Fate/Another Servant 
         HeavensFeel 2 予告編


 ※もしかするともしかしたらデモムービーっぽくBGM(エミヤなど)が流れるかもしれません。音量と幻聴にご注意ください。


 ───今より半世紀も昔、ある奇跡の儀式が執り行われた。

 アインツベルン、マキリ、遠坂。この三つの魔術師の家系が協力し、お互いの秘術を提供し合って作り上げた大儀式。

 その儀式の名を『聖杯戦争』

 膨大な力を持つ英霊の性質を利用したこの大儀式は、成功した暁には聖杯を追い求めた彼らを根源の渦へと導いてくれる筈だった。

 そう、筈だったのだ───。
 

 ────1度目の戦いから時を経て、此度また2度目の悲願の時が訪れる────!

「前回の失敗の教訓を生かし聖杯戦争に表向きのルールを付け加える……」
 深夜、遠坂邸の地下工房で落ち着いた声が一つ、誰に訊かせる訳でもなく呟きを漏らしていた。

「勝者はただ一人のみ。その他の敵対する六組は全て排除してしまえば良いのですね、はい判っています。全てはアインツベルンの悲願成就の為に」
 同じくしてアインツベルン本城にて、雪の様に白い美貌の女が頭首ユーブスタクハイトに出立の挨拶をしていた。

「呵々々。まあつもるところ早い話が実力勝負、と言うことだ。今度こそは───そう今度こそは我がマキリの宿願を果たす時よ!」
 同様にその頃、マキリの地下修練場でも大妖術師が己の弟子に説明をしているところだった。

 前回の聖杯降霊儀式は無残な失敗に終わった。

 ユスティーツァ・アインツベルン、マキリ臓碩、遠坂永人父娘たちが協力して作り上げた聖杯降霊のシステムは見事に完成し、七体の英霊を召喚することにも成功した。
 しかし、その後彼らを待ち受けていたものは聖杯の正当な所有権を巡っての対立であった。
 聖杯を追い求める同胞から聖杯の入手を邪魔する怨敵へと切り替わった彼らは己以外の所有者など断じて認めぬと殺し合いを始めた。
 だが彼らの戦いは一向に決着を向かえず、ついには聖杯降霊の限界期限を過ぎてしまい聖杯探求者たちの一度目の悲願は泡のように消え失せたのだった。

 そこで御三家はこの失敗を活かし冬木の聖杯戦争に新しくあるルールを組み込むことにした。
 七騎のサーヴァントと七人の魔術師による血で血を洗う悲願と生き残りを賭けた殺し合い。
 それが冬木で執り行われる聖杯戦争───!

 七騎七魔の生贄たちよ、

 ───聖杯の奇跡は唯一人の為に───

 己が血以外の血でその杯を満たすがいい、

 ───汝、奇跡を欲するなら───

 さすればその悲願は汝が手の内に顕れる。

 ───その身を以って最強を証明せよ─────!


 Fate/Another Servant
         HeavensFeel 2


 これは、皆鯖を愛する者たちへ贈る物語

 この闘争に召喚されるのは純正の英霊七人。

 ローラン
            ベーオウルフ 
 ラメセス二世
            本多忠勝
 アン・ズオン
            ヘイドレク
 クリスチャン・ローゼンクロイツ

 この七組それぞれの視点から描かれる第二次聖杯戦争の顛末!



──────Casters Side──────

「───────」
 ソフィアリは呆然とした心持ちで目の前の状況を受け止めていた。

 彼はキャスターを召喚し、この地の地脈をキャスターに調べさせてから共に工房の設置場所へ向かった。
 しかし、その郊外の丘の上の工房建設地には民家どころか人が住めそうな場所すらなかったのだ。
 貴族であるソフィアリ家の者が野宿なぞ出来るか!とキャスターに工房作成を命令すると、彼は丘を下りて民家の住人に暗示をかけるとそのまま眠りについた。

 そして翌朝。
 目を覚ますと、動けはするものの自身の体の変調を理解した彼がその日を休息に充てたのが昨日の出来事。
 丸一日しっかり休息に使い魔力と体の調子を整えて、寄生した民家の食事を不味い不味いと思いながらもしっかり平らげて丘へ向かった。
 
 ───で。キャスターに工房製作を命じてから丸二日も経過してないのにコレだった。
「い────家……?」
 ソフィアリの目の前にはどう見ても前見た時には存在しなかった物がある。
 これ、どうみても家、だよな……?

 その時、ガチャリというドアを開ける音と共にキャスターが姿を現した。
「やはりマスターでしたか。此処にはボクを知る者じゃないと来れない様な結界を張っていましたからそうだろうとは思ってましたが」
「キャ、キャスターよ………コレは、なんだ?」
 一瞬キャスターは首を傾げたがマスターの目線で言わんとしてる事を理解すると笑いながら”コレ”を説明した。
「ああ、コレはですね?『聖霊の家』ですよ。ボクの工房です。とは言ってもまだ半分程度ですので流石に完成には及びませんが寝泊りする分には十分の筈ですよ?」

 ───化け物か、こいつは───?
 魔術師が時間をかけて作り上げていく魔術要塞をこんな短期間で作ったと言うのか?
 しかもまだ半分しか完成してないと? 

 キャスターに招かれて建物の中に入る。
 ───やはり家だ。掘っ立て小屋なんかではない正真正銘の家。
「マスターには此処を拠点にしてもらいますけどよろしいですね?」
「あ、ああ……。大きいし別に構わんが………」
 それは良かった。と安心するとキャスターは奥の部屋へ入って行く。
 キャスターの後に着いてソフィアリも奥の部屋へ入る。


「ところでマスター。ボクの占星術によるとどうも今夜辺りに開幕になりそうな気配があります。ボクは今夜町へ出ようと思いますがマスターはどうします?」
「───な!!?それは本当かキャスター?」
 あまりのキャスターのレベルの高さに呆っとしていた頭が、開幕という言葉で覚醒する。
「はい。占星術は得意な魔術なんで仮に開幕とまでは行かなくとも恐らく何らかの動きがある可能性は非常に高いです」
 
 キャスターはそう言いながらゴソゴソと何かを取り出し始めた。

「……わかった。ならば今夜私も出ようじゃないか。───ん?キャスターなんだそれは?」
「ふふ、質問が多いマスターですね。これはゴーレムですよと言っても当然ただの人形では無く、魔術礼装と呼べる類の品ですが」

 そう言うとキャスターは自分の宝具である魔道書を取り出しページを開くと、

「さあ、起きなさい、我が七体の───」

 その力以って、七体の人形を目覚めさせた──────。

「うっ!?キャスター……これは」
 小人みたいな七体の人形がゆっくりと動き出す。
「これはボクの武器の一つです。やはり真っ向からの戦闘は圧倒的に不利なので数で勝負します。さあ行きますよ銀、紅、金、蒼、翠───」

 色がこの人形達の名前なのかキャスターは七体人形全てに声をかけていく。

「ボクの八人の弟子たちを意識して作ったのものですが奇しくも七騎のサーヴァントと同じ数になりましたね。
 一応人形はもう一体あるのですけど、ボクが同時に人形の操作をするのは七体が限界数でした。
 スキルにより思考中枢を四つに分割し、一つの思考で二体の人形を操作・運営に充て、人形一体分の容量を予備に空けているんですよ」

 この魔術師はそんなことまで出来るのか……。

「あはは。これでも、正統派な魔術師の英霊ですから」
 目の前の魔術師の英霊は眼鏡を上げならがくすりと笑うと、七体の子供たちを引き連れ開幕の鐘を聞くために夜の町へ向かった。



──────Berserkers Side────

 目覚めの呼びかけは騒々しかった。

『さあこの呼び掛けに応え此処に来い!最強の英霊よ!勝利の暁にはどんな願いも叶う聖杯だってある!さあこの声に応えろ!』

 ───また戦いが俺を呼んでいる。
 そうか、また戦える機会がやってきたのか。ああ、何度でも戦おう、斬ろう、殺そう。
 血だ。血が足りない。栄光が足りない、勝利が足りない、いくら戦っても戦っても戦ってもまだ足りない!
 守護者となってからいくつもの戦場で敵を滅ぼし尽くしたと言うのに、まだまだ全然これっぽっちも足りていない──!

 ───この程度の勝利と栄光では『俺たち』はまだ輝けないのだ───!!

『――されど汝はその眼を混沌に曇らせ侍るべし。汝、狂乱の檻に囚われし者。我はその鎖を手繰る者――』

 ───────────。

 本気かこやつは?狂戦士を求める気なのか?
 貴様はこの……呪われた、哀れで愚かな狂戦士の力を求めると言うか───!!?

 ─────。
 俺が召喚に応じる対価にはどんな願いでも叶える聖杯……と確かに言ったな?

 いいだろう、ならば我が願い叶えてもらうぞ!

 俺が勝利した暁には永劫不滅の光を報酬として貰う!

 我等が呪われた哀れで愚かしい狂戦士たちに証をくれっ!!

 たとえ血塗れた我等でも光輝くに値する存在なのだと言う証明を寄越せ─────!!!


『汝が名はなんだ!?汝が宝具はなんだ!?汝が願いはなんだ!?さあその願いの為にもこの声に応えよ狂戦士よ!』

 我が真名は、狂王のヘイドレクーーーーーーーーー!!

 我が宝具は、勝利と殺戮の魔剣ティルフィングーーーーーーーーー!!!

 我が願いは、全ての狂戦士の栄光の証明をーーーーーーーーーー!!!!


『抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ!破壊の戦士よ───!』

 あぁお、お、おお!あ、があああぁぁあああああああぁあああああぁあああ!!!
 ■■■■■■■■■■■■■■■ーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!





──────Archers Side──────

 ─────アーチャーを召喚して二日。つまり雨生がバーサーカーを召喚する前日。
 
 闇夜の町を一人歩く。
 アーチャーは霊体化させたままの状態で傍に付かせている。
 民家は皆が皆とうに寝静まり、辺りを照らす光は綺麗な月明かりだけだった。

 間桐はアーチャーを召喚してからきっかり丸一日はまともに動けなかった。
 そんな彼の無様さを笑いながら、臓碩はどうもサーヴァントが既に三体が召喚されているらしいとの話をした。
 臓碩の情報がどこまで信用できるかは判らないが、あれでも前回の戦いを直接見てきた妖怪爺だ。
 全くの見当外れと言うことも無い筈だ。となるともう聖杯戦争の開幕は間近に迫っていると判断した。
 ならば今日のうちに少しでも情報を集めておかなければならない。昨日出遅れた分を取り戻さなければ。

「おいマスター」
「なんだアーチャー」
「まだ七人集まっておらぬのだろう?だったら───」

 アーチャーの問いを最後まで言わさずに、間桐は苛立たしげにアーチャーに向けていた視線を元に戻して黙殺した。
「何をイラついとるんじゃ?なんじゃい貴様、もしかして召喚早々に気絶したことを気にしておるか?」
「───っ!!なんだよお前、気絶したことがそんなに滑稽か!!?」
 間桐の怒鳴り声が夜の町に木霊する。

「おら夜中なんだから静かにしろ。もし敵がいたら今のは下手すると命取りだぞ?」
 アーチャーの態度に怒りでギリっと歯が鳴る。
「いいから落ち着け。そもそもワシは貴様が気絶したことなぞどうとも思っておらんわ。あんなのどのマスターでも普通になる事だ。
 ……まったくマスターにも困ったもんだ。妙なところでプライドが高いと言うかのう」

「ふん!糞爺は嘲笑ってやがっただろうが!」
「あの腐れ爺は無視しておけ。ありゃ性根どころか精神が腐ってやがるわい。知識はあるようだがあの陰湿な性格はワシャは好かん」
 ケッ!っと吐き棄てるアーチャー。
「ふん。大体俺はお前のその言葉遣いも気に入らないんだ。なんだそのどこぞの糞爺っぽい、つか見た目の割りに妙に爺臭い口調は!?」
「む、おいおいマスター。貴様いくらなんでもそういう当たり方はあるまいて。そもそも言葉遣いに違和感を覚えるのは文化の違いというやつなんじゃからしょうがないわ」
「そもそも前から思ってたんだがアーチャー、なんでお前はそんなにオッサン臭い喋り方するんだよ?」

 アーチャーは主の問いに少し困ったような顔をすると、さも面倒臭そうに説明しだした。

「あー細かく説明するのも面倒じゃから手っ取り早く説明するぞ?ワシらの社会もな年功序列なんだ。
 今と違って大昔は年を食ってる老人の方が知識と経験があったからな、それが重宝されたというわけだな。
 だがワシらのような若いのも童扱いより一人前の男として扱われたいと思うのが当然であろう?
 ワシらの時代では子供をきちんと育てきって一人前とされとる。
 ということは当然、妻を娶り子を生して育てていく内に自然と一人前の男……つまり父親として相応しい口調にもなってゆく、と言うわけだな。
 ……というかな、戦国時代の男はどいつもこいつも骨太のオッサンだぞ!」
 
 説明が終わると、ぬはははははー!と若々しい見た目とはえらく不釣合いな笑い方をするアーチャー。
「父親としてって……お前、子供がいるのか?」
「まあな、娘がおったわ。と言っても当然もう死んどるがな」
 さっきまでのひょうきんな声音とは違い、今度のアーチャーの声はずいぶんと素っ気無かった。




──────Lancers Side──────

 ついに闇が到来する。
 それぞれのマスターの思惑が交錯する中、世界はいつも通りに冬木を夜に染め上げていく。




「よし。これで準備は全て完了っと」
 綾香は出かける準備を済ませ、頬を叩いて気合を入れてみる。
 バチン!とちょっと威勢が良すぎる音が炸裂する。
 ……いたい……しまった、少々力を入れすぎたらしい。
 今度は逆に叩いた頬を撫で擦る。

「はっはっは!主殿はお茶目でござるのぅ」
 ランサーに今の恥かしい様をバッチリ見られていたらしい。
「ランサーうるさい」
「おっと、これは失敬した」
 などど謝罪の言葉を口にしながらも、霊体化しているランサーの口元がニヤついているのは気配でわかる。
「ふんだ。準備も出来たんだし早く行くわよ」
 ランサーを置いてズンズンと部屋を出る。

「ところで主殿。どこか顔色が優れんようでござるが大丈夫か?」
 先に行く綾香の背にランサーは少し心配そうに声をかけた。
「え?顔色悪いのわたし?」
「うむ、少し青い気がするゆえ問うてみたのでござる」
「う~ん。特に体調が悪いとも感じないから……恐らく、緊張のせいじゃないかしら?」
 そう言いながら綾香は特に問題なさそうに笑った。
「まあ主殿がそう言うのであれば、それ以上は拙者は何も言わぬよ」

 ランサーはそう言って綾香の背後に無言で忠犬のように寄り添そってきた。
 二人で山門を潜り、馬鹿長い階段を下る。
 いよいよなのだ。これが初陣。沙条綾香にとって自分の意思で戦う最初の戦。

「そうだ主殿!拙者訊き忘れていたことがござった!」
 初陣という現実に少し緊張し始めた頃、唐突にランサーが大きな声を上げた。
「ひゃっ!!?ちょ、ちょっとランサー!びっくりさせないでよ!!」
「いや申し訳ござらん。だがどうしても訊きたい事があったんでござるよ!」 
 驚かされて少し怒る綾香にもランサーは侘びはすれど、それ以上に大事なんだと言わんばかりの真剣さ詰め掛けた。
「ん、で?何が訊きたかったの?」
 あまりのランサーの真剣さに流石の綾香も何事かと耳を傾ける。

「────徳川の天下は終わるのでござるか?」
「─────」

 ランサーの口から飛び出したのは聖杯戦争とはなんら関係ない事柄。
 だがそれはこの侍にとってはとても、とても大切な事柄だった。

「───ん。そうよ。残念だけど徳川の世は終わるわ」
 だからこそ、彼には嘘偽り無い真実を告げてあげた。

「─────。そうか、徳川の天下もついに終わりを迎える時が来たのでござるなぁ」
 だが思いのほかにランサーの返事は軽やかなものだった。
「あら、もっと残念がるのかと思ったんだけど?」
「いやそりゃ残念と言えば物凄く残念ではあるが、それでもこの戦乱続きだったこの国を何十年何百年と統治したのでござるから、我が主君の徳川家康もきっと満足してござろう」

 そう締め括ったランサーの声はさっぱりとしたこの侍らしいものであった。




──────Riders Side──────

 召喚が終え、再契約を完了させた後、ライダーはすぐさま移動することを提案した。
 ”移動だと?何故だライダー?”
 ”くく、何故も何もあるまい牧師。戦争をするならばまずは足場固めが先だろう”

 そうしてすぐさまその場から移動した彼らは町に降り拠点探しに勤しんでいた。
 代行者七人も無言で牧師の後に付いて来ている。

「あの家屋はどうだ?」
 そう言って牧師は一軒の小さな家屋を指差した。
「断る」
「───なに?」
「断ると言ったのだ。なぜこのラメセスがあんな豚小屋のような狭い家を拠点にせねばならん?」
「そんなことを言っている場合では無いだろうライダー。大体貴様は霊体化しているから関係あるまい」
「断る断る断る!嫌だ却下だ拒否だ、俺様の家はもっと大きくないと認めんぞ!貴様はファラオに豚小屋に住めと抜かすかうつけがっ!!」
「なら野宿でもするのか?私は慣れているし別に構わんが?」
「ぼ、牧師!貴様それでも俺様のマスターか!?否、それ以前に貴様それでも文明人か!この原人め!」
「そういうお前は真正の古代人だろう……」

 ───最初から頭が痛い。一体どこに住居に文句をつけるサーヴァントがいるというのだ?

「そもそも野宿など体に悪い。いいだろう牧師、貴様がそのつもりだと言うのならこちらにも考えが───」
「わかった、判ったから駄々をこねるな。お前の言う通りもう少しマシな家屋を探す。それでいいのだろう?」
「うむ、苦しゅうない。それでこそ俺様のマスターだ、ハッハッハ」
「となると河の向こう側か……確かトオサカやマトウが根を下ろしているのもあちら側の町だったな?」
「はい、事前の調べによると」

 その後、牧師と女代行者は二三言の言葉を交わし河の向こう側の町へ歩き出した。


「うむ、此処ならよいぞ」
 と散々歩いた末に決めた日本家屋を前に踏ん反り返るご機嫌なファラオ(馬鹿)が一人。
 そしてサーヴァントに振り回されて少し不機嫌な牧師(外道)が一人。
「ならここでいいんだな、ライダー?」 

 彼らが今居るのは遠坂家や間桐家の反対側の坂に位置するとある日本家屋である。
 てっきり建物の大きさだけで決めるものだと思っていた牧師だが、
 意外なことにライダーは建物の大きさ、地脈、部屋の造り、敷地の広さを、総合的に考えて一番大きな屋敷ではなく、ある程度大きい屋敷を選んだ。

「ああ、問題無い。広さも我慢出来る程度はあるし、襲撃時用の退路もある、入り組んだ内部は攻め難く守り易い」
「意外と考えていたんだな。ではライダー、それにお前たちもここで少し待っていろ」
 そう言うと牧師は一人寝静まった屋敷の中に入っていった。

 ───数分後。
 中で寝ていたはずの住人たちはふらふらとした足取りのまま両手に荷物を持ってどこかへ歩いて行った。

「マスター、今のはなんだ?」
「大した事は無い。暗示を掛けて今から旅行に行って貰っただけだ。あんな異教徒なら殺しても構わなかったのだが死体の処理も面倒だからな」
「牧師。貴様に一つ確認しておきたいことがあるが、貴様魔術師か?」
「いや、私は教会に仕える身だ。魔術など身に着けているはずも無い。私が使ったのはあくまで秘蹟だ」
「ふん詭弁だな、魔術も秘蹟も同じ神秘であり奇跡であることには変わるまい。
 だがまあいいさ。どうやらお前は魔術回路自体はあるようだからな、質はともかく魔力供給は特に問題も無く行われている」
「それは結構なことた。魔力供給が足りない時には言え。適当に異教徒どもを贄に用意してやろう」

 ライダーは実体化して先に屋敷の中に入っていく。

「さてマスター、拠点も決まった。早速だがこのラメセスの結界と宝具の配置場所を探しにゆくぞ。戦いは既に始まっているのだ」

 先行するライダーは牧師に振り返ると、戦いを前に滾るような笑みを浮かべていた。




──────Fighters Side──────

「───貴殿が、私の力を必要とし、我が身を現世まで招来したマスターか?」
 低くそれでいてよく通る声、男らしい太い眉、遠坂と同じく口髭は無いが立派な顎鬚。
 少し長めの髪を大きく左右に分けて額を綺麗に出した風格のある面構え。
 硬そうな皮のブーツと丈夫そうな半袖の装束から覗く鍛え抜かれた豪腕。
 勇者の名に相応しい幾多の戦場を潜り抜けてきた外套。そして何よりもその圧倒的な存在感。

「左様、私が貴公をこの現世に呼び寄せたマスターだ」
 胸の内に湧き上がる興奮を勤めて抑えながら遠坂も応える。
『遠坂たるもの常に余裕を持って優雅たれ』と言う家訓が無かったらきっと遠坂は小躍りでもせんばかりに興奮していただろう。
 なにせ今回の聖杯戦争はもはや勝ったも同然なのだ。
 聖杯戦争において最高の能力を持つとされるセイバークラス。
 それが遠坂が呼び寄せたサーヴァント。

 冷めやらぬ胸の高鳴りを抑えながらもまず最初に確認しておかなければならない質問をする。
「まず確認したいのだが、貴殿は彼の勇者、ベーオウルフでクラスはセイバーで相違ないかな?」
 朗らかな口調で問うマスターとは対称にサーヴァントは少し済まなそうに口を開いた。
「ん……私がベーオウルフであるのは間違いない、のだがその、だな……マスター………。
 期待を裏切ってしまい大変申し訳がないのだが……今の私はセイバークラスではないのだ……」

 ……な………な、に……………?

「───今、なんと言ったんだ?」
 有頂天な頭に冷水をぶっ掛けられたような感覚。
 今この英霊はセイバーではないと言ったのか?
「……ん、セイバーではないと申したのだ。まことにすまぬと思うが……」
 重ねて謝罪を口にしながらベーオウルフは遠坂にきっぱりと告げる。己はセイバーではないと。

「ちょっと待てどういうことだ?説明してもらいたいのだがベーオウルフ王。いや待て、セイバーでは無いのならそもそも貴公のクラスは何だ!?」
「順を追って説明するとまず今の私のクラスだが闘士のクラスである『ファイター』に据えられている」
 ───闘士?剣士でもなく槍兵でもなく弓兵でもなく闘士だと?

 セイバー、ランサー、アーチャーの三騎士クラスでもなく、ライダー、キャスター、アサシン、バーサーカーの基本クラスでもない特別クラスのファイター。
 それが今回のベーオウルフのクラスだった。




──────Sabers Side──────

 ───冬木の町よりほんの僅かばかり離れたアインツベルンの館。

 ドドドドドドドドドドと物凄い勢いで広い廊下を疾走するアホが一人。

「マスターーーーーーーーーーー!!」
「なんですセイバー?騒騒しい」
「よっ!マスターの召使い。マスターはどこにいるか知らないか?」
「お嬢様なら今は寝室で御休みになっています。お嬢様になんの用件があるのですセイバー?」
「へっへっへ~ジャジャーン!さっき森の中でうさぎを捕まえたからマスターにやるんだ。ふふん可愛いだろうこいつ?」
「今すぐに棄ててらっしゃい」
「えーーーーーーーーっ!!?せ、折角マスターの為に捕まえてきたのに!」
「お黙りなさい。お嬢様の為を何かを献上するのなら、そんな獣臭い畜生ではなく敵サーヴァントの首級を持って来たらどうです?」
「む、しかしな召使い。まだ聖杯戦争は始まっていない。
 七人集まる前に始めたところで意味は無いし、何よりオレはそんな不意打ちみたいな卑怯な真似をするつもりは毛頭無い」

 ───溜息。まったく参る。
 このサーヴァントは召喚されてからというもの、暇があれば森に出て兎や鳥を追い掛け回したり、館にある食料を漁ったりしたと思えば、
 今の様に卑怯な真似はしないとキッパリ言い捨てる騎士道精神に溢れた一面を覗かせたりするのだ。

「なら結構です。くれぐれも御休みになっているお嬢様の邪魔はしないように、いいですね?」
 セイバーはちぇっ、と言いながらどこから漁ってきたのかシャクシャクと林檎を齧る。
「大体セイバー、貴方はサーヴァントでしょう。ならお嬢様に負担を掛けないように普段は霊体化していなさい」
「霊体のままでは林檎が食えないじゃないか」
「そんなものは知りません、そもそも栄養補給なんてサーヴァントには無意味でしょう」
「おっ!?トンビじゃねーか!オラー待てー!!」
 侍女の小言を完璧なまでに右から上へと放り投げ、ローランは館の外へ出て行った。
「…………はぁ、まったく……」




 これら七つのsideに加えてもう一つ、聖杯戦争に敗れた者達を慰めるお助けコーナー
 『助けろ!ウェイバー教授!』を搭載────!!


──────V&F Side──────

「おいフラット……なんで私がこんなところにいるのか簡潔に述べろ」
「なんでって、聖杯戦争にはお助けコーナーは必須だと思うんですよ俺っ!」
「ベルベット征服スタンプ!」
「熱いっ!!?ちょ熱っ!葉巻を押し付けないでくださいよ!?クリティカルヒットじゃないですかっ!」
「マスターV講座の方はどうした!!?」
「それはそれ、コレはコレです。まあまあ先生このコーナーは後書き的な解説とか裏話も兼ねてるんですから仕方ないじゃないですか」
「なら後書きや裏話を書けば良いだけだろう!私は忙しいんだぞ!?」
「だって、そんなもんチマチマ書いても面白く無いじゃないですか……先生だって判ってるくせに」
「……………まあそうだな。私が悪かった」
「先生は何だかんだ言っても教諭の中では話が判るんで皆に好かれるんですねハイ!」
「そ、そんな事は訊いていないだろうっ!で?私は何をすればいい?」
「じゃあそうですね。今回の彼の敗因でもお願いします」
「うむ、完全な実力不足だ。以後精進するように以上」
「ちょせんせぇぇぇぇえええええええ!」

「ところでフラット。本編のマスターたちは出るのか?」
「そんなもん出ませんハイ」
「即答か……まあ第二次聖杯戦争を舞台にしてるから出る方が逆におかしいか」
「あ、そだ。ちなみに強いマスターとかも出ませんよ?」
「宝具投影とか十年宝石とか撲殺蛇とかは居ないわけか?」
「そんな超人マスターとか臍で茶が沸きますよ。英霊に人間は太刀打ちできないっていつも言ってるのは先生じゃないですか」
「あ~一応義務的に訊いておくがボーイミーツガールとかは?」
「あーはっはっはっは!!これ漢しかいないですよ?」
「じゃあ質問の種類を変えるがローゼンクロイツの人形はなんなんだ?」
「なんなんだって先生……。そりゃあ皆鯖のマスター達がローゼンクロイツを”わざわざ”お父様とか呼ぶのはつまり
 『いやいや別に俺たちが見たいわけじゃないのよ?○ーゼンメイデン別にやって欲しいわけじゃないよ?うん別にねうん』って事じゃないですか」
「うむつまり?」
「ある種のサービスジョーク。それ以上でもそれ以下でもないです」
「なるほどココはこういうコーナーか」
「はいこういうコーナーですね」



 テーマは”普遍的な”の聖杯戦争───!

 同盟、共闘、そして裏切りを含めた知謀知略
 聖杯の器と降霊場所をめぐる奪い合い
 炸裂する数々のスキルと激突する宝具


 ───描きたいものはあくまで皆鯖の活躍!

 圧倒的と言うよりは納豆的!超大作と言うよりは長大作!
 ようするに糸引く程に長い……糞長くて恐縮ですハイ。


 それぞれが己の持ち味を生かし活躍するサーヴァントたちの雄姿を見よ!



 皆鯖を愛する君たちへ

 Fate/Another Servant HeavensFeel 2