土蔵の壁に叩き付けられ、胸を裂かれ、脚の腱を断たれた士郎を庇うように、威風堂々と『それ』は立っていた。
「チッ、ンなガキが己れのマスターかよ」
 豪壮な三叉槍を構える槍兵は、半身に振り向いて士郎を確認し、舌を打った。
「まあいい、折角売られた喧嘩だ、己れの威光を示す機会くらいにゃなるだろうさ」
 ひゅん、と槍を振り払い二刀の剣客に向き直る。
「で、だ。他人の所有物(モノ)にのこのこと忍び込んでくれたんだ覚悟は出来てるだろう、カタナ使い?」
「笑止な。暗殺者とはそういうモノ。ランサー、貴様も戦の策も知らぬ愚物ではあるまい」
 傲然な槍兵の態度に笑みを浮かべ兵法者は剣を納める。
「あ゛? 逃げるつもりかテメェ」
 不機嫌を隠そうともせず槍兵が三叉を構えた瞬間。
―――轟、と音を立てて衛宮邸の土蔵に黄金の砲弾が落下した。


「マスター、茶」
 不貞腐れたように部屋の中央に陣取り尊大な態度でマスターを顎で使うサーヴァント。
「ちょっと待て! なんでそんなに偉そうなんだお前はっ!」
「五月蠅ぇ。命の恩人になんだその態度は」
 悪びれずに、むしろ士郎の対応にイラついたような表情でふんぞり返るランサーに呆れ顔の凛とセイバー。
「どんだけ無茶なサーヴァント引いたのよ衛宮君…」
「好きで引いたわけじゃないんだけどなぁ」
 士郎の口調にもそろそろ諦観が混じってきたのは恐らく気のせいだろう。


「その悪意、憎悪、そしてその異能」 
 眼帯で左目を隠した少女が血を吐くように囁いた。
「貴方は危険です。この場で―――」
 清流の如き唇で、流氷の如きその舌で、氷河が如きその声で
「―――果てなさい」
 少女の真後ろの海面が隆起する。そこから現れるのは5頭の巨大な異形の鯨。
「幻想種の使役!? それも―――」
「■■■■■ーー!!!」
 驚愕する魔術師。彼はサーヴァントに回避の指示を出そうとし
 その刹那、狂戦士の立っていたテトラポッドが粉砕された。
(―――6…体同時…にだと?)


「ったく、どんだけ態度がデカいんだアイツは」
 一人でグチりつつ風呂場に入る。傷は凛から癒してもらったものの泥とか血とかは腹とか胸とかにこびりついたままで―――
「ってアレ?」
 バスのドアを開けると先客が居た。遠坂は帰ったし藤ねえは今日は来てないはずだから目の前にいらっしゃるのは消去法からして先ず間違いなくアイツである。
 サーヴァントが風呂に入るというのはまあ確かに衝撃的だったがそれ以上に衝撃的だったのは
「ちょ! おまっ! それ! ええええええぇえええっ!?」
 あまりの衝撃映像に取り乱す士郎!
「出てけ!こンのバカァッ!」
 響くハスキーボイスと繰り出されるアッパーカット!
「なんでさっ!」
 そしてその余波で爆裂する脱衣所! あと宙を舞う士郎!


 マキリの屋敷では御三家の内二家、3人のマスターが会談を進めていた。慎二と桜、そして凛である。
「遠坂。分かってると思うがアーチャーとバーサーカーを倒すにはセイバーやキャスターじゃ無理だ」
「知ってるわ、アーチャーが居る以上言峰には手を出せないし、アーチャーを倒すにはアーチャーを守ってるバーサーカーを倒さなきゃいけない」
 そう呟いて凛は歯噛みする。バーサーカー。凶悪な爆弾であり確実に殺し返してくる。純粋な戦闘能力は脆弱だがその宝具は圧倒的に凶悪である。
 それに圧倒的な攻撃力を誇るアーチャーは真っ向勝負ではセイバーしか勝ち目はない。それも勝てるかどうか分からないのだ。
「だからバーサーカーを足止めする。僕のライダーでね。そのあと遠坂は桜とアーチャーを倒せばいい」
「ちょっと待って。キャスターと桜は大怪我してるのよ?」
 怪我人を戦場に駆り出すのか? そう怒りを滲ませて慎二に掴みかからんとする凛を制したのは桜であった。
「大丈夫です、姉さん。私もキャスターも戦えますから―――それに危険って言うなら兄さんの方が―――」
 ライダーはけして戦闘に優れたサーヴァントではない。そして慎二も魔術師ではなく、魔術師と戦えば殺されるのは目に見えていた。
「桜はそんな心配なんてしなくてもいいんだよ。グズはグズなりに自分の心配をしてればいい。これで決まりだね。じゃあ僕は失礼するよ」
 不機嫌そうに踵を返す慎二。乱暴にドアを開けて二階へと上っていった。


「確かにテメェは速ぇよ、パワーもそれなりにあるし剣筋だって正確だ」
 全身に切創を作ったランサーは、それでも傲然と笑みを浮かべて剛槍を構える
―――だが、ヘラクレスほど強かねぇ―――
「つまり、あたしならブッ殺せるってこった」
「よく吼えたランサー。ならば、暗闇の中で死んでゆけ」
 セイバーは奇剣を構え上空に上昇、否跳躍した。

「他者封印(ブレーカー)―――」
 仕掛けるは鋼の鉤爪を備えた駿英なる猛禽。
 右手には冥王の兜(アイドス・キュネェ)、そして左手には呪詛反転の翻転響界(キビシス)

「克服せよ我が惰弱(カイネウス)―――」
 迎え撃つは不滅を誇る鋼鉄の牝馬。
 全身の筋肉が隆起し、膨張し、背が、肩が、脚が、そして腕が、丸太が如き異形と化した

「―――暗黒神殿(グライアー)ァッ!!!」
「完全(フル)ッ剛直(バルク)ッッッ!!!」
 同郷でありながら世代の違う、ギリシャを代表とする2人の英雄が今―――激突する―――!!!

                 Fate/MINASABA 11en 冬木大海戦
                   ~~兄(姉)貴と私、ボディビル!~~

「あたしは男だって言ってんだろーがぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」



 <ネタ宝具>

『他者封印・暗黒神殿(ブレーカー・グライアー)』
ランク:C+ 種別:対結界宝具 レンジ:30 最大捕捉:300人
 複合宝具。
 冥王の兜による気配と像の殺害を翻転響界により反転させてレンジ内の視力を性質を問わずにを失わせる。
 通常の冥王の兜による透化、気配遮断に加えレンジ内の対象にバッドステータスとして『混乱』を与える。
 ただしその効果はセイバーも例外ではなく万里俯瞰す蒼鏡の盾さえ使用不可能になるという諸刃の剣である。
 多分使うのは急降下する時のみ。

『克服せよ我が惰弱・完全剛直(カイネウス・フルバルク)』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:- 最大捕捉:1人
 隠された能力。
 肉体を再構築し、「攻撃に特化した形状」に変化させる。
 真名の解放により次のターンのみ筋力と耐久が1ランクアップ
 敏捷が2ランクダウンしスキル『カリスマ(偽)』を失う。