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第二章 儚い夢(少女)と儚い恋(少年)に。


・・・チュンチュンと、小鳥たちの歌声がきこえる。
布団の感触が心地良い。
「うーん・・・」
思わず寝返りを打った。そういえば俺、何処にいる・・・?
ここは、何処だ・・・?

「シルバー!朝なんだけどぉぉ~?」

その一言で目が覚めた。
「はぅあ!」がばっ。半ば体を起こした状態だった。
「部屋入るよ~」
ガチャ
「あっ、今起きた?朝食、出来たよ。」

「あ、うん。着替えたら行くよ。。」
その言葉にみやはちょっと驚いた顔をして。
「あれ、シルバってば着替えちゃんと持ってきてるの?」
「一応、ね。男の服はシンプルなんだよ!」
「何それー、意味わかんなーい」
「さぁさぁ。着替えるから、みや部屋出ててくれない?
一応・・・恥ずかしいから。」
ぶっ、とみやが笑い出す。
「あははは・・・ほーんと、シルバってばどこまでも
面白くてカワイー!」

(ガーン!)
「頼むから・・・カワイイって言うの止めてくれない・・・?
男のプライドが~(泣)」
「はいはい」
そういうと、みやは部屋から出ていった。
「先にリビングに行ってるからね」
「わかった」
・・・。
数分して、着替え終わると、俺はリビングへ向かった。
リビングのテーブルの上を見て、俺は思わず目を丸くした。
目玉焼きに、食パン、牛乳に、サラダ。
「うまそう・・・」
無意識的にそんな言葉が口から出た。
くすっ、とみやが微笑んだ。
「やっぱり、そーなんだ。シルバのメール見てー、『大変そうだなー』
って思ってたのよ、いつも。」
「いつも?」
思いがけない言葉に、思わず俺は聞き返した。
「うん。あたし男友達とか、年の離れた友達とか居なかったから、
その分、シルバの方に興味がいってたから」
「マジかよ(笑)」

かたん。
そう言いつつ、俺も椅子に座った。
「いただきます」
初めて、人のいる場所で俺は朝食を食べた。
そばに人がいると、本当に違うんだな。・・・寂しくないし。

*   *   *   *   *

(ええっと、この道だな。・・・う。わからない・・・。
しかたない、そこのおばあさんに聞いてみよっと)
「すいません、おばあさーん!」
「・・・は~いぃ、わしに何か用かぇ・・・?」
「すいませんおばあさん、道を聞きたいんですけれどーーー」

・・・。
そんな訳で、早速俺はみやに今晩の材料の買い足しをまかされた。
「なんで昼の買い足しじゃないの?」と聞いたら、
「昼はラーメンとチャーハンなの!」ってあっさり言いやがって。
男だと思ってなめてるのかぁ・・・?
これでも俺は家庭科の成績は最高評価なんだぞっ!
「ちっくしょ~・・・」
背中から熱いモノが込み上げる。
「うぉーっ!俺の料理魂が燃え上がるぜーっ!」
そのときだった。
・・・ざわざわ、と人たちがざわめき始めた。
な、何だ?
「す、すいませーん、何か・・・」
突然だった。
「あぶないですぅぅぅぅぅぅ」
後ろから、声が響いたと同時に。
どがしゃんっ!
「でっ!」

シュルルルルル・・・と、自転車のタイヤが空回りする音。
そして、自転車は倒れた。

・・・そう、背後からぶつかってきたのは、またも自転車だったのだ。
俺・・・もう泣きそう・・・これで2回目だし・・・

振り向きざまに一言かましてやろうと思った。
「いってーな!一体この俺に自転車ぶつけたんは誰・・・―――」
「すいませんごめんなさい私が悪いんですそこら辺から壊れかけた自転車拾って乗り回してる私が悪いんです本当にごめんさい反省してますこんな私は怒られても仕方ないんですどーぞ叱ってくださいごめんあさぁぁいぃぃぃ・・・
ひっく・・・ぐす・・・ん・・・」
耳がきーんとした。自転車に乗っていたのは、女の子、だった。
(しかも泣き出しちゃったよ・・・この人・・・どうしよう・・・)
ふと、気が付くと皆がこちらを見ていた。
俺は少し焦りつつ。
「とっ、とりあえず向こうの方でっ・・・お、落ち着いてよ!」
とりあえず、俺と女の子は土手の方へと移動した。

・・・。
・・・・・・。

かーかーと、昼なのに何故かカラスの鳴き声が響く中、俺は女の子の話を聞いていた。
「そっか、、、うん、なるほど・・・それで・・・」
「はい、すみませんでした・・・ケガ、ありませんでした?」
女の子は不安げに俺の顔を覗き込んだ。

「あ、大丈夫っすよ」
ぱたぱたと手を振る俺。だったが。
(大丈夫じゃねぇよ、本当は。めちゃ背中いてーよ。(泣)

でも、まー、可愛いから許そう・・・今回は・・・。

俺は、自転車に目をやり。
「で、壊れかけた自転車ってそれだよな?」
「うん?」

――そう、彼女は、2、3日にこの壊れた自転車を拾い、
軽く直して使っていたらしい。ところが、さっき俺にぶつかる前に、
たまたまブレーキが壊れてしまったらしい。
そして、俺にぶつかった。・・・だから思い出すだけで背中痛いってーの。
「俺、直してやろうか?こういうの、得意だから」
そう言うなり、自転車を直し始めた。
がちゃがちゃ。
女の子が話しかけてくる。
「・・・そういえば、。あなたの名前聞いてなかったね。何ていうのっ?」
・・・これは神が俺にくれた幸運だろうか。
そう思った俺は、迷わず答えた。
「俺?俺の名前は、、大沢銀矢。よろしく」
言ってしまってから、訂正したくなった。『よろしく』って、何がだよ(笑)
しかし、予想外な答えが返ってきた。
「へ~、銀矢って言うんだ?よろしくね、私、美崎恵理!
つかさ、その名前、カッコいいねっ!」

ほめられたぁ?(笑)俺の名前?(笑)
・・・何か、くすぐったいな。初めての感覚。
その言葉ですっかり有頂天になっていた俺は、つい、口を滑らせてしまった。
「俺さ、実は家出してきたんだ。新潟に」

途端に彼女の笑顔が消えた。

・・・俺、何か・・・マズった・・・?
「そう・・・、なんだ。何で、家出したの?」

わずかだが声が震えている。『しまった』、と俺は思った。
しかし、今更黙り込むのも間が悪い。そのまま話を続けることにした。

「そうだな・・・夢を・・・っていうか、いやだったんだ。何もかもが。」
「・・・。」

「俺の家族構成・・・聴く?」
「う・・・うん」
「・・・・母さんは・・・水商売やってて。父さんは・・・ギャンブラー。最悪だろ?
小遣いなんて、今まで一度ももらったことないさ。・・・貧乏だったからな。」
「・・・スゴイ環境だね。」
「そりゃぁね。・・・それでも、母さんは、高校へは行かせてくれた。
それには感謝してるさ。だけど、隠れてバイトしたりしてさ。
やっぱ、小遣いがねーのは辛いから」
「へぇぇ・・・」
「だけど・・・もう耐えきれなかったさ。精神的に。
で、荷物持って、家出しちゃった訳。
そしてメル友のいる新潟へ~♪」
「・・・!」
彼女が表情を変えた。何か、言いたげな・・・それでいて、安心した様な顔に。

「・・・・同じ、なんだね。」
「え?」

悲しそうな恵理の声に、俺は思わず耳を疑った。
『同じ』、と彼女は言った。・・・どういう事だ?
呆然としている俺を見つめながら、彼女は言葉を紡ぎだした。
「実はね・・・私も、家出娘なんだっ。・・・一ヶ月、前にね。家出して。
で・・・頼るところ探して、思い当たったのが、新潟にいるメル友の家・・・。」
「!」

「ふふ・・・不思議だね・・・同胞がいる、なんて」
くすっ、と笑った。やっぱり、笑顔が可愛い。

「私の夢は・・・声優か、小説家になることでね・・・。トーゼンの如く、親に反対されたわ。
『芸能関係の仕事は、売れるかどうかもわからないだろ。それに、お前にそんな才能は無い!』・・・ってね。ひどく、ない?
あたしの書いた詩とか、物語とか、見たこともない癖に・・・っ」
最後の方は、本当に怒ったような口調で。少し、胸が痛んだ。
「見せたら見せたで、読まないで、それをゴミ箱に捨てたのよ?
・・・さすがにキレたね、私。そして、悲しかった。
『私がどんな夢を見てるか』なんて、きっと関係なかったのよ!
夢見ることの何がいけないのよっ!」

彼女は、川の向こうに向かって石を投げつけた。
石は水を二、三度切ると、ポチャン、と、音を立てて沈んだ。

「だから・・・全部諦めちゃった・・・のかな。ふっきれちゃったのかな。
その時のわたしは・・・その・・・メル友のことが、好きで。
『もし、夢を諦めちゃうんなら、好きな人と一緒にいようかな』って思って。
で、次の日、ココに(笑)」

そう言うと彼女は、少し決まりが悪そうに微笑して、空を見上げた。
「ん・・・」
つられて自分も空を見上げる。

飛行機雲が伸びていた。
ゆっくりと、ゆっくりと。白い、一筋の。
例えるなら、それはきっと、恵理にとって、『僅かな希望』。
・・・思い、出しているのだろうか。

「なー恵理。俺さ、思ったんだけど。」
彼女が振り返る。
「なーに?」

「恵理がさ、『これは絶対やりたい』って思ってることを達成・・・とか、出来たりすれば、
それも、ある意味『夢が叶った』・・・のと同じ、とか思わねー?
俺は・・・きっと、同じだと思いたいんだけど。」

暫く、俺達はその場に佇んでいた。彼女はしきりに首を傾げていたが、やがて。
俺の言わんとしていたことに気づいたのだろう、あっ、と声を上げると、
振り向いて、そして叫んだ。

「ありがとう・・・銀矢、そーいってくれて」

胸の奥が締め付けられて、熱いモノが込み上げてきた気がした。

* * * * *

「ただいまーコリーっ」
何とか家に帰ってくると、私はそのままコリーに抱きついた。
「おかえり、かちゅ。・・・腹へったよ(笑)」
「ん、少し待ってて~♪今から作るからっ。」
突然、コリーの手がおでこに触れて。
「あれ、どしたん?おでこにキズが・・・」
「おでこにキス?(笑)」
ふざけて言い返す。
「違う違う、おでこに傷があるな、と思って。ほら、頭出してな。
・・・消毒して絆創膏貼ってやるから。」
そういってコリーは、ポケットから絆創膏を取り出すと。
ぴりぴりーっと、剥離紙を剥がして、絆創膏を貼った。
そして、貼ったその上に、唇が触れて。
みるみるうちに、赤面してしまう。
「ばっ、ばか・・・」
コリーはくすくすと笑うと、
「ん、かちゅのそーいうところが、俺にはカワイク見えて仕方ないんだから。
だけど・・・まだかちゅはいい方なんだぞ?俺はまだ二十二歳なんだから。
例えばかちゅを・・・」

「うっ、うわぁぁぁ(汗)その先は言わないで言わないでっ!
わわわわかってるってばぁ!(赤面)」
思わず、前にあった上半身ハダカのコリーを思い出し、狼狽えてしまった。
・・・くす。くすくす。互いに笑いあう。

「で、早く昼飯、よろしく♪」

その場に私はずっこけた。


* * *
(カチカチ・・・ボッ・・・・トントン・・・トントン・・・トンッ・・・)

「そーいえばね、きーてコリー♪」
「聴いてるよ、ちゃんと。」
私は言葉を続けた。
「私、家出してきて一ヶ月たったじゃない?」
「そういえば、そうだね。」
「和あたしさっき友達できたのー!初めてのこっちでの友達。男なんだけどね。
しかしっ!驚くことに、その人も、昨日家出して、メル友の元に来た人なの!」
「ほほぉーぅ(笑)そりゃーすごぃ偶然だな。しかも、同志か(笑)」
「そうなの!(笑)しかもね、あの自転車直してくれたんだよ!」
「おぉ!そりゃよかったな。・・・俺のじゃないけど(笑)」

「でね、昼食食べたら私、その子を街に案内しようと思って」
「ん、いいんじゃない?行って来なよ。俺もちょっと学会に出かけるから」
「うん!」
一方その頃・・・。


安っぽい、それでいて美味しそうな匂い。・・・立ち上る湯気。
「はいっ!みありん特製ラーメン&チャーハンいっちょ上がりぃっ!」
「『特製』・・・って、只チャーハンとラーメンごちゃ混ぜにしただけじゃん・・・」

「文句言わないのぉ・・・えいっ!」
ばっちん。「痛ぇっ」
おでこを思い切り弾かれた。
「そんな事言うなら食べさせないよ~?」
「あぁっ、みや・・・いやヒメ様食べさせて下さい(笑)」
その一言にみやは爆笑する。
「まぁいいわ・・・ラーメンのびちゃうから早く食べて・・・。」

「いっただっきまーす」
ずるずる。ちゅるるる。・・・。
「あっ、そーそー。みやー、聞いてよ!俺さ」
「何―?おふぉふぃろふぃふぉこあっふぁ?」
がつがつ。
「・・・。飲み込んでから喋ってよ、みや・・・」
「ふぁいふぁい」
ちゅるるるる、ごくん。
「で・・・何?面白いことあった、の?」
恵理のことを思い出すと、自然と心が軽やかになった。
「まぁね、。友達・・・出来たんたんだよ。さっき。」
「あらっ、それはよかったねぇ~☆」
「女の子、だよ。笑顔が超カワイクってさ!」
ひくっ!っと、みやの顔が引きついた気がしたが、構わず話を続けた。
「で。昼食べたら、その子に街案内してもらうから。だから午後は出かけてくるよ」
「! ちょっと銀矢・・・」

ずるるる・・・・・。ちゅるちゅるちゅる・・・ごっくん。
「ごっそさ・・・じゃねー、ごちそーさま!じゃ、急がないと時間だから!
行ってくる!」
「あっ、まって・・・」

がちゃん。とたたたた・・・
半開きになったドアが、彼の期待度を示している様だった。


「やだ、私ってば・・・シルバを・・・名前で・・・―――」
半ば動揺しつつ・・・彼女ははた、と、ある事に気が付いた。
「ねぇ・・・シルバ、その子のこと、好きになっちゃったの・・・?」


第二章 END