「ぐ、くぅ、は――――」
「シロウ、くん?」
「―――エウロペ、礼呪を用い汝に命ずる」
「シロウくん!?」
「今すぐこの場を離脱し、新たなマスターと契約を結べ!!!」
「そんな! シロ」
まさしく最後の力を振り絞った礼呪の発動で、傍らの女性(ひと)は消えた。
きっと彼女なら新たなマスターを見つけ出して、生き永らえてくれると信じて、衛宮士郎は小さく笑う。
「さあ、今度こそ全てを終わらせないと―――」
そして衛宮士郎は正真正銘全ての力を振り絞り、今度こそ最後の投影を行う。

「蒼天駆ける(フォー)、護国の彗星(トロイ)ッ!!!」

駆け抜け一筋の彗星が大聖杯を破壊する。
崩れ落ちる洞窟の中で、衛宮士郎は満足げに笑った。
「ああ爺さん、ごめん。俺、爺さんとの約束果たせないや――――」

こうして聖杯戦争という戦いの物語は幕を閉じた。
そして全てを終わらせた少年は―――




「全く、直前に投影しておいた巨神の腕のお陰で崩落する瓦礫に巻き込まれずに済んだ、ってそれどこのご都合主義よ」
「む、けど腕一本瓦礫に押し潰されたんだから無傷じゃないぞ」
「命があるだけでも十分ご都合主義よ。――で、腕の調子はどう?」
「うん、いい感じだよ。本当に自分の腕みたいだ」
「まぁ、魔術協会から封印指定くらうほどの魔術師が作った一品だからね、当然といえば当然よ。中古なのがたまにキズだけど」
「はれ? それが士郎の義手? 凄いわねー、一見本物にしか見えないわ。それにしても、事故で左腕失うなんてお姉ちゃん聞いた時は心臓が止まるかと――」
「おお、シロウくん! それが義手かい!? どれどれ、おねーさんに見せてちょうだい!」
「ぐわ!? ちょ、アーチャーさん人を押しのけること無いでしょー!?」
「ちょ、藤村先生もアーチャー、さんも人の部屋でそんなに暴れないでください!」
「――――あ、その、先輩…、無事で、良かったです」
「シロウー! 腕くっつけたって本当ー!? 見せて見せてー!」
「あのー、士郎さん。これ、今日取れた野菜なんですけど」
「ぎゃー!? 一度に押し寄せられても困るだけーーーー!?」

こうして少年は賑やかな日常へと帰還した。
正義の味方というユメは捨ててしまったけれど、皆の味方という新しいユメを抱えて今日も生きていく。
その最後が、あの無愛想な槍兵のように笑って逝ける最後になるように。

「でもシロウくん、おねーさんに心配かけるのだけは禁止だからね?」
傍らで、大切な女性(ひと)がちょっとだけ叱る風に、笑った。

                                           Best End...