思想っぷり。御貴族様は違いますね」
「その通りですマスター!(バターン!)これでもボクは皆鯖全キャスタークラスの中でも最高位の万能性を誇るキャス────」
「誰が出ていいと言った帰れーー!(落とし穴ボタンポチっとな」
「────あああああああああーーー!! あ、アイルビーバーーーーーック!!」
「おほん、軽い放送事故が起きたが先に進めるぞ。二つ目の宝具は『聖牛転輪』。これは変身宝具の類か。変化できるのは伝説で登場した白い聖牛。面白いのはこの聖獣が治癒能力を持っている点だね。
 こういう類の幻想種変身は普通なら攻撃力の方に比重が傾いてるものなんだが『聖牛転輪』の場合ヒーリングが使える。治癒効果は体力・魔力・状態異常の回復。
 体力や状態異常ならまだしも対象の魔力すらも回復してくれる辺りがこの神秘がただの回復能力でないという証か。
 レンジ0ということは自身も回復対象に含まれるのかな?
 ただしどうも有効レンジ内全員に対してこの癒しは効果を与えるようだから使用場所には十分な注意が必要だぞ。でないとあと一息で倒せていた敵を回復させた、なんてマヌケが起きても私は知らないぞ」
「ふむ、白いバッファローの攻撃性能はBランク宝具相当の雷か。平均的な宝具並の攻撃力とは言えど聖牛変身とトータルヒーリングも付いてくることを考えれば目を瞑れんこともないな。一つ目の使い難いにも程があるカス宝具と比べれば大分マシではある」
「………あんまりそんなこと言ってると雷に撃たれて死んじゃいますよソフィアリさん?」
「まあ彼女の聖牛変身宝具はもう一つ重大なメリットがあるんだがそれはまた後で話す事にしよう」
「もう一つのメリット?」


「次はピサールだ。出自はケルト神話。ペルシャ大王ピサールが登場する『トゥレンの息子たちの最期』はケルト三大悲話の一つとされ、ケルト神話の中では割と有名な伝説だろう。
 クラスはバーサーカー。狂化Bで能力値は筋力C 耐久B 敏捷D 魔力B 幸運D 宝具A+か。身長体重や耐久値的にタフそうな奴だな」
「この人も中々マイナーな英雄ですね先生!」
「ピサールはむしろピサール当人よりも彼が持ってる魔の毒槍の方が有名なぐらいだからな」
「なあろーど、それって俺のヘイドレクと同じじゃね?」
「そうだな。タイプ的に彼らは色々とダブってる部分も多い。宝具の方が知名度高かったりするところとか、その宝具がやたら傍迷惑な能力だったりするところとか。……マッドガイに超KOOLと賞賛されてるところとか(ボソリ)
 まあその辺はどうでもいいか。固有スキルは芸術審美:E- だが狂戦士クラスでは無意味も無意味スキルだから次に進むぞ」
「ヘーイぷろふぇっさー、ところでなんでピサールって芸術審美なんて保有してるの? もしかして"これくたーまにあ"?」
「ピサールさんはペルシャの大王だったのでジルドレェさんみたいにきっと魔槍と一緒に宝物も一杯持ってたんですよ雨生さん!」
「ふ~んそういうもんかぁ」
「それじゃ最初は『遮蔽氷鞘』の方から解説しよう。
 これはもう完全にメデューサの『自己封印・暗黒神殿』と同系列の宝具だな。対象の能力封印を最重要事項とした宝具だ。ピサールの伝承からも明らかだが毒槍は常にこれで冷却し封をしておかないと命に関わる事態になるぞ。
 あと『遮蔽氷鞘』で包んだ武器には冷気によるボーナスダメージが追加される。我々魔術師に身近な表現をすれば変化魔術で武器に冷気を付属させたような感じか」
「でも先生、基本的にこの冷気攻撃ってピサールさん以外の人は使えませんよね?」
「ああ使えないだろうな。なんと言っても基本的に毒魔槍の為の冷却能力だ。他の武器に貸し与えるメリットが殆どないし、冷気属性なんて武器に魔術かけとけば代用出来るんだから」
「ってことは本当に完璧毒槍のためだけの宝具じゃん!」
「だから最初にそう言ったろう。状況次第では『遮蔽氷鞘』が単体で活躍する場面も無いとは言わないがそれは相当稀有ケースだ」


「さあさあ先生先生! そんなしみったれた宝具なんてどうでもよろしい! メインディッシュですよメインディッシュ!」
「そうだそうだ早く毒槍にいけー! はりー! はりあっぷ!」
「わかったわかった。ペルシャ大王ピサールの魔の毒槍『屠殺者』の解説に入ろうか。
 この魔槍の何が凄いってもう一次ソースになる伝承からしてもう毒槍のネーミングが凄い。"屠殺者"とか"殺戮者"とかどこの中学二年生なんだ……」
「くぅぅぅうぅううううるっ!! ベェルィィィイィィイイCOOL!!」
「毒槍キタァアアアアアアアアアアアア!!」
「うるさいオマエら! さてこの毒魔槍だがランクがA、種別は対城宝具。レンジ0~99で最大捕捉:1000人というまさに無差別戦略兵器とも言える武器だ。流石にこれは冗談抜きで危険物過ぎるぞ……」
「すげえマジすげえ! バーサーカーも良いけどやっぱこっちのバーサーカーも捨てがたいなあ! 契約したいなぁ!」
「駄目ですよ雨生さん! ピサールさんとは俺が契約します!」
「対城宝具を持つ皆鯖は何人か居たがピサールは極めつきの特例だな。
 皆鯖では基本的に対城宝具のような超火力宝具は格の高い超一流所の英雄が持ってる場合が多いんだが、これはもう完全にピサールが神代出身の英霊である要因が大きいだろう。時代が古くなればなるほど宝具が特殊化していくが、これがその典型例だ。
 これ一本で町一つを滅ぼせる死の武器、まさに神代の"魔法の魔槍"に相応しい」
「くぅぅぅる! 超COOL! マジで伝承に町一つを滅ぼすとか周りの物や街を溶かすとかあるじゃんっ! ホントにすっげー!」
「宝具能力的には遠野秋葉の"略奪呪界"に酷似した熱略奪能力を持つ。が、最大出力…つまり真名解放では本当に灼熱の瘴気が毒槍から放出されるためこの点が熱を略奪するのみなナイチチとは違う。
 多分この毒槍の略奪は『遮蔽氷鞘』から出した時点でオートで発動開始するんだろうなぁ。
 そして時間経過と共にエネルギーの略奪範囲が徐々に広がってゆき数日で最大規模か。街のど真ん中で使われていたらこの段階で既に範囲内は半死都化しててもなんら不思議じゃないな。
 もはや利器型宝具とかそういう次元の問題じゃない。無差別ってことだからピサールのマスターも当然この毒槍の傍にはいられない訳だから…………ん、待てよ?
 コイツをバーサーカーで呼んだのは失敗だったんじゃないのか? ランサークラスで呼ぶ方が良かった気がするのだが…?」
「なんかよくよく考えると熱を略奪して溜めるまでがすげえ大変そう……」
「先生!ところで遠野秋葉さんって誰ですかー? 無い父?」
「ぐぐれ(キッパリ」
「そ、そんなぁ・・・」


「う~む…理性の無いバーサーカーが相方だとなかなかその辺の運営が難しいな。
 毒槍の持ち主の知恵を借りられんとなると、ピサールと魔槍を分離させて毒槍は街中に置いて槍単独で熱略奪を敢行するか?
 しかしそれだと他のマスターや監督役なんかに見つかる危険性が上がるしなぁ……理性があればピサール本人に毒槍を見張らせられるんだが」
「それに毒槍を手放させたらバーサーカーの武器なくなっちゃうよね?」
「あ、あれれ? 意外と運営が難しいサーヴァントだったりします?」
「どうやらバーサーカークラスでピサールを運用したいならマスターには能力的な相性が求められるなこれは。
 おまけに毒槍の担い手が握ってないと暴走する危険性を孕んでいるのにも細心の注意が必要だ。でないと自爆、なんてもんじゃないぞ。核自爆だ」
「あ、そうだ! ところで先生! この毒槍の略奪を遮断する『遮蔽氷鞘』なんですけど、これって人間に対して使えば毒槍の略奪から守れないですか!? この宝具って大釜が原型らしいですし人ぐらい入るんじゃないですか?」
「フラット……あーなんだ、君は相変わらず発想が奇抜だな。まあ私は止めないよ? 冷水だから生身の人間がやると低体温で死ぬかもしれないけど私は止めない」
「やっぱり駄目ですかねえ。あ、でも霊体のサーヴァントなら……もしかして?」
「なあ、ぷろふぇっさー。アンタん所の弟子面白いね。どういう構造してるのか隅々まで解剖してみていい?」
「駄目に決まってるだろっ! あのバカタレがどこでどうなろうと私には関係ないが見知った人間に野垂れ死なれても目覚めが悪い!」
「ちぇっ。しっかしこのピサールってなんかマヌケだよねー。リンゴで額をカチ割られるとかどんだけ打たれ弱過ぎるってのさ。こんな貧弱さで耐久Bとはおかしくて臍が茶を沸かしちゃうよね」
「それはだな、このリンゴは────」
「いいぜトラノスケ。テメエのその問い、このおれが答えてやろう。
 ヘスペリデスの黄金の林檎はトゥレンの息子達ブリアン三兄弟がエリック(償い)として八つの難題を出され、その難題の一つをクリアした際に手に入れた魔法の林檎のことだ。
 この黄金の林檎は"投げると必ず的に当たり、相手を打ち殺した後、手元に戻って来る"ってシロモンでな。
 言ってみれば宝具も同然っていうか下手な宝具よりずっとヤバイリンゴな訳だが、ソレをピサール改めペルシアのピザ野郎は不意打ち気味に頭に食らってこの毒槍を奪われちまったってわけだ。理解したか?」
「すっげーーー! 流石俺のバーサーカー、超賢者! やっぱりバーサーカーが一番だよぉぉ!」
「……………フン!(ボッシュートボタンをポチっとな」
「おっといけねえ、ついつい神域の叡智を物教える先公の前でにひけらかしちまったぜ。あばよ(ヒューーン」
「先生…、なんか、物凄く満足そうな顔で落下していきましたねヘイドレクさん」
「ファック! なんなんだこの微妙な敗北感は! クソッ! ええい次だ次! ジェヴォーダンの獣をやるぞ!」


「ジェヴォーダンの獣。出自は何の冗談か16世紀フランスで実際に起きた事件が伝説化したものだ。クラスはアサシン。クラススキルは気配遮断A+ 。本職でも無いのにこのランクの高さは流石は獣といったところか?
 ステータスは筋力D 耐久E 敏捷D 魔力E 幸運B 宝具C。まあ予想通りな感じかな。能力値はあまり高くは無いがジェヴォーダンの獣はどう考えてもまっとうな英霊にカテゴリされるような奴じゃないから当然といえば当然だ。
 というか反英雄に分類されるのかすら怪しい。切り裂きジャック伝説とか幽霊船フライング・ダッチマンとかそっちの系列の存在かな」
「USA!USA!USA!」
「あー少年、もしかしてそれは未確認生物UMAのことを言ってるのかね?」
「あーそれです遠坂さんそれ、ウマです。ジェヴォーダンの獣は狼っぽいフォルムらしいですけどUMAです。それにしても未確認生物なんてロマンですよね! ねっ先生?」
「ロマン……? ああ海風に揺れる一輪の花のことね」
「それマリンじゃないですか! 聞き間違いにしてもヤバイですって、先生心どころか脳が砂漠化してるんじゃないですか?」
「砂漠……? そういえば最近AAAALaLaLaLaLaie!!してないなぁ(遠い目」
「どうやら日曜朝の平穏を奪われた後遺症が今頃現われ出したようだね……大丈夫なのかこんな調子で?」
「……ハッ! 僕今一瞬寝てた…? え、ええと、どこまでやったかな。
 ジェヴォーダンの獣は英霊というよりは亡霊や悪霊の類ではあるが実際に多数の被害者まで出た立派な怪奇伝説だ。それにしても流石は中世ヨーロッパ、吸血鬼といい本気で何が潜んでるのか分かったもんじゃない」
「この獣は幻想種なのだろうか?」
「さあてその辺りの詳細は私にも分からない。
 固有スキルは自己改造A+。さてさてこいつはまたえらく厄介な怪能力を保有しているものだ。ここまでくるともう自己改造というよりは進化や完全擬態だな。対象の頭部を捕食することで食った相手そのものになれる能力だ」
「凄いですねぇこの能力。オクトパスとかに他の生物のモノマネをして外敵から身を守る動物はいますけどこれは……」
「昨日まで隣に居た誰かがいつの間にか違う誰かに成り代わっている。なんとも怪奇…否、ちょっとした恐怖だね」
「ですよねですよね遠坂さん! 怖いですよね! すっげーホラーチックですよね!」


「もしも仮にこの獣に自分の身近な人間に擬態されでもしたらどうにもならんぞ。外見のみならず記憶や魔術回路などの中身まで丸コピーされるから本物なのか偽物なのかの見分けが容易ではない。
 ジェヴォーダンの獣がアサシンクラスで無ければ帯びている魔力で見抜けたりしたのかもしれんが生憎コイツは気配遮断持ちだから魔力の感知による判定には期待できないだろうし…。
 これは魂や細胞そのものを鑑定するなどの魔術的な判別が必要になってくるな」
「あの先生? その魂や細胞の鑑定を出来ないマスターは?」
「食われるしかないんじゃない?」
「えらくあっさりとした結論だね……。それにしても随分と恐ろしいアサシンがいたものだ」
「所有宝具は『畏怖されし魔獣』。この宝具もまたスキルと同様に超面倒臭い怪能力だ。宝具と言うよりはジェヴォーダンの獣自身が備えている能力というかジェヴォーダンを生み出す能力というかそんな感じのものだ。
 特長として二つあるが、一つがいわゆる不死身能力。マスターの脳内に魔獣の現界核を移植しこれを破壊されない限り死なない。
 つまり一度この宝具を発動させてしまえばマスターが死なない限りサーヴァントも死なないという、ミス遠坂が本編で言ってた逆バージョンのタイプなわけだ」
「ミス遠坂…? ロード・エルメロイ二世は私の娘と面識があるのかな?」
「娘と言いますか孫の孫娘みたいなもんなんで遠坂さんは気にしないでくださいね!」
「…??」
「ちなみにこの再復活では以前に自己改造で得たモノを全て失う。もしかしたらコイツはジェヴォーダンの獣Aやジェヴォーダンの獣Bみたいな別物なのかもしれないな」
「ふむ、実際伝承や記録でも複数の魔獣が目撃されているようだね」
「そしてもう一つが魔眼的な視線を媒介にした異能。無論直接接触でも発動する。
 眼と眼が合った瞬間に恋に落ちるなんてフレーズは耳にタコが出来るくらい使い古されたフレーズだが、まさか眼と眼が合った瞬間にあの世に堕ちる奴がいるとはなぁ……しかも内側から脳を食い破られて。
 殺したと思ったのに生きてたり、脳内を食い破られて殺されたりとコイツは存在がつくづくホラーだよ」
「視線が合うだけでアウトとか…ひぃぃぃいいフラットくん怖いっ!!(抱き付き)先生俺を守っ───べぶらぁ!?」
「フラット、私から可愛い教え子である君に助言だ。機嫌が悪い時の私には一切触れるな。一体誰のせいで機嫌が悪いのかは語る必要はあるまい?(ドドドドドドドドドド!」
「ほ、骨身に染みて、理解…しました……せんせ……ぐふっ」


「この怪能力を防ぐ絶対条件として絶対に独りにならないことだ。魔獣か自分を第三者が知覚してさえいればこの異能は成功しない。
 気配遮断持ちのジェヴォーダンの獣を先に発見し知覚するのはあまり現実的とは言えないため、最も手軽かつ確実なのは常時誰かに自分を見張らせておくことが有効な対策として挙げられる。
 サーヴァントに自分を見張らせるのも悪くはないがやはり別の者に見張らせる方が懸命だろう。サーヴァントが見張り中に背後から直接攻撃されて万が一にも倒されたら本末転倒だからな」
「さて結論を言うと今まで解説してきた皆鯖アサシンの中でぶっちぎりのキワモノにして最悪のアサシンだ。戦闘能力そのものはさして大したことは無いが能力が怪異なモノが多く訳が分からない内に死んでるというホラー殺人小説展開に陥り易いのに注意したまえ」
「実態がよくわからない正体不明の殺戮者って嫌過ぎる響きですよね!」
「このアサシンと契約したマスターは下手な行動はせずにじっと隠れ家にでも潜んでるのが一番良い戦略かも知れんな。
 逆に言うと彼らと敵対するマスターはジェヴォーダンの獣の排除よりマスターの捜索と発見が勝負の鍵になる」
「彼らとの戦いは一風変わった戦いになりそうだな。しかしまあ私のマスター遠坂殿は魔城の弓兵の正体を見破り見事撃破せしめた非常に優秀な魔術師であるからして何も問題は無────」
「君はそんなにマスターが好きかね?(ポチっとな」
「───い。さて邪魔をしたね。ではまた会おう遠坂殿!(親指立てながら爽やかに退場」
「………先生、俺らファイターさんの眼中にありませんでしたよ」
「グギギおのれ、マスターを褒める為だけに戻ってきやがったなアノヤロウ。
 あー、私もどっかのデカくて図々しくて自由奔放過ぎるライダーよりもデカイのは我慢するからマスターを立てる事を知ってるどっかの謙虚なファイターと契約したいなあーどっかに落ちてないかなー」
「おっとファイターはやれないぞ? 私が契約した優秀なサーヴァントだからね」
「くそっどいつもこいつも…。
 とまあここまで獣を驚異として語ってみたが実はこのジェヴォーダンの獣には一つ明確な弱点…というか欠陥のようなものがあったりする」
「え、それ本当ですか先生?」
「ああ、実は弱点としか思えない特徴あった。なぜだかは分からんがこの魔獣はウシが苦手だ」
「ウシ? ウシってあの牛ですか?」
「そうだ。どうもジェヴォーダンの獣はウシを避ける傾向があるようで実際残っている伝承だと魔獣の攻撃順位が人間>>>>>>牛なのは眼に見えて明らかだ。牛の群を狙わず人を襲ったり、また人を襲おうとして牛に追い返されたりもしている」
「ウシ……そういえば牛と言えば──」
「その通り。まるで狙ったかようにこの皆鯖第七次には聖牛に変身するプテサン・ウィが居る。これがさっきキャスターの解説で語った彼女の持つメリットだ。恐らくジェヴォーダンの獣は『聖牛転輪』を使ったプテサン・ウィには相性的に勝てまい。
 彼らがこの驚異的な暗殺獣の天敵になるのではないかと私は予想している。では次は……、アタランテにするかな」


「アタランテ。出自は世界中に知れているギリシャ神話に登場する高名な女傑で狩りの名手だ。ギリシャ神話群でも特に名高い伝説の一つアルゴナウタイの冒険にも参加したという逸話も持つ世界的にも知名度の高い超一流所の英雄である。
 クラスは当然アーチャー。クラススキルは対魔力と単独行動。ランクは両方共C。ステータスは筋力C 耐久D 敏捷A+ 魔力E 幸運E 宝具C。"存命する人間の中で最速"と讃えられた俊足の持ち主だ。敏捷が非常に高いのは流石か」
「超一流所の英雄つってもステータス微妙じゃないか。これで一流とは笑っちゃうね」
「英霊のステータスにも数百レスを超えた様々な事情があるのだよ。例えば大したことないマスターと契約して弱体化したりとかね(チラリ」
「契約したりとかですね(チラリ」
「なんか物凄く癇に障る視線を感じるね。なに? 言いたいことがあるならはっきり言えよ!」
「さあて、保有スキルに入ろう。(華麗にスルー)
 保有スキルは伝説でも語られてるように男性を惹きつけてやまない美貌の具現である魅了。五感が発達し野生の獣的な感覚を得られる野性。そして戦闘開始ターンに主導権を握れる先制攻撃Bだ。
 先制攻撃はこのランクならかなり高い確率で主導権を握れるんじゃなかろうか? 戦闘開始時に主導権を握れればそのまま戦うのも逃げるのも選び易いから飛び道具が主体となる弓兵クラスには頼もしいスキルだ。
 保有してるスキルの系統が見事にバラバラで多種多様な場面で活躍が期待できるだろう」
「綺麗な女の人ですねアタランテさんって。これが恋?」
「いやそれはどう考えても魅了の呪力だろうフラット」
「戦闘時には先制攻撃が役に立って、非戦闘時には魅了を上手く活用し、戦闘も非戦闘時にも使えそうな野性で補助か。
 アキレウスの親父ペレウスと格闘試合して勝ってるから接近戦もいけるクチなわけだ。なるほど、女だてらに意外と豪傑だね彼女」
「だから一流の英雄だと言っただろうミスター間桐。
 ギリシャ神話で勇名を馳せた英雄達の中でも上位に来るであろう戦闘能力はお墨付きだぞ」
「ちっ、この女上位の実力者かよ。糞爺もどうせならあんなマイナーな鈍足移動要塞の駄亀弓兵じゃなくてこっちのオンナの触媒を見つけてくれりゃいいものを……色々な用途で使えただろうにさ」
「…………うわぁ流石のフラット君もドン引きですよこの下衆男!」
「………所詮自己責任だし私は別にヤるなとは言わんがせいぜい事後に殺られんようにするのだな。彼女は押し寄せた多くの求婚者を命懸けの徒競走で射殺した経歴を持つ女傑だ。性欲丸出しでアタランテと接しようものならどうなるかなぞ想像に難くない」
「…………そ、そう言えば俺は暴力的で野蛮な女は好みじゃなかったんだったな、ハ、ハハハ…宝具に進んでくれていいぞ教授」


「そうか、では宝具の解説に入ろう。アタランテの弓宝具『先駆け果たすは乙女の頸弓』だ。能力内容的に考えると利器型かな? 能力は実にシンプルでアタランテの敏捷数値を矢の射出速度に加えるというものだ」
「うわっなんじゃそりゃ。かつて無いほどに微妙な効果の宝具だねまったく。こんな雑魚い宝具でよくもまあギリシャ英雄の中でも上位の実力者なんて言えたもんだよ。
 これなら本体はミソカスだが宝具だけはやたら強力なウチの駄亀弓兵の方がまだ使える」
「ミスター間桐、この手の宝具を侮るのは感心しな───」
「がはははーっその通りじゃ燕二! こんなしょっぱいアタランテの弓矢宝具なぞ鈍足のワシにも当たらんてーー! ガハハハハ! なんちゃっ────デ!?(スコン! ばたり」
「うわああああ! オイ今どっからともなく何かが飛んできたぞ!? しかもアーチャーの額に矢が刺さっ……てか死んでる…!?」
「あーあー、だからつい今私が侮るなって言ったばかりだったのに…。
 この手の宝具は能力が単純明快であるが故に攻略法が基本的に無い。真っ向から戦って勝つしかないんだからとても油断なんてしていいものじゃないんだ。
 特にこの弓矢は地上最速と讃えられたアタランテの敏捷が矢の速度に加わっているんだぞ?
 数ある弓矢宝具の中でも最高位の発射速度なのが予想されるんだから普通に考えればまともに矢が視える筈がなかろう。ましてやアタランテは先制攻撃スキル持ちだ。
 油断なんてしてたらその瞬間にも名狩人の彼女にアサシンよりも鮮やかな手並みで狩り殺される。というかもう既に約一名殺されてるしね。私が退場させるよりも速く」
「先生、もしかして『先駆け果たすは乙女の頸弓』って 第一印象に比べて実は強力な宝具なんですか?」
「アルテミスが野に放った巨大な魔猪カリュドーンを狩ったのは特に有名な伝説だろう。なにしろこの魔猪はギリシャ全土から集まった屈強な英雄達に犠牲者を出しながら暴れ狂った魔性の怪物だ。こんな危険度大のバケモノを相手に出来る弓矢が弱い訳なかろう」
「それもそうですね」
「あ、そうだフラット。そこの若親父の死体はダストシュートに放り込んでおいてくれー(至極やる気なさ気に」
「ハーーイ(ぽぽぽぽーーい」
「おまえらさり気なくドライな連中なんだな」
「そして次に『自己封印・百獣女王』の解説だ。これは一言で言えば最後の切り札だな。一度使えば後戻り出来ない完璧な片道切符。効果は大地母神キュベレーの聖獅子にアタランテの姿を戻すというもの。
 これだけの情報では聖獅子の詳細は読み取れないがまあ十中八九パワーアップするだろうと予想される。獅子になった彼女らにキュベレーの戦車を牽引させたなんて逸話もあるくらいだ。征服王のゴッドブルみたいになってるのが想像付くからな」
「それにしても可哀相ですよねアタランテさん。
 別に結婚したかった相手でもないヒッポメネスさんに女神便りの黄金林檎作戦で競争に負けちゃって結婚して、しかもヒッポメネスさんが女神アフロディーテに林檎のお礼をしなかったから女神の怒りを買って最後にはキュベレーに獅子にされちゃったんでしょう?
 完全にとばっちりのいい迷惑じゃないですか」
「挑戦者を尽く射殺した彼女も彼女だが美人薄命っぷりには少し同情する。美形が得するとは限らないという例だな。では次の坂田金時に移ろう」


「熊太ろ───おおっと間違えた、坂田金時だ」
「皆さんにも一応言っておきますけど今回は熊太郎さんがメインじゃないですからね? 違いますからね!」
「出自は日本の童話『金太郎』などに登場する日本でも有数の知名度の高さを誇る英雄だ。現代日本でも金太郎の名を知らぬ者はそうそうおるまい。世界的に見れば一つ前にやったアタランテの方が有名なのだろうが東洋に限れば坂田金時に分があろう」
「キンタロウ? いいや聞いた事も無い名だ」
「ゲドゥさんは日本人じゃないでしょう!」
「金太郎と言えば桃太郎と並んで有名な怪力童子だ。下手をすると坂田金時の名より金太郎の幼名の方が知られてるぐらいだし、ましてや彼の殿である日本有数の退魔英雄で酒呑童子退治で勇名を馳せた源頼光よりも知名度は高いかもしれない。
「上司より有名とは皮肉なものだ。それを知った時のライコウとやらの顔を是非拝んでみたいものだな」
「もし坂田金時を召喚したら成人体か少年体のどちらかのパターンで喚べるかも?だ。そっちの趣味のあるお嬢さん方はコイツを召喚してみるといい」
「フィン・マックールさんや李書文さんみたいなタイプかもですか?
 前者が爺と青年なのに対してこっちは子供と青年でどっちも若くてピチピチとかお得ですね!」
「魑魅魍魎が跋扈する平安時代。鬼退治で活躍した英雄で源頼光の誇る頼光四天王の一人である坂田金時の戦闘力には十分な期待をしていいだろう。
 クラスはライダーでクラススキルは対魔力B と騎乗C。ステータスは筋力A 耐久B 敏捷E 魔力B 幸運C 宝具B。
 うん実に良い能力値だ。完璧に筋耐重視の重戦士系で攻撃力防御力が非常に優れている。敏捷が最低値なのがネックだがまあ特に問題あるまい。他で十分補えているだけの性能がある」
「しかし平安時代ってとんでもない時代ですよね! 玉藻さん(大妖狐)といい酒呑童子さん(大悪鬼)といい崇徳上皇さん(大天狗)といいなんだってこんなピンポイントに日本の三大怪物が揃い踏みしてるんですか!?」
「ヒャッハー! さすがヘイアンは地獄だぜーフゥハハ! ………オホン、すまん少し取り乱してしまった…(ポッ)
 ま、まあとにかくそういう背景のある時代の英雄だから坂田金時が強力な英霊なのは疑いようもない。東洋西洋に限らず基本的に中世の英雄は世界的にも名を馳せた輩が多い」
「我々の組織教会に関係する英雄も高名な者は中世時代の者が多い。シャルルマーニュを中心に第一回十字軍のゴドフロワ・ド・ブイヨン、獅子心王リチャード一世」
「この時代は騎士系の英雄…セイバーやランサーに該当出来そうな人が沢山ですね」
「さて坂田金時の固有スキルは動物使役B。神性C。魔力放出B。
 動物使役は山育ちなだけはあってか良い意味でお山の大将じゃないか。魔力放出スキルもありがたいな。これで元が低い敏捷値を一瞬だが補えるし、ただでさえ高い怪力をさらにブーストがかけられる強みもある」
「やっぱり欠点を補うべきですよね! ゲドゥさんもそう思いますよね!」
「使い捨てる魔力で弱点を補うか、長所を伸ばすかはマスターの采配次第といった所か。
 悪いが私なら長所を伸ばす方に比重をおく。短所は伸び悩むが故に短所なのだ。伸びないものにコストをかけるだけ無駄。エミヤやクーフーリンの幸運値を頑張って上げても大して意味はないぞ少年」
「ぐぅっ……確かにエミヤさんの幸運は改竄するだけ無駄でしたけど……それでも俺は…!」


「それじゃ宝具解説だ。まず『雷神鉞』からやるぞ。金太郎といえば近年では、鉞担いだ金太郎~♪なわけだがこれはもう完全に常時発動してる利器型の宝具だな。
 アタランテの弓と違って利器型である事に疑いの余地もないシンプルさだ。逆にシンプルすぎて吃驚したよ」
「この大斧って攻撃の度に雷撃が発生するんですか!? 見た目はすっごくカッコイイじゃないですか!」
「宝具ランクも単純明快な能力の割には思ったよりも高いようだし、雷神由来の稲妻だから案外強力な雷が放出されるのかもしれないな。 
 あと坂田金時本人が一流のパワーファイターだから十分に致命傷を与えられる筈だ」
「さあて先生、いよいよ来ましたね……皆鯖のアイドルが……!」
「なあフラット? 君はさっきメインは坂田金時だと言ってなかったか?」
「私も彼がそう言ってるのを耳にしたな」
「何言ってんですお二方ッ正気ですか!? 一皆鯖の金太郎さんと皆鯖生粋のアイドルとじゃ熊太郎さんに軍配が上がるに決まってるじゃないですか! 熊太郎さんが一体どれだけの皆鯖住人の期待と夢を一身に背負った幻想で成り立ってると思ってるんです!
 体は夢で出来ている。血肉は獣《くま》で、心はニンゲン。幾たびのSS超えて不滅。この体は無限の夢で出来ていた。ですよ!」
「あー…もう好きにしてくれ付き合ってられん…。
 それじゃ『猪鼻嶽大王熊』通称"熊太郎"の解説だ。まあ知っての通りあの金太郎と相撲とってた有名な大熊が英霊化したのがこいつだ。 偉業を為せば動物も英霊化するので熊太郎も十分その資格はあるだろう。
 肝心の性能の方だが……なんと二足歩行する。しかも何の冗談なのか相撲や柔術のような組み合い系の体術まで使いこなす。……いやいやコイツ熊じゃないだろう!? 絶対着ぐるみが何かで中に人間が入ってるだろう!?」
「馬鹿言わないでください先生! 熊太郎さんの中に入ってるのは美味しい上質な熊肉と夢や浪漫なんですぅッ!! 人が入ってるなんて異説俺は絶対に認めないぞぉぉうおおおおー!!」
「さらにこの似非熊は生意気にも騎手無し状態でも単独での活動が可能だとさハハハ。
 また騎乗した状態なら坂田金時の固有スキルの影響を受けられるため動物使役や魔力放出での強化が可能だ。魔力放出で馬鎧ならぬ熊鎧でも用意してやるといいさケッ」


「解説してみて改めて確信した、違う。コイツは絶対に熊じゃない。熊に似たUMAかナニカに決まってる(ぶつくさぶつくさ」
「いいえ絶対に違いません! ミッキ○マウスだって着ぐるみじゃないオリジナルが実在してるんです!」
「そうか(無視)この坂田金時の最大の特長は騎兵でありながら騎乗物宝具と分離した状態で戦える点だ。
 これはライダークラスでも非常に珍しいタイプだな。いや騎兵って普通騎馬に乗ってるから騎兵なんだろうに…」
「ライダーのサーヴァントといえば基本的にウチのバカのように戦車を乗り回して戦う場合が殆どだと思うが、ましてや騎乗物自身が自立行動するなぞ予想外もいい所だな。
 おかげでこのライダー、単純に計算しても坂田金時にはサーヴァント二体分の戦力がある事になる」
「その通りだゲドゥ牧───」
「呼ばれた気がしたからこの大王ラメセス戦車に搭乗し華麗に参上!(ドゴーーーン!!」
「うわあっ!? こ、講堂の壁が……歴史ある建物が……」
「世にも珍しい珍獣が此処に居ると聞いてな。それに下々の者もそろそろ俺様の美し~~いご尊顔を拝みたいだろうと思いわざわざ足を運んでやった、たっぷりと有り難く思え。それで熊鍋の材料はどこにいる? おいそこの見知った牧師、熊はどこ───」
「………………(ポチッとな」
「───だ? ぼ、牧師ぃぃぃぃぃ!!(落下)貴様無言でボタン押すとはどういう了見だぁぁーーー、だぁぁぁ、だぁぁ(エコー」
「よし(ガッツポーズ」
「マスターがサーヴァントをポイなんて今までに無いパターンですね……」
「ファック! さっきからぞろぞろと連中の侵入を許して! うまい棒五本で警備に雇った自宅警備員は何をしてるんだ?!」
「先生大変です! 自宅警備員さんが自宅警備員だから何もしてくれません!」
「ならもういい! フラット、ヴァゼット先生改めバゼット女史を呼んで来い! 警備員諸共に馬鹿どもを鉄拳排除させろ」
「ラ、ラジャー! それと自宅警備員さん逃げてー!」
「ところで弱点はないのか?」
「パッと目に付いた気になる点は坂田金時の死因が重度の熱病だったことだ。
 対魔力がBと高いとはいえ対竜魔術なら対魔力Aでも通るアルトリアのようにもしかしたら熱病を患わせる類の呪いなら効くかもしれないな。
 呪術が得意な魔女系のキャスターは一度くらい試してみる価値はあるだろう。
 さてと次に行くか。最後に残った本命の二人だが……まず孫悟空をやろうか」


「孫悟空。えーと出自はDRAGONBALL EVOLUTION。クラスは3-A。内気で苛められっ子な高校生の孫悟空は────ん?」
「あれ? 孫悟空って確か西遊記に登場する頭に輪冠付けた猿の妖怪じゃなかったかしら?」
「先生それ資料に多大なる誤りがあります! グラップラーのサーヴァントカカロットは…っていうかハリウッド版はドラゴンボールとしても誤りがありますよ!」
「…………(ジト~」
「おおっと!? いかんミス沙条が睨んでいる、テイク2だ。
 孫悟空。出自は中国四大奇書の一つ西遊記。
 四大奇書とはサイボーグ武将呂布や人工対軍宝具を開発した超軍師陳宮で御馴染みの三国志の歴史小説『三国志演義』やゲーム『幻想水滸伝』でお馴染みの『水滸伝』とそのスピンオフ作品『金瓶梅』、そして『西遊記』からなる類稀な名書物だ。
 まあ創作書物が出典だということからも分かるように孫悟空は実在した存在ではなく空想上の英雄である。
 とはいえ別に英霊に実在や架空の線引きは無意味だ。人間に確固たる存在として認識されていればそれでカタチを持つのだからね。むしろ実在してても人に忘れ去られていれば存在は劣化する。
 そういう意味でも孫悟空の知名度は世界的に非常に高いと言えよう」
「先生が言ってた皆鯖七次の本命その一ですね!」
「正直なところ孫悟空は人間ではないからその時点でヒトより性能が上…というかもう幻想種みたいなモノだなこいつは。
 クラスはランサー。クラススキルは対魔力C。固有スキルは仙術A、千里眼B、怪力A、神性A。能力値は筋力A 耐久B 敏捷A 魔力B 幸運C 宝具Bっと。ハイもう文句の付けようが無いほどの超弩級の廃人スペックだ。
 さらにおまけとばかりに孫悟空当人は数多くの魔を降伏し、最終的に仏にまでなった経歴を考えるとその実力はもはや英霊の中でも最上位と言っても過言ではないのではなかろうか?と思うほどの実力者だ」
「あーあーどうせなら金太郎の方に参加したかったなぁわたし」
「文句を言うんじゃないランサーのマスターだろう君は。先に断わっておくが何も私は好きで日曜朝の貴重なお楽しみタイムを潰されてまでこんな授業をやりたいわけではないのだからね? その辺の思いやりを持って貰いたいものだ。でないと先生泣いちゃうぞ」
「教授、男性のブリっ子は結構ですのでとっとと先に進めてくださいね?」
「お茶目なジョークも分からんとはやはり日本人は最悪だ………この娘もどこぞのあかいあくまと同じ匂いがする…わたしの平穏を邪魔するあくまの臭気が…」


「まあいい、孫悟空は保有スキル数がやたら多いのでちゃっちゃと進めよう。ん~怪力や神性の説明は別に不要だろう?
 千里眼BはCランクの千里眼の効果に加えて透視能力が付属する。これは良く使われる千里を見通すような高視力のことではなく、遠い場所の出来事を知れる本来の意味での千里眼だ。
「辞書には、遠い所の出来事や未知の物事の存在などを直感的に知りうる超能力…とありますから、なるほどこの辺りがAランクの未来視成分になってるのかもですね!」
「こんなスキルを持ってられたら逃げるのも隠れるのも無理じゃない」
「孫悟空相手に逃げ隠れするのは相当ハードルが高いだろうな。おまけに孫悟空は高度な仙術使いだし。
 その仙術にしてもどこぞの魔道書持ちや悪魔召喚書のキャスターよろしくこれまた何でもござれだ。
 分身の術や金縛り、変化、筋斗雲による飛行等、仙人に弟子入りしてほぼ全ての仙術を習得してるようだな。
 うん、こりゃ駄目だ。仙人が出てきた時点でもう駄目だ。諦めてそこで死合終了しろ」
「せ、先生諦めないで(キャス狐さん風に)──痛だだだだだだだ!! すいませんすいません! 沙条さんすいません!」
「うん、すっきりしたから許してあげるね」
「せ、先生ぇ……女子に虐められましたぁグスン」
「今のは君が悪いなフラット。ミス沙条がやらなきゃ私がヤっていた。むしろ彼女は慈悲深いくらいだぞ。ほっぺたをつねるだけで済ませてくれたのだからな」
「………………………。(一体何をされてたんだろう…? 先生キャス狐が可愛いからってルート百回は周ったとか豪語してたけど」
「強い!万能!で笑ってしまうぐらいどうしようもないが、弱点らしい弱点といえば────」
「尻尾です! 尻尾を握ればいいんですよ先生! 尻尾を強く握れば梧空はヘナヘナと顔が濡れて力が出ない状態になります!」
「孫悟空の頭に装着してある『金剛圏』くらいか?(完全無視)
 この輪っかは三蔵法師が孫悟空の脱走防止に使ったもので、"緊箍呪"という呪文を唱えると頭の輪っかが絞まって頭痛いよ!となる礼装なんだが……これ三蔵法師以外の者でも使えるのだろうか?」
「でも仮に呪文が効き目あったら凄い弱点になるわよね。戦闘中に頭痛とか弱体化は避けられないだろうし」
「孫悟空と契約するマスターはその辺にも一応気を付けておいた方が……多分無理だろうなあ。見た目でまず確実にバレるよなぁ。頭に輪っか付けた二足歩行の服着た人語喋る猿とか呂布以上に正体バレバレだろう……」
「ええ同感です、わたしでも一目で分かると思う」
「いっそ戦闘能力の高さに開き直ってみるのも一つの手かもしれんな。私としては正体隠すのに労力を費やすよりも、暴れん坊な気性をしてる孫悟空を上手くコントロールする方に労力を割いた方がいい気がしてきたよ。三蔵法師ですら始めの頃は手を焼いたからな」
「皆鯖第七次では孫悟空さんが一番扱いが難そうな感じですよね」


「さて宝具についてだが、『如意金箍棒』はこれはまあ有名過ぎて詳しく語るまでも無いだろう。
 まあ一言で説明すれば"伸びろ如意棒!"だ。能力はそれ以上でもそれ以下でもない。
 まあ尤も、重量が8トンなんて馬鹿げた重さをしているのだから棒というよりはハンマーという認識を持っていた方がよかろう」
「伸びる棒……なんかディートリッヒさんが巨人から手に入れた魔剣『不尽の巨剣』に似てますね先生」
「ああ、だが伸縮という点では圧倒的に『如意金箍棒』の方が優れていると言えよう。なにしろ伸縮可能な長さ太さに上限下限が無いときてる。
 一見すると孫悟空の『如意金箍棒』は非常に地味な宝具に見えるが侮るなんてとんでもない。無限に伸縮するということはそれこそ使い方も無限に作れるということだ。
 掌よりも小さいサイズにして握り込んでしまえば敵に武器を装備してない風に見せかけ不意打ちする事も出来るし、大樹よりも太いサイズにすれば弾除けの壁にする事も出来る。
 おまけに仙術によって孫悟空自身も『如意金箍棒』も数を増やせるからハンニバルのような包囲殲滅戦法を取る事も可能。
 さらに千里眼の透視と筋斗雲飛行と如意棒の無限に伸ばせるという特性を組み合わせれば敵の数キロ先から如意棒による超長距離狙撃が可能になるし、
 聖杯戦争度外視で最悪の使い方をすれば深山町の面積よりも如意棒を大きくして上空からプチッと──────ああ考えただけでも恐ろしい。
 私はあまりこういう単語の乱用は好きではないのだが……敢えて言おう、チートであると!!」
「チート・ジオン!」
「鯖講座やる前は孫悟空って偉名の割には結構地味なサーヴァントだなあって思ってたけどいざ分析してみると全く全然微塵もそんなことなかったわ……こりゃ駄目だ」
「く、熊太郎さんなら…熊太郎さんなら華麗なSUMOUで何とかしてくれますよ!」
「あのクマモドキでもなんとかなると思えんが…というか猿対熊の構図になるのか…。
 ここは"緊箍呪"の呪文で『金剛圏』が起動するのに賭けた方が……いや作戦を練ってマスターを排除するのが最も現実的か…?
 ────ん? 講堂の外が妙に騒がしいな?」
 "───うおっ!? なにゆえ拙者に殺気を向ける!? 御主は何者ござるか、名を名乗れい!"
 "私はバゼット・フラガ・マクレミッツ、警備員です。ロード・エルメロイ二世より侵入者をボコって排除するだけの簡単なお仕事を請け負いました。職務怠慢な警備員諸共に貴方達を撃退しろと"
 "なるほど新任の警備員が配置されるという話は御主でござったか。されど拙者はそこを押し通るぞ────出番のために!"
 "────不意打ちフラガラック────!!!"
 "ちょ待─────(ドッタンバッタン)"
「…………………」
「あー、えーと、なんていうかウチのランサーがゴメンナサイ」
「流石はヴァゼット先生改めバゼットさん! 頼もしい限りですね先生!」
「これで安心だな。さて最後はエンキドゥだ。こいつも本命その2の実力者だぞ」


「エンキドゥ。出自は世界最古の叙事詩であるギルガメッシュ叙事詩に登場する英雄王ギルガメッシュの唯一の好敵手にして親友だ。
 日本国内での知名度はともかくとして、もはや皆鯖のマスター候補の諸君でこの名を知らぬものはおるまい。
 ギルガメッシュとの決闘で引き分け、神森の番人フンババ、天牛グアンナを退治した文句のつけようもない最古の時代の大英雄」
「キターーーー!! マジチート王のチート親友キターーー!!」
「騒がしくってよ、お静かになさいな」
「う、ゴメンナサイ」
「クラスはセイバー。クラススキルは対魔力Aに騎乗A-。ステータスはほぼギルガメッシュと同等の筋力B 耐久B 敏捷B 魔力B 幸運A 宝具EXだ。孫悟空にも引けを取らない欠点の無い素晴らしくバランスの取れた能力値ではなかろうか」
「確かこのエンキドゥさんは四月馬鹿企画のFakeエンキドゥ仕様でしたっけ?」
「私の記憶違いでなければそうだった筈だ。なので固有スキルもFakeの劇中を意識したスキルになっている。
 言語理解C 気配察知A+ 原始の歌Aの三つだ。
 鳥獣の言葉を理解する言語理解は野性味たっぷりな…というか獣臭い皆鯖七次では出番もさぞ多い事だろう。
 次に気配察知。これは多分初めて解説するスキルだったかな? まあ名称通り気配を感知する能力な訳だが、意外と効果範囲が広くフィールド上にいる生物の気配感知から、戦闘時に敵の攻撃の気配を察するといった事まで様々な場面でその恩恵を受けることが出来る良スキルだ。
 ちなみにエンキドゥのランクなら数キロ離れていても気配を見つける事が出来るので突然の敵襲を察したり、マスターが攫われた場合でもすぐ捜索出来るなんてメリットもある。
 またこのスキルのもう一つの利点として気配遮断中のアサシンにさえ場合によっては発見出来ること。A+なら同ランクの気配遮断も判定次第によっては見破れるかもしれん。なんというアサシン泣かせなサーヴァントとなんだ」
「これじゃエンキドゥさんに通常の暗殺や奇襲は通用しませんね先生。それこそ攻撃の気配や殺気が無いような攻撃でもないと」
「はははは、そんな攻撃があってたまるか────とかつては笑い飛ばしていたなぁヤツが現われるまでは」
「書文師範反則過ぎワロタ」
「あのレベルの奇襲・暗殺じゃないとまず通らんだろうな。とは言っても気配遮断中の気配すら場合によっては感付いてくる以上は超中華拳法でも安心は出来ん。
 前回の孫悟空の解説で出した如意棒狙撃なんかの超長距離攻撃の類はまず効かんだろうな。距離半ば辺りでもう感付かれてる可能性が高い……というより双方の距離次第では最悪狙撃にスタンバった段階でバレる可能性まであるから洒落にならん」


「今次の面々は思ったよりもずっとハイレベルのようね。ローランではなくエンキドゥにしておけばよかったわ」
「アインツベルンさん、それローランさんが聞いたら泣きますよ?」
「別に構わないわ。いいえむしろ泣いて反省すべきね彼は。アインツベルンが召喚した騎士であると言う自覚がまるで足りてない。あのような魔術師としても最下位の娘を主だなどと──(グチグチグチグチ)」
「あ、あの先生…? 超絶淑女である筈のアインツベルンさんが…ぐ、愚痴を………(ヒソヒソ」
「フラット、君はしばらく彼女の愚痴に付き合え。これは命令だ。それと絶対に愚痴の内容に一切反論するなイエスマンで同意し続けろ、いいな?
 おとなしいタイプにプッツンされて暴れられでもしたら後が面倒だ。ガンダムWで温厚な奴がキレたら如何に面倒臭いかを私は学んだよ(ヒソヒソ」
「わ、わかりました……」
「貴方聞いていて!?」
「は、ハイィィ! 悪い子ですよねローランさんは! 基本アホの子ですし!」
「そうなの、そこが問題なの。物凄く扱いづらいわ」
「さて、スケープゴートはあいつに任せて先に進めるか。録画を見なくちゃならんしな。
 原始の歌。これは現状エンキドゥの専用スキル状態となっている。
 心身を癒す歌で、ステータス異常の回復と体力を少回復させる効果を持つ。どことなくコストパフォーマンスが良さそうな印象があるが魔力は使用するんだろうか?
 低コストならガンガン活用していきたいところだ」
「そうなんですかぁ、それは本当に…大変だったんですね…うっ、うう…!(マジ泣き)」
「フラットの奴本気で同情してるじゃないか………適当に相手するだけで良かったんだがなぁ。まあどうでもいいか。
 そしてエンキドゥを最強足らしめている宝具が『万象輪廻す終焉の泥』の存在だ。これは駄目だ反則だ。英雄王とは違うタイプの英雄殺しだから真っ当なサーヴァントではまず勝ち目がない」
「ロードエルメロイ二世。真っ当なサーヴァント、とはどういうことかしら?」
「それはこの鬼畜宝具の能力と一緒に説明する」


「まずこの『万象輪廻す終焉の泥』の能力だが、存在自体が神の宝具と呼べるエンキドゥに相応しい超抜能力だ。
 性質は利器を不要とする太古世界の再現。生物を除いた武具や装飾品や宝具など───つまり俗に言う"道具"に分類される物全てを無力化する宝具だ。
 ようするに今から道具の使用禁止な!というのを相手に強要する宝具なのである。
 この時点で分かっただろう? 英雄とは宝具とセットの存在。基本的にどんな英霊でも聖剣や魔槍や神弓や愛馬に魔道品などを宝具として所持している。
 エンキドゥが弱い英雄であるのならともかく彼は切り札が封じられたような劣勢で勝てる格の英雄ではない。
 故に彼は英雄王とはタイプの違う英雄殺し足り得るというわけだ」
「先生……この宝具ってチートって言葉も虚しくなるほどチートですね。戦いようがないんだから問題外じゃないですか!」
「おまけに常時発動している異能だが任意で効果を及ぼす対象を除外可能という部分がエグイ。
 相手に道具禁止を強いる癖に自分は平気で武器使うとかキタナイ流石神の宝具キタナイ。前々から感じてたがフラガラックとかブリューナクとかヴァジュラとか神の宝具はズルいと思う」
「それにしてもセイバークラスなのに剣の宝具はないのね」
「それに属する武器なら一応ある。剣の銘は『子獅子の爪』といい薬草を塗った太刀だ。
 特殊能力がこれといって無いのはエンキドゥなりの慈悲なのだと解釈しておこう。もしこれが超高火力宝具とかだったら完全にお手上げだぞ……」
「せ、先生! グレートビッグベン☆ロンドンスターならきっと対抗策の一つや二つや三つくらいぽぽぽぽーーん!と出してくれるんですよね!? そうなんですね!(期待に満ちた表情で」
「諦めなさい(ニッコリ」
「マスタァァァブィィィィィイイイ!!!」
「案外役に立たない方ね」
「明らかな失望の視線を向けるな! いや攻略とか無理だろこれ。慢心せずして何が王かと豪語するギルガメッシュみたいに性格につけ入る隙があるようなタイプじゃないし。
 セオリー的にマスターを狙うにしても最高ランクの気配察知があるから暗殺も容易にはいかない、というかアサシン泣かせ。
 大体まず第一に宝具のせいでエンキドゥを殺す武器がなく。
 なら武器無しでも使える魔術で!となっても対魔力Aだから魔術自体が効かない、竜属性持ちへの対竜魔術のような特定の抜け穴もこれといって見当たらない。
 彼の死因を考えると神の呪いは通りそうだがこんな神霊レベルの呪いを使える輩などまず居ないと思った方がいいだろう。
 うん英雄王よりもパーフェクトっぽくてオワタ」


「え…? 本当に対抗策って何も無いんですか先生?」
「対抗策はない。あるとしたらエンキドゥとまともに戦える相性を持つ英霊であるかどうかだけだ。それらならば何人かいる」
「そんなヒトがいるんですか?!」
「ああいる。というか君も知ってる者が一人いるぞフラット? ミス・アインツベルン無論君も知ってる奴だ」
「そんなサーヴァントなんていたかしら?」
「ここにいるぜマスター!(扉どごーーん!)はぁはぁはぁ…!(流血) オ、オレがその何人かの一人ローラン───」
「待ちなさい! 誰が講堂に入っていいと言いましたか! しねぇ!(フラガラック)」
「ぎゃあああああ! む、胸に穴が開いたぁぁぁ! 背中からおそうとは女と言えども恥を知れ!! 女だから剣は抜かなかったけどもう許さんっ表出やがれオマエッ!(スタスタスタ」
「いいでしょう受けて立ちます。これでも最弱のサーヴァントと共に聖杯戦争を勝ち進んだ経験のある身です。セイバーと言えど勝てない相手とは思いません!(ツカツカツカ」
「いやいや無理っしょヴァゼット先生。初見なのに最強格の相手じゃないですか。そこは負けておきましょうよ人として───ひでぶっ!?」
「………口は災いの元だなフラット。とまあ、ローランのような武器主体のタイプの英霊は論外。
 エンキドゥと戦えるだけの条件をクリアするにはまず道具に頼らず戦闘可能なことが第一条件だ。
 そうなると全クラス中この条件を最も満たし易いクラスはライダークラスだな。
 宝具『万象輪廻す終焉の泥』は生物の無力化は出来ないのだから当然騎乗宝具を牽引する生き物は無力化せずそのまま幻想種としての力を保ったままでいられる。
 ただし、ここで注意しなくてはいけないのが宝具によっては真名の解放が出来なくなっているから要注意だぞ」
「え? なんでですか?」
「例を挙げれば『騎英の手綱』や『遥かなる蹂躙制覇』などが良い例だ。『騎英の手綱』は鞭と手綱のセット宝具によって天馬の能力アップし始めて大火力宝具攻撃が可能となり、『遥かなる蹂躙制覇』は宝具戦車『神威の車輪』による蹂躙走法だからだ。
 天馬や神牛はそのままだが宝具攻撃の鍵となるモノが無効化されていてはその真価は発揮されない。
 逆に宝具そのものが幻想種だったり幻想種を召喚する類ものなら弱体化は避けられる。まあ魔術品などの道具を媒介にそれらを行なわなければという前提でだが。
 皆鯖第七次においては坂田金時の宝具クマモドキなら無力化されずに済みそうだな。
 タイガー&バニーならぬキンター&クマーのコンビなら対エンキドゥのダークホースになり得るかもだ。
 まあ皆鯖七次では私個人は孫悟空が本命の対抗馬だと予想しているがね」


「ただまあこれら幻想種持ちライダーは戦えるだけの条件があるというだけで残念ながらエンキドゥとは相性は良くないと言わざる得ない」
「相性が悪い? それはなぜ?」
「ところでクマモドキじゃなくて熊太郎って呼んでくださいよ先生! みんなのアイドルなんですよ!」
「知るか! 私のアイドルはモニターの中にいるからUMAならぬKUMAなどに用はないわっ。
 して質問だったねミス・アインツベルン。相性が悪いというのはエンキドゥの経歴のせいだ。
 魔物殺しの英雄である以上怪物や神獣などの幻想種にはどうしても強い。ましてや殺したのは神代の怪物だ。半端な幻想種ではまず通用しない」
「それ駄目じゃないですか…………」
「エンキドゥと最も相性が良いタイプとは彼と同様に、自身や己の肉体そのものが宝具、あるいは当人の技能が昇華され宝具化した英雄だ。
 例を挙げると肉体や体の一部が宝具のアキレウスやヘラクレスにサムソンやザッハークなど。
 技能が宝具化したのでは武術宝具の張三豊や竜変化魔術のファフニールなどがそうだな。
 これらの宝具タイプのサーヴァントに格闘能力が付属していればまともな勝負が出来るだろう」
「格闘能力ってその時点で滅茶苦茶ハードル上がってるじゃないですか!」
「何を言うかフラット、僕らの父ちゃん万能戦士ヘラクレスがいるだろう! ヘラクレスなら……それでもヘラクレスなら勝ってくれる!
 ところでギリシャ英雄はレスリング競技とか割と肉体派な文化してるから意外と格闘技能持ちはいるのではなかろうか?
 あと拳法家の張三豊仙人にも期待していいかもしれん。アサシン書文も真っ向から勝負出来るな」
「ところでロードエルメロイ二世? 結局私たちが知っているサーヴァントって誰だったのかしら?」
「なんだまだ分かってなかったのか? ベオウルフだよ。フラットには前講義したし、君なんて直接見てるだろうに……。
 まあざっと全皆鯖を見回したがやはりこのエンキドゥと最も相性が良いサーヴァントはベーオウルフがぶっちぎりだった。
 素手対剣の闘いを苦にせず、武器で戦うよりも空手で戦う方が強く、逆に『子獅子の爪』を鉄腕宝具破壊で破壊してしまえば立場を完全に逆転させられる。怪物属性も持ってないし、戦闘経験値も引けを取っていない。うむ完璧」
「あーベーオウルフさんですか! 確かにあの人なら全裸で戦っても何の問題もありませんよね! やはり最終的にモノをいうのは筋肉なのか!?」
「そういえば居ましたわね、すっかり忘れていたわ」
「皆鯖以外ならやはりのヘラクレスか。ゴッドハンドと万能宝具ナインライブスがあるからベーオウルフよりも攻守が揃ってさらに相性が良い。
 恐らくナインライブスは素手でも出せるだろう多分、盾のナインライブスがあるくらいだからな……なんだよ盾の射殺す百頭って…?」


「なんということだ…あまりに久しぶりで伝説の捕捉情報とか運用法とか気合を入れ過ぎてしまった………気が付けば過去最長かもしれんだと? 日曜朝のゴールデンタイムなんてとっくに終わってるじゃないか……ファック!」
「先生なら総評に入りましょう! そして俺と一緒にクァメンライドゥダボォと妄想心音プルィキュアの録画を観ましょう!」
「いいや君との鑑賞はうるさそうだから遠慮する。アニメ観ながらゲームもしたいし。では皆鯖第七次の総評に入るぞ」
「そんな…先生酷い……ぐすん」
「様々な才能が拝める獣臭プンプンの皆鯖第七次では最終的に残るのはエンキドゥと孫悟空になるだろう予想する。
 余程マスターが有能でないとこの結果は変わらないだろうな。よって私はセイバーランサーを七次では薦める」
「やっぱり他の人達が弱いんですかねぇ?」
「いやそれは絶対にない。坂田金時もアタランテも皆鯖第七次でなければどこに出しても通用する…というか十分優勝を狙えるサーヴァントだ。ピサールもバーサーカーでなければ毒槍は非常に脅威になる。
 ただ問題は…感覚的な表現をするとギルガメッシュやヘラクレスみたいなのが混ざってるせいでどうにもならないといった感じかな?
 どんなに優秀な実力者だろうと頂上レベルの怪物がいればどうしても霞む………ディルムッドみたいに……」
「ディルムッドさんは色んな意味で悲劇的でしたね……。間違いなく一流の英雄の筈なのに。セイバークラスにもちゃんと該当出来ますし、フィオナ騎士団最強の英雄なのに……」
「よって皆鯖七次の鍵はマスターにこそあり、だ。まともなサーヴァント戦では残念ながら結果は殆ど見えている。
 だから如何にしてマスターがサーヴァントのスキル、戦闘力、動物を上手く活用し、エンキドゥや孫悟空との直接戦闘を避けたまま彼らのマスターをぶち殺し、あるいは命を防護して勝ち抜くかがポイントになる。これが出来なきゃ他の五組は敗退必至だ。
 マスターの命を巡る展開持ち込めるか否かが皆鯖七次の勝負の明暗を別ける筈だ。ふう、終わった…」
「おつかれさまでした先生! 麦茶ですどうぞ」
「ああ(ゴクゴク)では七時限目の講義はこれにて終了だ。さあフラット録画したものを渡して貰おうか?」
「それは別にいいですけど、俺が録画したんですから俺にも見せてくださいよ先生~」
「だが断わる」
「ひーーーん!(泣」