──────────────────────────────────Another Servant     2日目 殺戮の魔剣───────


──────Lancers Side──────

 早朝特有の鶏と雀の鳴き声で目が覚めた。
 体が凄くだるい。
 なんでだろう……?
 ……………………………………あ~そっか。
 そう言えば昨日は長旅がおわってあのばかみたいに長い階段をがんばって踏破したからきっと筋肉痛なんだ。

 寝ぼけ頭のまま布団から体を起こす。
 はやく着替えてちゃんとしないとおじいさまに笑われちゃう。


 ────────その瞬間、昨日の出来事を全て思い出した。

「──────あ」
 馬鹿かわたしは……。
 自分の不甲斐無さに奥歯を噛む。

「───うん。ちゃんとしないと、本当にお爺様に笑われる」
 そうだシャンとしよう。覚悟はもう決めたんだ。
 お爺様の変わりに聖杯戦争に参加すると決めたのならいつまでも沈んでる訳にはいかない。
 そうじゃないとお爺様に怒られてしまう。

「あっ……拙い!お爺様のご遺体がそのままだった!!?」
 慌てて布団から跳ね出して着替えようと着物に手を伸ばし────。
「いやその心配には及ばぬよ主殿」

 ────なんかへんなお侍さんが寝室に鎮座していた。

「き─────!」
「き?木?それとも気でござるか?」
 侍は首を傾げながらマジマジとこちらを見てくる……どころかなんと側に近寄って来た。
「きゃああああああああ!!この覗き、痴漢の助平侍っ!!」
 魔力を込めた張り手をエロ侍に見舞ってやる。
「ブハッ───!!!?」
 繰り出された張り手は文句無しのクリーンヒット!
 助平侍は首を捻じられ痛がっていた。

「痛い……凄く痛いぞ、おなごよ……おまけに拙者が対魔力を切っている時を狙うとは、なかなかデキるでござるな?」
 生意気にも顔を手で擦りながら抗議の声を上げて来る。
「貴方なに!!?」
「なにもない。拙者はランサーのサーヴァント、本多平八郎忠勝でござる。
主殿の召喚に応え参上仕った、以後我が大槍は殿であるマスターに預けよう」

 片膝を地面についてランサーは仰々しく頭を垂れた。

「え、ランサー?で、でも貴方を召喚したのは───わたしじゃない。お爺様だわ」 
 そうだ……ランサーを召喚したのはお爺様でわたしじゃない。
 わたしはただ───。
「否。確かに拙者を召喚したのはマスターの祖父殿であるのは間違いない。
 だがマスターの証たる令呪は祖父から孫へと引き継がれている。
 聖杯が何を考えてマスター権である令呪を主殿の祖父から主殿へ再移転したのかは定かではないが、それでもその体に令呪が刻まれている以上は、そなたが拙者のマスターなのだ」
「──────」
「─────」
 互いに見つめ合う事数秒。
「判った。なら令呪通りわたしがマスターで文句は無いわね?」
「御意」
 そう言うと侍は膝を付いた姿勢のまま恭しく共闘の契りを交わしてくれた。

「で、話を戻すけどお爺様のご遺体は心配ないってどういうこと?」
「うむ。流石にあのままでは拙いと思って後始末しておいたでござる」
「ちょ、ちょっと!?後始末って何?!ランサー貴方お爺様をどうしたってのよっ!?」
 何か不穏当な事を言ってくるランサーに食って掛かる綾香。
「いやいや。落ち着くでござるよ主殿!後始末と言ってもそんな物騒な事はしておらん!
 あのライダーとの戦闘の後に気絶した主殿をまずこの客間っぽい部屋まで運び込んで寝かし付けた。
 でそれから血溜まりになっていた召喚場所へ向かい、丁度直ぐ傍にあった池の水で地面の血痕を綺麗に洗い流して、
 ついでとばかりに血で穢れていた祖父殿の体を手拭いで清めてやり、それからそこの押入れの中に寝かせているだけ故」

 あ、そういえばわたし昨夜の着物のままだ……
 覚醒した脳で自分の姿を確認する。
 いやちょっと待とう。

 ───え?押入れにおじいちゃん────? 

 無言のまま押入れを開ける。
 なんかおじいちゃんがいた……。

「あ、アンタ!こんなところにお爺様を詰め込んでなにやってるのよっ!!!」
「ちょ、ちょい待つでござるよ主殿!」
「言い訳なんか聞きたくないわ!お爺様を布団みたいにこんな所に押し込んで!!」

 ポカポカとランサーを叩く。
 こいつ!さっきの魔力込めたビンタは効いたのに今度は魔力を込めてないせいか全く効いてないみたいだ!

「いやいや!だって仕方が無かったでござる!どう見ても血色が全く無い祖父殿を布団で寝せておく訳にもいくまいよ!
 此処はどうも寺のようでござるがそれだと主殿よりも寺の坊主たちが先に起床してくる可能性が非常に高いと思ったのだ!
 一つ訊ねるがもし坊主たちに見られた場合、主殿は祖父殿のご遺体をなんと説明する気でござるか!?」
「─────ぁ」
 言葉に詰まる。
 確かにランサーの言う通りかもしれない……。

「拙者としても亡骸をこんな所に詰め込むのは心痛んだが絶対に見られない場所というのも見つからなんだ。
 ならば祖父殿のご遺体を埋葬すればよかったのだろうが───それは拙者が勝手に主殿の断りも無くやって良い事ではござらん」

 ───だから主殿が目を覚ますのを待っていた。

 とその言葉でランサーは言葉を切った。
「──────────────────。そうね、ごめんなさいランサー。貴方の判断が正しいみたい」
 怒ったお詫びに素直に頭を下げる。

「ん。判ってもらえれば結構。それよりも主殿、早く祖父殿のご遺体をどうするか決めた方が良いと思うが?」
「うん。ランサーはどうした方が良いと思う?」

 とりあえずランサーにも意見を訊いてみる。
 彼ならば何か良い案を出してくれるかもしれないと期待して。
 
「せ、拙者!?う~~~~ん、そうでござるの。マスターはこの土地の人間なのならこのままこの寺に埋葬するのが良いのでは?」
「あ、いえランサー。わたしたちはこの土地の人間じゃないわ」
「そうなのでござるか?なれば火葬して遺骨を帰る際に持ち運び易い様にするのがいいかもしれぬぞ?
 聖杯戦争は数日間は確実に掛かる。戦況が混乱するともっと時間が掛かるやもしれぬからな。
 流石に数日もの間遺体を放っておくのは色々と………拙い」

「そうよね。確かにお爺様のご遺体を沙条の家まで送る手段がわたしには無いわけだし。それが一番かな」
「ならどのようにして火葬する?流石に焚き木程度の火ではどうにもならぬと思うが?それとも魔術の火で火葬を?」
「……折角お寺にいるのだからここで火葬してもらいます」
「────へ?」

 そう言うと綾香は部屋から出て行った。




 ────数時間後。
 彼女の祖父の葬儀と火葬はつつがなく終了した。 

「いやはや、主殿はなかなかに機転が利く」
 部屋に戻りならが実に感心したようにランサーが綾香を褒めた。
「別に。ただ此処がお寺っていう状況を利用しただけよ」
 骨壷を抱いた綾香はランサーの世辞を素っ気無く返した。

 彼女はランサーが感心した通り、柳洞寺という場所を最大限に利用した。
 まずランサーと話を終えた彼女はそのまま真っ直ぐ祖父の友人である住職のところまで行き、彼にある暗示をかけた。

 ”祖父の葬儀と火葬を一切疑問に思わない”

 暗示の本質は強要ではなく物事の捉え方を逸らすものだ。
 故に暗示をかけるのなら祖父の火葬を行う。と強要するのでは無く、祖父の火葬を疑問視しない。と考えを逸らす様にするのが正しい。

 その後、綾香は住職への暗示の成功を確認すると、次は寺にいる坊主全員に同じ暗示を一人一人丁寧にかけて回った。
 流石は神職者なのか、坊主の中には暗示が効き難い人間が居たがそういう人には軽いガンドで強制的にご退場してもらった。

 そうして葬儀をしっかりとやってもらい、広い高台で遺体を火葬して貰うと遺骨を骨壷に納めた。


「ふぅ────流石にちょっと疲れたかも……」
 部屋に戻ってくると綾香は緊張を解いたのか深く息を吐いた。
「それは仕方ないでござる。なにせ主殿は拙者に魔力供給をしているだけでなく、あれだけの人数に暗示の法術をかけて回ったのだ。
 おまけに昨夜からの精神的な疲労や負担もある。それで疲れてない方がおかしいでござるよ」

 そう言いながら彼女を労うランサーは葬儀を行う為に部屋を出てからずっと霊体化したままだ。

「ランサー何で貴方いつまでも実体化しないの?
 確かにさっきみたいな人目のある状態で出てこられても困るけど、今はもう人目も気にしなくていいわよ?」
「いや今はまだ結構でござる。
 拙者たちサーヴァントは実体化するだけでもマスターに負担をかける故、今の主殿に無用な負担をかける真似はしとうござらん」
 忠臣であるランサーは召喚されてからずっと現在の主である綾香の心身の負担にとても気を遣っていた。

 まだ少女といえる年頃の娘が突然化け物じみたサーヴァントに襲われ、目の前で祖父を亡くし、
 肉体的にも精神的にも負担が掛かっている状態におまけとばかりにサーヴァントとの契約で魔力的な負担まで強いられている。
 それでもなお気丈に振舞っている綾香をランサーは侍としての志を賭けて尽くすに値する素晴しい主人だと感じていた。

「そう、ランサー貴方って本当に伝承通りの忠臣なのね」
「いやいや。主殿の立ち振る舞いが拙者に心から忠節に励みたいと思わせるものだった、と言うだけの話」
 まったく、この人ってお世辞まで言えるのね……まあ悪い気はしないしいいか。
 だがそれよりも訊いておかなければならないことがある。
「ところでランサー。聖杯戦争って具体的にはどうすれば良いの?」
「ん?主殿はまったく聖杯戦争については存じてないのか?」
「いいえ。大まかな概要とルールはお爺様に聞いたわ。でも具体的にどう動けば良いかまでは判らないの」
 お爺様が基本的に行動方針を取り決めてわたしがそれを助力する形になる予定だったから───。
「────そうでござるなぁ。では主殿、拙者の質問にいくつか答えて欲しいのだが良いかな?」
「……え?ええ。良いわ、わたしが答えられる事なら答えるから」
「んではな───」

 ランサーがしてきたのは極めて単純な問いだった。

 一つ目────このお寺からマスターを探索出来るような能力があるのか?
 二つ目────魔術師の気配は探れるか?
 三つ目────戦闘用の魔術はあるのか?
 四つ目────戦う覚悟はあるのか?

 この四つのみ。
 それに対してわたしは、いいえ。……多分。無くもない…かな? 当然──!と答えた。

「───────」
 ランサーがなにやら難しい顔で考え事をしている。
 少し不安になる。
 しばらく黙考した後、ランサーは重苦しい声を上げた。
「…………主殿、結論から申すがよろしいか?」
「───っ!?う、うん!」
 なんとなく正座し姿勢を正してからその言葉に耳を傾ける。

「では、結論から申し上げると主殿がまともに聖杯戦争に参加するのならば、直接その足でマスターたちを探すしかないでござるな」
「つまり直接戦場に出て探すってこと?」
「左様。しかしこれは自身を餌に敵を釣るという戦術。当然かなりの危険も伴っているゆえ……あまり薦めたくは無い」
「でもわたしが本当に聖杯戦争に参戦したいのならそうするしかないのよね?」
「────そうでござるな。拙者は法術や妖術の類なんてモノは一切扱えない純粋な侍。
 そして魔術師である主殿にも安全な場所からの索敵方法が無いのならば、頼れるのは自身の体という事になるでござるな」

 まあ要するにこれはどうしようもなくシンプルな話だ。
 二人とも安全な場所から敵を探す。なんてそんな大層な業を使えないので仕方なく自分の足を使うだけ。

「なら問題ないわ。直接自分の足で探す」
「良いのでござるか?下手をすると戦闘にも……否、戦闘になる可能性の方が高いのでござるぞ?
 ────拙者だけを町へ送り出して主殿はこの寺で待機するという手も有りはするが……」
「それじゃ意味が無いわ。わたしは命を守りたくて聖杯戦争に参加するんじゃない。
 お爺様の代わりにマスターとして参加する為にこの争いに参戦するの。
 お爺様はわたしにこの戦いを経て魔術師としての経験を積ませたかったみたいだから隠れてやり過すなんて真似は……絶対に許されないわ」

 こちらの身を気遣ってくれるランサーの問いに対して決意も込めて即答で返した。

「───左様でござるか。主殿がそうすると決めたのなら拙者はそれに従うのみ。ただ流石に援助くらいはしてもよいのでござろう?」
「ええ勿論よランサー。わたしじゃまだ良く判らない事とかも多いから頼りにしてるわ」
 ランサーはお任せあれい。と言うと霊体の癖に手で胸をドンと叩くような動作をした気がした。

「それで早速だけど今夜から出ることにする」
「あいや待たれい主殿!何も今夜から急速に行動を起こすことは無いではないか」
「ううん、駄目よ。今夜だけは絶対に行動しとかないと……こういうのって最初の出だしが大事だもの。
 大丈夫、今夜出たらちゃんと休息も考えるから」
 綾香は真剣な目でライダーに方針を告げた。

 ───そうだ、昨日の今日だからこそ、ちゃんと行動して自信が欲しかった。
 祖父であり師であった人が居なくてもちゃんとやっていけるんだってことを、この先も信じる為にも───

「────はぁやれやれ。主殿は女子の癖に気が強いでござるのぅ。あい判った。なれば一つだけ拙者の提案を聞き届けて頂きたい」
「気が強いってのは余計なお節介ですっ!……で提案ってなに?」
「なあに簡単なことでござる。今から仮眠でも良い、出陣するまでに少しでもよいので休息を取って頂きたく候」
 ランサーは心からのお願いをしてきた。

「ん~、わかった。じゃあ少し休めば……今夜出て良いのね?」
「うむ。主殿が出陣前に多少なりとも体を気遣ってくれれば後は拙者の責任。
 例えどのような強力なサーヴァントやマスターと出くわそうとも一歩も退かずに主殿を守り通して進ぜよう!」

 実に頼りになるこの武士の器量は、流石は数々の名のある武将から讃えられただけの事はあった。

「じゃあそういう方針で行きましょう。あ、そうだランサーあの大きな槍ちょっと貸してくれない?
 お爺様の荷物の中に確か幻惑の魔術が施してある呪布があったと思うから。
 取りあえず気休めでも切り札の隠蔽はしてた方がいいでしょ?
 あ、でもあれ魔力殺しの効果もあったような気が……呪布付けると宝具能力の阻害になるかも……」
「おおっ!確かにそう出来るのならそうして頂きたい。
 唯でさえ馬鹿でかくて目立つ大槍ゆえにちょっとでも隠しておかないと直ぐに正体を看破されてしまいかねん。
 外国であるのならばいざ知らず日本は拙者の出身地でござるからな。日本人のマスターだと蜻蛉切を見た瞬間にバレそうでござる」
「……それもうちょっとなんとかならないの?槍が大き過ぎて一発で真名バレましたとかわたしは嫌よ?」
 綾香は当然不満の声を上げた。
「そうでござるな。では少々槍の長さを短くするか」
 その不満の声を解消しかねない方法をランサーはサラッと口にした。
「え、そんなこと出来るの!?」
「うむ、拙者『武器改造』のスキルを持っているでござるからな。他の武器は無理でも蜻蛉切の改造なら可能だ」
「へぇ凄いじゃない!じゃあそれでいきましょう。
 あでもあまり短くするとランサーの持ってる利点を殺しちゃうから短すぎず、かといって真名バレしない程度の長さで、出来る?」
「お任せあれ。拙者割と手先は器用な方であるぞ?彫刻とか趣味でやっていたのだ」
「そう言えばランサーの召還の触媒に彫刻作品があったっけ?あれ本当に貴方が作ったものだったんだ結構上手いじゃない」

 そうしてランサーと綾香は終始和やかな雰囲気のまま、今夜の初陣に備えて準備する。

 これが彼女にとっての初めての戦い。
 昨日の巻き込まれただけの戦いとは違う、自分から飛び込む戦いなのだ───。






──────Archers Side──────

 意識が無くとも空気だけで現在地が理解出来た。
 ここは蟲倉か……。

 蟲倉───マキリの魔術師を鍛え上げる修練場という名目の陰湿な拷問場。
 マキリの魔術は必ず己の肉体に返るモノ。
 自身の肉体を蟲に捧げ魔道に到る。
 
 それを身を以って経験した間桐には嫌でもここの空気は馴染み深いものだった。

 蟲たちが地面を這う音が耳に入る。
「う……くっ…………あ」
「よお。起きたかワカメマスター?」
「あ───?」
 何故かぬっと間桐の顔を覗き込んでくる無礼な昆布野郎のツラ。

「あー、チャー?ぐぅぅ、痛っ───!!?」
 頭が覚醒し出すと同時に襲ってきた痛みの残滓。
「あーあーあんま動くなマスター。昨夜は一応きさま、あの世に逝きかけたんだぞ?」
「さく、夜?────そうか俺は……キャスターのマスター、に」

 屈辱感で自然と奥歯鳴った。

「ま~ありゃしょうがないんじゃないか?格上の魔術師だったようじゃし」
「仕様が無くはないだろ!!糞、糞!……あの魔術師、今度会ったら────絶対に殺してやる!」
「ん~だがどう見てもあのマスターはおぬしより格上じゃったぞ?普通にやったらまず勝ち目など無い。
 おまけに蟲使いと炎使いで相性まで悪いときてるではないか」
「お前に何が判る!!最弱のキャスターさえもまともに倒せないようなお前が偉そうな口を叩くな!!!
 ───聖杯は、聖杯は我が間桐家が手にすべきモノなんだ!ならそれを阻む障害は例外なく排除するのみなんだよ!」
「むぅーまあええわ。とりあえずマスターは今日は大人しくしている事じゃな。
 そんな様で戦いに行っても勝てるものも勝てなくなるわ」

 完全に激昂しているマスターにアーチャーは肩を竦めると霊体化してそのまま何処かへ行ってしまった。

「糞っ!!」
 床を殴り付ける。
 このままでは駄目だ、何か俺では思いつかない様な秘策が必要だ。
 俺では思いつかないような秘策を思いつける誰か───。
 畜生……そんな都合の良い奴なんか─────都合の良いことに居た!
「そうだ爺っ!!!」

 さっさと立ち上がり臓碩を探しに走る。
 昨日受けた傷が痛むが気にしてなんかいられない。
 もし蟲倉にいないのなら、一階か二階だ。少なくとも絶対に外には出ていない筈だ。

「爺さん!!何処に居る!?話がある!」
 大声で臓碩を呼び歩く。
「なんじゃ騒々しいわ馬鹿者が」
 するとその目当ての老人は建物の影からぬっと姿を現わした。
「ここに居たか。爺さん話がある」
「話?ふむなんじゃな?まさか昨日の大敗を理由に聖杯戦争を降りたくなったか?」
 実にこの爺らしい嫌味ったらしい陰湿な嘲笑を浮かべる。

「脳みそ湧いてるのか爺?誰が降りるって言った?聖杯は間桐のものだろう。
 俺はアーチャーのマスターなんだ、なら俺以外のどの間桐が聖杯を手に入れられるって言うんだ爺!?」
 そんな爺さんの下らない邪推を正面から否定してやる。
 それを訊くやいなや、
「ク、クク───クハハハハハハハハ!カカカカカカカカカ───!!
 ほぅ、そうかそうか。いやようやくお前も我らマキリの探求者としての誇りを自覚したというわけか!」
 マキリの大妖術師がさも愉しそうに笑い声を上げた。

「ああだから知恵を貸せ爺さん。真っ向からやっても昨日と同じ末路だ。何か秘策をよこせ」
「いきなり秘策を要求してくるか────困った孫じゃな」
 それでもなお愉快そうに臓碩は笑っていた。
 あまつさえ。
 いやいや、昨日いきなりとっておきを使う羽目になったのも全くの無駄では無かったということか──クク。
 などど独り言を口にしている。

「で、秘策は有るのか無いのか爺さんよ?」
「まずお前が期待している秘策はどんなものだ。まずそれを明確にしろ」
「─────」

 俺が……この妖怪爺に期待している秘策………。
 あの弱いアーチャーのサーヴァントを強くする方法?
 いや違う、サーヴァントを強くしたいのなら人間の魂を喰わせれば良いだけだ。
 そんな俺でも思いつくようなものは秘策でも何でもない。
 ────俺が期待している事。

 全身の痛みと共に昨夜の屈辱的な敗北を思い出す。
 こちらの業が一切通用せずに一方的に敗れた惨めさ!
 敵の業に何一つ抵抗出来なかった無力感!!
 そして、それが所詮間桐の魔術師の限界だと嘲うかのような……あの見下した眼───!!!
 断じて許さない、絶対に許しておかない。

 そうだ、俺がこの大妖怪に求めているものは…………。
 弱いアーチャーを強くすることなどではなく───俺自身が強くなる方法!!

「───俺自身を強くする方法だ。アーチャーは適当にその辺の人間の魂を喰わせて強く出来るが俺はそうはいかないからな」
「ふむ、そうか。おまえ自身の力を上げる方法か。確かに聖杯戦争ではサーヴァントはサーヴァントを以ってしても破り難い。
 ならばサーヴァントよりも脆弱なマスターを殺した方が手っ取り早いからのう。───少し時間を貰うぞ」

 臓碩は間桐にそれだけ言うと再び奥の影へと消えていった。

 これでいい。あの爺さんならばきっと何らかの秘策が用意できる筈だ。
 だから期待して良い。

「ふ、ふふ、うふふふふ、はははははは、ははははっ!」
 期待で胸が膨らむ。
 我慢できずに腹からくつくつキシキシと忍び笑い声が漏れた。


 その音はどこか蟲の羽音のように聞えた。





──────Riders Side──────

 昨夜の調査報告で重要そうなものは四件あった。
 一つ目は隣町で何者かと何者かが戦闘行為の痕跡を発見したこと。
 二つ目に隣町で紳士風の赤いスーツを着たマスターらしき男の発見と観察。
 三つ目が何の冗談か突如深夜の隣町に現れた謎の馬車。
 四つ目が血塗れになって戻ってきたライダーの話。

 それぞれの報告を受けながら牧師は直ちに分析に取り掛かった。
 
 一つ目は十中八九マスターが起こした戦闘の痕跡だろう。

 二つ目の赤スーツの男もマスターの可能性が高い。が二件の発見時間を考えると恐らく一件目の戦闘を起こしたマスターでは無い。

 三つ目はこれは信じて良いのか際どいところだが、報告によると何やら馬鹿みたいに豪奢な馬車に乗った騎士が現れたらしい。
 深夜に突如として現れた白馬の馬車が町を我が物顔で闊歩していた。と言われても牧師はハイソウデスカ。と流す訳にもいかない。
 そもそもソレは一体どこのアホだ。
 移動の足として馬車はまだ判るが戦場には似つかわしくない程に豪華に装飾された糞目立つ馬車で戦場に出るマスターなぞ存在するのか?
 幻覚の可能性もある。魔術師はそういう『コト』が出来る連中だ。
 とりあえずこの件は保留することにする。

 そして、一番問題なのが四件目だ。

 昨夜遅くにライダーはボロボロになって帰ってきた。
 ライダーには補助宝具の設置を任せてそのまま自分とは別行動をさせていたのが裏目に出たらしい。
 話を訊いた限りでは、この町の郊外にある寺を再び見に行ったところでサーヴァント召喚途中のマスターらしき人物達と遭遇。
 サーヴァント召喚と同時のタイミングで先制攻撃を仕掛けてマスターを一組消したかったらしいのだが、タイミングを誤り召喚直前に召喚者である老人の方に攻撃。
 致命傷を負わせるも最期の余力でランサーを召喚に成功し、そのままランサーと戦闘開始。
 何故か防御してもダメージを負ってしまう宝具らしき大槍に苦戦し、決着を付けずに撤退して来たという事だった。 

「─────」
 溜息を漏らす。
 独断専行で戦闘をして来た挙句まさか敗れてくるとは……全く予定外の損害だ。
 しかも頭が痛いのはライダーの方で何故その男に負けたのかと問い質すと、

 ”違う。俺様があの生意気なランサーを見逃してやったのだ!このたわけめ!”
 ”俺様が手を抜いてやったからランサーはまだ存命しておれるのだ”
 ”ふふん!ランサーなどファラオたるこの強きラメセスⅡの敵ではなかったぞ牧師よ?”
 
 などと全身血だらけの姿で言い出す始末だ。

 どうもあのラメセス二世は伝承通り、自己顕示欲が非常に強い性格をしているようだ。
 自身を必要以上に良く見せたがるがその為には当然のようにハッタリや先程のようなホラまで吹く。
 ようするに見栄っ張りという奴だ。

 良く言えば非常に目立つ性格。悪く言えば非常に目立ちたがり屋。
 良く言おうが悪く言おうがあのライダーは結局どちらも同じことだというのが性質が悪い。

 しかし褒める点も存在する。
 ライダーはあれだけボロボロにされる程の劣勢だったにもかかわらず宝具を使用しなかった。
 それだけでも一応労うに値する。
 敵の宝具を知りながら自身の宝具は明かしていないのだから。
 おまけに彼はランサーの特性も十分に理解してきたと言う。
 これは先程と同じような嘘の可能性もあったが、同じく戦いに生きる者だけが持つ牧師の直感がその言葉を真とした。
 ───仮にもラメセスⅡは多くの戦争を潜り抜け、自身も優れた戦士だった男だ。
 ならば絶対に無償で負けたなんて事は無い。
 その敗北に見合うだけのモノを得ている筈だ。


 牧師はまとめ終えると席を立ち庭へ向かう。
 そう簡単に鈍るほど代行者の鋼の肉体は腑抜けではないが少し体を動かしたくなった。
 この拠点はそう悪くは無い。
 今回の任務に参加している代行者八人全員を詰めてもまだゆとりはあるし、何よりあのライダーが喧しくないのが良い。

 牧師は玄関で靴を履き庭へ出た。
「───────」
「ふぅ、ほぅ、ふぅ、ほぅ!」

 ソコにはナニかヘンなヤツがイタ。

 ───────────。

「んっ、っち、にっち、っん!」
「──────おい」
 庭先で上半身裸で妙な動きをしている男に声をかける。

「ふっふっ、ちょっと、はっはっ、待て、ほっほっ、牧師よ」
「いや待てん。今すぐ答えろライダー。貴様何をやっている?私は傷の回復に専念しろと言った筈だが?」
 昨日の傷の治療も放ったままこんな鶏が鳴くような早朝からこいつは一体何をやっているんだ───?
「ええい!待てと言っているだろうが下郎が!!これは我が王家に代々伝わる由緒正しき太陽神の舞ぞ!!」
 そう説明しながら怒声を上げるライダー。
「た、太陽神の……舞?」 
「然り。これは太陽の昇り始める刻限に舞い始め、その全身で太陽神からの力を受ける為のものだ。
 いくらこのラメセスⅡが選んでやったマスターと言えど、この舞の邪魔立てをするのなら───殺すぞ?」

 ギロリと本気で殺気を込めた視線をゲドゥに向けるラメセスⅡ。
 決して死を恐れない代行者である牧師が思わず戦慄する。
 流石の牧師も暫し呆然と固まっていた。

 ───恐ろしい。
 何が恐ろしいってこのファラオ様はたかがラジオ体操の邪魔しただけで本気で牧師を殺すと仰るのだ。

 気を取り直してどうしても確認しておきたい事だけを口にする。
 この馬鹿を見ていたら興が削がれた。体を動かすのはもう止めだ。

「────おい、一つだけ教えろライダー。何故今そんなことをやっている?」
「だから、っほ、ファラオの日課よ。んっちに、これを毎日するとだな、っほっほ、太陽神から力を分けて貰え、
 んっん~、生命力が上がるのだ。っよっほ、平均寿命40歳の古代エジプトにおいて、さっしっ、このラメセスⅡはな、
 はっんっ、なんと、うっふ、その二倍である90歳まで生きたのだ!ハッハッー!
 判るか牧師?ん~ん~、俺様は半神の身でもあるがこれこそが偉大なる神の力なのだ」

 なるほど、ラメセス二世が90歳まで生きたと言うのは本当だったのか。
 しかもその理由がラジオ体操とは───えらくまた健康的なサーヴァントだ。

「そうかもういい。終わったら大人しく回復に努めろ。お前の傷は決して浅くは無い」
 それだけ言うと玄関へ踵を返す。
 この男のやることにいちいち口を挟むのも面倒だ。
 戦力としては申し分無いのならそれ以外の行動には多少の眼を瞑るべきだろう。

「待てマスター」
 が、意外なことにライダーの方から牧師を呼び止めてきた。
「なんだ?私はもう邪魔はせんぞ。好きなだけラジオ体操に励むが良い」
 牧師にしては珍しい皮肉っぽく言い方をする。
「太陽神の舞は今し方終わった。今後の方針についてだ。一応協力者だ牧師にも伝えておいてやろうと思ってな」
「……今後の方針?お前が言っていた通り適当に宝具の火力に物を言わせて押し切るんじゃないのか?
 ───尤も、私はお前の宝具の力はまだ見ていないからそう言われてもいまいち実感が掴めんがな」
「いやそれは変更することにした」

 ───なに?
 この男が自分の方針を変えるなんて珍しいにも程があるな。

「ほう?では新しい方針はどうする気だ?」
「暫らく他のサーヴァントには仕掛けぬ。敵の観察に徹する事にした」
「ふむ、敵情視察から始めるのか?お前の性格からすればまた…消極的な方針だな」
「先の戦闘で判明したこともあるのでな。牧師、貴様は魔力の供給は出来てはいる。
 がハッキリ言ってマスター適正力は高くない。どうもお前は俺様の性能を完全には引き出し切れておらんようだ」
「なに……?しかしお前の能力値は……BCBCBA+だぞ?どう見てもかなり高い数値だ」
「仮に牧師が一流適正力を持つマスターであったのならば俺様の性能はまだ上がる余地がある。
 ───お前は神の血を受けた英霊の潜在力を見くびっているぞ?」
「………」
「まあ今でも九割方の状態とは言え僅かながらでも本来の性能に届いていないのは事実。よって暫らくは敵の観察に徹する」
「なるほど。なんだかんだと言いながらお前も昨日の敗北が多少は堪えたというわけか」
「────ふん、遊ぶのは止めただけだ」
 
 牧師はライダーの言葉を否定しなかった。
 それだけだと言い残すとライダーは霊体化して回復に努めに向かった。

「ふぅ───まったく」

 これだからあのライダーは扱いが困るのだ。

 昨夜のように勝手に負けて帰ってくるは、つまらないハッタリやホラを吹くわ。
 今さっきのように謎の行動をしていたと思ったら、今度は途端にこちらを驚かせるような冷静な戦術を出してくる。

 やはりライダーの力を最大限に発揮させてやるなら、奴のやる事には口を出さずに好きにさせておくのが良いだろう。


 聖杯戦争二日目の早朝。
 どうやらライダー組の関係は中々悪くはないようだった───。





──────Casters Side──────

 昨夜のアーチャーのと戦闘は終始劣勢ではあったが大変参考になった。
 命を落とす事無く今回の聖杯戦争の平均レベルを大まかにだが実感出来たのはキャスターにとっては小さくない収穫だった。

「それにしてもアーチャーのレベルでもボクのドールが容易く敗れ去るとは……新たに対策を考えないといけませんか」
 ───昨日の戦闘でアーチャーにアッサリと破壊された人形は実は弱くは無い。
 代行者や魔術師程度の相手なら人形一体でも瞬殺して余りある性能を持ち合わせていたのだ。
 にも関わらず七体の人形はその殆んどがアーチャーに討ち破られてしまった。

 ここで問題なのはセイバーやランサーではなくアーチャーに。と言う点である。
「セイバーやランサーが相手では恐らく瞬殺でしたでしょうね。この娘たちには可哀想な事をしました」
 そう言ってローゼンクロイツは修理した人形たちの頭を撫でてやる。

「おい………キャスター此処にいるの……か?」
 その時。彼のマスターであるソフィアリが扉の外からおずおずと声をかけてきた。
「ん?ええ。ボクは此処にいますが、マスターそれが何か?」
 部屋の扉を開けてソフィアリと直に顔を会わせる。
「む………やはり此処にいたか……。なら先程見掛けたキャスターはなんだったんだ?」 
 などとソフィアリはキャスターと顔を会わせた瞬間にブツブツと言って考え込んでいる。
「ああ!フフ、その事ですか。いえいえマスターの見間違えじゃありませんよ。何せ今この空間にはボクは”二人”いますから」
「──────は?」
 またよく判らない事をキャスターは言っている。
「ですからボクが二人居ると言ったのです。そういう魔術を使ったんですよ、陣地作成のピッチを上げようと思いまして」
「つまり………平たく言えばその、キャスターは分身や分裂したと言う事か?」
「流石はマスター。理解が早くて助かります」

 意図も簡単にYESと言ってくるキャスターにソフィアリは信じられない面持ちで問い返す。
「出来るのかそんなこと?」
「『世界の書』の中世初期の魔術の項目に記録がありましてそれを使いました。
 その魔術師が自分の研究の作業効率を上げる為に創り上げた魔術です。
 見ての通り片方のボクが工房製作の作業し、片方のボクが聖杯戦争の対策の作業を行える。御覧の通り二倍の作業効率です」
「万能だな貴様は……」
 もはや呆れたと言わんばかりの溜息を感想と一緒に吐いてやる。
 だが意外な事にその当の本人はソフィアリの感想を否定した。
「そうでもありませんよ。ボクは確かに『世界の書』があるため魔術師としてはほぼ万能と言えますが、それでも上には上がいますから」
「お前よりも…………上などいるのか?」
 若干動揺を隠せないマスターの言葉にキャスターは厳かな声音で答えた。
「神々と共に人間が生きた時代。神代の”元”魔法使いたち。特に神代で稀代の魔術師と呼ばれた魔術師達などは完璧に近い。
 彼女たち程の魔法使いとも言えるレベルの魔術師になるとボクのように宝具を媒介に魔術を行使するなんて事はしません。
 何故なら魔力さえあれば自力だけでボクのやっている事が出来ますから」
「─────」
「しかしボクとしては機会があれば是非そんな彼女たちに弟子入りしてみたいくらいです」
 と再び言葉を失っているソフィアリを和ます為か、クイっと眼鏡を上げてそんな事を穏やかに言ってキャスターは締め括った。

「ではマスター、ボクは聖杯戦争攻略のための準備に戻ります。
 ドールたちが駄目でしたのでなにか別のものを用意しなくてはいけませんので」
「あ、ああ任せた……」
 マスターに挨拶をして再び部屋へ戻っていくキャスター。


 取り残されたソフィアリは暫らく立ち尽くした後、このなんとも言えない虚しさを解消する為にコーヒーでも淹れる事にした。

 ───ただし自分の分だけではあるが。





────Servant Side アーチャー────

 正午過ぎ。
 アーチャーは間桐を洋館に置いて一人町までやって来ていた。
 こちらの先行がマスターにバレると後々面倒なので彼と共有している視覚は今は遮断しておく。

「まったく。うちのマスターにも困ったものじゃわ。これだからプライドだけは高い男は好かんのだ」

 ───あのマスターとはハッキリ言って相性は良くない。
 こちらの助言には耳を貸さずにマスター権限を振りかざし、自分の思った通りの行動を取る。
 そして昨日みたいな無様を晒すのだ。
 おまけにそれを他人のせいにするから始末が悪い。
 まあ魔術師なんてどいつもこいつもあんな感じの偏屈者ばかりだ。
 今更魔術師の性格を愚痴ったところで仕方が無い。

 しかし昨夜の敗北はまさに危機一髪だった。
 あのワカメが死ぬのは別に構わないのだが、それでも現世の寄り代である マスターに 死なれるのはちょっと困る。
 もし、後一歩遅かったら……間違いなくあの間桐は死んでいた。

 ”それにしても良くあの陰湿な爺さんがマスターを助けたものだ……”
 ついでに言えばあの臓碩とか言う爺さんもあまり相性が良くない。
 豪快で大雑把な性格をしているアン・ズオン・ヴォンはああいう陰湿でネッチッコイのは好きではない。
 だが間桐臓碩の持つ知識や知恵袋は高く評価していた。
 嫌いだけどそれなりに評価はしてしまう。その事実に少し頭痛を覚えるアーチャーだった。

「───ワシ……ハズレクジ引いたかなぁ。これが美女だったらまだ我慢も出来るんだが───」

 己のパートナーとの相性の悪さに少し憂鬱になりかけた内心を無邪気な笑い声が洗い流してくれた。
「うむ、いつの時代であっても童は元気な姿が一番よの!」
 いつの間にか広場らしい所に来ていたらしい。
 周囲には元気いっぱいに遊ぶ子供たちが大勢居た。

「───あ~…なんか、物凄ぉく嫌な予感がするのぅ………」
 そうぼやくアーチャーの視線は随分と高い木によじ登る子供へ向いていた。
 木の下には危ないよー!?と心配の声を上げる子供が数人。
 それに別に平気だい!と元気によじ登っている子供が返したその時。
「────っ!?うわっ!!??」
 子供達の悲鳴が轟いた。
「チッ!あの馬鹿たれが!!」
 足を踏み外し木から落下する子供に向かってアーチャーは走り寄り、跳んだ。そしてキャッチアンド着地。
 へ?っと驚く声を上げる子供。
 はぁ……と不機嫌そうな溜息を吐き出すアーチャー。
 そしてざわつく広場の子供達。

 ”やってしまったわ───”
 つい反射的にやってしまった。
 霊体化したままでは落下する子供は受け止められないからつい実体化して子供を助けてしまった。
 ”───まあいいか、やってしまった事はしょうがないわい。ふはははははー!”
 生前から彼の長所なのか短所なのか、大雑把で適当なところは死した今でもなお顕在だった。

「おい、坊主。怪我はしてないか?」
「う、うん」
 おずおずと答える子供を地面に降ろしてやる。
「まったく馬鹿垂れが。次は誰も運良く助けてはくれんだろうから、もうあの木には登るなよ?」
 子供はよっぽど怖かったのか涙目で首を何度も何度も縦に振った。
「おう、それじゃあの。もう危なくないようにして遊ばんといかんぞ坊主」
 アーチャーは励ましのつもりで子供の頭をワシャワシャと撫でてやり立ち去ろうとした。

 そう、立ち去ろうとしたのだ。

 わーーーーーーーーーーーーーっ!!
 怒涛の勢いでアーチャーに迫り来るちびっ子軍団!
「な、何じゃ!!?大陸の蛮族か?憎き中華?まさか間諜か!!?」

 そうしてうろたえるアーチャーはたちどころに子供達の波に飲み込まれてしまった。

「うわーすげえ!鎧だ鎧!」
「ぼくしってる!こういうの着てるのって『ぐんじん』なんだぞ」
「違うってがいじんだって!」
「ねえねえいまのどうやったの?どうやったの?」
「かみの毛わたしみたいに長いねー」
「きゃはははは!頭からワカメが生えてるー」
「たろうくんを助けてくれてありがとー」

 子供達の質問攻めに遭うサーヴァント。
 すっかり広場のヒーローになってしまった。

「ええい、ちょ、離さんか小童ども!ぬ、髪を引っ張るでないわ!
 ああっ!小娘一体何処を触っとるか!そういうのは後もう5年位経ってから来い、相手をしてやるから」
 揉みくちゃにされながらも脱出を試みる。
「なーなー!おれたちと相撲しよう相撲!?」
 が、その脱出はその一言により阻まれた。

「────なに……?相撲、だとぉ?」
「え……?う、うん……す、すもぅ………」
 突然声色が変わったアーチャーに子供が怯えていた。
「この国では───相撲なんて危険なものを童にやらせるのか?」
「ん~あぶなくないよ?」
 怯えている子供の変わりに別の少女がアーチャーの質問に答えてくれた。
「いいや危険だ。あれは危険極まりない格闘技だ。うむ、丁度よいか、ワシが一つお前たちに昔話を聞かせてやるわ」

 纏わり付く子供たちを引っぺがし自分も胡坐をかく。
 流石は子育てを乗り越えた子持ちの父親。その子供の扱いは中々に手馴れたものだった。

「大昔にある外国に一人の王様が居った。
 その王様はとても格好良く、鋭い鷹の様な瞳をしていて、気品が有り、優しくて、とても力強くて格好良い、素晴らしい王様だった。
 でそんなある日のことだ。その王様はある祝いの席で相撲取りと相撲を取ることになった。
 なにせ強い王様だったからな。その王様も相撲取りと相撲を取るのは楽しみだったのだ」

 子供たちは皆、アーチャーの昔話?を静かに聞いている。

「王様と相撲取りの相撲は激戦になり、両者一歩の引かない接戦になったのだ。
 ……だが!…………そこで悲劇が起こったのだ!」
 アーチャーのいかにも悲劇っぽい?声にきゃーっと子供が反応する。

「あまりの接戦で王様はうっかり手元を狂わせてしまい、その関取に地獄車をかけてしまったのだ!
 すると、地獄車をかけられた相撲取りは王様にゴロゴロと回されてから放り投げられ、土俵の角で頭を打って死んでしまったとさ」

「─────」
 アーチャーの昔話が終わると周辺は静まり返った。
 どうやら子供たちは今の昔話で戦慄しているらしい。
 相撲ってこわいね。うん、ボクもうぜったい相撲しない!という声がチラホラ聞えてくる。
 しかしそんな中で一人の純粋無垢な男の子が思った通りの事を口にした。

「でもそれって王さまが悪いんじゃ?」

「ん───?なんだ童?」
「それってお相撲さんを死なせちゃった王さまが悪いん────あああああああ」
「いやいや。違うぞ坊主?王様は悪くない。だからと言って死んだ相撲取りが悪いと言う訳でも無い。悪いのは……そう運じゃ!」
 そう言いながらアーチャーは子供にヘッドロックをかける。

「いいか?お前たち?運が悪いとさっき木から落ちた童や、この童みたいな事になる」
「ああああああああああああああ」
「だからと言ってこの童が悪いと言う訳でも無い。つまりワシが何が言いたいかというとじゃ。気をつけて遊べよ童ども」

 はーい!と元気に返事をする子供たちの声を背にアーチャーは颯爽と去っていく。

 残ったのはヘッドロックをかけられ犠牲になった小僧が一人だけ。
 怪我人は一人も居ない。
 愛らしい童たちは実に楽しそうに遊んでいる。

 うむうむ、フユキの町は今日は平和らしいぞ?




──────Fighters Side──────

 夢を見る。
 いや、正しくは見た、か。
 ある一人の勇士の物語を────。


 その男は常に孤高だった。
 家族らしい者も居ない、彼を心から慕う部下らしい者も居ない、彼が心から信頼出来る仲間らしい者も居なかった。
 そうしていつもの如く独りで戦い、そして勝利する。
 そういう人生。


 とある国で怪物が襲ってくるという話を耳にすると彼は即座に15人の部下を引き連れその国へ向った。
 その国の王や兵士の話では、国を荒らす怪物は巨人の類らしい。
 怪物グレンデル。
 それが勇者ベーオウルフの伝説における最初の強敵。

 この二人の戦いは壮絶なものだった。
 ヘオロットの館に武器を持たないで押入って来たグレンデルに対し、ベーオウルフは果敢にも素手で挑みかかり肉弾戦を行った。
 いや仮に武器を使っていたとしてもこの巨人に通用したかは判らない。
 なにせグレンデルの魔法めいた皮膚にはたいていの武器は通用せず、剣でも槍でも弾かれてしまうからだ。

 そんな真性の怪物にベーオウルフは己の肉体のみで戦う。
 だが巨人であるグレンデルの怪力も凄まじい。

 打ち出される拳圧は闘牛の突進の如く。
 繰り出される蹴りは岩盤をも穿ち。
 締め上げるその剛力はまさに万力も同然───!

 巨人が空振るった豪腕の風圧で館の兵士が吹き飛ばされる。
 勇者が命中させ損なった蹴りが壁に大穴を空ける。
 グレンデルの体当たりでベーオウルフの体が室内を破壊しながら奥の間まで吹き飛んで行く。
 お返しとばかりに今度はベーオウルフが6mはあるグレンデルの巨体を館外まで投げ飛ばす。

 時間が経過すればする程に戦闘は激しさを増していた。

 ベーオウルフと共に付いて来た15人の部下は彼を助けようとはしない。
 否、二人の次元違いの闘争に全員が硬直したまま誰も動けないでいたというのが真実だった。 

 勇者の怒号と怪物の雄叫びがヘオロットの館を揺るがす。
 二人の戦いで周囲はまるで戦争でもあったかのような状態になっていた。
 穴の開いた壁、抉られた地面、叩き折られた柱、破壊された家具。そして彼らが零した血に。引き千切られた兵士の死体。

 それでも両者は一時も手を休めずに拳を、蹴りを、肉体を、相手に叩き込んでいく。
 ───二人が待つのは相手が見せる絶対の隙。
 一撃で勝負を決せられる好機を作り上げる為に肉体を酷使し続ける!

 そしてついに両者の戦いに決着が付いた。
 吹き飛ぶグレンデルの片腕───!
 身が竦むような絶叫が轟く。
 腕から大量の血を撒き散らしながらグレンデルは棲家の池へと逃げ出した。

 こうして一人の勇者により怪物が退治され人々は喜びの宴を開いた。
 宴に招かれた吟遊詩人はこの勇敢なベーオウルフを讃える歌を、彼の過去の武勇を歌にする。
 シゲムントの歌も歌われた、フィンの歌も歌われた。そこにベーオウルフの歌が加わったのだ。

 彼の力に感動したフロースガール王は感謝の意も込めてベーオウルフに息子として縁を結びたいと申し出た。
 そうしてフロースガール王の義息となったベーオウルフ。
 怪物退治の褒美として様々な宝物も贈られた。
 酒と御馳走と荒くれ者どもが集う宴。

 勇士達の喧騒に囲まれながらベーオウルフは静かに祝いの杯を乾していた───。



「ん……朝か」
 意識が覚醒する。
 二度寝など腑抜けた事はせずにスパッと起きる。
「今の………ファイターの過去か?」
 霊的に繋がっているマスターとサーヴァントは時々そういう事が起きるらしい。
「確か伝承ではあの後は……フロースガール王の友が攫われて救出を依頼されたベーオウルフはグレンデルの母親の水魔退治をするんだったか?」
 ……なるほど。今も昔も助けを求められると応えようとするファイターの性格は変わらんらしい。
 そんな益体の無い事を考えながらやれやれと溜息をつく、だが何故か胸にささくれ立ったものが残った気がした。

 遠坂は身支度を終え、居間に下りる。
 ん?ファイターの気配が無い?
「何処だファイター?」
「私はここだがマスター?」
 呼びかけるとファイターが姿を現わした。
「さっきまで何処に居た?」
「ん?いや地下の魔法陣で回復に努めていたが?」
 こちらの意図が判らないようで、はて。と首を傾げている。

「いやならば良い。紅茶は飲むかね?」
「…………………………頂けるのなら、是非頂きたい」

 などと少し照れ臭そうに言葉にした。


「で、今夜はどうするのだ遠坂殿」
 朝食取り終え、食後のお茶を愉しみながら作戦会議をする。
「ファイター昨夜のセイバー戦の消耗具合は?」
「特に大した事は無い。宝具も使っていないしダメージも受けてない、魔力消費は多少はしたが、もう回復出来ている」
「そうか。地下の魔法陣+私からの魔力供給だからな。私自身もマナから魔力提供を受けているから此処だと回復は早いという事か」
「そのようだ。いや実にこの邸宅の地下にある霊脈は凄まじいな」
「ああ。何せ吸血種さえも寝床にしたことがある霊脈だ。一級品なのは間違いない」
 そうして二人揃って熱い紅茶に口をつける。
「もしかしたら今夜も町へ出るかもしれない」
「町へ出るのか?」
「ああ。戦況に応じて動くのが私達の戦略方針だ。昨日のセイバーとの戦闘とそれを監視していた何者か。
 隣町のキャスターらしきサーヴァントの戦闘痕跡と複数の謎の気配。既に七人揃っている可能性がある」
「なるほど。ついに開幕か」
「ああ、その可能性は決して低くは無い」

 ついに始まった聖杯戦争。
 遠坂悲願の儀式。
 七体の英霊と七人の魔術師による殺し合い。

「今夜も町を監視して、何かの動きがあったら討って出ることにする。場合によってはそのまま戦闘だ」
「む?今朝はなにか随分と好戦的なのだな遠坂殿?」

 ”────好戦的、なのか私は?”
 一瞬ファイターの言葉を頭の中で肯定しかけるが即座に首を振って否定する。

「いやそんな事は無いさ。昨日の今日だからな。長い戦いに備えて少しくらいのウォーミングアップは必要だろう、ファイター?」
「ふむ。確かにそれは必要なことだな。遠坂殿が早く聖杯戦争の空気に慣れられる様に私も協力しよう」

 ───いや、別にそんな事は無いさ。私は別に今朝見た夢が原因で好戦的になってる訳ではない。
 ファイターは聖杯戦争において必要なただの駒だ。マスターとしてそれが常識だ。
 だから別にこの男と共に戦いたい、などとそんな事は考えていない───。


 
 遠坂はそう思いながらも夜の到来を今か今かと待ち続ける己の矛盾を紅茶と一緒に腹の中に流し込んだ。
 







──────Sabers Side──────

「うおーーーーーーーーーーーーーーっ!結局あの後誰とも遭えなかったーーーーーー!!!!」
 アインツベルンの屋敷がある森に、野犬として育った血統書付きの遠吠えが響き渡る。

 ファイター戦の後、セイバーたちは誰とも遭遇しなかった。
 ファイターとの戦闘が不完全燃焼で終わるとセイバーはアインツベルンを連れて、次の敵を求め二つの町を散策した。
 だが結局、今夜はもう誰とも遭遇はしないと判断するとマスターと共に館まで引き返してきたのだった。

 ちなみに町を監視していた聖堂教会の構成員は昨夜の出来事をこう語る。

 ────今起こったことを有りのままに話すぜ?
 俺たちはゲドゥ牧師の命令で町の監視をやっていたんだが気が付いたらいつの間にかメルヘンの国に居た。
 何を言ってるのか全く判らないと思うがとにかく確かにメルヘンの登場人物が目の前に居たんだよ!


「くそーーーーーーーーーー!!物足りないぞぉーーーーーーーーーーー!!」
 そのメルヘン野郎の雄叫びが再び森に響き渡る。
 だがまだこの鬱憤はスッキリしない。
 今度は欲求不満が溜まっている新妻のように吼えてみる。
「あっふ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ん!!!あ~~な~~~たぁん!!!
 ……いやいやここは悩ましげなオードの真似をして、ローランさまぁん♪にしておくべきかな?
 いや駄目だぞオレ!!ふしだらだろ!?不純異性交遊ダメっ!オリヴィエが怒るからな、うん。
 ……でもちょっとくらいなら………」

「───お止めなさい気持ちの悪い!!騒々しいですよセイバー!」
 ともう一回やろうとしたら今度は侍女に怒られた。
「よう、おはよう。マスターはまだ寝てるか?」
「ええ、昨夜は随分と遅くにお帰りになられましたから暫らくは起きては来ないでしょう」
「そっかーそりゃつまらないな」

「やることが無いのなら掃除でもしてなさい」
「そういうのは侍女のアンタの仕事じゃないか。騎士の仕事じゃないな」
 肩を竦めて両手を広げこの侍女にハッキリNOと言ってやる。
「というかさ。なんでか知らないがオリヴィエに、お前は掃除はするな!と言われてるからな」
「──────そのオリヴィエという方が何を言いたかったのか理解できました」
「…???」
 侍女はこれ見よがしに溜息をついた。
 ローランに掃除をさせてはいけない。なぜなら片付くより先に散かるからだ。
 しかしその当の本人は相変わらずの良く判ってない顔をして首を傾げていた。

「あそうだ。朝飯ある?」
「…………アインツベルンにはサーヴァントに食べさせる様な食事はありません」 
「そっか、じゃあ自分で見繕うかな」
 セイバーは侍女の却下をあっさり流すと館へ向かって駆け出した。
「ま、待ちなさいセイバー!」

 館の玄関からは意外な人の姿が見える。
「あれ?マスター何やってるんだー?」
「誰かと思えばセイバーですか」
「マスターはまだ寝てると思ってたぜ」
 二階に居るアインツベルンと一階にいるセイバー。
「眼が覚めたので起きてみただけです。暫らくしたらまた床に就きます」
「あ、そうだ。マスターもなんか食う?オレ今から食い物探すんだけど───」
「セイバー!お嬢様にそんな下品な事をさせないで頂戴!」
 どうやら外に居た侍女に追いつかれたようだ。
「あちゃ~追いつかれた」

「セイバー、食事がしたいのですか?しかし貴方は魔力を栄養とするサーヴァント、なら食事は必要は無い筈ですが?」
 当然の疑問をアインツベルンは口にする。
 侍女もうんうんと頷いていた。
「必要なのと好みの問題は別なんだぜマスター?」
 そう言いながらセイバーは悪戯をした子供のように笑った。
「…………わかりました。貴女達、私の食事のついでにセイバーに食事を用意を」
「…え?あ、はい。畏まりましたお嬢様。直ぐに準備いたします」
 侍女は一瞬だけ女主人の要求に困惑したがすぐさま言われた通り二人分の食事を用意する為に厨房へと向かって行った。
「お、やったー!良いのかマスター?」
「かまいません。それに犬じゃ無いのだから今後食料倉庫を荒らすのはお止めなさい。食事が必要になったら私に言えば用意させます」
「ああわかった。じゃあ今度からそうする」
 話をそれで一旦切るとセイバーとアインツベルンは二人で厨房へ向かう。

 侍女に促され馬鹿みたいに大きな食卓に着く。
 長方形状のテーブルの端と端に着いた為、物凄くマスターと離れた位置関係になってしまっている。
「いやこれは流石に遠すぎる……まともに話も出来ないぞ」
 いそいそとマスターの直ぐ傍まで席を移動する。
 うん。やはり飯を食べるなら美人と食べるのが一番だな。
「しかし何度見てもデカイ館だなぁ。オレたちの王の別荘のがデカイけど豪華さで言えばこの館も負けてないぜ」
 まるで子供みたいに周囲をキョロキョロと見て回る。
「お茶も美味いし、マスターも綺麗だし、食い物も美味いしで実に良い事尽くめだ。あはは~いやオレって運が良いなぁ」
 ご機嫌なまま、紅茶を飲み、茶請けをモグモグと食べる。

「そういえばさ、マスターはオレを召喚した触媒は何を使ったんだ?」
「触媒、ですか?」
 それまで静かにお茶を愉しんでいたアインツベルンが顔を上げる。
「うん、触媒。いや別に大した意味は無いんだ。ただこの時代まで一体オレに関する『何が』残ってたのかなあって思ってさ」
 少し興味深々気にセイバーは訊く。
「貴方の紋章を触媒にしました」
「オレの紋章?オレの紋章って言うと……コレか?」
 セイバーはそう言うと自身の鎧に刻まれた鎧を指して見せた。
「ええ、それです。それがどうかしたのですか?」
 いつも通りに感情の無いような声で訊き返して来るマスターに、セイバーはどことなく嬉しそうな弾んだ声で返事をした。
「そっか。この紋章はな、オレがまだ騎士になる前の話なんだが───」

 ローランの出生は色々と複雑な事になっている。
 親の不義で出来たローラン。
 それが原因でシャルルマーニュから怒りを買った彼の母親は王族から転落した。
 実の父親もローランが幼い頃に亡くなり、ローランは母の手で育てられる。
 そうして母と共に町で乞食同然の生活をしていたローランは当然着る物など殆ど無い状態だった。
 ───だが、持ち前の活発さでたちまちローランは町の子供達の間でガキ大将的な存在になる。
 そうして、彼の友人はそんな着る物の無いローランの為にそれぞれ布切れを持ち寄って服を作ってくれたのだ。

 ─────それから月日が流れ、彼に転機が訪れた。
 そうローランとシャルルマーニュとの出会いである。
 シャルルマーニュに気に入られた彼は母親と共に乞食から王族へと本来あるべき地位を取り戻したのだ。
 王族となり城へ招かれたローラン。それを寂しそうに見守る友人たち。
 そんな彼らにローランはいつもの調子で笑いながらこう言った。

 ”そんな顔すんなって!確かにオレは貴族になっちゃうけどオレと皆の友情はずっと続くんだから────!”
 
「────で、その時にあいつらと誓った友情の証がこの紋章なんだよ。これのデザインはあの時の色違いの布切れで作った服なんだ。
 いやでもまあ、こんな時代までコレが残ってるなんてな。オレ達の友情も大したもんだ……」

 そう言ってセイバーは自身の紋章を見ながら柔らかい表情を浮かべた。

「それからその子供たちとはどうなったんですか?」
 やはり貴族と平民では───とアインツベルンが言いかけたところで、
「え?なんで?オレ普通にあいつらの家に出入りしてたし、城に遊びに連れてきたりしてたけど?」

 なんてあっけらかんと貴族アインツベルンから言わせれば有り得ない事をサラッと言ってのけた。


 その後。
 食事中に侍女から(お貴族様的に)作法が成っていないと怒られてブーたれるセイバーの姿があるのだった。







───────Interlude  ───────

「ぎゃ!!!」
 男の断末魔は一瞬。
 余韻を一切残さず即座に絶命させる。

 足りない。コレではまだ足りない。
 もっといる、もっともっとだ。

 だから……。
 そうだ次へ行こう。


 さあ───可愛い可愛い羊さんを探しに行きましょう。




───────Interlude  out───────













──────V&F Side──────

助けろ!ウェイバー教授!第四回

F君「さてようこそ助けろ!ウェイバー教授!のコーナーへ。いよいよ物語も佳境です!」
V教「え?もう佳境だと!?」
F君「嘘ですAA略」
G3「汚物は消毒じゃー!」
T升「むしろ爺さんは早く成仏しろよ」
V「それはお前が言うべきではないなトマスタァ。でどうだったかな私が用意したシナリオは?」
T「素晴らしい体験だった礼を言っておく……冥土喫茶か……かくも素晴らしいものがあったとは」
F「トマスタァさんがなんか秋葉原支部で洗脳されてるじゃないですか!!」
V「ファック!!冥土喫茶だと!?なぜゲームショップへ行かなかった!全くこれだから脇役は!…ブツブツ」

V「ついに聖杯戦争二日目に突入だ。と言っても今話はまだ聖杯戦争の動きは無いがな」
F「今回は各サーヴァントの掘り下げ的なイベントが主ですね。何か理由でも?」
V「一応キリの良いここで一旦切っておかないととんでもない長さになるからだ。一日の分量が100kb以上行くとか脳みそ沸いてるのか…」
F「長っ!?」
V「本音を言えば日が出てるからやることが無い。だって昼にドンパチやると管理者の遠坂とその部下ベーオウルフがキレるもん」
F「あーあの二人は本気で怒らせたくないですね。特にベーオさんの方が。デコピンでも頭をトマトクラッシュ出来そうですし」
V「で、ローランの紋章は良いとしてラメセスとアンのアレ……いいのか?
  なんだ太陽神の舞って……なんか尤もらしい大嘘を書いて。おまけになんだ相撲で地獄車ってのは!」
F「ただのサーヴァントに興味はありません。
  もしこの中に、(文句のある)エジプト人、(文句のある)古代人、(文句のある)ファラオ人、(文句のある)読者が居たら盗んだ太陽戦車に乗って俺のところまで来なさい以上!」
V「新連載『涼宮フラットの轢き逃げ』でもやるのか?」
F「いいえ、やっぱ辞退します…」



~登場人物の人選について~

V「さて何人か気になってる者も居るかもしれないから今回はFateASの人選についての話をしてみようと思う」
F「微妙に気になるところですよね~しかも結構偏りがありますし」
V「まずこのASだが恐れ多くも第二次聖杯戦争が舞台になっている。全く何を考えてるのか判らん作者だな。
  と言う訳で当然いくつかの制約がある。まず一つが反英霊は呼べない」
F「まあ当然ですよね。なにせアンリマユによる聖杯汚染以前の話ですし」
V「よって反英雄が呼べないため何人かの皆鯖が候補から消えた」
F「羅刹女……スキュラたちグッバイ。ホロリ」
V「そして二つ目が二次、三次戦争のエクストラクラスの混入。
  特に本来ある筈の四次で無くなった分余計にエクストラクラス要るよ…ね……?って理由らしい。
  僕エクストラクラスのファイターが混ざっているのはそのためだ。
F「はーい!なぜ闘士のクラスにしたんですかー?」
V「一番有り得そうな特別クラスが正直これしかなかった……。盾のサーヴァントとか皆鯖に居ないしな。居たらそいつ使ったけど。
  剣士や槍兵に該当しない武器持ちの戦士系クラスなら一番無難だし惜しくなくても掠るくらいはするんじゃないかとオモタ!」
F「適当\(^o^)/万歳」
F「ならアサシンクラスが居ないのは?」
V「これはアサシンクラスに残念ながら皆鯖ハサンが居なかったためだ。
  ハサンが居たら多分キャスタークラスの代わりに聖杯戦争の影の脅威を演出する為にハサン先生が大活躍していたぞ」
F「さすがハサン先生の気配遮断ですね。まとめサイトの一覧に彼の名前が全く見えない;;」
V「そして最後、三つ目が五次四次よりも平均レベルを落とさなければならない。だ」
F「臓碩爺が今回はレベルが高いって余計な事言ってましたもんね」
V「AS唯一の本編キャラである我らシルバープリンスのせいで単純比較しても大英雄クラスの英雄を三体程度に絞る必要性が生じた。
  いやまあでもどっちにしろ大英雄ばかりって状況にはならなかったとは思うがな。弱鯖マイナー鯖最高!」
F「そうです力の劣る駒を頑張って奮闘させるから面白いんです!」
V「で、それらを総合的に判断した結果がFateASの主要メンバーたちと言うわけだ。
  ASのプロット作ってた時点で出来上がってたのはヘイドレクが作られた皆鯖四次辺りだった、かな?」
F「若干偏りがあるのはそのためでもありますね。選択肢自体があんまり多くなかったから」
V「それで大英雄枠にローラン、ベーオウルフ、ラメセス二世。マイナー枠にアン、ヘイドレク。
  人気鯖枠に忠勝、オーソドックスなキャスターのローゼン。と言う組み合わせになった。
  あとは絵が沢山ある奴の方が人物像や話をイメージし易かったと言うのがある。一次皆鯖が多いのはそのせいだ」
F「他は誰が候補だったりしたんですか?」
V「かませのラーマ。住人にムエタイで苛められてたから敢えて超格好良く書いてやろうかなとか考えてた時期があったなw
  ただ平均レベルの問題に引っ掛かったから落選した。ヘクトルやフィンも好きなんだがラーマと同様の理由で落選。
  セイバーはローランと決めていたからシグルドなんかは初めから除外だったな。
  と言うよりはシグルドは流石にあまりに強すぎて普遍的な聖杯戦争を成立させる自信が全く無かったw」
F「じゃあ最後にあのマスターたちの選別理由は?」
V「ズバリそいつが死んでもFateSNにまったく影響を及ぼさない人選で、出来るだけオリキャラじゃないマスター」
F「あ~だからソフィアリさんは長男ではなく次男なんですねー。ソフィアリ家長男が死んだら困るから」
V「そういうこと。初めはソフィアリじゃなくてアルバ家の魔術師だったりした時期もある」
F「大家のソフィアリ家次男が死ぬよりも問題点が多そうだから却下になりましたけどねアカザコ様はw」
V「では今回はここまで。BADった諸君らを次回で待つ!」
F「次回は怒涛の第五話ですよー」