クリフトとアリーナの想いは @ wiki

2007.02.02

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kuriari

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クリフトのアリーナへの想いはPart6
878 :【ライアン】1/4 ◆XJ3Ut0uuQQ :2007/02/02(金) 07:01:15 ID:iO+4uv8t0

拙者はライアン。
バトランドの王宮戦士だ。
先日、キングレオ城で、探し求めていた勇者殿とやっとお会いすることができ、及ばずながらも勇者殿のお供をすることと相成った。

皆の氏素性を聞いて驚いたのは、一行の中に一国の王女がいたことだった。
アリーナ姫は、行方不明の父王と城の人々を救うため、王女の身ながら、健気にも、この厳しい旅の寒空の生活に耐えておられるとのこと。
「半分は、好きでやっておるんじゃがな…。」
拙者が感心していると、お供のブライ殿が何かぶつぶつつぶやいておられたが。

アリーナ姫には、ブライ殿以外にもう一人、神官のクリフト殿がお供についておられた。この、クリフト殿のアリーナ姫への献身ぶりときたら、並々ならぬものがあった。
臣下が主君を心から敬愛する様というのは見ていて気持ちの良いものだ。
そういうと、マーニャ殿は鼻を鳴らして、
「あれは主君への敬愛なんてもんじゃないわよ、あんたも鈍いわね。」
といっていたが、どういう意味だろうか。

今日も今日とて、クリフト殿は木陰でアリーナ姫のマントを繕われていた。
「ご精が出ますの、クリフト殿。」
「はい。姫様はすぐかぎざぎを作ってしまわれるので、繕っても繕っても間に合いません。」
クリフト殿は楽しそうに微笑んだ。
「アリーナ姫は、いつも一番に敵に突っ込むからのう。…しかし、いくら父君のことが
心配とはいえ、王女ご自身が魔物と戦う、というのは、やはり、感心しませんな。」
「…。」
「失礼ながらこのまま父君が見つからなかった場合、姫君の身に何かあれば、
サントハイム王家の血は絶えてしまいますぞ。本来なら、父君の探索は臣下に任せて、姫君はお世継ぎを残された方が、お国のためと思うのだが…。」
クリフト殿が急に表情をなくしたように見えるのは、気のせいか。
「姫様は、言い出したら聞かない方ですから…。」
やや固い口調でクリフト殿は答えた。
「そうか。いやこれは、他国のことに余計な口を指し挟みましたな、失敬。」
拙者は、慌ててクリフト殿のもとを離れた。

そのまま歩いていると、後頭部にものすごい衝撃を感じた。
振り返ると、鉄扇を片手にマーニャ殿が恐ろしい形相でこちらを睨んでいる。
その隣にいるミネアさんも、拙者のことを非難するような目で見ていた。
「あんたもねー、鈍いことは分かってたけど、余計なこと言うんじゃないわよ!」
「何のことですかな。」
後頭部をさすりながら答えると、マーニャ殿は拙者が歩いてきた方を顎でしゃくった。
「見なさいよ、あいつ、ただでさえ、いっつもくだらないことでぐっちゃぐちゃ
悩んでんだから、これでまたしばらくは落ち込んでるわよ。」
見ると、クリフト殿がアリーナ殿のマントを握り締めてうつむいていた。
「…どうもよく、状況がつかめないのだが。」
「つまりね、いい年した大人は、若い者にちょっかい出さずに、
遠くから暖かい眼で見守りましょ、ってことよ。」
マーニャ殿がにっこり微笑むその横で、ミネア殿がため息をついた。
「…それを姉さんがいうと、ものっ凄く嘘臭く聞こえるわ…。」

結局、意味はよく分からなかったが、とにかくクリフト殿にアリーナ姫のことを
とやかく言うな、ということだろうと思ったので、マーニャ殿に言われたとおり、
とりあえずは2人を見守ることにした。

すると、あることに気が付いた。
アリーナ姫はいつも一番に飛び出すが、敵の攻撃がアリーナ姫に届く前に、かならずクリフト殿はスカラやスクルトを唱えていた。
さらに、どんなに激しい戦闘中でもアリーナ姫が少しでも怪我をしようものなら、すぐにかけつけて回復呪文を唱える。
そして、アリーナ姫の隙を狙って襲い掛かってくるモンスターは、ことごとく、彼の即死呪文の餌食となっていた。

なるほど、黙って見守っていれば、見えてくるものがあるものだ。
クリフト殿は、自らの力で、姫様の大事な御体を守るべく奮闘しているのだ。
それを無碍に否定するような、先日の拙者の言葉に気分を損ねたのも無理はない。

そのことを得意げにマーニャ殿に伝えると、何故か、マーニャ殿はおかしそうに
「ほんっとに、あんたも、とことん鈍いわね~。」
と笑ったのだった。
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