クリフトとアリーナの想いは @ wiki

2006.11.11

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kuriari

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クリフトのアリーナへの想いはPart6
479 :1/3  ◆YdWRYb4NOY :2006/11/11(土) 01:23:59 ID:8P4lSCRS0

「参加選手のお呼び出しを申し上げます――――
 クリフトさん、クリフトさん、正面受付までお越し下さい。アリーナ姫様がお待ちです」

場内放送を聴いた瞬間、私は正直ギクっとしました。
姫様から突然のお呼び出し…まあ、理由はだいたい想像がつきますけど。

私が現在いる場所は、さまざまな世界をイメージしたゲーム用のセットです。
世界樹や天空城、それに煌びやかな光を放つ「遊園地」なるものまであり、どれも凝った作りです。
個人的な感想を言えば、何も天空城や世界樹でなくてもよかったのでは、と思うのですが。

ルールは簡単。
ダイスを振ってコマを進め、お店や株を買ってお金を増やし、目標の金額が集まったら
一番先にゴールへとたどり着けばよいという、単純ながらも奥の深いものです。
参加者は、人間ではない方も含めて総勢36名。
私たちの世界からは、わが姫様と戦士のライアンさん、それに私の三人が出場しています。
勇者のソロさんは、「俺も参加する~」と最後まで駄々をこねていましたが、
マーニャさんが「次作のゲームでなら、あんたにもお呼びがかかるはずから我慢しなさい!」と
うまくなだめてくださったので、事なきを得ました。

このゲームの中では、強さによってランク付けがなされています。
ちなみに私は、最低の「Dランク」だとか。私の実力を知りもしないのに、あんまりな仕打ちです。
主催者の方には、人の心というものが欠如しているとしか思えません。

しかし、遊びとはいえ、挑んだ勝負にはやはり勝ちたいのが世の常です。
最初はゲームの仕組みがよくわからずに苦戦し、最下位争いを繰り返していましたが、
だんだんと慣れていくにつれ、少しずつ順位を上げていきました。
特に「スフィア」という、呪文や特殊効果によく似た力を有するものを使い始めてからは、
面白いようにお金がたまり、気がつくと、私はすっかり常勝組の一員になっていました。

そんな私は、心のどこかに奢りがあったのでしょう。
寸前の所で私を追い越せず、いつも2位に甘んじていた姫様の悔しそうな顔を見かけた私は、
いけないとはわかっていながらも、わざと勝ちを譲ってしまったのです。

「クリフト、手加減なんかしたら、あとでお仕置きよ!」
ゲームの中で、姫様はこうおっしゃっていました。
あれほど釘を刺されていたのに、私は言いつけを破ってしまったのです。
おそらく姫様は、感情をそのまま行動に移すおつもりなのでしょうね。はあ…

ため息をつきながら正面の受付に向かうと、案の定、姫様は腕組みをしたまま
私をじろりと睨みつけていらっしゃいました。右手の拳を左手で握り締め、
「お仕置き」の準備は万端のようです。

「待ってたわクリフト。さあ、こっちに来るのよ!」
姫様は強引に私の腕を引っ張り、誰もいない控え室に入っていきます。
「ここに座りなさい!あなた背が高いから、座ってくれないと届かないし」

(ふう、やっぱり顔の2、3発は殴られるんだろうか…)
がっくりとうなだれた私は、姫様の傍にあった椅子にふらつきながらも腰をかけます。
私は恐怖のあまり身体が震え、両手で頭を押さえたまま強く目を閉じました。
ところが、私が感じたのは痛みではなく…温かくて柔らかい感触だったのです。

「今のは、このままだと自分が勝ってしまうなんて言って、あたしとの一騎打ちに手を抜いた罰よ!」
姫様は私の頭をそっと上にあげ、額に…その…口にするのも恥ずかしいのですが…口付けをされたのです。
「あ、あの…姫様?ここ、これはいったいどういうことで…?」
「決まってるじゃない。お・し・お・き・よ!」
起こった出来事がまだ理解し切れない私に、姫様は私の鼻筋を右手の人差し指で小突き、
悪戯っぽく微笑まれました。

「それから次は、本当はあたしが雷怖いってのを、他のみんなに喋った罰!」
「最後は、あたしがこういうゲームは苦手だって人のことをバカにした罰よ、覚悟しなさい!!」
あたふたと戸惑う私のことなどお構いなしとばかりに、姫様は続けて私の汗ばんだ額に唇を重ねます。
実際真っ赤になったのは顔と耳だけだと思いますが、私は全身が熱を帯びていく感覚に陥りました。

「さあ、次のゲームが始まる時間だわ。行くわよクリフト!」
すっかり力が抜けてしまい、椅子から動けなくなった私の腕を、姫様が再び強く引っ張りました。

(はあ、心臓が止まるかと思った。でも、このようなお仕置きなら、再び受けるのも悪くないかも…)
私は顔が緩むのを必死で押さえ、先を急ぐ姫様のあとを追って次なる舞台へと急ぎます。

そうこうしているうちに、次のゲームが開始されました。
ところが、さっきの出来事で心身ともに放心状態になってしまった私は、いきなり出遅れてしまいました。
姫様のお顔を見ると、どうしてもあのシーンが頭に浮かんでしまうため、ゲームに集中できなかったのです。
中盤から終盤にかけて、得意の「スフィア」を使って追い上げたものの、序盤でついてしまった
大差を埋められず、結局ここでも姫様の優勝となりました。
姫様の表情は前回よりも険しくなられましたが、私は見て見ぬふりを決め込むしかありませんでした。

(クリフト…ついにあたしを本当に怒らせたようね!まだお仕置きが足りないのかしら…?
 おかしいなあ。ライアンは「このお仕置きは、クリフト殿にとっては非常に効果が高いのですぞ!」
 なーんて言ってたのに。よーし、次はもっときつーいのをお見舞いしてやるんだから!!)

「参加選手のお呼び出しを申し上げます――――
 クリフトさん、クリフトさん、正面受付までお越し下さい。アリーナ姫様がお待ちです…」



(終わらない…かもしれない)
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