「待ちわびたぞ、英雄王」

冬木市の港に、地の底から聞こえるような重い声が響いた。
その声はアーチャーが仕損じ、そして今アーチャーをここへと誘い出した張本人のものだった。
「貴様か、ライダー。姿も見せずに我に声を掛けるとは無礼千万。
万死に値する行為と知れ。早々に姿を現し自ら自害せぬか―――」
アーチャーが怒りを滾らせた声音で静かに告げる。しかし声の主――ライダーは姿を見せない。
不愉快だ。そう思い、アーチャーは波止場一帯ごと薙ぎ払ってやろうかと考える。
その時だった。その、地の底から轟くような地響きを漸くアーチャーが認識したのは。
この波止場から一望できる海。そこから何かが迫ってくる。
地平線の彼方。そこから、何か巨大なモノが迫ってきているのだ。

――それは、津波だった。

かつてこの世界が混沌としていた時、それら全てを洗い流したものがあった。
それは水。
天より降り注いだ雨が渦を生し、一切合切を洗い流す怒涛となって大地の全てを押し流したのだ。
そして、今迫り来るものこそは神話の再現。全てを押し流した大いなる波濤。
かつて万物を押し流した、究極の神災。

圧し来る帰滅の海(プラーナム・アーキヤーナム)………!

「知るが良い、英雄王。この世には人一人では超えられぬ災いがあるということを―――!」
不敵な声が響く。迫り来る津波の中央。そこに、大海魚に牽かれた船を漕ぎ、津波を率いるライダーが居た。
そして例え一騎当千の英雄とて、迫り来る神災の前にはなす術無く押し潰される運命しかない――!
「舐めるなよ雑種が!」
しかし対するは最古の英雄王。英雄の頂点に立つ至高の王者。
彼が有する財に隙は無い。そしてその中にはかつて天地を開闢した神剣でさえも含まれている―――!!
「堪能せよ、雑種。我が一撃こそが真の災いであると―――!!」
英雄王の呼び声に神剣が応える。迫り来る神災を打ち砕かんと歓喜の叫びを響かせる。

「天地乖離す(エヌマ)――開闢の星(エリシュ)―――!!」

そして、天地を裂いた剣と天地を飲み込んだ波濤が、交差する―――!!!