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第三章 止まらない想いに幻を見る日。

 


「うわっ、ちょっ・・・ちょっと!恵理~、待ってよ~!」
「もうっ、銀矢、おっそーい!置いてっちゃうよ~?」
あはは。町中を歩きながら、私達は互いに笑いあう。
ここで知ったが何かの縁なので、午後は銀矢に街案内をすることにしたのだ。

しばらく喋り歩きながら、やがて私達はオシャレ目な入り口にたどり着いた。
「ここ、喫茶店なんだ!・・・ちょっと小腹もすいたし、寄ってくー?」
「そーだな。オレも何か食べてぇー!」
そんな訳で、私達は喫茶店に入った。

『カランカラーン』
店に入ると、奥から、待っていたかのようにウエイトレスが出迎えた。
「いらっしゃいませぇ~・・・あら、恵理さん。いつもご利用有り難う御座います。
いつもの席、空いてますよ~・・・あら、今日は友達と一緒で御座いますか?」
「うん、まぁ、そんなところ。んじゃいつもの席でお願い。」
「はいわかりましたー。少々お待ち下さい」
ウエイトレスと話をしつつ、私と銀矢は奥の方の席に着いた。
「ねぇ恵理」
「ん?何?」
「恵理ってここの常連なの?いやに親しそうだったじゃん?」
「うん、そーよ?皆いい人達だよー。私ここ気に入ってるんだ♪ それに・・・」
「それに?」
「ここの紅茶、すっごく美味しいの!私紅茶苦手なんだけど、ここのは飲めるの」
「へぇ~・・・」
どうでもいい内容の会話に花を咲かせていると、さっきのウエイトレスがやってきた。
「ご注文はどうなさいますか?」
「んっと。そーだなー・・・銀矢、紅茶飲んでみる?」
「うん。恵理にお任せするよ。」
「それじゃー、紅茶二つと、いつものを一つお願いします」
「はい、かしこまりました!少々お待ち下さいませ・・・」
そう言ってウエイトレスは厨房の方に消えていった。
注文も済んだので、とりあえず私は銀矢とのおしゃべりに没頭する事にした。
「ねぇ、銀矢って何処から来た~?」
「オレ?オレはね・・・福島県!恵理は?」
「私は東京よ!にしても銀矢ってさ・・・」
「オレが・・・何?」
「カワイイよね」
「『カワイイ』ぃ!?」
そう言うと銀矢は腹を抱えて笑い出した。
「うん、カワイイ(はぁと)でもって・・・銀矢も高校生だよねぇ?友達、多かった?」
「んー、多くなかったな・・・ビンボーだから、『友達になるな』って周りから言われてたみてーだし・・・。」
「それで・・・バイトしてたの?」
「あぁ。自転車とバイク売ってたんだ。」
「へぇ・・・だから自転車直せたんだぁ・・・」
「あれくらい簡単さ。また壊れたら、オレに見せてみなよ。直したるから!」
「本当!?ありがとー!☆」
そうやって、会話に再び花が咲いた頃。
「お待たせいたしましたー。ご注文の品はこちらで宜しいですよね?」
ウエイトレスさんが来た。・・・さっきとは別の人だったけど。
そして、話しかけられる。
「何かラブラブっぽくて楽しそうですね♪」
「えっ、やだぁーん、もー。お世辞ばっかり(笑)別に、彼氏って訳じゃないですよー」
「あら、そうでしたか。うふふ、じゃ、失礼しましたー」
ウエイトレスが奥へ戻るのを見届けると。私は紅茶を一つ、銀矢の方に押しやった。
「はい」
「あぁ、ありがと」

ふわっ、と、仄かな、紅茶の甘い香りが、私達の鼻孔をくすぐる。
銀矢がそれを、一口飲むと。
「・・・うわっ。これ、本当に紅茶?」
「そだよ?」
「すっごく、美味い。何かカンドー!」
「よかったね☆」
少し、笑って。

「そうそう」
「ん・・・?」
「私ね、メル友のとこに住まわせてもらってるんだけどね。
メル友が、銀矢のコト『見てみたい』って言ってた」
「へぇ・・・メル友って、男?」
「そうだよ☆」
自分の事じゃないのに、コリーの事を聞かれたのが何だかくすぐったくって・・・
ちょっと、微笑んだ。
「恵理ってば、あーやしぃー!」
「何でよ~!」
「仮にも恵理は女の子っしょー?ほら、あんな事やこんな事とか」
「んもぉ!やっぱしその事に突っ込むんかっ!」

*   *   *

恵理のメル友が男だと判った瞬間、胸の奥が痛くなった。
・・・彼女という人間を、もっと知りたい。そんな衝動に駆られた。
(嫌われてもいい、もっと、知りたい。)
そんな思いが、オレの心を支配していく。
「ねぇ、恵理はさ、多分・・・だよね?その人の事、スキなんだよね?」
「え・・・うん。そだよ。」
オレの問いかけに答えた後、彼女は赤面して、うつむいてしまった。
「気が付いたらさ・・・好きになってたんだ。バカだよね、私、その時彼氏いたのに。」
「ええっ!?彼氏がいたのにどうしてメル友を選んだの?!遠くに住む人より、近くにいる人の方がいいだろ!?」
「うん、確かにそうなんだけどね。でも、私。彼氏の事、そんなに好きじゃなかったんだ。
・・・相手に失礼だけどね。」
そう言うと、苦々しく笑うと、彼女は急に真面目な顔になり、そして言った。
「でもさ銀矢、私、思うんだよね。人を好きになるキッカケって、何でもいいんだなって。
ポイントは、自分が誰を好きになったコトに『気づく』、ってコトじゃないかな。」
「好きになるコトに・・・気づく?」
意味が分からなくて、思わずオレはオウム返しに口にした。
「そう。仮にAさん、Bさん、C君がいたとするでしょ?AさんはC君が、C君はBさんが、BさんはC君が好きだとする。だけどBさんは、自分がC君を『好きだ』って思ってることに気づけない。こんな関係、銀矢ならどう思う?」
「うわ、それ微妙。つーか、スゲーじれったいし!」
「ね!ねっ!? C君、ちょっと可哀相でしょ?!」
「そだなー、『気づいてやれよ!』、みたいな!」
「要は、自分を理解出来てればいいのよ。そしてその想いを武器に、相手へ一直線!」
「なるほど!」

・・・。
・・・・・納得してどーする自分。、話が本題からズレてるだろ。
話を戻そうと、オレは思い切って恵理に問いかけた。
「で、他に理由は、あったりしたの?」
「・・・あったよ。アイツが・・・私の事、必要としてくれなかったから・・・。」
「・・・え?」
そこから。何かが切れたみたいに、彼女の口は止まらなくなった。
運ばれてきたパフェにも手を付けず、彼女の言葉は続いた。

「私ね、『もう私、貴方の彼女だから、必要とか、そんな時、私を呼んでね』って言ったことがあるんだ。そしたら彼、何て言ったと思う?
彼、『そんな、同情みたいな優しさはいらない』・・・って。ヒドイよね。呆れちゃった。
好きだから私に告白したんでしょう?カレカノになったんでしょう?『同情みたいな優しさ』って何さ?私はそんなつもりで言ったんじゃないのに。一気に気持ちが冷めたよ。

その後も、色々あって・・・結局、別れちゃったんだ。なのにアイツ泣いてんの!
『ごめん、もう一回やり直そう』って・・・!もう、大嫌い!」
ダンッ。
気が付くと、恵理がテーブルを思い切り叩いてしまっていた。
それとは、数秒後に。
・・・ピチャン、と音がして、テーブルに水滴がはねた。
「恵理・・・」
「何?まさか、泣いてる、とか言うんじゃないでしょうね?私、泣いてないからね・・・」
感情の読みとれない視線を向けられて、恵理が訳の分からない言葉を言う。
ピチャン。また、滴が落ちて、はねた。
「じゃあ恵理。聞くけど・・・その目から流れてるのは、何かな?」
「違うっ!・・・違うもん、これは・・・これは・・・ぁっ!」
店には未だ誰も入って来ず、店内の席にはオレと恵理しかいない。そのせいもあるのか、彼女の声がそこら中に響き渡っている。
オレは、ポケットからハンカチを取り出すと、それで恵理の涙を拭ってやった。
「ごめん・・・ありがと、銀矢・・・。」
言いながら泣いてるから、彼女のメガネがぐしょぐしょに濡れてしまっている。
「メガネ、濡れてるよ?拭いたら?」
「あ、ホントだ」
言うなり彼女はメガネを取ると、テーブルの横に置かれていた紙でメガネを拭き始めた。
メガネの下の素顔はとても愛らしかった。それを見た、目の前に座るオレの心臓の鼓動が
まるで、飛び出すんじゃないかという位に、早まっていく。
・・・え?オレはまさか恵理にホの字(死語)なのか?
ええっ!?でも、そんな・・・うわぁ・・・まさかぁぁぁ!?うわぁぁ(赤面)

「どしたの銀矢?頭でも痛いの?」
その一言でオレは我に返った。いつのまにか頭抱えて、へたり込んでた。何てバカなオレ。

しばらくして、恵理がパフェを食べ終えたので、喫茶店を後にし、オレ達は
彼女のメル友が通う大学へ向かった。

歩きながらのおしゃべりは、楽しい。
「へー、恵理のメル友ってあの大学行ってるんだ。」
「そうなの!・・・ん。そーいや、私、もう一人メル友いたなー・・・福岡に住んでて、26歳なの。」
「マジかよ!しかもオレと同じ福岡か。」
「そうだねー」
「まて、そういえばオレにも、もう一人いたなー、メル友。」
そんなカンジで『メル友』の話をしていたら、いつのまにか大学の入り口門に着いた。

「あ、いたぁ!」
「おーい!」
恵理が声を発したのと同時に、相手らしき人の声が聞こえた。
目を凝らすと、確かに見えた。その人は、手を振って走ってきた。
「おー、かちゅ!迎えに来てくれたのか?何か嬉しいな」
その言葉に、オレははっとした。
さっき言った、もう一人のメル友の呼び名と同じだったからだ。
偶然かもしれない、でも、可能性は・・・。

「えへへ。コリー、ほら。この人だよー。同胞(笑)」
「おぅ。君が大沢銀矢君かい?初めまして、俺は月島大樹といいます。よろし!」
そう言うと、男性は軽く会釈した。オレもあわてて頭を下げる。
そして、おそるおそる聞いてみた。
「あの。『かちゅ』、って恵理のコト・・・ですか?」
すると不思議そうな顔で。
「そうなんだけど・・・どうかしたか?かちゅのこと、知ってるのか?」
構わず、今度は恵理に問いただした。
「ねぇ恵理、そのもう一人のメル友って、もしかして呼び名、『シルバ』、だったりする?」
・・・予想通りの言葉が返ってきた。
「ええっ!?何であたしのメル友のなま・・・―――まさか。銀矢・・・!シルバ!?」
やはり、大当たりだったらしい―――。
「そういえばここ最近メールが途絶えてたけど・・・本当に?」
「あぁ。何だったら、オレの携帯の履歴、見る?ちなみに26歳って、多分オレの入力ミスだと思う・・・。」

一瞬、3人共黙り込んで。
・・・ふいに。

「・・・ふふっ、あはははははっ」
笑い出す恵理。ついに3人共笑い出してしまった。
「まさか銀矢だったなんてね・・・!世間って狭いやっ!」



第三章 END