磨耗した英霊サンタクロース
 「わしは・・・・飢えて死ぬ子供の前で、殺戮の刃に倒れる子供の前で、炎に焼かれた子供の前で、ただ玩具を握り締めるだけの道化じゃ」
 「子供たちを救うことも出来ず、ただ己に課された役割のみに動く、それが守護者じゃというのなら、わしはそんなものになりたくなぞなかった・・・!」

サンタ「神───というものが存在するなら私の声を聴け!」

サンタ「何故私が守りたいと…大切にしたいと思う未来への希望を貴方はこうも残酷に奪っていくのか…!?」

サンタ「私は空虚な玩具を握り締め、後何回泣いたら…どれだけ絶望すれば許されるのか…!?」

サンタ「よかろう…ならば神よ!貴様に代わり私が新世界の神となろう!」

サンタ「悲しみの無い世界!子供達が安心して生きられる世界!無垢な世界を!」

サンタ「掃き溜めの世界を希望で消し去ろう…そのためにィィッ!貴様らを殺し聖杯を我が手中に納めるッ!!」



空中要塞に向かうサンタと橇に乗るドンキ、トリスタン
要塞の迎撃を辛くも避け、近づいたが鹿とサンタが倒され墜落しそうになる。
墜落しているドンキとトリスタンに向かった要塞から強力な炎の魔術が放たれる
要塞から迫る炎に飲み込まれそうになるが、トリスタンがドンキを番えて要塞に突入させる
「・・・・後は頼んだぞ!ドンキーーーーー」
トリスタンは炎に飲み込まれて消滅する



「この絶望に満たされたセカイに、泣き叫ぶ子供らに、今こそ救済を――――!!」
 『豚肉飛び散る精肉場(シュティレ・ナハト)』――――ライダーの保有する、八頭の聖なるトナカイが牽引する橇に乗っての蹂躙走法、ライダーの保有する、最大の攻撃手段。
聖別された雪と豚肉を撒き散らしながら疾走する八頭のトナカイは、立ち塞がるあらゆるものを打ち砕かずにはいられない。
「駄目だメリー、下がってくれ!! 下がるんだ、頼む!」
 士郎は、傷ついて動けない自分を守って立ち塞がった自らのサーヴァントに、懇願するように叫んだ。
「嫌ですよ、士郎。もう、独りぼっちになるのは嫌だもの……」
「……メリー」

 互いを庇い合うかのようにして迫り来る破壊の橇を見上げた二人の姿に、
寒い冬の中で、打ち捨てられた路地裏で、銃弾の飛び交う戦場で、ライダーがずっと見つめ続けてきた子供たちの面影が重なった。
「迷いも甘さももはやあの糞塗れの聖夜に捨てた! もはや目の前にいかなる英雄や怪物が立ち塞がろうとも知ったことではないと決めた!
 いかなる戦場の熱をもワシの凍りついた魂を溶かすことなど出来ぬというのに…………!!」
 それなのに……。
「っ、ぅオオオオおおおおおぁあああああああああ!!」
 ライダーの橇は、呆然と見上げたメリーの目の前で止まっていた。
「これが、ワシの末路か……」
 呆れ混じりに笑い、ライダーは、メリーの握った包丁に深々と突き立った自らの腹を見た。
余りに滑稽すぎて笑おうとすれば、ごぼりと、喉の奥から血反吐が溢れて来る。
「ごめんなさい、ライダー……あなたが、あの時のサンタクロースだったのね……」
 少しずつ真っ白になっていくライダーの視界の中で、小さな少女が泣いているのが見えた。
残る力を必死に振り絞って、ライダーは、泣きじゃくる少女の頭に、そっと手を置いた。
「いいんじゃよ。ワシはサンタクロース……泣いている子供に、ワシが最後に送ってやれる、クリスマスプレゼントだよ」
 少しずつ薄れていく血潮に塗れたライダーの姿は、まるで彼が本来在るべきと願われていたかのように、赤く染まっていた。
深々と雪が降り注ぐ音がする。どこかで、聞き慣れた鈴の音が聞こえてくる。
『ねえねえ、お爺ちゃん、サンタクロースって、本当にいるの……?』
 どこかで、懐かしい声が聞こえてくる。
気がつけば、彼の意識は、あの、懐かしい故郷の暖炉の側に座っていた。だから、自分はこう答えてやるのだ。
『ああ、そうだ。サンタクロースはいるよ。おまえが、良い子にしていれば、きっとサンタクロースはプレゼントを持ってきてくれるよ』
 その時、自分は何と答えただろうか。薄れていく意識では思い出せない。
「ああ……ワシに、泣いている幼子を見捨てておけるわけがないと、分かっていたのにな……どこで……どこから……ワシは……間違……って…………」
 そして、最後に残された最強のサーヴァントは、光に包まれて、消えた。