誰よりも早く、彼はこの世に召喚された。
 彼が呼び出された場所は、日本ではなかった。
 遠い異国。
 大地は常に白く覆われ、空は青みを忘れて久しい、人知れぬ山間の城だった。
 本来の彼が現界する時代よりも遙かに早く、その能力も十全に再現されているとはいえなかった。
 だが、それに何の問題があろう。
 彼は悪にとっての滅びそのものであり、ならば彼が成すべき事は唯一つしかあり得ない。
 アインツベルン――彼を召喚した者らを粛清した後、悪を滅する為だけに彼は歩み始める。
 ――最優先目標:この世全ての悪(アンリ・マユ)。

「つまりね、『あれ』は人類の願いそのものなんだよ。
 人類という集団から『悪』という不適合者を除いて、その他の多数を生かすモノ。
 だから、アラヤは手を出せない。それがルールなんだ」

 あはは、と楽しそうに笑いながら少年は語る。

「でも、同時に今の『あれ』はバーサーカーのサーヴァントでもある。
 アラヤが手を出せないのがルールであるように、七騎の英霊が殺しあう戦争もまたルール。
 本来は誰にも殺せない『あれ』を、聖杯戦争の参加者なら消滅させる事が可能なんだ」

「ここまで話せば状況は把握できたよね?
 うん。ナルバレックがさ、聖杯戦争に参加させるならば、ぜひ君をマスターにって。
 君が今いる町――ミサキマチ、だっけ?――其処からなら公共交通機関を使っても数時間で行けるでしょ?」

 そうして冬木の街に集う代行者、魔術師、更には吸血鬼たち。
 バーサーカーを除く六騎の英霊を以て、日本に上陸した粛清者を迎え撃つ。
 けれど、この世全ての悪を屠らんとする者を、九尾の狐も第六天魔王も殺しきる事はできず。
 六騎の英霊を打倒したカルキは、大聖杯へと至る。

 ――だが、其処に。
「この世の悪を裁く、か。狂犬風情が王の真似事など、思い上がりも甚だしいぞ、雑種」

 ――金色の英霊が、最古の英雄王が、君臨する。
「民を裁くには、王たる我が敷いた法によってなくてはならぬ。狂犬如きに任せられる筈もない」

 王の蔵が開かれ、原初の滅びを知る乖離剣が顕現する。
「出番だエア。おまえとて不本意だろうが、なに、これも先達としての務めよ。
 真実を識るものとして、一つ教授してやるがいい……!」

 そうして、原初の滅びと終局の滅びが今、激突する。