「SS012」の編集履歴(バックアップ)一覧はこちら

SS012」(2007/09/03 (月) 22:29:13) の最新版変更点

追加された行は緑色になります。

削除された行は赤色になります。

    くつくつ。くつくつ。 目の前のコンロ上で、大鍋がくつくつと歌う。 「・・・はぁ」 ため息がこぼれる。 「なんでこうなったんだっけ…」 私はがく、と肩を落とす。 …ちなみに、大鍋の中は、大樹と二人で食べようと思って作ったカレーだ。 「恵理ー、まだですか~?」 「うぅ…お腹すいたぁ…」 「マロン…よその家でそれは失礼だ」 「適当に水とか用意しとくぜー」 隣の部屋のリビングから、聞こえる、声。 「…はぁ」 大きなため息を吐きながら、いつの間にか頭を抱えていた。 そもそも今日こんなことになってるのは、大樹のやってる「課題」とやらのせいだ。 何日も前から「今日はカレー作るね♪」と予告していたのに、突然 大樹を気に入っている…大学の教授さん、とやらに、「合宿」と称して拉致られてしまったのだ。 二、三日は帰れないと言っていた。 「…全くひどいよね、大樹の腕がいいからって、助手代わりに連れてっちゃうなんて」 こちらの都合も知らずに勝手なんだから、とぼやきながら、大鍋の中のカレーをかき混ぜる。 いつもおかわり2~3杯はする人なので大量だ。 …確かに、大勢で食べるには、丁度良いかもしれないが。 ―――大体、なんでよりによって前日に、なのだ。 折角楽しみにしてる、と言ってくれたのに…だから尚更気合い入れて作ったというのに。 …好きな人と食べるから美味しいのに。 ほわほわと湯気があがり始めたので、適当なところでコンロを切った。 皿に、適量にご飯を乗せ、その上から暖め直したカレーを掛ける。 「銀矢ー、お盆持って取りに来てー」 「おうっ」 「あ、私がやりm」 「私は銀矢を呼んだの、レイキはマロンちゃん達とお喋りでもしてて」 「…えう」 ごめんね。 料理をしたら、八割方、ポカをやらかすレイキには頼めないよ…と、心の中で呟きながら、 お盆に4人分のカレーを乗せていく。 「これレイキの分ね、で、その肉が多めにはいってるのが銀矢の。 んで、あとの二つがマロンちゃん達のね」 「ん、了解。 …悪かったな、突然来て」 皿を見つめながら銀矢が言った。 「いや… 気にしてないよ」 どさどさとレイキの分の皿に、たまねぎを大量に盛りながら返事をする。 「って思いっきり気にしてんじゃねーかっ!」 「当たり前でしょ! 本当なら、今私と一緒にカレー食べてるのは大樹さんなんだから…!」 「さっきと言ってることが違うじゃねーか…」 そう言って銀矢は呆れて、 「兄貴が行く前に、連絡あってさ」 「…え? 大樹が銀矢に…?」 「…せめて、俺の代わりに、一緒にカレー食べてやってくれって、言われた。 あはは…兄貴もだめだな… 俺じゃ、代わりにならないって…。 ―――でもさ、そう言ったら、笑ってこう言ったんだぜ? 『一人でも多く、誰か知り合い連れて言って、大勢で食べろ』ってさ」 「…そっか」 「兄貴は、ちゃんと…恵理のこと思ってるよ。 自分が居なくてもさみしくないように…ってさ。 ・・・ほら、大勢で、一緒に食べれば、寂しさも無くなるし――いつもより美味しく感じるし、な 兄貴は…自分が居ないから、ってただそれだけで恵理に寂しい思いさせるわけ…ないだろ?」 「そう、だよね…うん。…ありがと、銀矢…大樹」 >[[続・カレー>SS013]]
    くつくつ。くつくつ。 目の前のコンロ上で、大鍋がくつくつと歌う。 「・・・はぁ」 ため息がこぼれる。 「なんでこうなったんだっけ…」 私はがく、と肩を落とす。 …ちなみに、大鍋の中は、大樹と二人で食べようと思って作ったカレーだ。 「恵理ー、まだですか~?」 「うぅ…お腹すいたぁ…」 「マロン…よその家でそれは失礼だ」 「適当に水とか用意しとくぜー」 隣の部屋のリビングから、聞こえる、声。 「…はぁ」 大きなため息を吐きながら、いつの間にか頭を抱えていた。 そもそも今日こんなことになってるのは、大樹のやってる「課題」とやらのせいだ。 何日も前から「今日はカレー作るね♪」と予告していたのに、突然 大樹を気に入っている…大学の教授さん、とやらに、「合宿」と称して拉致られてしまったのだ。 二、三日は帰れないと言っていた。 「…全くひどいよね、大樹の腕がいいからって、助手代わりに連れてっちゃうなんて」 こちらの都合も知らずに勝手なんだから、とぼやきながら、大鍋の中のカレーをかき混ぜる。 いつもおかわり2~3杯はする人なので大量だ。 …確かに、大勢で食べるには、丁度良いかもしれないが。 ―――大体、なんでよりによって前日に、なのだ。 折角楽しみにしてる、と言ってくれたのに…だから尚更気合い入れて作ったというのに。 …好きな人と食べるから美味しいのに。 ほわほわと湯気があがり始めたので、適当なところでコンロを切った。 皿に、適量にご飯を乗せ、その上から暖め直したカレーを掛ける。 「銀矢ー、お盆持って取りに来てー」 「おうっ」 「あ、私がやりm」 「私は銀矢を呼んだの、レイキはマロンちゃん達とお喋りでもしてて」 「…えう」 ごめんね。 料理をしたら、八割方、ポカをやらかすレイキには頼めないよ…と、心の中で呟きながら、 お盆に4人分のカレーを乗せていく。 「これレイキの分ね、で、その肉が多めにはいってるのが銀矢の。 んで、あとの二つがマロンちゃん達のね」 「ん、了解。 …悪かったな、突然来て」 皿を見つめながら銀矢が言った。 「いや… 気にしてないよ」 どさどさとレイキの分の皿に、たまねぎを大量に盛りながら返事をする。 「って思いっきり気にしてんじゃねーかっ!」 「当たり前でしょ! 本当なら、今私と一緒にカレー食べてるのは大樹さんなんだから…!」 「さっきと言ってることが違うじゃねーか…」 そう言って銀矢は呆れて、 「兄貴が行く前に、連絡あってさ」 「…え? 大樹が銀矢に…?」 「…せめて、俺の代わりに、一緒にカレー食べてやってくれって、言われた。 あはは…兄貴もだめだな… 俺じゃ、代わりにならないって…。 ―――でもさ、そう言ったら、笑ってこう言ったんだぜ? 『一人でも多く、誰か知り合い連れて言って、大勢で食べろ』ってさ」 「…そっか」 「兄貴は、ちゃんと…恵理のこと思ってるよ。 自分が居なくてもさみしくないように…ってさ。 ・・・ほら、大勢で、一緒に食べれば、寂しさも無くなるし――いつもより美味しく感じるし、な 兄貴は…自分が居ないから、ってただそれだけで恵理に寂しい思いさせるわけ…ないだろ?」 「そう、だよね…うん。…ありがと、銀矢…大樹」 →[[続・カレー>SS013]]      

表示オプション

横に並べて表示:
変化行の前後のみ表示: