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第4章 想いが想いを呼ぶ、その瞬間に

『・・・カタカタカタ・・・』
キーボードを打つ音だけが、俺、月島大樹の部屋に響いている。
教授に言われた仕事をやっているのだけど・・・頭から離れないモノがあって集中できない。

・・・大沢銀矢―――恵理の友達―――。

彼と会った時、何かを感じたんだ。ずっと求めていたような、懐かしいような。
「俺と銀矢は何処かで会ってる・・・!」
そうとしか、考えられなかった。
じゃあ一体何処で会った?この因縁めいた、心のざわめきは何だ?

『カチャカチャカチャカチャカチャ・・・カ・・・チャカカッ』
「あっ」
ミスタイプ。ありえねぇ。
・・・そう思って直そうとした瞬間、更にありえないミスをした。


何を思ったのか、俺はPCのリセットボタンを―――「ピ。」

『―――  ひゅうううううううん・・・』
瞬間、データが全部飛んだ。保存し忘れていたので全部やり直しだ。

「うおぉぉぉぉ(涙)」

ちくしょう、またやり直しか―――もういい加減、嫌になったぞ―――そう思ったその時。
『コンコン』
「コリぃ~♪ お茶にしな~い?」
癒しの声が飛び込んでくる。その愛らしいだろう姿を目に浮かべながら俺は、
「そーだな。・・・入ってきていいぞ♪」
ガチャ。キィッ―――
直後、ドアが開いて恵理が部屋に入ってくる。
俺は自分の横に恵理を座らせた。
・・・ふと目をやって、その時、彼女が目をとろんとさせていることに気づき。
俺はぽん、と彼女の肩に手をやる。
「恵理」
「ほぇ?」
上辺遣いの視線に少し戸惑いながら、俺は言った。
「疲れてるなら、俺によりかかってていいからな?」
えっ、と驚いた顔で彼女は、
「あ・・・えぇっ!?何でわかるの!?」
「見れば、わかるさ。」
それだけの事だけじゃ、何だか物足りなくなって。俺は、両手を広げて。
「ほら・・・来いよ?」
言うなり、彼女はこの腕の中に飛び込んでくる。
そのまま抱きしめてやると、目の前にあるその耳が、ほんのり赤くなった。
当の本人は困惑した顔で。
「こ・・・コリー?」
「あ・・・いや、最近、忙しくて・・・本当・・・ごめんな。構ってあげられなくて。」
「ううん・・・そんなこと、ない。私が・・・ワガママなだけだよ?押し掛けちゃったし」
ぎゅ。抱きしめる腕に力をいれて、柔らかい彼女の身体を―――楽しんだ。
「・・・。」
「・・・・・。」


しばらくの、沈黙の後。恵理が口を開いて。
「ねぇコリー・・・」
「何だ?」
「・・・もう少し・・・このままでいちゃ・・・ダメ、かなぁ?」
(な、なんて大胆発言っ!恵理にしちゃぁ、なんて大胆な!)
しばし考えた後。
「いいよ・・・!」
(このまま抱きしめていて欲しい・・・)
そんな声が、聴こえた気がしたからだ。
彼女の言葉の一つ一つが・・・俺の我慢を紐解いていく――――――だけど。
「俺って何かズルいよな」
口から出たのは、ひねくれた言葉。
「ふぇ?何で?」
ズルズルと、ゆっくり、しかし確実に、胸中に溜まってた言葉が吐き出されてく―――
「だって俺はさ・・・こんなに恵理に愛されてんのに、何も答えてないんだぞ?
恵理は・・・こーいうのって、嫌じゃないのか?一方的なのは、辛くないか・・・?」
そんな俺の言葉に、彼女は迷うことなく答える。

「ううん、いいの・・・。確かに、今はこうやって暮らしてるだけでも・・・。
でも、コリーは私がここに居てもいいって言ってくれたでしょ?
それだけでも・・・嬉しいから。
だから、今度は・・・コリーが私のことをもっと・・・好きになってくれたら、って・・・
愛してくれたら・・・!って思ってる。えへへ。ちょっと、ずうずうしいかな?」
―――紐解かれた、胸の内の感情がはじけた気がした―――
その想いは、不思議と確信になって・・・。
「―――恵理、顔上げて」
「えっ?」
反射的に彼女は顔を上げ、そして当たり前の様に―――必然だったのかも知れない―――、
目を閉じて、そこにあるハズの柔らかな唇に、自分のを重ねた。
直後、彼女の躯がびくっと揺れたが、それだけだった。
そして、全てを許したかのように、躯を委ねてくる―――――――――。
俺はそれをまた、力強く抱き返すと、彼女は、離れたく無いかの様に、


その腕を腰に回してくる。
―――しばらくして、俺は顔をあげる。
すると恵理が、呆然とした表情で瞳を潤ませていた。
「コリー・・・今の、どういう・・!?」
「俺はもう、自分でいることをやめないよ」「!」
パリン。心の中で、何かが音を立てて割れていく。
「今、恵理が素直な思いを伝えてくれたから」
パリ、ン―――。
「別に、恵理はずうずうしくなんかない。ずうずうしかったのは俺で、
俺は俺で、そんな恵理に甘えてた―――」
パリン。
「しかも、いつも思わせぶりな事ばかりしていたし。
・・・戸惑ってる恵理を見るのは、可愛くて楽しかったしね。面白かったけどv」
「もぉっ(笑)」
パリン。
「だけど、思わせぶりはもう止める・・・!」
パリンッ―――
一人語りを終わらせる様に、最後の一欠片が、胸の中で粉々砕け散る。
「恵理、俺の目をを見て?」
「うん・・・?」
彼女は不思議そうな目で俺を見つめる。
しばらくの静寂の後―――――――――その瞳を見つめて、俺は口を開いた。
「もう、一方的なんかじゃないよ」
意味がわからないよ、と言いたげに見つめ返す彼女を、手で制してから、言葉を続ける。
「恵理・・・・・・・・・・・・・・・・・・愛してる」
「・・・!」
真剣さを感じ取ったのか、徐々に彼女の瞳が、信じられないと言わんばかりに揺れていく。
「こ・・・こぉりぃぃぃ・・・!」
そう呟くなり、彼女は力一杯に抱きついてきた。その可愛い顔を涙で濡らしながら、
「ほ・・・本当に、私?他の人じゃなくて、私?私??」
「そうだよ」
「コリーは私のこと、本当に愛してるのっ!?」


「そうだよ、愛してる・・・!何度も言わせるなっ、恥ずかしいだろっ(赤面)」
そう言って、また恵理を抱きしめた。
「じゃ、じゃぁ・・・っ!」
「じゃぁ・・・何?」くすくすと笑って。
「もっかい、キスして?」 そこで少し彼女は顔を赤らめて。
「今度はちゃんと・・・コリーを感じたいの・・・!」
「わかった・・・じゃぁ・・ほら・・顔あげて・・・?」
「うん・・・」
ゆっくりと顔をあげる彼女の左頬に、右手を当てると。
「愛してる、恵理・・・」

―――二人の想いが、重なった、その瞬間。
リリリーン!
突然、電話のコールが鳴り響き、思わず俺は―――

(・・・・・かみっ!)

「いたひっ!」
「ごめん!」
僅かに口内に感じた鉄の味。俺は慌てて電話に出た。

カチャ

「はい、もしもし?あ、本宮?・・・うん、・・・うん・・・何っ?!
・・・わかった、すぐに行く!」

カッチャン。
…受話器を置くと、慌てて恵理に駆け寄る。
さっき、びっくりして思わず彼女の舌を噛んでしまったからだ。
「すまん、大丈夫か・・・?」
「あまり大丈夫じゃないよぉ・・・鉄の味が・・・口一杯にぃ・・・(涙)」
「・・・スマン。とりあえず、口開けてみ?
・・・うわぁ、メラ赤くなってるな。ちょっと目、つぶってて?」
「?」
言われて静かに目をつむる恵理。
俺はその肩を軽く抱くと、自分の舌を彼女の唇に滑り込ませた。
「・・・っ!」
されて彼女はその意味を理解した様だ。端から見れば、濃厚なキスを交わしてる様にしか見えないだろう。吸血鬼じゃあないが・・・俺がその血を舌で絡め、吸っている、という事だ。


普通こんな事をスルやつ等居ないだろうから、彼女も只、唖然としているだけ。
自分のとは違う、鉄の味を、若干楽しみながら。
・・・やがて、舌と舌が離れて。ぷはぁ、と甘い吐息と共に、互いが離れる。
「はぁ・・・っ・・・・はぁっ・・・。」
「こ・・・こりぃ・・・何で・・・こ・・んな・・・?」
突然のことに、彼女は顔を赤らめてしまっていて、視線も定まっていない状態だ。
「んー、ちょっとした気まぐれ。・・だが、好きな人の血を飲むと・・・!」
「の・・・飲むと?」
あまりにも真顔でじっと見つめてくるので冗談を言うのは止めた。
「冗談。何も起きないよ。変わらない。(笑)」
「な、何だ・・・びっくり~。でもつまんないのー。」
「ははは。だったらドラキュラみたいに首筋から吸ってやろうか?
あ、でも恵理が相手だったら首筋じゃなくて、心臓に近い左胸のちく・・・」
スパーン!
直後、何かが俺の後頭部を直撃した。
「痛ェっ!」
慌てて恵理を見ると、何処から取り出したのかハリセンを持っていた。
「もぅっ、そんなことばっかり言わないでっ!(赤面)エロ発言禁止!」
「あぁっ、冗談だから、そんなに怒るな恵理ぃ~(涙)」
あはは、と二人して泣き笑いした後。
「じゃ、俺ちょっと大学行ってくる。さっきの電話の用件が、な」
「ん、わかった。いってらっしゃい☆」
「夕方には帰るよ。」
「りょーかーい♪」
バタン。・・・コリーが居なくなって。
「ええっと、冷蔵庫の中身は・・・」
冷蔵庫の中身を確認すると、まだ全然食材が残っていた。足りないのは・・・
「飲み物、かな?」

コリーはそこそこお酒を飲む方だ。
私は結構ジュースが好きでかなり飲む方だ。


(でも未成年じゃ、酒は買わせてもらえないっしょー・・・。)
とりあえずジュースを買いに、私は街へ繰り出した。

*   *   *

「はぁ・・・」
オレこと大沢銀矢は只今ベットの上に横たわっていた。
彼女の・・・恵理の事を考えれば考えるほど、深みにハマっていく。
「かちゅ・・・いや、恵理さん・・・!」
思わずガバッと飛び起きた。

恵理のことを思うと、やはり胸が痛くなる。そして、胸の奥から熱くなる様な感覚が沸き上がってきて、それはどうしようもなくオレに一目惚れを自覚させるのだった。
「あぁっ・・・ちくしょっ、どーにかなっちまいそーだよ!」
今日はやけに暑い。部屋を飛び出すとその足はキッチンへと向かい、
きっちり冷蔵庫の前で止まる。
『ガチャン』、と開く音を、まるで遠くで聴いているかの様に自分の意識は違う方向へ行ってしまっている。そのままジュースを取り出すと、フタを開けて一気飲みした。
「あー何で今日こんなに暑いんだ?それともオレ自身が暑―――」
らっ、と足下がふらついた。地震かと思った。
軽く眩暈がして、思わずジュース缶に目を落とすと、
「あ・・・」


ビール缶。何でうちにビールがあるんだよ、と思いつつも
「やば・・・オレ、ビール一気飲みしちゃったのかよ・・・ぉ・・ッ!」
頭が真っ白になりかけたその瞬間、オレは玄関に向かって缶を投げつけた。
・・・パカーン、なんて阿呆らしい音と同時に、オレの意識は闇に沈んだ。


第四章 END