ある昼下がり、冬の公園。
 巫女がいた。
 神社から降りてきたのか、布教活動をしていたのか、それとも巫女装束の芸人か。
 巫女はお手玉をしていた。
 お手玉は最初は三つ。十周りしたら四つ。もう十周りしたら五つと、魔法のようにどこからともなく増えていく。
 巫女の周りには、子供達が大勢集まってきていた。それもそのはず、突然公園にやってきた巫女が魔法のような手さばきでお手玉をし出したら注目しないはずはない。
 子供達――たくさんの女の子達は、輝く瞳でお手玉を見つめている。
 お手玉の数は既に十――淀みなくぐるぐると回り続けている。
 ――ピタリとお手玉を回す手が止まった。
 ぽとぽとと右の手の平に、お手玉が積み重なって落ちた。
 子供達は少しだけ不満そう。子供らしい我儘だ。
 巫女は、艶やかな朱の唇を綻ばせる。
「童女(わらし)らよ。"お遊び”を教えてやろうかえ」
『うんっ!!!」
「じゃあわっちの言うとおりにするんじゃよ」
『うんっ!!』
 巫女はほっそりした手で、三つずつお手玉を渡した。
 眉上で真っ直ぐに切られた長大なおかっぱ頭。その下の黒瞳には、子供を可愛がる慈愛と冷徹なる指導者の光りが見え隠れしていた。

 ――三〇分後――、

 買い物帰りと思しき赤毛の少年が、公園のベンチに座っていた。
 珈琲を飲みながら一息を付いている。ぼうっと変な巫女と群がる子供達を眺めていた。
 少年は何となく空を見上げる。
「…………………ふう……」人生に疲れた老爺のように溜息を吐いた。
 視線を元に戻す。
 巫女顔があった。鼻先一センチに、きめ細やかな肌と澄んだ黒瞳と艶やかな唇があった。
「うわぁっ!?」
 悲鳴と共に少年の背筋がピンと伸びる。驚愕の動作。
「な、ななななんだ!?」
 巫女は顔を離し、少年の顔に指を突き付ける。
「――そのベンチペンキ塗り立てじゃぞ」
「えっ? うわわわぁ!」
 慌てて腰を浮かす。しかし、尻を探るが名にも付いてない。
「嘘じゃ」童女のように笑みを浮かべて言う。
「………………」中年のように渋面を作る。
「まあ、そう怒るでないお主よ。わっちらを見ていたので気になったのじゃ」
「いや、何となく見ていただけだ。気に障ったんなら謝る」
 少年はむっつりとした顔で謝罪した。悪意は無くても人を不快な目に遭わせてしまったのなら謝るべきだ、というのが彼の持論であった。
「ふむ、そうかや何となくか……。いやてっきりわっちはお主が、幼女趣味なのかと」「違うっ!!」
 声を大にして、怒鳴る少年。名誉のためだ。
「まあ、そう大きい声をだすでない。童女らが、吃驚してしまうじゃろうが」
「すまん」
 しゅんと項垂れる少年。巫女は呵呵と笑う。
「しかし、残念じゃ。お主が幼女趣味ではないとは」「だからそうだって」
 巫女は、こう言った。冥土の土産とばかりにそう言った。
「幼女趣味であったなら最後に天上の快楽を得られたものよのお。残念じゃったなマスター殿」
「!」 
 少年は驚愕に眼を見開いた。足が自然に聖杯戦争関係者から距離を取ろうとする。しかし――、
「なっ!?」足が引っ掛かってバランスを崩した。
 足には、Gパンと下着が引きずり下ろされた状態で引っ掛かっていた。
 これを行ったのは童女の一人だ。手早く殿方の下履きを剥がす、閨の業。
「かっ―――ァ――!!!」呼気と共に奇妙な悲鳴が零れる。小さな手が睾丸に爪を立てて捻り上げていたのだ。小さな両手で大きめの睾丸と陰茎が奇怪なオブジェのように形を変える。
 強姦男を撃退する女の業である。
 さらに、背後に回っていた童女が五指に塗られた毒を肛門から直腸に侵入させた。
「――――――――――??!!!」も早声すら出せない。小さな手は直腸内をかき回し、毒を内壁に擦り付けた。 
 便所に潜み、肛門に刃を突き立てる忍の業であった。
 三つの女と忍の業によって、少年は倒れ伏した。
 意識はある。出血はない。五体もある。しかし、毒の効能により、少年は声を出すことも体を動かすことも出来ずにいた。
 巫女は、少年の横に立つ。手は、汚物で汚れた童女の手を洗っている。
「まあ、恨むんだったら自分の運の悪さを恨む事じゃ」
 少年の腰を掴み、担ぐ。対して大柄ではない少年を小柄な女性が担いでいる情景は滑稽な感じがした。
「ああ、あとこの子らはお主にした行為の記憶は完全にきえる。そこんところは安心するがよい」
 声も出せず、尻を丸出しにした少年は、顔に当たる豊かな胸の感触を楽しむことも出来ず運ばれていった。
 巫女が呼気を鋭く吐く。
 瞬間移動のように、その姿は消えていた。