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「・・・・・何で貴方までこの学校に居るんですか?」
階段の踊り場で少女の声が響く。
キールは物凄い不審な目でゼロを見つめている。
「え?何でって俺、この学校の生徒だし。」
「そうじゃなくて、貴方この学校の生徒だったんですか?」
ゼロは物凄い困った顔をしている。
「俺じゃ嫌だった?」
キールは深い溜め息をついた。
「何でそこで溜め息をつくんだよ。」
「別に何でも無いです。」
しばし沈黙。
「・・・・私は帰るとします。」
「そっか。」
キールは一旦帰ろうとしたが、何か思い出したらしくすぐに振り返って
「そうだ、帰ったら施設に来てくださいね。」
と言った。
「教育・・・・ってヤツか。」
キールは「そうです。」とだけ答えて、颯爽と帰っていった。

誰も居ない学校で、ゼロただ一人が残される。
誰も居ない教室、誰も居ない廊下。
誰も居ない、静かな学校。

うおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおん
「?!」
ゼロの耳にライオンの雄叫びの様な音が響く。
しかし、ライオンの雄叫びより数倍音が大きい。
どこで鳴っているのか分からない位に大きい。
静かな学校がいきなり五月蝿い学校になる。
おおおおおおおぉぉおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおお
二度目の雄叫びで、やっと方向が分かった。
ゼロは一階の出入り口まで走っていった。
一様靴に履き替えて外に出てみると、

ゼロの頭上には毛しか見えなかった。
しかし、よく見ると足の様な物が4本地面まで突き出している。
いきなりその毛が動き出し、毛の無い部分が見え始める。
「・・・・・・うわ。」
そこには顔があった。
顔と言っても人間の顔ではなく、動物・・・・ライオンの様な顔。
牙をむき出しにして、睨みつけている。
「・・・・・何なんだよ、これ。」
それは今まで見た以上に大きかった。
牙も、目も、鼻も、足も。
桁外れに大きい。
その大きい前足が、ゼロの頭上に運ばれる。
多分、走って避けても間に合わない。
ゼロは手の中で日本刀を成型しはじめる。
日本刀で前足を受け止めようと、頭上で構える。
しかし、それも無駄だった。
刃に前足が当たった瞬間、物凄い圧力がかかる。
相手の前足にも傷が付いたが、それ以上に前足の圧力の方が強い。
「・・・・・・うぁ!」
ゼロは咄嗟に傷でできた裂け目へと入った。
その中で日本刀を振り回し、傷の中に傷を作っていく。
があああぁおおおおおぉおおおぉぉおおおおおおぉおおおおおおおおお
ライオンの様な動物は痛さのあまりにか、前足を上げて後ろに退いた。
その間にゼロはよろけながらも逃げていく。
動物の様な物も負けじと追いかけてくる。
ゼロは校庭の真ん中で走るのを止めた。
上がっていた息を整えて神経を集中させる。
鞘から4分の1刀身を出し、動物の方を向いた。
動物の様な物は足を上げゼロを踏み潰そうとする。
ゼロと足との間、約4メートル。
あと1秒足らずでゼロを踏み潰す。
そして、ゼロが動いた。
ゼロは足を素早く上避けて、足の上に乗る。
足の上を走っていき、肩まで着いた。
「ふんっ!」
肩に刀を突き刺し、自分の体を固定する。
固定した刀を中心にして、体を回し上に移動していく。
うがぁぁぁおおおおおおおおおおお
動物の様な物はゼロを振り落とそうと顔を四方八方に振り続ける。
ゼロは振り回されながらも頭部に到着。
飛ばないように刀を頭に刺して固定する。
刺す時にガツンと何かに当たった。
多分骨か何かだろう。
これだけ硬いと、切り殺すのは無理だ。
やるとすれば、唯一露出している急所。
「目か。」
右に左に揺られながらゼロは冷静に呟く。
ゼロは毛を掴みながら目のある所まで移動する。
刀は頭に刺したままで、持っているのは鞘だけ。
目に辿り着くと、相手の目からは見えないように睫毛にぶらさがる。
そして、
「ふんっ!」
目に鞘を思いっきりぶっ刺した。
柔らかい眼球に鞘が沈んでいく。
動物の様な物が傷みに荒れ狂う。
ゼロは右に左に振られながらも、鞘を刺していく。
血が止めどなく飛び出し、ゼロの上から流れ落ちる。
ゼロはそれでも刺し続ける。
目が完全に使えなくなると、ゼロは振られながら頭まで登り刀を引き抜く。
引き抜いた反動で引っくり返り、右に左に揺られながら背中まで飛ばされた。
必死に背中の毛を掴み、落ちないようにする。
動物の様な物はまだ気付いていない。
頭をぶんぶん振っては顔を触り私を探している。
(・・・・さて、どうする。)
ここは背中の上で、急所は表面に出ていない。
心臓を貫くにも刀が短すぎる。
脊髄をやろうかと思ったが、骨があれほど硬いと2,3回刺さなければ切れない。
もう一度頭に行くには危険すぎる。
なにより体を固定するために刺したらこっちの居場所が分かってしまう。

刺せるのは一度だけだ。

他に手は無いか、と考えたがなかなか出てこない。
いきなり自分の上に影ができた。
恐る恐る顔を上げると、夕日が見える方向に何かが飛んでいる。
それは今日の朝の乱暴な操縦士が運転していたヘリだった。
「ゼロクーン!」
聞き覚えのある声が周囲に響く。
「シャオスか!」
ゼロは声だけで確認した。
ヘリがどんどん近づいてくる。
「今総長を下ろしマス!」
「は?」
ヘリから何かが飛び出した。
最初は何か分からなかったが、良く見ると人を下から見た形だ。
あと50mになった所でようやく見えるようになった。
こちらに何かを向けている。
ばしゅしゅしゅしゅ!
ゼロの周りを沢山何かが通り過ぎた。
その何かはゼロの乗っている動物の様な物を貫き、妙な色をした血の噴水を舞わせた。
おおおおおおおおぉぉぉおおおおおおっぉおおぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお
動物の様な物は動こうとするが、全然動けない事に気付く。
よく見ると、水で足場が固定されており、動いても水がじゃぼじゃぼと波打つだけである。
「ゼロー!」
「え、ああ?!」
大声でゼロを呼ぶ声。
「ちょっと退いて下さい!」
少し混乱していたが、言われるがままにゼロはその場を退く。
するとゼロが立っていた場所に水の塊が発生し、落下物を受け止めた。
「ああ良かった!成功成功!」
落下物は水の中で少し高い女の子の声を出して喜んでいる。
それは金髪の長い髪に大きな藍色の瞳。
「・・・・・・キール?!」
「今更遅いです、もう少し早く気付いてください。」
キール総長である。
「まったく、世話が焼けますね。」
「・・・大きなお世話だ。」
敵の上に乗って普通に話しているのもどうかと思う。
動物も動いてはいるが、中々水のトラップから抜け出せない。
「さて、早くこの『物』を倒してしまいましょうか。」
ゼロは何の事だったか良く分からないが、一様同意する。
同意を確認するとキールはズボンの四角いポケットから装飾銃を取り出した。
「それがアンタの武器?」
ゼロが興味深げに装飾銃を見る。
「見る限りではコルト・パイソンに似てるな。」
「正解です、詳しいんですね。」
「それ程でもないけど。」
だから平然と喋るなこんな所で。
常人はこんな揺れててバランスを取らないと落ちるような所では平然と喋りません。
「さて、ちょっと退いて下さいね。」
するとその装飾銃を動物に向け、動物で言う心臓のある背中のあたりに構えた。
そして
「・・・・・・っ?!」
装飾銃の周りに水が集まる。
その量は膨大で、キールの周りだけ開けて動物を包み込んでしまった。
「何だ、これ?」
ゼロは唖然としている。
「見ての通り『水』ですが。」
「いや、そうゆう事じゃなく。」
どこかで見た場面である。
「ああ、イブシリウムを扱う人を見るのは初めてなんですね。」
ゼロは顔を縦に振って答えた。
今もなお水は集まっている。
「・・・さて、もうそろそろ良い頃合ですね。」
と言うとキールは銃の引き金を引いた。
銃の周りに集まっていた水はストロー位の細さの線を描き物凄い勢いで動物の体を削っていく。
うおおおぉおぉおぉぉぉおおおぉおぉぉぉぉおおおぉおぉぉぉおおおおぉぉおぉぉぉぉおおぉぉおぉおぉ
動物・・・キールに「物」と呼ばれた何かも雄叫びを上げ喘ぐが、水から抜け出せない。
水の量が半分程になった頃、「物」の体を貫く音がした。
キールが引き金を緩め、放水を止める。
「・・・・さて、終わりましたね。」
いきなり、足場が崩れ始める。
「何だ?!」
「物」が倒れ始めたのだ。
ゆっくり、確実に。
「あ、ちょっとヤバイですね。シャオス聞こえますかー。」
キールが携帯の様な物を出し、シャオスに連絡している。
「ハイハイ、今ソコの上空約2500mに居マスよ。」
「そのまま降りてきて、私達をヘリで救出していただけますか?」
携帯から大きい声で「お安い御用デス!」と聞こえると、
超高速でヘリが「落ちて」きた。
「降下」では無く「落ちる」。
「・・・えええええぇぇぇ?!」
ゼロは思わず目を隠す。
キールは至って冷静だ。
ゼロ達まであと5m。
「・・・・っと!」
シャオスが何かをすると、何かがガタンと鳴って落ちるスピードが弱まった。

ヘリが落ちるのを止めた。

丁度ゼロの頭の上で。
「・・・・あれ?」
ゼロは呆然と目の前のヘリを見つめる。
「ホラ、ボーっとしてないで早ク乗って下サイ!落ちマスよ!」
気付いた頃にはキールは乗り終わっていた。
「早くしてくださいね。」
ゼロは慌ててヘリに飛び乗る。
ヘリが遠ざかると同時に、動物の様な物も崩れ落ちた。
倒れた時、肉が引き千切れる音や骨が砕ける音がした。

「総長、お疲れ様デス。」
「ありがとうございます、シャオス中佐。」
高速で飛ぶヘリの中で平然と話す二人。
地上ははるか下に見え、雲の中を突っ切っていく。
「・・・なぁ、あの『物』とか言うのどうするんだ?」
遠く離れた所にある、崩れ落ちた『物』を指差してゼロが尋ねる。
「ああ、後で処理班が消してくれますよ。」
「そうデス。」
それを聞いてゼロは一安心した。
「さて、それではこのまま施設に行きましょうか。」
「了解デス。」
急発進した勢いでゼロは倒れながらも「ちょっとまった」と二人を止める。
「何ですか?」
「手短にネ。」
今もなおスピードを緩めずにヘリは空を飛んでいる。
「あのさ、一度家に帰らないと親とか心配するんだけども。」
「それなら大丈夫です、伝えておきます。」
今日の朝と同じ発言。
「ワタシが電話しマスよ。」
そう言って、シャオスは携帯の様な物を取り出した。
操縦してるのが車だったら普通に規則違反である。
ゼロが持ってるヤツに似ているが、色が少し違う。
「そういえばさ、その機械って何?朝から気になってるんだけど。」
何気ないゼロの質問に、シャオスは嬉しそうに説明を開始。
「ああ、それデスか。一般の人にも見らレテも良いように外見を改造された無線機で、人工衛星を通じて世界中で使えマスよ。」
その後も長々と説明を続けるシャオス。
脳波で使用者であるかどうか判断してからしか無線を使えないとか、普通に最新の携帯ぐらいの性能があるとか。
色々説明されたが、専門用語が多くて大部分は意味不明だった。
「・・・・アンタ機械好きなのか。」
「あ、分かりマス?良いデスよね機械」
ゼロは呆れて言葉も出ない。
キールは何時もの事なのか、冷静にしている。
一通りシャオスの説明が終わった後、
「そういえば、貴方能力がまだ分かってないんですよね。」
ゼロは首を縦にふって答える。
「あ、もしカシて君が武器だけ出せる少年?そうだったんデスか。」
「ん?何で知ってるワケ?」
「そりゃ、施設中で噂されてマスからねぇ。」
「『強いのか』とか『顔は良いのか』とか、結構噂されてますよ。」
ゼロは少し困った顔をして、「あっちに行ったら人に囲まれないか」など考えていた。
「大丈夫ですよ、ウチの施設ではそんな事は無いです。」
キールの発言にゼロはびっくり、そりゃ自分の考えてる事について解答されたもんですから。
「な、何で分かった?」
「ええ、何と無く。」
キールはやっぱり素っ気無い。
「それにそんな事があったら私が許しません。」
「そうデスよ、あったりシタら・・・・・ネ。」
シャオスの物凄い渋い顔。
何か罰でもあるのだろうか。
ゼロは施設についたら聞く事にした。

高速で飛ぶヘリの中に、人が三人見える。
ヘリの下には森とか川とか絶景が広がっている。
その中にポツリと、小さい古びた建物。
この古びた建物で、次の物語が繰り広げられる。


それは、また次の話。

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