戦中の第三次冬木聖杯戦争をどこかで見聞きしたナチス将校の魔女が、
研究に身も心も捧げその再現方法を理論上確立する。
(もしくは前から知ってて実際の聖杯戦争を見て研究が完成した?)
しかしナチスドイツは崩壊、自分の理論を実証するすべを失い絶望した彼女の元に
ナチスの残党員が声をかける。

 彼らは聖杯そのものではなく、聖杯によって呼び出される英雄たちと、その武装に興味を持ったのだ。
英雄の武器とは魔法に匹敵する神秘の塊であり、その力は時に神霊すら凌駕する。
その力の一端でも再現し、兵器として運用する事が出来れば、それはまさしく常識と戦況を覆す新兵器となる。

その魔術師としては自身の理論を実証する機会さえあればその他の事はどうでもよく、
その上宝具や英霊の研究までさせて貰えるのであれば逆らおうなどと思いもしなかった。
だが一つ問題がある。神秘を公にされることを嫌う魔術協会の存在である。
魔術の兵器転用というだけでも粛清の理由としては充分であろうに、
彼らがやろうとしていることは魔法の域の神秘を兵器として使おうと言うものである。
ましてや聖杯戦争と言うシステムを再現するにはそれなりの霊地が必要である。
そんな土地はまず全て協会の監視下にあるだろう。

 しかし残党たちに抜かりは無かった。彼らは数十年前の地震によって霊脈が乱れ、新たに生まれた霊地を探し出し、
そこと隣接する霊地を組み合わせる事で『大聖杯』を置くに足る霊地を作り出そうとしたのだ。
さらに万が一何十年かしてその大聖杯の存在が協会にばれたとしても、既に出来上がってしまったシステムを壊してまで
「万能の願望器」を手に入れるチャンスをみすみす彼らが捨てるはずも無く、
同時に自分たちもまた総統の命で聖杯を求める者なのだと宣言しておけば、
その裏にある目的まで気取られまいと踏んだのだ。

 こうして聖杯戦争の基盤作りと、それを開催する場所の開発が同時に始まった。
新たに出来た霊地たる海底の洞窟に彼女が収まった大聖杯を置き、その真上にあたる場所に人口の島が作られ海上都市として開発が進められた。

 そして70年近い時が過ぎ、全ての始まりを知るものが全て居なくなろうと言うその時に

 海底深く、偽りの聖杯が戦争の再開を告げる鼓動を始めた。