愚カナ弟

貴方は賢兄 僕は愚弟
運命分かつ 哀れな兄弟
家族を守る その為だけに
貴方は戦場に散っていった

憎悪の中僕は生まれた
祝福するは一つもなく
偉大な予言の勝手な都合で
僕の未来は終るはずだった

たとえ予言が正しくとも
全てを敵に回すとも
優しい従者は涙を浮かべ
愚かにも僕を山に捨てさった

貴方は王子 僕は羊飼い
立場の違う 奇妙な兄弟
貴方は素晴しき王子として
僕は呑気な羊飼いとして

ある日牧場に訪れた家来達
「貴方を迎えに来ました」と
その崇敬に満ちたその声に
たちまち僕は震え上がった

そして初めて眼にする家族達
貴方は立ちすくむ僕に声を掛け
「君の名前を教えてくれるか、弟よ」

どうして?涙が止まらない

貴方は王子 僕も王子
余りにも違う滑稽な兄弟。
「どの女神が一番美しいのかしら?」
僕は変わる 愚かに変わる

もうすぐこの国は戦を始めるだろう
愚かな王子の傲慢さで
兄は静かに微笑んで 
「しょうがないな。弟の為だ」と出て行った

「どうして嫡子が戦場に出るの」
「王族としての務めだからだ」
「王は玉座に座っていればいいさ」
「王は家族と臣民を守る者だからさ」

僕は王子 貴方は英雄
弟を愛す優しき兄
貴方を愚かと言うのならば
僕の方が 万倍愚かでしょう

むかしむかしあるところに
亜細亜の外れの王国に
家族と国のために戦った
そして散った優しい王子

たとえ無茶だとしても (子供のように泣きじゃくる弟が)
貴方はそれを望まなくても (力強く矢弓を引いている)
僕が仇をとるから (初めて俺のために戦っている)
貴方はどこかで笑っていて (君は偉大な英雄となっていた)

貴方は賢兄 僕は愚弟
最後までクズだった愚かな弟
毒に侵された僕は
憧れのヘクトル兄さん(英雄)になれなかった

もしも生まれ変われるならば
その時は最初から家族でいよう