クリフトとアリーナの想いは @ wiki

2007.01.31

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kuriari

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クリフトのアリーナへの想いはPart6
861 :828(1/6):2007/01/31(水) 18:50:35 ID:BaM2vXTL0

俺達は、新しく仲間になったアリーナ、ブライ、クリフトの3人を加え、総勢7名でミントスを旅立った。
これだけ人数が増えると、魔物と戦うときも全員の力は要らなくなる。
俺は、旅の間の戦力をなるべく温存するためにも、非常事態でない限り、戦闘メンバーは4名と決めた。
また、魔物の群れと戦うには、メンバーの息のあったプレイが不可欠だ。
そこで、とりあえずは、一番長く一緒に旅をしている俺、マーニャ、ミネアの3人を基本に新しい連中を1人ずつ組み入れて、コンビネーションを見ることにした。
「それだと、私、しばらく休みっぱなしになっちゃって、申し訳ありませんねぇ。」
この提案に、トルネコさんは、全然申し訳なくなさそうに、満面の笑みを浮かべて賛成した。

アリーナ、ブライとそれぞれ一緒に戦ってみて、俺は2人の戦闘能力の高さに驚いた。
まあ、ブライは、位の高い宮廷魔術師だから、高等魔法を操るだろうとは予想していたけど、アリーナには、もう、たまげたとしか言いようがなかった。
一見、小柄で愛らしいお姫様が、ベビーサラマンダを改心の一撃で倒したときには、俺は唖然として、危うく横から突っかかってきたブルホークに串刺しにされるところだった。
その後も、俺達は何度かアリーナやブライと一緒に戦った。

しかし、俺は、クリフトを戦闘メンバーとして呼び出したことはまだ一度もなかった。

森の外れの水場で休憩中、パトリシアの首筋をなでてやっていると、クリフトが近づいてきた。
「ソロさん。」
「ん?」
「何故、私を戦わせてくれないのですか。」
クリフトの表情は固かった。
無理もない。大事な姫様が戦っているのに、自分は馬車でのうのうとしてるなんて、こいつとしては非常に心外なのだろう。
ま、そこらへんをアリーナ自身は全然気にしていないところが、気の毒っつーか、何つーか。
「んー、特に理由はないけどさ…。タイミングだよ、タイミング。」
「だったら、次は、姫様の代わりに私を…。」
「いや、でも、えっと、ほら!お前、まだ病み上がりじゃん。」
この言葉に、クリフトは頬を紅潮させて抗議してきた。
「そんな!もう、完全に回復しました!いつまでも特別扱いはやめてください!」
あちゃー、逆効果だったか。
「うん、分かったよ。次回は考えておくから。」
俺は、まだ言いたいことがありそうなクリフトから逃げるようにその場を離れた。

俺がクリフトを戦闘メンバーに使わないのは、別にクリフトの回復を気遣ったわけじゃない。
先日、2人きりのときに、神官嫌いのマーニャが言っていた言葉。
「だいたい、神官なんて戦闘の役に立つかしらねぇ。」
「…一応、剣の心得はあるって言ってたけどな。」
攻撃呪文を持たない神官は、回復や補助呪文などで、後詰めに回るのが通常だ。
実際のところ、前線に出て戦う神官というのは、余り聞いたことがない。
マーニャの疑問ももっともだった。
ただ、あいつには、奥の手がある。
一瞬にして、敵の命を奪う、禁断の呪文。
今のところ、そのことを知っているのは、仲間の中では俺だけだ。
ミネアは、もしかして勘付いているかもしれないけど。
あいつが、戦闘に参加すれば、その呪文を使わざるを得ないだろう。
俺としては、できる限り、あいつにその呪文を使わせたくなかった。
あいつが、闇の力を操る自分を、心の底で苛んでいるのを知っているから…。

―――でも、いつまでも、戦闘に出さないわけにもいかないよなぁ。
そんなことを考えながら歩いている俺の耳に、トルネコさんの鋭い叫び声が聞こえた。
「敵です!囲まれてます!」

気がつくと、周辺から魔物の気配が押し寄せてきていた。
「マージマタンゴ…!」
マージマタンゴは単体ではたいしたことはないが、集団で襲ってくるとタチが悪い。
「マーニャ!ミネア!アリーナ!戦闘態勢に入れ!」
俺は瞬間的に3人の名前を叫んでいた。
走りながら、ちらりと馬車の方を振り返ると、青ざめて唇を噛み締めるクリフトの顔が目に入った。
しかし、それを気にする間もなく、俺の後方から炎の玉が飛んでくる。
「べギラマ!」
マーニャの火炎呪文を皮切りに、激しい戦闘が開始された。
俺は、奴らの繰り出すヒャドの氷柱をなぎ払いながら、剣で攻撃する。
右側では、アリーナがものすごい勢いでマージマタンゴを端から蹴散らしていた。
ミネアも、左前方でバギをかまして応戦している。
しかし、今回、奴らは数が多かった。
しかも、奴らはホイミを使うために、倒すのにけっこう手間がかかる。
俺もマーニャもミネアもアリーナも、なかなか減らない敵の数に、だんだん疲労してきた。
―――このままだと、まずい、かも。
そのとき、再びトルネコさんの悲痛な声が響いた。
「新手です!がいこつ剣士です!」

マージマタンゴのきのこ頭の向こうに、両手にサーベルを下げた骸骨どもが見えた。
奴らは、手を挙げて、呪文の詠唱モードに入っていている。
―――やばい!この状態で、ルカナンを唱えられたら…!
そのとき、俺の背後から澄んだテノールが聞こえてきた。
「マホトーン!」
同時に、がいこつ剣士の詠唱の動きがとまる。
振り向くと、クリフトが走り寄ってきて、俺の横に並んだ。
「ソロさん、これは非常事態です。全員戦闘参加ということで、よろしいですね!?」
クリフトが、厳しい顔をして前を向いたまま、俺に問いかける。
そして、俺の返事を待たずに、今度はマージマタンゴの群れにマホトーンをかけた。
さらに、口の中でものすごい速さで詠唱を済ませると、両手を挙げて叫ぶ。
「スクルト!」
俺達の体が淡く光り、目に見えない守護の力に体が包み込まれるのを感じた。
クリフトは、背中から長剣を抜いて構えると、そこでやっと俺のほうを見た。
「…見損なわないで下さい。あの呪文を使わなくったって、私は、戦えます。」
「…。」
「それに、あの呪文を使ったって、全然構わないんです。私の左手を頼りにしていると言ったのは、あなたです。」
クリフトの怒りに燃える目を見たときに、俺は、自分が大きな間違いを犯していたことに気付いた。
「…うん、悪かった。ごめん。頼むよ、お前の力、貸してくれ。」
俺の言葉に、クリフトは唇の端を上げて、神官らしからぬ笑みをもらした。
「『力を貸してくれ』じゃありません。一緒に、戦いましょう。」
その言葉に、俺もクリフトに笑みを返した。
「オーケー。んじゃ、一緒にあいつらを蹴散らそうぜ!」
次の瞬間、俺達2人は剣を構えて前に飛び出した。

「ひょーっ、やったわね~。」
魔物達の死骸の山を前に、マーニャが他人事のようにつぶやく。
今回みたいに大量の魔物相手に、逃げずにこれを撃退したのは、初めてだった。
クリフトは、早速アリーナに回復魔法を施している。
俺がみたところは、それほど大きな怪我はしてないみたいだけど。
マーニャは、クリフトをちらりと見て歩み寄ると、鉄扇をぱちんと鳴らした。
「なかなかやるじゃない、神官さん。見直したわよ。」
「…ありがとうございます。」
実際、クリフトの剣の冴えはたいしたものだった。
派手な力強さこそないものの、素早く、確実に魔物をしとめていく。
あの呪文を唱えるまでもなかった。
―――こいつだって、何年も旅をしてきたんだもんな…。
俺は、空を見上げ、改めてクリフトにすまなく思った。

そのとき、クリフトが「ぐっ」と奇妙な声を上げた。
何ごとかと振り返ると、クリフトが前のめりに倒れ、アリーナがクリフトの名前を叫びながら、クリフトに覆いかぶさっている。
「ど、どうした、クリフト!?」
クリフトは、気絶していた。
「クリフトが、痛いところは全部言えっていうから、ここが痛い、ってボタン外して見せたら、急に倒れちゃったの。」
クリフトを揺さぶっていたアリーナがこちらを見上げて、俺はクリフトが倒れた理由が分かった。
アリーナの胸元がかなり際どいところまで肌蹴けており、そこに青あざが見え隠れしていた。
「姫!なんとはしたない…!クリフトもクリフトじゃ!こんなことで気絶するなぞ、情けない…!」
ブライの理不尽な怒り方を聞いて、マーニャが噴き出した。
俺も、ミネアもトルネコもつられて笑い出す。アリーナはきょとんとしていた。
笑いながら、俺は思った。
―――まったく、頼りになるんだか、ならないんだか分からない奴だけど…。
だけど、どうやら、いい相棒にはなれそうだ。
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