己を含む七騎のうち三騎を単独で討ち果たしたイリヤスフィールのバーサーカー。
最後の障害たる士郎のキャスターと凛のセイバーとの戦いに赴いたイリヤのカルキ。
その前に立ちはだかるは、最強最古の黄金色の暴君、英雄王ギルガメッシュであった。

「ほう。よもや人類最期の時代のものまで呼ばれていたとはな……だが」
「 」
「誰の許しを得て王の前に立つか人形。不愉快だ」
「 」

ギルガメッシュの背後の空間が揺らぐ。総数は二十七。
何れ劣らぬ必殺の魔弾であり、それを受けて生きていられるものなど天地のはざまにはいない。

「どれ――――踊れ」
「 」

青年は無感情に自らに迫る刃を見つめるばかりである。
しかし彼の跨る金属の白馬はその瞳を輝かせ、宝具の群ればかりか王の背後の空間の揺らぎ、
そして王自身をその視覚に捉えていた。

<<――――対象を確認/種別:英霊/種族:半神/属性:混沌・善/宝具の解析を開始――
 データベースに1件の該当/System Turn-A:空間歪曲兵装/所有者の確認――エラー/エラー
 /阿頼耶識の検索開始――エラー/エラー/根源禁帯出情報を検索―― 一件の該当
 /対象の真名は英雄王ギルガメッシュ/ウルクの暴君/森林の破壊者/不死の求道者
 ――――以上の情報より判定を下す/対象は――――悪>>

白馬は主を背に中空へと飛び上った。光の粒子を噴出させながら空中を浮遊する機馬は、
そのまま眼下の黄金の王を睥睨し、一際高く嘶いた。
不愉快の表情を顔に浮かべ、ギルガメッシュの背後の空間が再び揺らめき、
今度は総数三十を超える宝具が、宙に浮かぶカルキとその馬に殺到した。
瞬間、世界が純白の光に包まれた。機馬の嘶きに応じるかのように光子嵐が吹き荒れ、
主人と馬を光の竜巻が飲み込んでいく。
光の突風は周囲の空間をかき乱し、例え王の宝物とてそれを破ることも出来ず墜落していく。

<<System K.A.L.K.I――――甲冑形態を起動/救世合体(シャンバラフュージョン)>>

白銀の騎馬――――ハヤグリーヴァの全身が、まるではじめからそうであったかのように、
二十七の装甲へと分割された。首は頭部、前脚は籠手、後脚は脚甲、胴体は甲冑というように
外骨格は全身を覆ってゆき、胴体内に収納されていた推進部も背部へと移動した。
かつて馬の太腿であった部分は膝下まで降りて裾広がりの独特のラインを描き、
肩部であった装甲はそのまま肩鎧に位置した。
尾部であった連結刃がタテガミの頂点へと移動。最後に馬の顎が直角に下がり、
仮面となってカルキの顔を覆い隠し、面中央と胸部左右から黄金色の結晶体/
発光機関がせり出し、変形は完了した。

……その形態は異様そのものである。
かつて装甲の裏側だった部分が裏返り黒い面を晒して銀の鎧と入り混じり、更に面と胸部の発光部位も相まって、
まるで光の巨人のアンチテーゼたる宇宙の恐ろしい竜を思い起こさせる姿であった。
これこそがSystem K.A.L.K.Iの真髄たる甲冑戦斗形態、或いは人類粛清形態であった。

「――――驚いた。人類を滅ぼすために、星海の彼方から来るものの姿を真似たか」

轟音を上げながら着地したカルキに向かい、あの英雄王が素直に関心したかのように言葉を紡ぐ。
だが次の瞬間には、その表情は怒りとも侮蔑ともとれるものへと変わる。

「だがその醜悪な姿は見るに堪えん。何よりも――――だ」

ギルガメッシュの背後に三度装填される魔刃聖剣。総数は一気に百を超え、更にその数は増している。

「王のものである作物――民を勝手に収穫し、あまつさえ間引こうとする不敬。
 その思い上がりを修正してやろう、偽りの救い主よ」

カルキの手には既に純白の剣の柄が握られている。柄から閃光が溢れ出たかと思うと、
それは刃の形を成し、更に物質化し損ねた光子の渦巻きは、凄まじい白熱炎の大嵐となって、
周囲の空間を灼いていた。

「征くぞ救世主。手品(ぺてん)の種は十全か?」
<<――――――救済を開始する――――――>>

人類最古の英雄王と人類最期の救世主の戦い。
それは神話の再現か――――はたまた、終末の開幕か。