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―――その日の空には、雲一つ無かった。 とてものどかで、ゆったり時間が過ぎていく――― 「…ふあ、ぁ…ぁぁあ~」 雲ひとつ無い、いい天気だな…、と呟いて、伸びをして一欠伸する。 特に胸騒ぎがするとか、虫の知らせ…なんてものがあったわけでもない。 その時は只、「天気がいいから出かけるか」程度に思ったのだ。 だからふらっと視界に入った、コンビニにでも寄ろうか…と思っただけだったのに。 ―――だったのに。 見過ごせなかった。 「…―――待てー、この…っ、ひったくり――!!」 追いかけ始めて数分、ようやく犯人の姿をこの目に捉えた――― コンビニに突如現れたひったくり犯。 ちょうどその時店内に居た店長――っていうかアンタかよ!――が引っ捕らえる間もなく、 これまた同じく、ちょうど会計中だった女の子のサイフをひったくって逃走した、ということだった。 不覚にも店外に出た直後に転倒し、犯人に追いつけなくなった、奴からそれを聞き… ………気がついたら走り出していた。 犯人がどの方角へ逃走したのかについては、 いつの間に付いてきていたのかレイが教えてくれた。流石風の精霊、といったところだろうか? 「そこのひったくり!盗ったサイフ返せ!」 力の限り叫ぶと、返事が返ってきた。 「やーだよ…!返せと言われて返すバカは居ないだろー…!」 「―――お互い走ってるのに、よく声出るな、アイツ」 はぁはぁ言いながらダッシュする隣で、 「それは――ハァ、ま、マスターも同じだと思います…ハァ、です――」 「レイも無理すんな、そろそろ俺一人で大丈夫だから帰ってろ」 「で、でも――」 「追うので、精一杯だろ――?…っ」 実際、犯人の足は結構速く(店長やってるアイツでもこれは追いつけないと思った)、 俺でさえ、ダッシュで追い続けないと、姿を見失ってしまいそうだった。 「――…レイ、周りに人の気配は?」 どれだけ追いかけただろう――そろそろ、街の外れのはずだ。 「え、あっ、はい確認しますっ……!」 ばっ、と彼女が腕を広げると、ぶわ、と一瞬突風が発生した。 数秒経たないうちにそれはあっという間に広がって――― 『―――うわぁ!』 前方から犯人の声。 どうやら突風に巻き込まれて足を滑らせたらしく、ずでん、と派手に転げた音がした。 「…と言うことは、周りには俺たち以外いない、か」 『跳』、と小さく唱え大きく飛んで、犯人の元へ駆け寄り――… 「おーっと、こいつは返してもらうぜ?」 足下に転がっていた、可愛らしい――というよりかはかなりシンプルな形のサイフを拾い上げた。 <続く> ---------------------------

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